徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

METの「メデア」を堪能してから、スラットキン指揮のN響の名演をはしごする

大阪まで移動する

 翌朝は真っ暗な中、朝の気配に自然に目が覚めると7時前だった。目覚ましが死んでいる状態でも大体決まった時間に目が覚めるようになってきているのは、長年のサラリーマンとしての習慣恐るべしである。

 とりあえず朝風呂で体を温めると、朝食までの間にしばし原稿入力。朝食は和食のバイキングと言いつつ、実質は定食である。味はまずまずだが、これもややボリューム不足。

朝食はややボリューム不足気味

 今日はとりあえずMETライブビューイングとN響大阪公演のハシゴ。まずは11時に大阪ステーションシティシネマで上映されるMETのライブビューイングである。駐車場は既に大阪駅周辺のものをアキッパで確保済みなので、後は時間に間に合うように出かけるだけ。Google先生にお伺いを立てたところ、3~40分程度とのことなので、余裕を見て9時半頃にチェックアウトする。

ひょうご共済会館を後にする

 朝の阪神高速は特にトラブルもなく順調に大阪まで到着する。それにしても大阪駅周辺の道路が複雑すぎ。こんなものカーナビがないと絶対に到着できない。

 車を確保していた駐車場に入れると後は劇場へ。劇場は大混雑だが、例によって体温検査はご自分でというスタンス。感染拡大中の時にこれで大丈夫なのかの不安は少々ある。

 

 

METライブビューイング ケルビーニ「メデア」

劇場は大混雑である

指揮:カルロ・リッツィ
演出:デイヴィッド・マクヴィカー
出演:ソンドラ・ラドヴァノフスキー、マシュー・ポレンザーニ、ミケーレ・ペルトゥージ、ジャナイ・ブルーガー、エカテリーナ・グバノヴァ

 本作はケルビーニによって18世紀末に作曲されたオペラであり、ケルビーニ自身は古典派からロマン派へのつなぎの位置にいる作曲家であるという。本作でも確かに古典的な節回しと、ロマンティックな音楽の仕掛けの両方が共存している。

 そのように非常に優れた作品であるのだが、同時に主役に対して求められる要求水準が高く、それをこなせる歌手が存在しないがために演じられることがないという演目でもあったという。本作の主演歌手は、かなり高度な歌唱技術のみならず、優れた演技力にさらにほぼ出ずっぱりで演じ続けるだけの体力を要求される。

 本作は「ノルマ」の祖先とも言われているとのことだが、METの「ノルマ」で名演を披露したS.ラドヴァノフスキーが自ら演じたいと言ったのが本作とのことであり、S.ラドヴァノフスキーという演じ手を得てようやくMETで初上演の運びとなったのだという。

 さてその内容であるが、やはり主演のS.ラドヴァノフスキーの怪演とも言える見事な演技及び歌唱に尽きるであろう。愛する夫に裏切られて壮絶なる復讐に取り憑かれる王女メデアを凄まじい迫力と圧倒される歌唱で見事に演じきっている。

 そして悲劇の元となる薄情者のジャゾーネを演じるのは、優男が得意と言われるM.ポレンザーニ。薄情でありながら、甘さがあって冷酷にも徹しきれないせいで結果として悲劇を呼び込んでしまったダメ男を見事に表現している。

 そしてこの壮絶なる復讐劇を盛り上げるのは古典派とロマン派が共存するケルビーニの音楽。リッツィの指揮は非常に音楽のツボを押さえていて劇的効果を増しているし、マクヴィカーの演出の妙もあって、最後まで息をもつかせないドラマが展開された。

 今までMETライブビューイングは多く見てきたが、正直なところここまでスゴい作品は初めて見たというのが偽らざる感想。METの方でも場内総立ちの大盛り上がりとなっていたようであるが、それも当然というところ。恐らくその場にいたなら、私も同様に立ち上がってブラボーを絶叫していたろう。

 

 

NHK大阪ホールに向かう前に東梅田で昼食

 いや、本当にスゴいのを見たという感じである。あまりの凄さに頭が少々ボーッとしているが、また今日は次の予定がある。次はNHK大阪ホールでのN響の大阪公演である。とりあえず残り時間は1時間半強。とりあえず移動がてらに昼食を摂っていきたい。

 とは言うものの、どうも昨晩のラーメンが重すぎた反動か、腹が減っていないわけではないが何が食いたいというのがピンとこない。そこで目についた「旬の台所 膳や」に入店して「トンカツの卵とじの定食(931円税込み)」を注文する。どうも年のせいか最近は困った時の和食になっている。

かなり人通りは多い

 まあ可もなく不可もなくの内容。トンカツについては特別に美味くもないが不味くもないというところ。豚汁の方も普通に美味いといったところ。

可もなく不可もなくといったところ

 

 

久しぶりのNHK大阪ホール

 とりあえず腹を満たすと東梅田から地下鉄谷町線で移動する。NHK大阪ホールは歴史博物館と隣接している。ここは何かと来ることがあるが、駅から嫌な距離があるところ。

NHK大阪の隣は歴史博物館

 私の到着時には既にゾロゾロと行列で入場中であった。ホールはここからエレベータを延々と上がった先にある。

既に入場中

長いエスカレータを登った先がホール入口

 ここのホールは座席の指定がかなり変則的になっているので、とにかく自分の席が分かりにくいという問題点がある。現地でウロウロとしている高齢者も多数。ちなみに私はいざホールに到着してみると、思いの外前方の席だったので驚いた。もっと後を取ったつもりだったんだが、前の席が舞台拡張のためになくなっていたようだ。

ここのホールの座席配置はかなり変則的

 今回は指揮はスラットキンでソリストはレイ・チェン。ところでレイ・チェンって聞くと、往年のセラムンファンである私はどうしても「レイちぇん、って呼んでください」という台詞が頭に浮かぶんだよな。富沢美智恵のベッタリした声で。

 

 

NHK交響楽団演奏会 大阪公演

指揮:レナード・スラットキン
ヴァイオリン:レイ・チェン

ヴォーン・ウィリアムズ/「富める人とラザロ」の5つのヴァリアント
メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64
ヴォーン・ウィリアムズ/交響曲 第5番 ニ長調

 一曲目は唐突なタイトルの気がするが、どうやらこれは聖書の一節の模様。なお音楽自体は民謡を元にした変奏曲とのことだが、別に説教臭い曲というわけではなく、普通に非常に美しい弦楽合奏曲。意外に分厚くて美しいN響の弦楽陣がなかなかに聞かせてくれる。渋い一辺倒でなくて、そこから煌びやかさを引き出すのはスラットキンの真骨頂か。

 二曲目は最早通俗曲扱いされることもあるいわゆるメンコン。レイ・チェンの演奏はどんな複雑なメロディも堂々とサラッと弾いてしまうという非常に安定したもの。またテクニックオンリーの無表情演奏とは違って、音色自体にもなかなかに表情がある。表現と技術のバランスが良い円熟した演奏になってきたことを感じた。

 ところで本公演では三楽章でレイ・チェンが困難なパッセージをバリバリと弾きこなしている最中に、彼のヴァイオリンにトラブルが発生した模様で、いきなりコンマスのものと取り替えて演奏を続けるというハプニングが。サブコンマスが彼のヴァイオリンを調整して三楽章終了までに引き渡すという技を披露することに。レイ・チェンは演奏後に「very exciting」と語っていたが、とんだハプニングを最小ダメージで乗り切ったというところ。ちなみにアンコールは「ウォルシングマチルダ」の変奏曲。第一曲からの民謡つながりというところだろうか。

 ラストはヴォーン・ウィリアムズの田園的情緒の強い交響曲。第一曲目と同様にN響アンサンブルがなかなかに聞かせる。全くといって良いほど知らない曲なのだが、こうして聴かされると「ヴォーン・ウィリアムズって結構良いじゃん」って思わさせる。まあ私的にはどうも曖昧模糊としたエルガーよりは、ヴォーン・ウィリアムズの方が相性が良いのを感じる。重厚なアンサンブルの中から、キラキラとした雰囲気を引き出すのがスラットキンの上手いところ。スラットキンといえばアメリカものが得意レパートリーであるが、それと同じスタンスでヴォーン・ウィリアムズも扱っていたように感じられた。

スラットキンも満足げである

楽団員と共に

 なかなかの名演で、N響の真価が発揮されていたように感じられた。スラットキンも満足げな表情であった。ちなみに本公演はカーテンコール時の撮影が許可されており、今回掲載したのはその際に撮影したものである。

 

 

軽く腹に入れてから帰宅

 これで今回の遠征のスケジュールは終了。後は大阪駅に戻って車を回収して変えるだけだが、その前に一服したくなった。東梅田の「心斎橋ミツヤ」に入店してマロンパフェで一服する。なかなかに美味。

地下街の喫茶店へ

マロンパフェは美味

 甘物が腹に入ったら若干の空腹を感じた。これから長駆ドライブして帰宅するので少し燃料補給しておくことにする。ミックスサンドを頂くことに。普通のオーソドックスなサンドイッチでマズマズ。

サンドイッチを腹に入れておく

 軽く腹を満たすと帰宅の途についたのである。今回はコンサート的にはなかなか充実した内容であった。もっとも阪神高速を突っ走っての帰宅はかなり疲れるものである。

 

 

この遠征の前日の記事

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