週末はまずは美術館のハシゴ
この週末は関西フィルの定期演奏会で大阪に出張る。ただ大阪に出るついでに美術館にも立ち寄る予定。美術館に2箇所立ち寄るつもりなのと、コンサート開演が14時からとやや早めであることもあり、午前中のかなり早い内に出発することにする。
大阪駅に到着したのは10時前。大体想定通りの時間である。ただ朝食を摂らずにすっ飛んできたこともあるので、とりあえず朝食を摂っておきたい。エキマルシェをウロウロしたところ「えん」が既に営業している。確かに出汁茶漬けこそ朝食向きのメニューである(夕食にはいささか軽すぎる)。朝食メニューの「焼きサケとごま昆布の出汁茶漬け(680円)」を注文する。
ややボリューム不足気味の感はなしにしもあらずだが、朝からサッパリと頂くことが出来て悪くない。やっぱり出汁茶漬け自体が朝食向きである。
朝食を終えるとJRで天王寺へ。最初に訪れるのはハルカス美術館で本日から開催される美術展である。
「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」あべのハルカス美術館で'25/1/5まで
ウスター美術館は19世紀末にボストン近郊に設立されたが、世界中の美術品を収集すると共に、「現代アート」として印象派作品の収集に力を入れたという。特にモネの「睡蓮」に関しては、世界の美術館で購入したのはここが最初だとか。そのような経緯から印象派コレクションを誇るが、特にアメリカの印象派の作品が多くなることになる。
展示は概ね時代を追うことになる。まずは印象派の先駆けとも言えるバルビゾン派の絵画から。バルビゾン派は屋外での写生に力を入れたという点で、印象派の先駆けとも言える。展示作は牛のトロワイヨンから、風景画というジャンルを確立してとくに印象派に大きな影響を与えたコロー(にも関わらず、彼自身は印象派とは距離を置いていたようだが)、それに海のクールベの海でない絵、デュプレの農村画など様々。
第二部がいよいよパリでの印象派となる。ここではモネ、ルノワール、ピサロにシスレーなど定番どころが。ここで世界で初めて購入したというモネの睡蓮の秀作が展示されている。
そしてここで登場するのが、アメリカからやって来ていたハッサム。彼はこの最新の絵画の潮流に影響を受け、この手法を本国に持ち帰ることになる。そしてアメリカでも印象派が広がっていく。
と言うわけで印象派の国際的な広がりが第3部となり、ハッサムに影響を受けたアメリカの印象派の画家たちから、北欧の印象派の画家まで。さらには番外編的に日本の画家、黒田清輝や久米桂一郎、児島虎次郎など日本の画家たちの日本の美術館の収蔵作品が参考的に展示されている。
第4部が本展の本論とも言えるアメリカの印象派作品。先程のハッサムはアメリカ各地の風景を描いて回ったようである(中にはモネの作品とそっくりなものもある)。一方、故郷の風景を中心に描いたグリーンウッドなどが登場する。
最終第5部がその後の印象派の展開。フランスではシニャックやブラックなどの新印象派、後の現代作品にも影響を与えたセザンヌ、印象派から始まりフォーヴに向かっていったブラックなどが登場する。
一方のアメリカではアメリカの様々な風景を思い思いのタッチで描く画家が登場していくことになる。
以上、アメリカを中心とした印象派の画家たちの作品だが、展示作は結構レベルが高くかなり楽しめる内容となっていた。ウスター美術館のコレクションのレベルの高さを思い知らされた感がある。
なお館内の写真撮影は月土日祝は終日指定の6作品のみ。火~金は17時以降は全作品可とのこと。まあ混雑対策もあるのだろう(写真撮影可にするととにかく混雑しやすい)。写真撮影をしたい方は平日の17時の仕事終了後に立ち寄られるのが良いか(平日は20時まで開館)。
展覧会の見学を終えると次の目的地に地下鉄で移動する。次の目的地は大阪歴史博物館。ここで大正風景版画の巨匠・川瀬巴水の作品を展示しているとのこと。
現地に到着すると券売所にインバウンドの行列が出来ているから何事かと思ったが、彼らは常設展の方が目的だったようでとりあえず一安心(やはり美術展で会場が混雑するのは困る)。なお券売所の行列は券売の作業が異常に遅いことにも一因があった模様(前の客がややこしかったのか、たった一人のために数分待たされた)。
「川瀬巴水 旅と郷愁の風景」大阪歴史博物館で12/2まで
江戸の浮世絵の流れを汲む大正版画を代表する巨匠で、郷愁を誘う風景版画で知られ、旅情詩人とも呼ばれる川瀬巴水の作品を展示。
川瀬巴水が新版画の旗手として登場したのは、彼と版元の渡邊庄三郎の出会いがあるという。巴水が各地を旅して描いたスケッチを見た彼は、巴水の作品が木版画向きであることを感じて、彼に木版画の道を進めたのだという。
版画は原画の巴水と彫師や摺師の共同作業となるのだが、初期の作品から経験を積んでいくにつれて、巴水も版画に通じていくのか明らかに版画向きの原画を描くようになっているのを感じられる。それと共に彼の作品自体も初期の大胆で荒々しいタッチから、高精細の写実的なものにへと変化してくるのであるが、その変化には渡邊による「より一般ウケしやすい方向」という誘導もあったという。
やがて巴水は木版画の旗手として現代の広重など共に言われたりするのだが、逆に「広重の模倣に過ぎない」という批判などもあり、巴水自体もマンネリから新たな境地を模索してものスランプの時期などもあったが、その中でさらに新しい境地を見つけていったという。
戦中の物資不足、人材不足により制作の中断を余儀なくされる時代などを経て、戦後は一転して海外などで大人気となり、最晩年はついには日本を代表する文化として認識されるに至るという。
川瀬巴水の木版画は以前より抒情を掻き立てられることから私は好きだったのであるが、その彼の作品を初期から概観出来たというのはなかなかに貴重にして幸福な体験であった。失われた日本の原風景に思いを馳せることしばしという時間を送ったのである。
早め早めに行動したつもりだったのだが、何だかんだで開場時刻の13時が近づいてきた。地下鉄とJRを乗り継いでさっさと福島に移動することにする。
昼食だが、とにかく考えている時間的体力的余裕がない。自動的にいつもの「やまがそば」に入店することに。いつものような「そばセット(900円)」を注文して腹に入れる。
昼食を終えるとホールへ急ぐ。ホール内はかなりの混雑。どうやら今回のチケットは完売の模様。人気作曲家の菅野祐悟(ロビーには「菅野祐悟親衛隊」からの花輪が展示されていた)の曲をこれまた人気ピアニストのかてぃんこと角野隼斗が演奏するとなると、非常にキャッチーな内容。観客はいつもよりも圧倒的に女性層が多い。流石広報委員長藤岡、客寄せを考えた内容をしっかりと持ってくる。
関西フィルハーモニー管弦楽団 第350回定期演奏会
[指揮]藤岡幸夫
[ピアノ]角野隼斗
[管弦楽]関西フィルハーモニー管弦楽団
菅野祐悟:ピアノ協奏曲(世界初演)
ベルリオーズ:幻想交響曲 op.14
一曲目は菅野祐悟が角野に演奏してもらうことを想定して作曲したというピアノ協奏曲。プレトークで藤岡は「ピアノ協奏曲と言うよりも交響詩」と言ったのに対し、菅野は「いえ、僕はあくまでピアノ協奏曲のつもりなんですが・・・」と見解が分かれていた(笑)が、藤岡が交響詩と言ったのも納得出来るような自由で幻想的な曲調である。
一方、菅野は角野の演奏を想定してかなり自由にアドリブで演奏出来る部分を増やしたそうで、確かに元々からしてかなり自由奔放な演奏をする角野が、まさにその真価を発揮してテクニックを駆使して暴れ回っていた印象である。
曲自体は菅野の常で、変に尖った現代音楽ではないので実に親しみやすい。特に第一楽章は分かりやすいように感じられる。第二楽章以降は角野の即興も加わったかなりロマンチックなもの。途中でトイピアノを使用したり、内部奏法を繰り出したりなどのかなり自由な内容である。
演奏終了後には場内は当然のように大盛り上がり、立ち上がる女性客が多数。作曲家の菅野がステージ上に呼び出されるとさらに盛り上がりと立ち客が増える。まあそういう類いのファンが非常に多いことが分かる。
満場の歓呼を受けての角野のアンコールは知らない曲だが何か聞いたことがある曲。どうやら菅野が作曲した「さよならマエストロ」からの曲だった模様。そう言えば何だかんだであのドラマは最後まで見たな。流石の芦田愛菜の演技が印象に残ったが、内容的には芦田愛菜の娘はファザコンを拗らせすぎだし、天才指揮者の西島秀俊の指揮ぶりがあまりにぎこちないのが印象に残った(笑)。音楽監修が広上淳一とのことだから、広上流の指揮法を習った結果ああなったか?(笑)
休憩後の後半はベルリオーズの幻想交響曲。プレトークで藤岡は「ギリギリを攻める」というような趣旨のことを言っていたが、確かに下品な空騒ぎになるギリギリの線を攻めているのが良く分かる演奏。普段はやや地味目でアンサンブル重視の演奏を行う関西フィルが、かなり乱痴気騒ぎ手前の派手な演奏をしている。藤岡は「下品な曲だが、それを下品にしすぎると雑になるし」というようなことを語っていたのだが、確かに雑になるギリギリのラインである。
最近の関西フィルはかつてはやらなかったような爆音演奏もするようになっているのであるが、今回はそれがかなり発揮されていた。いかにも藤岡らしいメリハリの強い演出に必死で食らいついていった感じがある。特に断頭台への行進などはかなり派手派手の演奏であり、そのパワーのままにおどろおどろしいフィナーレまでなだれ込んだという印象。藤岡のかなり熱さは伝わってきたし、なかなかに冒険した演奏でもあったようだ。
結局は最後の最後まで、このギリギリの緊張感のままに音楽が終了した。まあこれはこれで名演と言えるのかもしれない。もっとも好き嫌いは人によってあろう。藤岡は最初に言っていたように、ベルリオーズの下品で奇っ怪な曲を、そのままに下品で奇っ怪に演奏したので、芸術の高尚さを求める向きにはどうだろうか。まあ私は元々が下品な人間なので、これはこれでありだとは思うが。
コンサートを終えると三ノ宮に移動する。明日は西宮でのコンサートを聴きに行くので、三ノ宮で宿泊の予定。とは言うものの、三ノ宮ではまともな価格のホテルはほぼないというのが実情。結局私が確保したのは以前に一度使用したカプセルホテル三ノ宮。
ホテルがあるのは三ノ宮北の繁華街を抜けた辺り。やはりホテル価格高騰の煽りか、相変わらずの人気のようで今日も満室らしい。
私のキャビンは上段。以前もそうだったが、この上段キャビンによじ登るのが大変だ。ただ前回で要領が分かったのか、私の体のキレが以前より良くなったのか、しんどいのは相変わらずだが今回は前回ほどには苦労せずによじ登ることが出来る。
キャビンに転がり込むとしばしはそこでボンヤリ。やはり今日は異常に疲れている。カプセルホテルに宿泊することを考えて、今回は荷物はキャリーにせずにリュックにまとめたのだが、そのせいでリュックが重くなって(一泊ということで重いPCなどは持ってこなかったにも関わらず)体に負担をかけていたか。実際になんだかんだで今日は1万5千歩という限界突破をしている。ジジイに重荷を背負ってのこの歩数は無理がありすぎた。体力が完全に底をついていて何をする気も起こらず、スマホをチェックしながら布団の上で転がったまま動けなくなる。
1時間ほど休憩を取った後はようやく起き出して大浴場で汗を流す。今日は体が凝っていると言うよりも全身が脱力している状態。純粋に疲労が濃すぎるようだ。恐らくここのところ本業がかなりキツいので、その精神的なストレスもかなりあるだろう。
入浴して体がほぐれると、その勢いでそのまま夕食に繰り出すことにする。と言っても遠くまで出て行く気にもなれず、比較的近くで以前も訪問したことのある「武蔵」を訪ねることにする。
一人用の個室に案内されると注文。私はとりあえず「刺身盛り合わせ」「アジフライ」「真鯛のカルパッチョ」を注文する。
もう結構食べた感があるが、やはり最後はご飯もので締めたい。と言うわけで「おかかおにぎり」を注文。しかし出てきたおにぎりは予想に反して二つも入っていたので結構なボリューム。かなり無理して詰め込むことに。
最後に口直しが欲しいのでデザートに「カタラーナ(アイスケーキ)」を注文して終了。これで支払いは3790円。なかなかの散財だが、まあたまにはこういうこともしないと精神が持たない。
夕食を終えるとホテルに戻ってキャビンに転がり込む。しかし見事なほどに何をする気も起こらない。pomeraを引っ張り出してきて原稿執筆を試みるが、集中力が皆無なので文章が全く浮かばない。諦めてタブレットで録画した番組をチェックするが、「歴史探偵」を見ている途中で意識を失ってしまっていた。そこで諦めてまだ大分早い時間だが、そのまま就寝してしまう。
この遠征の翌日の記事