最終日はコンサート以外の予定がない・・・
翌朝は7時半に起床。やはり体がズッシリと重い。無理しないようにしていても、それでも疲労の蓄積はある。これが一晩寝てもスッキリ回復しないのが老化というものである。
とりあえず昨日購入しておいた簡易朝食を腹に入れると、入浴して体を温めるところから。後はグダグダしながらチェックアウトの支度を調える。
今日の予定だが、メインは15時からの西宮でのPACのコンサート。つまりは10時にホテルをチェックアウトしてからしばらく予定がない。実は昨晩、今日の行動予定についてあれこれ調査したのだが、結局のところ大阪方面の美術館スケジュールはなし。兵庫方面も同様で結局は見つかったのは芦屋市立美術博物館の展覧会のみ。仕方ないのでまずはこれに直行することにする。ここは最近はリニューアル工事で閉館中だったので、久しぶりの訪問になる。
「芦屋の美術 もうひとつの起点 伊藤継郎」芦屋市立美術博物館で7/2まで
芦屋の画家・伊藤継郎について、彼と交流のあった画家たちの作品を含めて展観すると言う趣旨のようである。
伊藤は最初は松原三五郎の主催する天彩画塾で洋画を学ぶが、翌春に閉鎖されたことから、赤松麟作の赤松洋画塾に移る。最初は松原と赤松の作品が展示されているが、松原は古典的な洋画作品、赤松は典型的な印象派の影響を受けた黒田的な絵画である。
療養を兼ねて芦屋に転居の後は小出楢重、黒田重太郎、国枝金三、鍋井克之の4人が開設した信濃橋洋画研究所に通う。
ここで伊藤は二科展に入選したり、生涯の友となる小磯良平と出会ったりするという。そして画家として頭角を現していくことになる。
1941年になると国家による美術界に対する統制に反発して、二科展を退会して猪熊弦一郎、内田巌、小磯良平らが結成した新制作派協会で活躍するようになる。この辺りでは伊藤もいかにも尖った絵を描き出すようであるが、具象の域から離れてはいない。
しかし戦争の影が深まり、小磯は戦争画を手がけることに、伊藤は1944年に満州に招集されることになり、終戦後にはシベリア抑留までされたという。翌年に帰国は出来たものの、妻は前年に死去しており、伊藤も療養生活を送ることを余儀なくされたという。
1947年になると幸いにして戦災を免れていたアトリエで制作を再開、戦争でアトリエを失った小磯良平など多彩な人物が集まるようになり、伊藤もその才を発揮していくことになったという。
紆余曲折はあったが、最後の最後まで具象からは離れなかった画家である。また同じ具象でもいつも小綺麗な絵のイメージがある小磯良平とはまた異なった表現をとっているのが特徴である。正直なところ私の好みの絵とは言いにくいのだが、それはそれで周辺画家の作品と対比しながら見ていくと、なかなかに興味深かったのである。
昼食は洋食にする
美術館の見学を終えた頃には11時半頃だった。これは夕食を摂ることにしたい。立ち寄ったのは久しぶりの「ダイニングキノシタ」。今まで何度か覗いたのだが、悉く駐車場(この店は前の道路に路駐する)が一杯だったので見送っていた次第。今回はたまたま空きがある。テイクアウト注文が多数来ているので料理出しに少々時間がかかりますの張り紙が出ているが、そもそも時間が余っているのだからちょうど良い。この原稿を執筆しながら待つことにする。
20分ぐらい待ってからスープが到着。かぼちゃのポタージュとか。ほの甘さがなかなか良い。
野菜サラダはやや酸味のあるドレッシングが爽やかである。
メインはアスパラの牛肉巻きカツ。思いの外ボリュームがあるが、アスパラが歯ごたえだけで味が薄い印象を受ける。出来ればもっとアスパラの甘味が欲しい。また全体的にややしつこい感じがある。濃厚なソースで食べさせるよりも、もっと素材の味で食べさせる方が良いように感じる。
何だかんだで昼食に1時間以上かけたが、それでもまだ時間にかなり余裕がある。ホールに移動して駐車場に車を入れるが、開場までは喫茶でつぶすことにする。
時間が来たらホールに入場、結構な入りである。
第141回定期演奏会 下野竜也 ザ・ブリティッシュ!
指揮:下野 竜也
ヴァイオリン:三浦 文彰
管弦楽:兵庫芸術文化センター管弦楽団
ウォルトン:「スピットファイア」前奏曲とフーガ
エルガー:ヴァイオリン協奏曲
エルガー:エニグマ変奏曲
一曲目はウォルトンによる映画音楽である。かなり派手派手な曲であるのだが、下野の指揮も派手だし、若いPACの音色も派手。特に管楽器がブイブイ来る印象。いささかバランス的には管楽陣が前に出すぎの感もある。
二曲目はエルガー。私がエルガーが苦手であるのは、まさにターナーの絵画の如く音楽の輪郭線がハッキリせずに曖昧模糊としたところがあるからである。その点でヴァイオリン協奏曲という形式は、ソロ楽器のメロディラインがハッキリすることで私にとっては意外なほどに聞きやすいものであった。また普段はややソリッド感が気になる三浦の硬質な演奏も、ことこの曲の場合はエッジが立つことで曲自体にメリハリがついてさらに聞きやすくなったという印象。結果としては予想以上に面白い演奏となった。
後半はエルガーの変奏曲。変奏は14まであり、9番目が有名なニムロッドである。私としてはデュメイがたまにアンコールで演奏することがあることで馴染みの曲である。
今までと同じ調子で、やはり若いPACは元気が良い演奏という印象。下野もかなりノリで演奏している雰囲気がある。ただその分、細かい意味でのアンサンブルやバランスなどはやや悪い部分もなかったではない。概ね「元気が一番」という演奏であり、まあPACらしいとは言える。
これで週末遠征は終了、阪神高速の工事渋滞に辟易としつつ帰路につくのである。
この遠征の前日の記事