徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

大阪フィル第535回定期演奏会&「上方界隈、絵師済々」&「京都の若冲とゆかりの寺」

 この週末は大阪方面に大フィルのコンサートとMETのライブビューイングを聴きに行く予定。土曜日に家で朝食を摂ると出かけることにする。

 大阪に到着するとまずは今日宿泊するホテルに荷物を預けに行く。今晩宿泊するのは新今宮のホテル中央オアシス。この界隈では高級ランク(と言っても宿泊料5000円以下だが)に属するホテルである。荷物だけを預けるつもりだったが、もう部屋に入れるというので部屋に入って少し休憩することにする。

 昔はとにかくパワフルに一日中動き回った私だが、昨今はもう若くないせいか一移動一休みしないと結構しんどくなってきている。しばし部屋で「麒麟」の再放送を見ながら休息する。このドラマ、怪しい大阪商人のような松永久秀がなかなか斬新である。

 ある程度休息したところで出かけることにする。今日の大フィルの定期演奏会は15時からだが、その前にその向かいの美術館に立ち寄りたい。

 

「上方界隈、絵師済々1(後期)」中之島香雪美術館で3/15まで

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 京都の四条派を中心とする画壇と、大阪の画壇に注目した展覧会の後期。展示品を総入れ替えしての展示となる。本展の最初に登場するのは中国の絵師で長崎に2年ほど滞在した間に日本の絵師に強烈な影響を与えた沈南蘋。いかにも中国的というか、極めて精緻でカッチリと描いた硬質なタッチの絵である。滞在は短かったものの日本での人気はかなりで、後にも彼の作品は輸入されることになったという。また日本でも彼の影響を受けた南蘋派と呼ばれる流派が登場したという。次に彼の孫弟子にあたるという鶴亭の作品が登場するが、確かに精緻な作品となっている。

 一方京都の四条派の流れを汲む絵師も上方では人気であった。そんな一人が松村景文であるが、呉春の末弟で彼に絵を学んだという四条派の正統派である。しかし彼の作品のタッチはあくまで極めて軽快であり、応挙のような重さを感じさせない。面白かったのは彼と彼の弟子である横山清暉の鶴の絵が並んで展示してある(対幅になっている)のだが、景文の線があくまでのびやかで軽快であるのに対し、横山清暉の線は非常に細かくて緻密で、師匠よりも応挙の影響が垣間見えることである。

 次には大阪画壇の猿の絵師こと森狙仙が登場する。彼は猿の絵が非常に巧みだったというが、見ていると猿に限らず動物の毛並みをぼかしなども使用しながら表現するのが非常に巧みなのがよくわかる。このことから見ると、猿の絵師というよりもモフモフマニアだったのではという気がしてくる。

 前期の京都画壇に比べて、大阪画壇は町民が中心であるのが特徴。そのためか分かりやすい絵画が好まれたのか、私から見ても趣味に合致するような作品が多かった。

 なお森狙仙のモフモフ絵画を堪能したい方には以下のような展覧会が大阪歴史博物館(NHK大阪の隣である)で近日開催されるようだが、もう既にこのポスター自身に「もふもふ」と書かれているところから見ても、やはり彼の絵画から感じることは誰でも一緒ということか。

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美術館前にポスターを貼ってあった

 

 展覧会を終えると向かいのフェスティバルホールへ。新型コロナの影響がそろそろ言われ始めている時期だが、目下のところはまだ国内オケは普通にコンサートを行っているようだ。ただ今は横並びで他の状況を見極めているところだろうから、もしどこかのオケが公演中止を決定すれば、一斉に公演中止が相次ぐ危険はある。現に関西フィルなどではいくつかの依頼公演が主催者側の事情で中止されたことがアナウンスされている(関西フィルの財政に与える影響が懸念される)。なお今回も毎回行われているプレトークが中止となったのはコロナの影響ではないかと思われる。

 外来オケのキャンセルなども懸念されているが、現在のところ香港フィルが「香港でのホールが閉鎖されたためにリハーサルが出来ない」というあちら側の理由で延期になった以外は今のところキャンセルの話は聞こえてきていない。だがこれから感染爆発が起こる可能性を考えると先行きは不透明だ。それにしても日本は初期対応を完全にしくじった。国内封鎖の噂で中国から感染の可能性のある者が大量に流入してきた時に、全くのノーチェックで無制限に入国させたのが失策である。コロナが大騒ぎになって東京利権ピックの開催に影響することを恐れて、意図的にコロナなど大したことないように装おうとしたのだろう。国民の生命や財産よりも、自らの利権を最優先にする安倍政権の体質を端的に示している。なおコロナが蔓延することになればこれ幸いと、不況下での増税という明らかな政策の失敗によって招いた底なしの経済失速を、すべてコロナのせいに押し付ける気が満々のようである。例によって自らの利権と責任逃れしか考えていない。

 ホールの中も会員席などに明らかにちらほらと空席が見える。コロナの感染を恐れて外出を控えている者が少なからずいるのではと想像する。特にクラシックのファンは高齢者が多いし。

 

大阪フィルハーモニー交響楽団 第535回定期演奏会

指揮/秋山和慶
ヴァイオリン/辻彩奈

曲目/ハチャトゥリアン:組曲「仮面舞踏会」
   プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲 第2番 ト短調 作品63
   チャイコフスキー:交響曲 第1番 ト短調 作品13「冬の日の幻想」

 一曲目はハチャトゥリアンらしく異国情調溢れる怪しげだが楽しい曲。第2曲での崔氏のヴァイオリン演奏は流石に見事である。全体的になかなかまとまっていて大フィルも良演だった。

 二曲目のプロコのコンチェルトは辻のヴァイオリン演奏の見事さに尽きるだろう。表現の幅があり、奥行きが感じられて懐の深さを感じさせる。若くして辻には早くも巨匠の雰囲気さえ漂い始めたことを感じる。

 メインの冬の日の幻想は、若きチャイコの想いを描き出すようなロマンチックな演奏。やや早めのテンポで起伏豊かに描いた第一楽章が特に印象に残る。またしっかり謳わせた第二楽章も美しかった。秋山はこの曲を後期交響曲と同じスタンスで描いていることが感じられ、そのために交響曲第1番と言うよりも、交響曲第4.5番ぐらいに聞こえてくる。実際に後期交響曲に通じるチャイコらしさというものが浮上してきていた。

 正直なところ私は秋山に対しては「あまり上手くないオケを破綻なく無難にまとめる指揮者」というイメージぐらいしか持っていなかったのであるが、これはベテランをあまりに見くびりすぎていたというものだったらしい。今回秋山が溌剌と描き出したチャイコ像はなかなかにして魅力的であった。

 それにしてもこの半年以内にこのレア曲を3回も聴くという珍しい体験をしたのだが、3人3様で全く表現が異なっているのには驚いた。この辺りの表現の自由さは、定番曲と異なりまだ解釈が定まっていないということがあるのだろうか。今後の可能性さえも感じさせる。

 

 コンサートを終えるとなんばに移動する。目的は高島屋で開催中の展覧会だが、その前に夕食を通り道のなんばの地下で摂っていくことにする。流石にこのご時世柄、私も中国人が大挙している新世界をうろつくのは抵抗がある。

 入店したのは「洋食屋とんはる」。隣に「トンカツ豚晴」という店があることを見ると、とんかつ屋の洋食部門か。「ビーフカツのセット」を注文する。

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なんば地下の洋食屋とんはる

 出てきたビーフカツはボリュームは十分。やや肉が硬い気がするが、カチカチというわけでもない。最近はレアカツなどの柔らかいカツばかりの中でむしろこれは異色に見えるが、本来はこれも正しい関西のビフカツではある。味的には満足できるものでまずまずの内容。ソースの味も悪くない。1340円という価格を考えると満足できるものだろう。

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ビフカツセット

 夕食を終えると高島屋へ。展覧会が開催されているグランドホールは7階。高島屋のクレジットカードを持っている私は入場料金が半額になる。このカード、クレジットカードとして使ったことは一度もないが、なかなかに使いでのあるカードである(笑)。

 

「京都の若冲とゆかりの寺ーいのちの輝きー」

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 細見美術館所蔵の若冲の作品に加え、若冲ゆかりの京都の寺院が収蔵する若冲作品を集めて展示してある。一般に若冲の作品と言えば緻密で鮮やかな本画のイメージが強いようであるが、本展の展示作はほとんどが墨一色でサクッと描いた軽快で楽しげな作品である。

 細見美術館収蔵品は以前に同館で開催された若冲展で見た記憶のある作品ばかりである。楽しげで笑える作品もあるが、やはり鶏の若冲などとも言われるだけあり、鶏を描いた一連の作品は、単色でサクッと描かれていても躍動感に満ちている。

 一方寺院所蔵品は実に多種多様。かなり精緻に描いている作品もあれば、これは座興として描いたのかと感じるような自由奔放な作品もある。なお虎の絵のように本画でよく似た作品を見たことがある作品もある。とにかく若冲の画業の幅は実に広い。

 最後は若冲の弟子たちの作品も併せて展示されていたが、若冲の描き方に近づこうと苦闘しながらも成功していない作品から、最早真似をすることは諦めて開き直って独自の道を進んだのではないかと思わせる鶏の屏風まで様々であり、弟子の苦悩のようなものも感じさせられたのである。

 

 展覧会鑑賞後は高島屋のレストラン街をウロウロする。今日はお昼を抜いたせいで正直なところまだ微妙に腹が寂しい。かといってここでガッツリ食べるのは問題外。それに高島屋のレストラン街は「美々卯」だの果ては「吉兆」だのと私の懐具合とはかけ離れた店ばかりである。結局は見かけた「一凜堂」に入店する。パスタと甘味の店のようだが、さすがにここでパスタはない。と言うわけでせめてもの言い訳で「シーザーサラダ」を注文する。

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高島屋レストラン街の一凛堂

 非常にガッツリとしたサラダである。なかなかに美味いが、カロリーも結構高そうである(笑)。これではあまり言い訳になっていないような・・・。で、毒食わば皿まででついでにデザートも注文「宇治抹茶白玉パフェ」を注文する。

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ガッツリとボリュームもあるシーザーサラダ

 なかなかに美味いがいささか甘い(笑)。この手のパフェには増量のためにコーンフレークを入れてあることがよくあるが、ここのパフェはコーンフレークではなくてシリアルを入れている。これがパリパリとした歯ごたえで正解。コーンフレークよりも湿気にくいのがポイントだろう。ただ満足はしたが、やはり今の私にはパフェはいささか甘すぎたか。後々まで胃の中で甘さが渦巻くような感触が残ったのである。

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このパフェはいささか甘すぎたか

 腹を十分に満たしたところでホテルに戻る。このホテルは大浴場はないが風呂とトイレがセパレートタイプなので、風呂に湯を張ってゆったりとくつろぐことにする。このための高級ホテルである(笑)。

 風呂から上がるとテレビをつけるがろくな番組がないので原稿入力作業をすることにする(私は本当に本業の仕事以外は勤勉である(笑))。そして疲れたころに就寝することにするのである。