徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

山王美術館で藤田嗣治の絵画を鑑賞してから、関西フィルのいずみホール公演でモーツァルト

週末コンサートに繰り出す

 先週末がコンサート三連荘だったが、この週末もほぼ同様の形式を取ることになった。金曜日の仕事を午前中に終えると車で大阪に向かうことになる。

 阪神高速は未だに京橋ー摩耶間が工事中。前回は京橋まで行ってしまったら出口手前の大渋滞でひどい目に遭ったので、今回は手前の柳原出口で出る。とは言うものの、下道も渋滞なので果たしてこれが正解だったかどうかは難しいところ。摩耶入口から阪神高速に再び乗ろうと思っていたが、入口手前から道路が大混雑なので、ここは通過して一つ先の魚崎から阪神高速に乗る。

 まずは今日の宿泊ホテルに向かう。例によってのホテル中央オアシスに到着したのは、チェックイン時刻の3時ちょうど。車を置くとチェックイン手続きをしてから一旦部屋に入る。先週と階は違うが同じ間取りの部屋である。とりあえず仕事環境を構築してウェブをチェックすると直ちにホテルを出る。そもそも今日午後をまるまる空けたのは予定があってのこと。

ホテル中央オアシス

先週と間取りは同じ

毎度の仕事環境を構築する

 

 

山王美術館に立ち寄る

 JR環状線に乗ると京橋まで、今日のコンサートはいずみホールで開催だが、その前にこの近くにある山王美術館の見学をしたい。山王美術館はホテルモントレグループが経営する美術館で創立者のコレクションを展示している。かつてはホテル内で展示されていたためか、公開が平日のデイタイムという堅気のサラリーマンではとても訪問不可な設定になっていたため、その存在を知りながらもずっとスルーしていた。それが昨年の秋に京橋に移転してリニューアルオープンと相成ったとのこと。ちょうど今日のコンサートが京橋だし、ついでに立ち寄ろうと相成った次第である。

山王美術館は寝屋川の対岸

美術館に到着

 山王美術館までは京橋の南口から近くの歩道橋で寝屋川を渡ったらすぐ。アクセスは決して悪くはない。内部は吹き抜けのらせん階段で5階まで、エレベータで5階まで上がってから階段で降りてくる形式。展示室は5階、4階、3階で(2階は事務所か倉庫か?)ある。5階では常設展として棟方志功の版画作品を展示。棟方志功が原石鼎の俳句に絵をつけた青天抄板画柵を展示。素朴で力強くて鮮やかなところがいかにも志功らしい。4階からは企画展になる。

 

 

「渡仏から110年 藤田嗣治展」山王美術館で7/31まで

 乳白色の肌で知られるエコール・ド・パリの画家・藤田嗣治の作品を、その最初期のパリ留学前から最晩年のパリ永住までを通じて展示。

 最初期の作品は戦争で自宅が全焼したために非常に珍しいものだという。友人に贈呈したものが所蔵品らしい。この作品自体は典型的な「多かれ少なかれ印象派の洗礼を受けた当時の画家」の作品であり、まだ後の藤田に結びつくような特徴はあまりない。

 その後、パリ留学で藤田は才能を開花させ、その際に例の藤田の乳白色にたどり着くのだが、乳白色の肌に墨で細かい描線を描くという典型的な藤田の作品が数点登場する。

 ただそのような藤田作品は生活の逼迫からブラジルに移住をする頃には変化する。この頃には結構厚塗りの油彩画なども描いたようである。

 その後、日本に帰国して戦争画なども描いたりするが、戦後は嫌気がさした(戦争協力の罪まで問われそうになったらしい)のかアメリカを経由してパリに渡り、ついにはそこに移住することになる。その時期の作品が子供や宗教的題材をモチーフにみっちりと描き込んだ一連の作品群だが、本館はその収蔵品数が多いのか、1フロアがまるまるその時期の作品であり、なかなかの見応え。

 私は実は乳白色の藤田はあまり好みでなく、むしろ晩年の子供などを描いた作品の方が好ましく感じる者であるので、前者が少なくて後者が多い本展の展示は非常に興味深かった。モントレの創業者の趣味が私に近いのか、それとも藤田の乳白色は世界的評価が高いので入手しにくかったのかは定かではないが。とにかく展示数が非常に多く、それが悉くこの館の所蔵品であるということには驚かされた。

 と言うわけで決して藤田が好きとは言えない私が、思いの外楽しめたのが本展であった。これは想定外。

 

 

夕食はOBPで

 美術館の見学を終えるとそのままプラプラと夕食を摂る店を探してOBPまで。しかし人の気配のないツイン21にはピンとくる店がなく、そのままプラプラとIMPまで南下する。IMPでは夕食時には若干早いのか、リモートワークスペースは人が一杯だが店の方はどこもあまり客がいない。一応端まで見学したが、今ひとつビビッとくる店はなく、結局は「信州そば処そじ坊」に入店することに。頼んだのはカツ丼のセット。そばが具なしで寂しいのでトッピングに揚げ餅をつける。

IMPにある「そじ坊」

 カツ丼の味は悪くない。まず私好みの味と言える。ただ問題はメインのはずのそば。温そばを頼んだのだが、そばつゆに味がなく茹でたそばをそのまま食べているような印象。天かすやら揚げ餅やらを投入してみたが、根本的に味が薄いのはどうにもならない。

カツ丼は悪くなかったが…

 そう言えばここで思い出したのは、以前に松本に行った時に食べたそばがこんな感じだったこと。そば食の多い信州は塩分の過剰摂取による高血圧で、県民の平均寿命が短いことが問題となり、県をあげて減塩に取り組んだと聞いたことがある。そのせいか、私の訪問時の松本のそばは妙に薄味だったようである。この店もその影響を受けているのだろうか。ただ塩分を減らすなら減らすでその分出汁を利かせるなどの工夫は欲しい。

 

 

 夕食を摂るとしばしこの原稿入力などしながらゆったりと過ごす。ボチボチ開場時刻になった頃にホールの方へ。いずみホールに来るのは関西フィルのいずみホール公演ぐらいなので久しぶりではある。こじんまりとしているが、関西フィルの特性にはマッチしているホールである。残念なのは先週の定期と同様にデュメイの負傷で来日が不可になったこと。デュメイによるモーツァルトのアンサンブルを聴きたかったのだが・・・。代役はパスカル・ロフェとのこと。果たしてどのような演奏を聴かせてくれるか。

久しぶりのいずみホール

 

 

関西フィルいずみホール公演

ややこじんまりとしたホール

指揮:パスカル・ロフェ
ピアノ:フランク・ブラレイ

モーツァルト:ディヴェルティメント ニ長調 K.136
モーツァルト:ピアノ協奏曲第9番 変ホ長調 K.271 「ジュノーム」
モーツァルト:交響曲第39番 変ホ長調 K.543

 デュメイのキャンセルにより一曲目はモーツァルトのヴァイオリンソナタからディヴェルティメントに変更。ロフェはデュメイの友人とのことで、話し合った結果この曲になったとのこと。関西フィルは正規メンバーを中心にした8-6-5-4-3の小編成となっているが、そのアンサンブルがホールのスケール感とも一致してなかなかに聞かせる。ロフェも心得たもので、美しい澄んだアンサンブルを聴かせ、実に気持ちの良いモーツァルトとなったのである。

 二曲目はブラレイをソリストに迎えてのモーツァルトの初期の傑作ピアノ協奏曲。このブラレイのピアノが非常にアクが強いのだがロマンティックで美しい。溜めたり揺らしたりと結構好き勝手な演奏をしてくるのだが、それでもしっかりと合わせてくるロフェは見事。結果としてなかなかにロマン派よりのモーツァルトになった次第。

 満場の拍手を受けてのアンコールがブラームスの4つの小品より間奏曲とのことだが、これが完全に枷の外れたかなりロマンティックな演奏。

 後半はモーツァルトの39番。前半よりはかなり力強さが前面に出る演奏となるが、それでもアンサンブルはしっかりと決まっている。なかなかに中身の濃い美しい演奏となった。ロフェはなかなかに関西フィルのツボを押さえているようであり、これはデュメイからも伝言されていたのだろうか。非常に魅力的な演奏となった。


 コンサートを終えるとホテルに戻る。入浴をしてから夜食を摂ると疲れが出てくる。明日は予定は比較的少ないし寝ることにするか。

 

 

この遠征の翌日の記事

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