徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

「印象派 光の系譜」展と大阪中之島美術館開館記念展をはしごしてから、大阪フィルの定期演奏会へ

とうとう今週は大阪に出向く決意を

 コロナもピークアウトなどと言われつつも実際はそこから横ばいで全く下がってこない状態。しかも大阪は病院削減とカジノ建設を最優先にする維新府政のツケで犠牲者続出という状況である。と言うわけでその間、私の方はお籠もりを余儀なくされてきたのであるが、毎週毎週増え続けるお布施にそろそろ精神的にかなりキツくなってきた。さらにずっと気になっているのが、このコロナ期間中に新たにオープンした中之島美術館である。ちなみにこの美術館建設も、橋下が市長の時に「俺様が興味のある分野には税金を投じるが、俺様が興味のない分野には金は使わない」という俺様主義の予算配分の煽りで、橋下が美術の趣味がなかったせいで予算がカットされて、進みかけていた建設計画が宙ぶらりんになるという状態になっていた。その後、永らくの紆余曲折の結果ようやく建設にこぎ着けたという経緯がある。なお美術ファンや音楽ファンは維新がいかに文化を憎んでいるか(自分達の金にならないからだろう)ということは肌で知っているところである。美術と音楽ファンを兼ねている私が維新を嫌うのは必然でもある。

 その中之島美術館がちょうど現在開館記念展をやっているようであるが、先日「日曜美術館」をザッと目を通したところなかなか面白そうである。コレクションからピックアップとのことなので、この美術館がどのようなコレクションを有しているかをチェックするには一番良さそうである。

 そんなこんなを考え合わせていたら、この週末の大阪フィルの定期演奏会に出かけようかという気持ちがムクムクと湧き上がってきた。ちょうど金曜日の午前中に大仕事が決着がつくことから、もう午後から休みにして諸々を一気に片付けようという気になった。ただし当然のように行動は厳戒態勢を要求されるところである。とは言うものの検査抑制策のためにもう既に潜在的コロナ患者はあちこちに潜んでいる状況で、全く出歩いていないにもかかわらず感染したという人も出て来ている状況とか。結局最後の最後では運頼みにならざるを得ないところもある。しかも万一感染でもしたら、我が兵庫県も県内の予算をカットしては万博を口実に大阪に貢ぐように指示されている維新の傀儡知事のために医療体制はガタガタという状態、放置されて殺されるのがオチである。維新の生活破壊力のせいで、いつの間にやら我が周辺までがディストピア化しつつある。

 金曜の仕事を無事に終了すると昼に出発する。ただまだコロナが収まっていない状況なので警戒は厳にする必要がある。そう言うわけで移動は車である。なぜかコロナウイルスは満員電車の中では忖度して感染しないという設定になっているが、どう考えても一番の危険要因は満員電車、しかも駅間が長い上に混雑のひどい新快速は一番危険である。

 まずは車で天王寺まで直行。道路は例によって神戸の辺りで渋滞が少々あったが完全に車が停止するというところまでは行かず、ほぼ予定通りに目的地に到着する。高速を降りるとMIOの駐車場に車を入れてハルカスへ。これも大阪で気になっていた展覧会である。

 

 

「印象派 光の系譜」あべのハルカス美術館で4/3まで

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久しぶりのハルカス美術館

 イスラエル博物館が所蔵している印象派絵画コレクションから名品を展示。

 大体印象派について語る場合は、一番最初は野外制作を開始したバルビゾン派に触れるというのがお約束なのであるが、本展でも最初に登場するのはコロー、ドービニー、ブーダンなどの水辺の風景を描いた絵画。この辺りの絵画は屋外で外光を描き始めているものの、まだ絵画手法的にはアカデミーの流れを汲んでおり、画題は新しいが絵柄自体は伝統を引きずっている。

 そんな中で衝撃的に登場するのがモネである。彼の「印象日の出」の作品のインパクトから、光の表現にこだわった彼らのいっぱは後に印象派と呼ばれることになる。本展ではそのモネの作品が数点展示されてるが、その一点が本展の表題作ともなっている睡蓮の池を描いた晩年の作品である。

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本展の表題作でもあるモネの「睡蓮」

 次のコーナーが自然の中での人の風景を描いたもので、先のコローから始まってピサロの外光煌めく作品やら、モネの「ジヴェルニーの娘たち、陽光を浴びて」などが登場する。もっともモネのこの作品はあまりに平板的で私的には面白く感じられず、むしろ陽光煌めくピサロの作品の方が面白い。さらにゴーガンの「ウパウパ(炎の踊り)」という作品も登場するが、ゴーガンのタヒチシリーズであるこの作品は、原始的な生命感と神秘性を感じさせて興味深い。

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ゴーガンの「ウパウパ」

 一方のゴッホは「プロヴァンスの収穫期」が登場。麦束を描いた作品で、先のモネの作品と画題が被るが、ゴッホらしい荒々しいタッチの出ている本作の方が面白い。

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ゴッホ「プロバンスの収穫期」

 

 

 次は都市の情景と題して街角の風景を描いた作品が登場するが、街角ポートレイトのようなユリィの作品が印象深い。「夜のポツダム広場」は雨降りのもやがかかって拡散する淡い光の表現が実に巧みであるし、「冬のベルリン」は冬の寒気の混じった空気の質感が伝わってくる。正直なところユリィの名を聞くのは初めてなのであるが、個人的には本展の中で一番印象に残ったのが彼の作品である。

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レッサー・ユリィ「夜のポツダム広場」

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同じく「冬のベルリン」

 最後のコーナーは静物画及び人物画で、ルノワールの静物画なども登場するが、やはりルノワールは人物を描いてこその画家というイメージが強い。さらにヴュイヤールやボナールといたところも登場するが、この辺りは個人的にはそれほど面白くは感じなかった。

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ルノワール「花瓶にいけられた薔薇」

 以上で本展の見学は終了。平日昼間が幸いして館内の混雑も大したことがなかったので、自分のペース(私は最初にザッと短時間で一回りしてから、最初に戻って気になった絵を中心に重点的に見ていくという方法を取る)で見学できたのが良かった。なおハルカスの次回展は「庵野秀明展」とのこと。何か馬鹿混みしそうな嫌な予感がする。

 

 

 ハルカス美術館の見学を終えると今回の主目的でもある中之島美術館へ。akippaでフェスティバルホール周辺の駐車場を一日押さえてあるのでそこに車を入れる。なお美術館の方では時間指定の入場券を既に購入済み。

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キューブ状の大阪中之島美術館

 入場券の時間指定は4時からだったのだが、会場に到着したのはちょうど4時過ぎだった。外から見ると完全にキューブ上の現代的な建物だが、内部もやたらに吹き抜けが多くて長いエスカレーターで移動させられる如何にも今風の建物。展示室4階と5階とのこと。入口が2階なので3階が存在していないが倉庫とかだろうか。

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吹き抜けの大きな空間内を長いエスカレーターで移動することに

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とにかくやたらに長いエスカレーター

 

 

「Hello! Super Collection 超コレクション展 -99のものがたり-」大阪中之島美術館で3/21まで

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最初の展示室

 中之島美術館開館に当たり、同館の幅広いコレクションの中からそれらを代表する作品を一堂に展示しようということである。

 まず最初に登場するのが一番の基本となったという佐伯祐三の作品群。パリに生きた画家・佐伯祐三のパリの作品が中心である。その中に表題作でもある「郵便配達夫」の作品が。硬質なタッチの中に人物の内面まで感じられるようなところがある作品。

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佐伯祐三「郵便配達夫」

 さらに西洋絵画も登場。佐伯祐三と類似性のあるユトリロやさらには特徴的なローランサンの作品。もっとも私的に興味があるのはフォーブのヴラマンクの「雪の村」に陶器の肌のキスリングの「オランダ娘」。

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ローランサン「プリンセス達」

 次が大阪と関わり合いのある画家ということで大阪画壇の画家たちが登場だが、私の興味があるところの北野恒富、島成園、あたりが一点ずつなのはいささか寂しい。もっともこのコーナーは他の画家たちもほぼ一人一点で網羅的に紹介という印象。

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石崎光瑤「白孔雀」右隻

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同じく左隻

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合わせるとこうなる

 展示室を移動すると次は写真のコーナーだが、こうなると残念ながら私の興味はグッと失せる。特に仕込み写真の類いはさらに興味がないのでスルーに近くなる。

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花和銀吾「複雑なる想像」

 そしてこの展示室の後半は現代美術ということで絵の具塗りたくり系とか、吉原治良の丸シリーズとかで私は興味皆無。ここはほとんどスルー。

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今井俊満「New York(C)」

 

 

 ここで4階展示室は終了で、エスカレーターで5階展示室に移動することになる。

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5階展示室へ

 5階展示室の最初はやはり惹きなのか、当館から他館に貸し出しの多かった作品が中心、ここで当館の目玉ともなっているモディリアーニの裸婦像なども展示されている。また本展の看板の一つでもあるマグリットの「レディ・メイドの花嫁」が登場。ダリの作品などもあり、いわゆる不思議絵画コーナーでもある。

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マグリット「レディ・メイドの花嫁」

 もっとも草間彌生のキモい作品や、森村泰昌のコスプレ写真のような、私的にはどうでも良いような作品も多い。そんな中でこれも作品的には全く面白くないが、偶然的にも非常にタイムリーなモーリス・ルイスの「オミクロン」が登場。

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タイトルが妙にタイムリーなルイスの「オミクロン」

 その先は天保山のサントリーミュージアムが閉館するに当たって寄贈されたコレクションのポスター類の展示が多くを占めることになる。お約束のようにロートレックから始まり、定番どころの「ムーラン・ルージュ」が登場、さらにミュシャの「ジスモンダ」などの定番中の定番が登場、これらのポスターと家具類が併せて展示されている。もっともポスター類はサントリーミュージアム時代に何度も目にしているし、家具はさして興味がないので、そろそろ閉館間近の放送が流れて急かされたこともあって、後は比較的ザッとした見学となる。

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ロートレックの「ムーラン・ルージュ」

 家具やらデザインやらが多いが、家具類は確かにデザインは洒落ているが実用性は皆無だなというのが多いのと、先の東京オリンピックのポスターが展示されていて、どこから見ても今回のパクリから始まったポスターよりも、前回の方がデザインとしての水準が高いと言うことを痛感した次第。なお一番最後に登場するのが倉俣史朗による「ミス・ブランチ」なるアクリルの中に薔薇の花を浮かせた椅子。これは作るのは大変だったろうなと感じるが、作品として面白いかは別。

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倉俣史朗「ミス・ブランチ」

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確かに作るのは大変だったろうとは思う

 

 

 これで展示室の見学は終了である。後は4階まで階段経由で降ろされるが、ここであえて階段を使用するのはその脇にヤノベケンジの「ジャイアント・トらやん」が展示されているから。いかにも「らしいな」と感じさせられる作品。ちなみにこの作品、コクピットに操縦者が搭乗しているらしい。

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長い階段を降りた先にあるのは

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ヤノベケンジ「ジャイアント・トらやん」

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腹のコクピットに操縦者がいる模様

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かなりデカイ

 ここまで一回りした時点でちょうど5時前。閉館が5時なので急かされるように会場を追われることに。結構ザックリと見学するタチ(写真や現代アートはほぼ通り抜けている)の私でさえやや時間が不足気味だったことから、もっとじっくり見るタイプの人は2時間は取っておいた方が良いだろう。

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追い立てられるように展示室を後にする

 なおこの建物の北側にもう一点ヤノベケンジの「SHIP’S CAT(Muse)」が野外展示されている。正直なところ中国の宇宙服パンダよりはしっくりくる作品である。

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屋外にあるヤノベケンジ「SHIP’S CAT(Muse)」

 これで中之島美術館の見学は終了した。この後は大阪フィルの定期演奏会なのだが、これが開演19時の開場18時であり、まだまだ時間に余裕がある。ちょうどここの隣が国立国際美術館で本日は夜間開館ありなのでこのまま立ち寄ることも可能なのであるが、この時点で歩数が8000歩オーバーで、以前にガッテンでも言っていたように「美術館での歩いたり立ち止まったりという移動パターンは歩数以上に体力を削られる」ということで、コロナお籠もりで著しく低下していた体力が完全に限界に達している。ここで国立国際美術館の地下の広大な展示スペースを思い出したら目眩がしたのと、どうせあっちの展示も現代アートだろうから、この状態ではキツすぎるし私の評価も見るまでもなく想像できることからこっちはスルーすることにした。

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国立国際美術館はすぐ隣だが・・・

 

 

夕食を摂ることに

 となるとまずは夕食である。土佐堀川を渡って飲食店がありそうな界隈をウロウロするが、まだマンボウ中の飲食店街は死屍累々である。8時閉店を守っていたら夜は店を開けてもむしろ経費が増えるだけとランチ営業のみに切り替えている店が多いし、それさえも持ちこたえられなくなって完全閉店してしまった店も多い。面倒臭くなってきたこともあり、見かけた「徐園」で2200円のセットを頼むことにする。

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この日は「徐園」で昼食

 この徐園も高級中華料理屋ということになるのだが、恐らくこの状態だと一番儲けのトップと思える宴会需要が壊滅だろう。2階のレストランもまだ夕食時には早めと言っても私以外の客がいない状態だった(私が店を出るまでに2組が到着した)。

 さて料理の方であるが、高級中華料理屋にしては料理の味に冴えがない。特にエビチリはべたついていて正直美味くない。残念ながら価格を考えるとCPが悪いとしか言いようがない。

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2200円のセット

 やや不満のある夕食を終えたところでホールに向かうことにする。フェスティパルホールに来るのも数ヶ月ぶり(今年になってからは初めてだ)である。何となく玄関の赤絨毯が懐かしい気がする。マンボウ下であることとプログラムもそう強烈に魅力的というほどではないためか、やって来ているのは会員の一部ではという雰囲気。一階を見渡したところ客席の埋まりは5割程度いくかと言うところか。

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久しぶりのフェスティバルホール

 

 

大阪フィルハーモニー交響楽団 第556回定期演奏会

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指揮/小泉和裕
曲目/ベートーヴェン:劇音楽「エグモント」序曲
   オネゲル:交響曲 第3番「典礼風」
   シューマン:交響曲 第4番

 いきなり最初のエグモントから激しいと言うよりも、ブンチャカと「喧しい」演奏。何やらフォルテッシモ全開という印象で、この曲はもう少し緩急があっても良いんではないかと思われる。小泉の指揮動作を見ていると、いつも以上にやけに大きく、両腕を頭上に振りかざしてマックス表現。ノリノリを通り越して叩きつけるような指揮。それに合わせるので大フィルの弦楽陣もゴンゴンと凄まじい音を出している。ただあまりに大音量で突っ走るせいかアンサンブルはやや怪しい。

 二曲目のオネゲルも当然のようにその流れで来る。まあ第1楽章は「怒りの日」であるから、激しいのは正解なのであるが、今日の大フィルに関して言えば激しいを通り越していささか荒っぽくて雑。ドンガンとやたらにけたたましい。まあおかげで聴いたことのないやや分かりにくいところもある曲でも眠たくならないという効果はあったが。第2楽章になると冥想と祈りの音楽となるのでようやく美しさが現れるようになるのだが、その美しさがもっと正面に現れても良いようにも思われる。そして最終楽章でまたもドンガンやって最後は息絶えるように終わる。

 何とも不可解なところのある曲という印象は残ったが、懸念していたほどに分かりにくい曲ではなかった。むしろそれよりも分からなかったのは、メリハリを付けるという次元を越えてやたらにぶちかます小泉の指揮。

 後半のシューマンも基本的には同じ路線である。とにかくメリハリが強いというか、とにかく大音量気味である。シューマンなんだからもう少しロマンチックなところを前面にとも思うのだが、それよりはとにかく勢いが前に出てグイグイとくる。

 何か「とにかく大音量の演奏だった」というのが一番印象に残った。これでピアニッシモを極限にまで絞れたらそれはそれでメリハリの強いインパクトの強い演奏ということだが、大フィルはまだこのピアニッシモの絞りに関してはまだ若干甘いところがある。今回小泉が何を意図していたかはよくわからないが、とにかくぶっ飛ばしたなという印象。

 で、ぶっ飛ばしたのは音量だけでなくテンポの方もだったのか、コンサート終了は8時40分頃だったのである。最近ではこれはかなり短い方。


 とりあえず久しぶりの遠出で異常に疲れたので自宅に直帰するが、これが飛びそうになる意識をつなぎ止めながらのなかなかに大変なものであった。やはり著しく体力が落ちているのを痛感させられたのである。