徒然草枕

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ラトル指揮のロンドン交響楽団の圧巻のブルックナーの7番に魅せられる

京都までロンドン交響楽団の公演を聴きに行く

 秋のコンサートシーズン到来だが、この週末はロンドン交響楽団の来日公演に出向くことにした。指揮はサイモン・ラトル。聞くところによるとこの組み合わせのファイナルシーズンとのことである。ロンドン交響楽団は今まで数回来日公演に行っているが、いずれも文句なしの名演ばかりであり、「ロンドン交響楽団にハズレなし」というのが私の経験則。当然のように今回も行かない手はないと事前にチケットを手配していたのである。

 金曜日の仕事を早めに終えると京都に向かって車を走らせる。難所の阪神高速は例によって京橋周辺で万年渋滞に出くわしたが、それも何とか切り抜けて名神に乗り換えると後はスムーズ。京都には予定通りに到着する。

 さて京都での予定だが、実は美術館に立ち寄ることも考えていたのだが、ここのところの仕事の疲れが出て、京都手前から運転が疲労で怪しくなるような状態。これはどこかに立ち寄るという元気はないと判断、諦めてホテルにさっさと入ってしまうことにする。宿泊するのは先週と同じ京都プラザホテル。先週同様に地域割を使用しての宿泊である。

 部屋に入るととりあえず仕事環境を構築して、しばしマッタリと休憩。一息ついたところで大浴場に汗を流しに行く。非常に快適。これがこのホテルの良いところである。

まずは仕事環境構築である

 さて今日の予定だが、コンサートは19時から京都コンサートホールで。当初予定では京都に到着した後、美術館を見学してから夕食を摂ってプラプラ、そしてそのままホールの近くに車で移動という計画だったのだが、車で動き回る気力がなくてさっさと駐車場に入れてしまったことから予定変更することにする。とりあえずかなり早めだが夕食に出かけることにする。

 

 

早めの夕食は東洋亭リターンマッチ

 と言っても目的地はもう決まっている。今まで何度も振られている「東洋亭」の京都駅店だ。東洋亭は5時からディナータイムになって価格が上がるから5時までに滑り込むことにする。目論見通り、この時間帯は空いていてスムーズに入店。「ビフカツのBコース」を注文。デザートは100年プリンにドリンクはアイスコーヒーを付ける。

ようやく入れた東洋亭

 まずは東洋亭お約束のトマトサラダという名の丸ごとトマトから。これがなぜか不思議なことに、トマトが苦手の私でも食べられるんだよな。前からの謎。今日のトマトは北海道産と言っていたが、完熟トマトなんだろうか。とにかく爽やかで甘い。

なぜか美味い謎のトマト

 メインのビフカツはメニューにも書いてあったように「正しい関西のビフカツ」そのもの。ややレアカツ気味で柔らかくて美味い。

関西の正しいビフカツ

 デザートはプリンにアイスコーヒー。このしっかりしたプリンが私好み。実は東洋亭に来たのはビフカツよりもこっちの方が本命だったかもしれない。またここのコーヒー、変な癖がなくて私向き・・・ということはあまり本格コーヒーでないということか?

100年プリンとアイスコーヒー

 とりあえず満足して早め夕食を終えるとホールに移動することにする。もう車で移動する気力がないから地下鉄を使う。私の読み通り、地下鉄はそう混雑していない。ホールに到着したのは開演1時間前。入場待ちの行列が出来ている。しばし待った後にホールへ入場。私の席は3階のA席。さすがにS席を買う金がなかったからA席にしたのだが、それでもかなりの散財だ。なお場内は安い席から完売している模様。1階席の両サイドがかなり空いていて入りは8割というところ。S席の悪い席が大量に売れ残っているようだ。やはりアベノミクス不況と、アベノミクス円安の悪影響だろう。チケットは上がっているのに、国民所得は下がっているのだからこうなるという縮図。

 

 

ロンドン交響楽団 京都公演

夜の京都コンサートホール

[指揮] 
サー・サイモン・ラトル(ロンドン交響楽団音楽監督)

[曲目]
ベルリオーズ:序曲「海賊」作品21
ドビュッシー:劇音楽《リア王》から〈ファンファーレ〉・〈リア王の眠り〉
ラヴェル:ラ・ヴァルス
ブルックナー:交響曲 第7番 ホ長調(B-G.コールス校訂版)

 一曲目は初めて聞くが結構派手な曲。しかしロンドン交響楽団がいきなりその技量を炸裂させてくれる。もう金管の音を聞いた途端に「なんて良い音を出すんだ」と圧倒される。大音量でも割れることはないし、小音量でもヘタることがない。とにかくダイナミックレンジの広い演奏である。それにしっとりとした弦が加わって色彩的でかつまとまりの良い演奏。かなりニギニギしい曲だが、それがうるさくなることが全くない。

 二曲目も私の全く知らない曲。ファンファーレはその名の通りの金管の華々しいファンファーレで、リア王の眠りの方もその名の通り静かな曲。ロンドン交響楽団のダイナミックレンジの広さを感じさせてくれる。

 三曲目のラ・ヴァルスは何度か聞いたがよく理解できない曲。ラヴェルらしいキラキラとしたオーケストレーションが冴える。ただ不満を言うとするとラトルの指揮。どうもサーの称号持ちの貴族様の指揮はいささか上品に過ぎるというか、実に美しい演奏なのだが、ラヴェルについてはやはりもう少し茶目っ気や色気が欲しいところである。

 ここまでで前半40分だが、非常に濃密な内容だったので「えっ?もっと長かったのでは」という印象。

 

 

 20分の休憩の後の後半が今回のメインディッシュと言えるブルックナーの7番。

 これがもう冒頭から掴まれる。いきなり美しくて分厚い弦の音色が心に響いて魂を鷲掴みである。確かに14型でチェロ9、コントラバス8という編成なので低弦がやや強めの編成だが、そういう物理的次元とは異なる次元でのドッシリした安定感がある。そして分厚いがそれが重苦しくならず、あくまで軽やかで華麗というのがすごいところ。ロンドン交響楽団にはとにかくその音色で魅せられることが多いのだが、今回ももろにそうだった。

 ラトルの演奏はかなりスローテンポ気味の演奏で美しく聴かせる。正直なところブルックナーがあまり得意ではない私だが、今回の演奏を聴いていると、ブルックナーってこんなに随所に美しさを秘めていたんだって再発見がある。ラトルの上品な演奏がクソまじめなブルックナーの曲と共鳴している印象。心地よい音楽に包まれて恍惚となっているうちに第一楽章が終わる。

 そしてブルックナーの魔のアダージョ。私がこう呼ぶのは、ブルックナーファンにとってはブルックナーのアダージョは非常に特徴的で魅力的らしいが、私のようにブルックナーファンというわけでもない者にとっては、このアダージョは往々にして深い眠気を誘うからである。正直なところ、今日は往路では疲労でヘロヘロで危うく居眠り運転事故を起こしかねない状態だったぐらいなので、演奏中に寝てしまうのではないかと警戒していた(実際に先日の佐渡とPACのブルックナーの6番では何度も意識が飛びかけた)のだが、今回の演奏に関しては眠気など微塵も湧かない。相変わらずのゆったりしたテンポながら、そこに全く弛緩はなく、しかしながらピリピリ張り詰めたわけでもない雄大で美しい音楽世界が繰り広げられるので、退屈している暇がないのである。

 結局はそのまま最後までゆったりとブルックナーの音楽世界に浸って恍惚の内に演奏が終了してしまった。終わって初めて「これはかなりすごい演奏だったぞ」と改めて気づくという内容。トータルで言えば天上のブルックナーとでもいうか、まさに至高の音楽であった。

 

 

 私と同じように感じた観客が少なくないのか、場内は割れんばかりの大拍手で大盛り上がり、結局は楽団員が退場しても拍手が終わらず、ラトルの一般参賀。これで先週のアクセルロッドについでの一般参賀ということで、かなりクールだと言われていた京都の観客も変わったのか? まあ今回の演奏も、先週のアクセルロッドも盛り上がるのは当然のすごい演奏であったが。

 ロンドン交響楽団にハズレなしは今回も証明された。満足してホテルに戻ることにした。ただ一つだけ計算違いは、帰りの地下鉄が本数が減っているところにホールからの帰宅客が殺到したせいですし詰め状態だったこと。行きは警戒していたが、帰りはノーマークだった。

 ほとんど息を止めるような状態で地下鉄で戻ってくると、コンビニで軽い夜食を購入してからホテルに戻る。部屋に入るととりあえず先ほどの夜食をつまみながら今日の原稿をザっとまとめ、一息ついたところで大浴場で入浴、ようやくホッとするのであった。こうしてこの夜は暮れていく。

 

 

この遠征の翌日の記事

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