徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

関西フィルによるシューベルト最晩年のミサ曲は心を打つ荘厳さ

この週末は炎天下の大阪へ

 この週末は大阪で関西フィルの定期演奏会である。しかし今日も灼熱地獄の模様。いろいろ考えたが、この灼熱地獄の中を大阪駅からホールまで歩くのは私の体調的に無理と判断、結局は車で行くことにする。車はホールの駐車場へ。かなり高い駐車場なのだが、開演1時間半ほど前に私が到着した頃には既にほぼ満車に近い状態になっている。

 車を置くとまずは昼食を。正直なところあまりコッテリしたもの食べられそうにないということで、いつものように「福島やまがそば」を訪問、カツ丼に冷たいそばを付けることにする。

福島やまがそば

 薄めのカツにシッカリと出汁を染みこませたいかにものそば屋のカツ丼である。もっとも私の好みから言えば味付けがもう少し甘めの方が好ましい。なおそばについては+100円でのオマケとは思えないほどの本格的なもの。しっかりと昼食を頂く。

カツ丼とそば

 昼食を終えるとホールへ。事前のトークで藤岡氏が「実はシューベルトは大好きな作曲家なんだが、その割には演奏機会が少ないのは、客があまり入らないから」と言っていたが、確かにあまりにマニアックすぎるプログラムにこの真夏の暑さのせいか、ホールの入りは6割程度で会員席に非常に空席が目立つという寂しい状況である。確かに実を言うと私も、曲はマイナーだし、体は疲れているし、暑さはひどいし、書き上げないといけない原稿は山積みだし(笑)、今回はわざわざこれのためだけに大阪に出向くのは止めにしようかという考えも頭を過ぎったのは事実である。

昼間のザ・シンフォニーホール

 

 

関西フィルハーモニー管弦楽団 第330回定期演奏会

ホールの入りは6割程度

[指揮]藤岡幸夫
[ソプラノ]内藤里美
[メゾ・ソプラノ]八木寿子
[テノール]畑 儀文
[テノール]大久保 亮
[バリトン]池内 響
[合唱]関西フィルハーモニー合唱団
[管弦楽]関西フィルハーモニー管弦楽団

シューベルト:交響曲 第2番 変ロ長調 D.125
シューベルト:ミサ曲 第6番 変ホ長調 D.950

 一曲目は早熟の天才シューベルトが17才の時に書き上げたという交響曲。時代的にハイドンやベートーヴェンなどの先人の影響は垣間見える。後の未完成やグレートで見せたような繊細でロマン溢れる曲調よりも、かなり躍動的で若き活力溢れる曲である。いわゆるシューベルトらしさというのはまだ薄いが、それでもシューベルトの天才ぶりを覗わせるのには十分な魅力的な曲である。

 その若き曲を藤岡はブイブイとパワー溢れる演奏。関西フィルの方も精緻なアンサンブルよりは躍動感を全面に出した演奏であって、一言でいうと「ノリが良い」。とりあえず藤岡がトークで言っていた「この曲の魅力を理解してもらいたい」という目的は十二分に果たせていたと感じられる。

 2曲目はシューベルトが最晩年の迫り来る死を意識していた時期の作品だという。この数年前に当時は不治の病であった梅毒にかかっていることを宣告されたシューベルトが、自暴自棄の状態から立ち直って、最後の命を燃やし尽くすかのように作品製作に打ち込んでいた頃の作品であり、それ故にか痛々しいまでの美しさから曲は始まる。そして神にすがるかのような訴えが続き、最後は荘厳な世界で終息する。

 関西フィルハーモニー合唱団の歌唱は、技術的には高いという印象はなかったが、それでも藤岡の指揮の下でまとまって破綻ない演奏を繰り広げた。オケの音色とも合致して非常に美しく荘厳な世界を展開しており、終盤などはおもわず息を呑んだ。

 それにしても惜しむらくは、歪んだ自己顕示欲か何か分からんが、なぜかやけに早く拍手を始める奴がいたこと。人よりも早く拍手したら偉いとでも勘違いしてるんだろうか? 最後に熱狂的に盛り上がる曲ならともかく、非常に美しく曲が終わった最後の余韻を見事にぶち壊しており、藤岡も「えっ? もう拍手」というような反応が一瞬垣間見えた。あの荘厳で美しい音楽の後で、その余韻を楽しむ精神を全く持ち合わせてないような輩は、こういう場に来るのがそもそも間違いである。