徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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2024年度クラシックライブベスト5

 さて今年も年末恒例の本年度の年間ベストライブを選択することにします。本年はアホノミクスの影響で外来オケのチケットは一気に1.5~2倍以上に高騰、さらに私の方が深刻な資金不足のために、この秋の訪日外来オケもほとんどパスせざるを得ないことになってしまいました。そのために昨年度にも増していささか貧乏くさいチョイスになってしまっておりますが、元々「私的な」チョイスであることからご勘弁願います。今後、私が高額宝くじでも当選するか、何かの間違いでスポンサーが付くかでもしない限り、状況の改善は期待出来ないのがツラいところではあります。

 

 

ベストライブ

第5位
カーチュン・ウォン指揮 兵庫県立芸術文化センター管弦楽団

 いかにも色彩的で華麗な音色でグイグイと押しまくるマーラーの6番は圧巻。例によってオケのコントロールが半端ない。最後まで緊張を切らせることなく演奏しきったのは流石である。

 

第4位
広上淳一指揮 京都市交響楽団

 コロナで1度流れて2年越しで実現したマーラーの3番。完成の域に達している広上と京都市響の組み合わせが天上の音楽をここに再現した。信仰心皆無の私でさえ、思わず天国の風景が見えたぐらい。

 

第3位
セルゲイ・エメリャニチェフ指揮 読売日本交響楽団

 非常に鮮烈で色彩豊かな演奏が強烈に印象に残る。読響をフルにコントロールして、そこから最上のサウンドを引き出すエメリャニチェフの技倆が光る。極彩色の音楽絵巻として展開したシェエラザードはまさに圧巻。

 

第2位
井上道義指揮 大阪フィルハーモニー管弦楽団

 井上道義ファイナルと謳っているのは確かに伊達ではなかった。非常に含蓄の多い田園に、一転して緊張感とパワーでグイグイと来る運命の対比。まさにラストの人生への勝利を高らかに謳い上げる音楽は強烈な感動を呼んだ。

 

第1位
サー・アントニオ・パッパーノ指揮 ロンドン交響楽団

 「ロンドン交響楽団にハズレなし」はラトルがなき状態にあっても生きていた。相変わらずのウットリするようなロンドン響サウンドは健在。さらにそこにパッパーノが新しい風を吹き込んだことが感じられた。今後も更なる快進撃に期待。

 

番外
阪哲朗指揮 京都市交響楽団

 ドヴォルザークの田園交響曲という呼び名のある8番を、全く違った切り口で演奏したのに唖然。まるで劇音楽のような展開は、流石にオペラ指揮者でもある阪哲朗ならではであろうか。

 

 

ワーストライブ

 本年度のライブの中で不本意な結果であったものをリストする。なおあくまで私の中で残念度の高さに比例するので、必ずしも絶対的な演奏レベルとは比例しない。

 

第3位
グスターボ・ヒメノ指揮 NHK交響楽団

 あれから数年、ヒメノの進化のほどは・・・と思って聴きに出かけたのだが、残念ながら「ヒメノはやっぱりヒメノだった」と言わざるを得ない内容。例によって指揮姿だけは美しいのだが、音楽の内容は緊張感薄くこちらに迫ってくる要素が皆無。破綻はないが魅力もない。

 

第2位
パーティ・ベイジェント指揮 大阪フィルハーモニー管弦楽団

 イギリスの新進気鋭指揮者だが、若き表現意欲が暴走して、説得力の薄い独善的な音楽を展開したという感を強く受けた。大がかりな演出が、ことごとく「演出のための演出」となってしまっていて、そこから深い表現的意図を読み取ることが不可能だった。最後までギクシャクとした弛緩した音楽が延々続いてしまった印象。

 

第1位
アンドリス・ネルソンス指揮 ウィーンフィルハーモニー管弦楽団

 今までの実績から「ベスト1かワースト1のウィーンフィル」というルールがあるが、今回はワーストの方になってしまった。例によってウィーンフィルサウンドは圧倒的で魅せられるものであるのだが、やはりネルソンスの緊張感皆無でやけにほんわかしたマーラーの5番は私的には違和感ありすぎで、どうにも納得出来なかった。これは最早私とネルソンスの相性の問題とも思える。

 

 

総評

 予算の関係で外来オケはロンドンとウィーンだけという低調ぶりなのが今年。本当はラトルのバイエルンぐらいは行きたかったんだが・・・。なおその2つの外来オケがベストとワーストのトップという結果になった。「ロンドン交響楽団にハズレなし」というジンクスは今回も何の問題もなく継続、美しさが半端でないロンドンサウンドには今回も魅了されてしまった。

 一方でウィーンフィルは、やはりその演奏の見事さは圧巻なんだが、どうしても根本的にネルソンスの演奏は私と極めて相性が悪いようだ。身を切る切なさのないマーラーは、やはり私にはあまりに物足りない。

 後は国内オケの演奏から。特に井上道義のファイナルは半端でない気合いの入り方が客席にまでビンビンと伝わってきたし、2年越しの広上のマーラーは十分に納得をさせてくれた。私が以前から注目しているカーチュン・ウォンが今年も名演を聴かせてくれたが、注目の新星はエメリャニチェフか。なお阪哲朗の演奏はあらゆる点で私の想定外。これも今後注目だ。

 なおハズレの方は進化しなかった元新鋭と、表現意欲が空回りの新鋭。ヒメノについては「こりゃもうダメかな・・・」というのが正直な感想。

 それにしても私の財政的困窮はかなり深刻。しかも来年度はさらに困窮の度合いが増すことが予測されており、お先真っ暗である。来年度はベルリンフィルも来日するが、3階奥のド貧民席でさえ3万円となれば最初からとても手を出せない。同様にどのオケも軒並み2万円超えときてはどうにもならない。しかも地味に国内オケまで価格高騰傾向なので、これはそのうちに外来オケどころかコンサートなんて贅沢は無理になるかも。

 

2023年度ベストライブはこちら

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