徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

関西フィル定期は、神尾真由子の神業の演奏に、藤岡による「ぐるりよざ」

関西フィル定期に出かける

 世間ではGWが始まったとのこと。出来るならドンと遠出でもしたいのが本音だが、アホノミクスによる物価高騰と、年々ジリジリと下がっている可処分所得のせいで、今の私にはそんな財力は全くない。と言うわけで今日は関西フィルの定期演奏会のために大阪に繰り出すというのが、せめてもの私のささやかな贅沢。

 大阪まで繰り出すとなると、当然のようにコンサートだけでは終わらない。と言うわけで今日は午前中に家を出るとJRで大阪に移動する。

 大阪は相変わらずの混雑。ここから地下鉄で一駅の移動。コンサート前に美術館に立ち寄ることにする。

 

 

「すべてを描く萬絵師 暁斎 ー河鍋暁斎記念美術館所蔵」中之島香雪美術館で6/1まで

中之島香雪美術館

 幕末から明治にかけて活躍した鬼才・河鍋暁斎の作品を埼玉の河鍋暁斎記念美術館の所蔵品を中心に展示している。

 暁斎は最初は狩野派の元に入門して絵の基本を徹底的に仕込まれたという。本展最初には狩野元信などの当時の狩野派の作品を展示。この辺りはかなりカッチリとした絵である。その後の暁斎は歌川国芳などの元で浮世絵も学んだという。この辺りの足跡がその後の「何でも描ける」という暁斎の才能につながったようである。

 暁斎の作品は最初は浮世絵版画が登場するが、これがやはり師匠の国芳譲りか外連味タップリのアクの強いもの。ただし技術に関してはこの頃から明らかに光っている。

 その後は様々な本画作品が展示されるが、河鍋暁斎記念美術館所蔵品の特徴として、下絵も多数展示されているのが特徴的。彩色された本画では分かりにくい細かい線が下絵だとはっきりと把握でき、さらに暁斎の冴えた技を実感できるという趣向でもある。

 作品自体は仏画に美人画、さらにはユーモラスな風刺画など非常に幅広い(今回は展示がないが、春画まで手がけている)。精緻でありながらダイナミックな描線に圧倒されるが、この迷いのなさが暁斎の圧倒的な制作速度の速さとも相関していたように感じられる。

 正直なところ、河鍋暁斎記念美術館を訪問したことがあるし、今まで暁斎展の類いはなるべく見に行っていたので、初めて見るというような作品はほぼない。しかし改めて暁斎の作品を目の当たりにすると、その技術や表現力に圧倒されるのである。なお河鍋暁斎記念美術館は、戦前は広く名が知られていた暁斎が戦後になるや急速に忘れ去られていくことに危機感を持った暁斎の曾孫の河鍋楠美氏が、暁斎の名を残すために設立したとか。暁斎の作品を初めて目にした時の衝撃が未だに忘れられない私としては、これだけの実力派絵師が社会から忘れ去られつつあったということに驚きを禁じ得ないのだが。

 

 


 暁斎展の見学を終えると地下鉄で新今宮まで移動することにする。とりあえずキャリーをホテルに置いて身軽になりたい。宿泊はいつものホテルサンプラザ2ANNEX。このホテルは朝の7時からでもチェックインできるのが大きな魅力。もう昼時なので余裕でチェックイン。いつものフローリング和室に布団を敷くと、仕事環境の構築をしてからしばし横になる。

いつもの和室

 何やら大阪に来てから異様に体が重く、正直このまま寝てしまいたい気分なんだが、そういうわけにもいかない。しばし休憩してから再び出かけることにする。

 福島まで移動すると昼食を摂る必要がある。頭にあったラーメン屋は大行列のようなので、諦めて「まこと屋」に入店して背脂醬油チャーシュー麺に半炒飯をつける。

 

福島の「まこと屋」」

 ラーメンはまずまずなのだが、炒飯が辛すぎて私には半分ぐらいしか食べられない。これはちょっと塩を振りすぎ。

麺は細麺

この炒飯は少々しょっぱすぎ

 昼食を終えるとホールへ。私の到着時には絶賛入場中。行列に続いて私もゾロゾロと入場する。何やら体が異常にダルいし、口の中は先程の脂と塩で少々キツい。と言うわけで喫茶に立ち寄ると堕落の極みではあるが、イチゴとブルーベリーのケーキセットを頂くことにする。昨今は自民党の悪政の極みによる貧困化で、世間ではまるで戦時中のような言葉が飛び交っているが、やはりいつの世も通じる真理は「贅沢は素敵だ」である。

堕落の極みのケーキセット

 

 

関西フィルハーモニー管弦楽団 第354回定期演奏会

オケはかなり大規模

[指揮]藤岡 幸夫
[ヴァイオリン]神尾 真由子(♥)
[男声合唱]関西フィルハーモニー合唱団(♠)

[プログラム]
ヴォーン・ウィリアムズ:揚げひばり(♥)
プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ニ長調 op.19(♥)
レスピーギ:交響詩「ローマの噴水」
伊藤 康英:管弦楽のための交響詩「ぐるりよざ」(男声合唱付き)〔オルガン入り改訂版(2025)〕【初演】(♠)

 今回は藤岡幸夫がお友達の神尾真由子をソリストに迎え、日本人作曲家の初演曲を持ってくるという、毎年春頃の恒例のイベントである。

 一曲目は日本では知名度はいま一つだが、イギリスではかなり有名な曲なのだとか。もうこの曲は神尾のヴァイオリンの第一音からしっかりと掴まれる。神尾は日本のヴァイオリニストの第一人者とも言われるが、何よりも圧倒的なのはその表現力である。卓越した技術に裏打ちされた美しい多彩な音色による音楽表現は、聴く者を一瞬にして巻き込むだけの強力な説得力を持つ。今回もその一音だけで音楽の世界に魂を引き抜かれた感覚。

 そこに関西フィルの整ったアンサンブルが乗っかることで、まさに夢幻の世界で音楽が展開していった。その美しさに呑まれている内に曲が終了してしまったというのが正直な感想。

 二曲目はプロコらしいややゴツゴツとした、下手に弾いたら無味乾燥な曲になりかねないものであるが、そこは流石に説得力の神尾である。この曲に情緒を付け加えてくれる。その結果として、曲としてはそんなに面白いと感じないにもかかわらず、深く感動するというウルトラCを実現してしまうのである。

 前半は神尾の圧巻のパフォーマンスであったが、当然ながら場内大盛り上がり。それに応えての神尾のアンコールがシチェドリン「バラライカ」という変化球。ヴァイオリンをまるでウクレレかなんかのように抱えて指で弾いて演奏という変わり者である。この意表をついたアンコールも大受けでやんやの喝采の中で前半は終了する。

後半2曲目はこの位置に男声合唱が

 後半はまずはレスピーギ。大編成のオケにパイプオルガンまで加えての実に多彩な音色でガンガンと来る演奏。こういうパワー押しはある種で藤岡の真骨頂かもしれない。

 最後の曲は伊藤康英作曲による「ぐるりよざ」。この「ぐるりよざ」だが、キリスト教の讃美歌が禁教時代に地下に潜伏して密かに受け継がれることで変貌したものだという。そもそも「グロリオーザ」という言葉が変わってしまったのだとか。そういうことなので、元々は西洋音楽でありながら日本的要素が入り混じった雑多なものになっている。

 曲は三部構成になっており、「祈り」と銘打たれた第一曲は讃美歌的であるが、それが弾圧の激しさなども入り混じった感情の爆発となる。そして第二曲「唄」は和楽器たる龍笛も加わっての、いかにも日本的な情緒の漂う静かで美しい歌となる。第三曲が「祭り」でここには長崎民謡が取り入れられているとのことだが、まさに日本の祭りの音楽であり、日本人なら知らず知らずに血がたぎってくる感じの曲。これが男声合唱も交えて最高潮に盛り上がったところでクライマックスとなる。結構ドンガンと派手なところもある曲なのだが、今日の関西フィルは終始一貫ノリノリで、藤岡のかなり熱い指揮に応えていた。

 

 コンサートを終えると天王寺まで移動する。立ち寄ったのはハルカス美術館。この展覧会は実は先々週の遠征時に立ち寄る予定だったが、体調を崩してホテルで寝込んだせいでパスしたものである。

 

 

「空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン」あべのハルカス美術館で6/22まで

 フォロンは1934年のブリュッセル生まれ。10代の時にマグリットの壁画を目にして、絵画の可能性を強く意識し、「空想旅行案内人」としての絵画を作り出すきっかけとなったという。本展ではそのようなフォロンの作品を様々なキーワード共に紹介している。

ドローイングの作品に

彫刻作品

 フォロンの作品はまずドローイングと彫刻の両面から始まった。マグリットに感化されたというだけあって、超現実主義的色彩が強いのが特徴である。その中でリトル・ハット・マンという特徴的なモチーフが現れる。

「いつもとちがう」

 

 

 フォロンの作品のモチーフとしてよく登場する記号が矢印である。本来は進むべき道を示すはずの矢印が、多種多様な混乱した方向を示すことで不安をかき立てるというところに、フォロンのメッセージが込められている。

矢印をモチーフにした作品

これも矢印が

 さらに都市というのも一つのモチーフである。混乱する都市の中での孤独のようなものが描かれている。

街の明かり

都市のジャングル

調査

 

 

 社会問題に関心の高かったフォロンは、エコロジーや反戦のメッセージを込めた作品も制作している。そしてアムネスティ・インターナショナルから「世界人権宣言」の挿絵を委託されることになる。

たくさんの森が

ミサイルがまるで深海魚のような「深い深い問題」

ミサイルを食らう死神「ごちそう」

米ソ軍拡競争を皮肉った「もっと、もっと」

綱渡り師

世界人権宣言表紙

世界人権宣言の挿絵

 

 

 これ以外にも、地平線や水平線をモチーフにした作品、鳥をモチーフにした作品など様々な作品を制作したフォロンであるが、2005年10月に71歳でこの世を去っている。

映画「裸の愛」ポスターのための原画

出帆

飛翔

 正直なところ当初はそう強い興味を持たないまま、何となく雰囲気に惹かれてみてみることにしたのであるが、実際に作品を目にするとその超現実的な感覚が思いのほかに面白かったというところである。

次回展はこれだとか

 

 

 展覧会の見学を終えると夕食を摂ることにする。ハルカスから少し足を延ばして「グリルマルヨシ」に立ち寄ることにする。ここはロールキャベツが有名なのであるが、私が注文したのは「野菜たっぷりのタンシチュー」。これにライスとスープを付ける。

グリルマルヨシ

 スープというが出てきたのは味噌汁である。そしてメインのタンシチュー、一般にタンシチューと言えばタンを使ったソティというものが普通で、ここのタンシチューも本来はそうである。しかしこのメニューはまさにその名の通りのシチューのイメージ通りの「汁のある」料理となっている。なお私はライスを付けたが、結構な量のパスタが入っているので、ライスは不要だったかもしれない。

スープという名の味噌汁

タンシチュー

 タンはトロトロの柔らかさで美味い。ただシチューが意外にサラッとしているので、パスタとよく絡まない。なお全体的に味付けが私の好みよりはやや甘い感がある。


 夕食を終えるとホテルに戻る。入浴するとかなりの疲労が出てくるので、早めに就寝することにする。

 

 

この遠征の翌日の記事

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