徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

「バッハの後継者」の第九はかなり個性の強い演奏だった

第九シーズン到来です

 さて12月に突入。いよいよ第九のシーズンとなってきた。と言うわけで今日は関西フィルの第九を聞くために大阪まで出張ることにした。今回の指揮者はユルゲン・ヴォルフ。宣伝では「J.S.バッハの後継者」と銘打っているが、彼がライプツィヒの聖ニコライ教会のカントル(音楽監督)、オルガニストを務めたことがあり、J.S.バッハも同カントルを務めており、彼は17代目の後継者と言うことらしい。何もJ.S.バッハから直接指導を受けたというわけではない(当たり前である)し、殊更にバッハの研究者とかいうことでもなさそうである。

 水曜日の仕事を終えるとすぐに車で大阪まで向かうことに。例によって例のごとく阪神高速は年中行事の渋滞で京橋IC辺りから車がつかえる。それでも今回は「通常の」渋滞で、どうにかこうにか18時前には大阪に到着、車を駐車場に放り込む。そろそろ客が集まり始めているザ・シンフォニーホールを横目に見ながら、とりあえずは夕食を。

ザ・シンフォニーホール前には客がチラホラ

 夕食は全く工夫がなく、これもいつもの通りに「福島やまがそば」「そばセット(880円)」をかき込むことにする。最近は胃の調子もあまり良くなく、なかなか洋食をガッツリという気にならないし、昔よく行っていた「サバ6製麺」はどうにも最近は塩っぱすぎて身体に合わないしということで事実上この界隈では一択になってしまっている。もう少しバリエーションを増やしたいところである。

いつものやまがそば

 軽めの夕食を終えるとホールへ。来客はパラパラで、ゾロゾロという印象ではない。それでも最終的には場内は8~9割程度の入りにはなっている。

ホールへ入場する

 

 

関西フィル「第九」特別演奏会

合唱団は背後のひな壇とオルガン席に

指揮:ユルゲン・ヴォルフ
ソプラノ:老田 裕子
メゾ・ソプラノ:八木 寿子
テノール:畑 儀文
バリトン:萩原 潤
合唱:関西フィルハーモニー合唱団

ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 作品125 「合唱付」

 ヴォルフの指揮については全く何の予備知識もなかったのであるが、オルガニストであるということからドッシリとした重厚な演奏を想像していたのだが、実際にはその予想を完全に裏切るかなり個性的なものであった。

 オケは12型の対抗配置で、基本的にノンビブのピリオドアプローチである。それは良いのだが、驚いたのはそのテンポ設定。いきなり通常の1.5~2倍ではないかと感じるような速度で突っ走り始めたのである。

 ヴォルフは椅子に座っての指揮であったにも関わらず、その指揮動作は極めて大きくて情熱的。とにかくオケを煽る煽る。オケはそれに煽られまくって必死で付いていっている印象。おかげでいつものシットリネットリの関フィルサウンドは完全にぶっ飛んで、アンサンブル崩壊寸前の状態でガチャガチャッとすっ飛ばすだけという印象。弦楽陣の音色がノンビブのせいでそれでなくても淡泊なのに、そこに煽りが入っているせいでやけに甲高くてキンキンとした耳障りなものに感じられる。

 おかげであの強烈な第一楽章も五月蠅いまま淡々と流れてしまったという印象。ヴォルフの快速テンポは第二楽章も続き。何やら怒濤の内に第三楽章へ。さすがに第三楽章は若干テンポが落ちた気がするが、それでも演奏のスタンスは全く同じ。あまりの快速テンポと素っ気ない弦楽陣の演奏のせいでどうしても情感に欠ける。

 このテンポで第四楽章だと合唱陣が崩壊するんではと思っていたら、流石に第四楽章は通常よりも少し早めぐらいまでは落としてきたんだが、ところどころに妙なテンポ設定があるかなりアクの強い演奏。一番驚いたのは最初のバリトンが入るところで、2拍ほど休止を置いたこと。バリトンが入り損ねたのではと思ったぐらいの妙な溜である。結局は何だかんだで最後まで「不自然」感がつきまとって違和感が解消できない演奏であった。なおマスク装着のままでの関フィル合唱団のコーラスは、どうしてもやや籠もった感じになってこれも冴えがない。

 終わってみれば70分程度で演奏終了。かなりの快速第九だった。演奏終了後の拍手も圧倒的という感じではなく、何となく疑問含みのように私には聞こえたのだが、私と同様にどことなくしっくりこなかった観客も少なくなかったのではないかと言う気はする。私的には見事なまでに関フィルの一番の良さを完全に消してしまっていたという印象を受けた。