ヴェルディ最晩年の喜歌劇
昨日は一週間の疲労で完全ダウンしていたのだが、この日曜はMETのライブビューイングを見に行くことにした。今回の演目は「ファルスタッフ」。ヴェルディ最晩年の楽しい喜歌劇である。
キノシネマ国際会館での上映開始は10時半からということで、早朝に家を出る。いくら阪神高速でも日曜早朝から大渋滞はあり得ないだろうと考えていたものの、一応は警戒して早めには出発している。しかし道路は予想以上にスムーズで、結局は神戸へは想定したよりもかなり早く到着。アキッパで確保した駐車場に車を入れるために、しばし駐車場の前でオープン待ちをすることに。
しばしの後に車をオープン直後の駐車場に入れると、国際会館へ。幸いにして現在のところは雨は止んでいる。
国際会館に到着するが、まだ上映開始までに1時間以上余裕がある。さんちかの「神戸珈琲物語」でモーニングを頂きながらしばし時間をつぶすことにする。
喫茶でしばし時間をつぶすと劇場へ。入りは10~20人程度というところか。
METライブビューイング ヴェルディ「ファルスタッフ」
指揮:ダニエレ・ルスティオーニ
演出:ロバート・カーセン
出演:ミヒャエル・フォレ、アイリーン・ペレス、クリストファー・モルトマン、ジェニファー・ジョンソン・キャーノ、ヘラ・ヘサン・パク、マリー=ニコル・ルミュー
大悲劇オペラを量産したヴェルディが最晩年に作曲したのは喜劇であった。長時間に及ぶ大作が多いヴェルディの作品の中でも、三幕で3時間足らずとサクッと鑑賞できる上にテンポが良く、それでいて音楽的中身が濃いという流石の巨匠作品でもある。
掛け合い歌唱が多いので、その辺りのテンポ感が歌手に求められるが、歌手にはさらに歌唱だけでなくそれに合わせてコントのような軽妙な演技も求められるので、まさに演者のチームワークが命である。
腹に詰め物をして太っちょファルスタッフを演じたフォレの怪演が圧巻だが、そのファルスタッフを手玉に取るアリーチェを演じたペレスを始めとする「ウィンザーの陽気な女房たち」の面々の掛け合い漫才のような歌唱が実に見事である。しかもそれをテンポの良い動きと掛け合わせているんだから大変である。
いろいろと画策するファルスタッフであるが、何とも愛嬌のある憎みきれない小悪党という描写である。他の面々に馬鹿にされて散々な目に遭わされた後も、自分が馬鹿をやっているから他の全員が賢くなると開き直る辺りのタフさはむしろ羨ましくも思えるぐらい。人生愉快でないとというのが、ヴェルディの最後のメッセージだろうかとも感じられる。
終始一貫、とにかく楽しい面白いという肩の凝らない内容なので、最後まで陽気な気分で見通すことが出来る。それでいて音楽の中身は濃いし、あちこちに美しさも感じさせられる。重苦しすぎるぐらい重苦しいヴェルディの大悲劇がしんどくなった向きには、まさに一服の清涼剤のような作品である。