この週末は神戸と西宮に
この土曜日はPACオケのコンサートに西宮まで出向くことにした。土曜の午前中に家を出ると、今日は雨がぱらついているようなので車で出かけることにする。土曜日の阪神高速は毎度のように渋滞連発だが、予定より若干遅れた時間でまずは神戸に着く。
とりあえずホールに直行ではなくて、車で出てきたので車の方が行きやすい美術館に立ち寄ることにする。まず立ち寄ったのは六甲アイランドの小磯良平記念美術館。以前にもクルマで来た時にここに立ち寄ろうとしたが、駐車場が工事中で素通りしたことがある。今回は工事は済んでいたようだが、なぜか駐車場の一区画が閉鎖されていた。もっとも駐車場はガラガラなので問題ないが。
地下駐車場に車を置いて表に出ると、外は結構な雨である。

「戦後神戸の女性画家二人展 松本奉山・中島節子―日本画・洋画 抽象の試み―」神戸市立小磯記念美術館で6/22まで
神戸ゆかりの日本画家松本奉山と洋画家中島節子の二人の女性画家に焦点を当てた展覧会。松本は当初は普通の細かい日本画を描いていたようであるが、渡米によって開眼したのか独特の荒いタッチに至ったようである。まあこれは好き嫌いが分かれる画風ではある。



中島は小磯良平に師事したそうだが、一貫して洒落た具象画の世界から出なかった師匠と違い、ギリギリ具象の世界にとどまってはいるがかなり大胆に簡略化して誇張した作風に開眼した模様。これも好き嫌いが分かれる。

他の展示室は当館所蔵の風景画などの作品及び小磯良平の素描、及び油絵など。中西利雄や関口俊吾らのカラフルな風景画がなかなかに楽しい。また鴨居玲のインパクトのある作品が2点。小磯は例によって美麗で洒落ているという印象が強い作風。素描の類いは自らも絵を描く者なら、画家の思考の跡や技術を知ることが出来て興味深いんだろうが、残念ながら絵心皆無の私には単なる未完成の絵画。

美術館の見学を終えると移動。もう既に正午過ぎなので、時間的にはお昼をどこかで摂ってからホール入りというところが妥当言うところか。車で立ち寄るレストランと行った場合に、ホール近辺だと頭に浮かんだのは「ダイニングキノシタ」ぐらい。そこでそこに立ち寄ることにする。

到着時には悪天候もあってか幸いにも一台分の駐車スペースは空いている。ただし二台の間に縦列駐車。標準的日本人ドライバーの例に漏れず、私も縦列駐車は苦手である。かなり慎重に車を止める。なお縦列駐車の時のコツは、とにかくハンドルを大胆にいっぱいに切ることとのことだが、やはり不慣れなのか一度切り返すことに。雨で左の後ろがよく見えないのが怖い。
店内は空いている。とりあえず席に着くとメニューをパラパラ。最近はガッツリと食べるという元気ないので、ハンバーグと海老フライとクリームコロッケのランチ(1500円)を注文する。
例によってカボチャのポタージュとサラダがまず登場。まあ普通に美味い内容である。


そしてメイン。肉々しいハンバーグがなかなか良い。コロッケはかなりしっかりしていてつぶさずに切るのに苦労したぐらい。海老フライもしっかりと身が入っている。どちらかと言えば若向けであるが、まずまずの内容だろう。

昼食を終えるとホールに向かうことにする。今日は大中小ホールの全てが公演ありなので、駐車場の満車を恐れてやや早めにやって来たが、案に反してホールの駐車場がやけに空いている。どうやら4月から駐車料金が大幅アップ(1時間300円→400円)したようなのでその影響か? 何から何まで値上げで嫌になる。これもすべてアホノミクスのせい。
駐車場に車を置くと、まずは窓口に行って予約したチケットの受け取り。PACオケのコンサートでは今まで手数料が必要なかったことからセブンイレブン受け取りにしていたのだが、今年から大幅に手数料が値上げ。年間チケットなんて購入したら枚数分の手数料がかかるのでとんでもないことに。そこで急ぎでないチケットは全て窓口受け取りにした次第。これもアホノミクスの物価高騰の煽りである。
開場までにまだ時間があるので喫茶でも行こうかと駅の北側まで脚を伸ばしたが、目当ての喫茶店は満席。諦めて戻ってくる。完全に無駄足だが、昼食後の腹ごなしの運動だと考えておくことにする。結局はホール喫茶で美味くもないアイスコーヒーを頂きながら時間をつぶす。

開場時刻になるとゾロゾロと入場。例によって観客は結構来ているようである。ただ今までPACは比較的チケットが安いと言うことで客が来ていたのだが、来年度からチケットも大幅値上げ。これは集客に響くのでは。特にPACはファン層に年金受給者が多そうなので、昨今の「高齢者は年金なんかやらずに安楽死施設に送れ」と言うようなご時世ではなおのこと。全く中抜き平蔵太って国滅ぶである。

間もなく開演。場内は9割以上は入っている模様で、相変わらずPACオケなかなかの人気である。
PACオケ第159回定期演奏会

指揮:ミハイル・プレトニョフ
ヴァイオリン:前田 妃奈
<オール・チャイコフスキー・プログラム>
ヴァイオリン協奏曲
バレエ音楽『白鳥の湖』より(プレトニョフによる特別編集版)
前田妃奈の演奏は2022年に関西フィルにデュメイの代演として登場した時に聞いたことがあるが、その時に年齢に似合わぬ堂々たる演奏に「これはとんでもない新星が登場したな」と思った記憶がある。その前田妃奈の登場である。
2年以上ぶりの彼女は、さらに一回り大きくなったような印象を受ける。相変わらずの堂々たる演奏っぷりは、もう既に巨匠の風格さえも漂わせるようになっている。力強い演奏にあちこちに込めている様々なニュアンス。そこらに溢れる技術は確かにあるものの音楽性の極めて弱い若手演奏家とは一線を画している。
それに合わせるバックのオケも、PACってこんなに上手かったっけ? と感じるぐらい美しいアンサンブルでソリストを盛り上げる。弦楽陣の響きも美しいし、木管陣の音色も美しい。やや不安定さを感じさせたのはホルンぐらいか。最後まで手に汗握るチャイコのコンツェルトであった。
チャイコに関しては結構ガシガシと弾いた印象がある前田が、アンコールでは一転してタイスの瞑想曲をしっとりと優美に聞かせる。しっかりと表現の幅を見せつけたのである。
14型に拡大しての後半は、プレトニョフ編集による「白鳥の湖」。このバレエは全曲になると長大すぎるために、指揮者が銘々チョイスした演奏がなされるのが常だが、プレトニョフは自分で作曲もするだけあって、音楽として通した場合のバランスなども考えているようだ。聞いたこともないような曲が登場する一方で、かなり有名な曲をあえて外していたりなどということもある。なかなかクセのある選曲をしているように感じられた。
それにしても先ほどの協奏曲の時にも感じたが、PACってこんなに綺麗な弦楽アンサンブルするオケだったっけ? って首をかしげる局面が多々。昨年秋に2024年度版PACが編成された直後はオケのバラバラ感が半端なかったのだが、半年以上を様々な場数を踏むことでオケとしてのまとまりが出てきたのか、それともプレトニョフの統率力の賜物か。
一編の音楽として非常にまとまりの良い曲を聴かせてもらったという印象。そしてPACオケの演奏も非常にまとまりの良いものであった。2024年度版PACも着実に力をつけたようである。

