徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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2018年度クラシックライブベスト5

 2018年度のクラシックコンサートの中でのベスト及びワーストです。100人いれば100の感性があり100のベスト選定があると思いますので、異論反論のある方もあるでしょうがご容赦を。

 なおあくまで私が体験したコンサートの中からの選定ですので、網羅性はありません。特に東京にだけ来日したオケなんてのはわざわざ聴きに行けない場合が大半ですので・・・。

 

 

ベストライブ

第5位
ヤツェク・カスプシック指揮 ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団

 とにかくオケの上手さが光った。弦のしっとりとして艶のある見事なアンサンブルは印象的。カスプシックの指揮は感情に溺れないややクールなもので、少し突き放した感じがするが決して無機質なものではない。一風変わった東欧風新世界もなかなか印象に残り、新年早々幸先の良さを感じさせたコンサート。

第4位
トゥガン・ソヒエフ指揮 トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団

 チャイコフスキーのバレエ曲を、まるで映画音楽のごとくドラマチックでダイナミックに盛り上げた演奏。音色がかなり陽性であるので、ロシア的憂愁などとは無縁であったが、これはこれで説得力のある内容だった。終始オケの元気に押しまくられた印象だが、かなり楽しめた内容でライブというものの醍醐味を感じさせられた。

第3位
ダニエル・ハーディング指揮 パリ管弦楽団 

 パリ管弦楽団の個人技の高さに驚かされるが、それを統率するハーディングのかなり仕掛けの多い指揮にもさらに驚かされた。終始驚きの連続だったのだが、それが演奏終了後には大きな満足感に変わるという名演であった。

第2位
ズービン・メータ指揮 バイエルン放送交響楽団

 杖をついて支えられながらヨタヨタと現れたメータのどこからこれだけの生命力が湧いてくるのだと呆気にとられた演奏。抑えめのテンポの中から美しい至高の音楽が奏でられた。弱音になっても緊張感も切れず強奏でも雑にならないバイエルンの技術もさすがであった。

第1位
サー・サイモン・ラトル指揮 ロンドン交響楽団

 ヤンソンスの天上の音楽に対して、あくまで人間の音楽を繰り広げたラトル。しかしそこには苦悩し葛藤した果てにたどり着いた悟りの境地のようなものが感じられた。じっくりと音楽を描くラトルを抜群の技術で支えるロンドン響。この両者がかみ合って心に残る無類の名演奏が繰り広げられた。終演後、フェスティバルホールが溜息の後に爆発的な拍手に満たされことにすべてが現れている。

番外
アンドレア・バッティストーニ指揮 東京フィルハーモニー交響楽団 ヴェルディ「アイーダ」

 バッティストーニのオペラ指揮者としての力量を見せつけた圧倒的な公演。東京フィルの演奏にもなかなかの冴えがあり、この派手でダイナミックなオペラを盛り上げた。

 

 

ワーストライブ

 名演がある一方で肩透かしのコンサートもいくつかあったのは事実。こちらそういう肩透かし度が高かったコンサートのランキング。

第3位
ダニエル・ライスキン指揮 スロヴァキアフィルハーモニー管弦楽団

 スロヴァキアフィルがご当地ものでなくチャイコフスキーで挑んだのが今回だが、アンサンブルの雑さが現れたゴチャゴチャした演奏になってしまった。またライスキンの過度な起伏設定も音楽の流れを断ち切るような印象で逆効果。どうも最後までしっくりこなかったコンサートになってしまった。

第2位
フェリックス・ミルデンベルガー指揮 関西フィルハーモニー管弦楽団

 デュメイの急遽の代演は若輩ミルデンベルガーには荷が重すぎたかというところ。デュメイスペシャルの強化版関西フィルを完全にドライブするには及ばず、オケの動きに付いていくのがようやくという状況になってしまった。彼がもっと自分の意志を演奏に出して行くにはまだまだ経験が必要であるようである。

第1位
マリオ・コシック指揮 スロヴァキア国立放送交響楽団

 フジコ・ヘミングのヨタヨタのピアノ演奏は今更改めて言うまでもないが、そもそも小編成にもかかわらずアンサンブルがあまり良くないというオケの特性が非力に過ぎる。さらにコシックの指揮はその非力なオケをさらに抑制方向に向かわせるタイプの指揮で、ご当地ものである新世界でさえ抜けてくる爽快さが皆無だった。とにかくいろいろな面での力不足を感じずにはいられなかった。

総評

 今年のベストに関して来日オケが並ぶこととなった。中でもラトル・ロンドン響の名演は光っていたが、インパクトの点ではメータ・バイエルン放送響がむしろ上回っていたかもしれない。ヤンソンスの代演として急遽来日することになったメータだが、そもそも彼自身がイスラエルフィルを引き連れての来日を体調の問題でキャンセルして間もない時期であり、ギリギリまで本当に来日できるのかと心配させたが無事に来日を果たした。しかしその舞台に現れたヨタヨタとした姿はまざまざと「衰え」を感じさせるものであり、私を含む多くの観客がその時点で衝撃を受けていた。だがそこから現れる音楽とのギャップが再び観客の度肝を抜くことになった。あの尋常でなく気合いの入った演奏は、やはり今回の来日はメータしても何か期するものがあったと感じずにはいられなかった。しかし願わくはこれが「最後の」来日にはなって欲しくはない。また年末ギリギリに駆け込みで飛び込んだハーディング・パリ管も見事だった。ハーディングのかなりクセのある指揮に一糸乱れずについていくパリ管の技倆には圧倒された。なお4位、5位については予想外の掘り出し物というような印象。

 なお国内オケだけでベストを選ぶなら、1位はラザレフ指揮の京都市響。先に日フィルでピリッとした名演を聴かせたラザレフが、京都市響でも抜群の演奏をしてくれた。彼が振ると京都市響がロシアオケの音色を出したのが一番の驚き。そして2位は沼尻指揮で同じく京都市響のマーラーの8番。台風直撃というアクシデントの中、ゲネプロの予定を急遽本番に繰り上げるという奇策による公演だったが、その内容は準備不足を全く感じさせない気合いの入った見事なものであった。これもライブならではの白熱というところか。3位はデュメイが大いにデュメイ節を炸裂させた関西フィルとのサン=サーンスの3番を上げておく。デュメイはこの時も椅子に座っての指揮だったが、最近は健康問題によるキャンセルが増えているのが非常に気になるところである。今後とも関西フィルで活躍を期待したいのだが。

 さてワーストの方であるが、なぜかスロヴァキアが並んでしまった。3位のスロヴァキアフィルはどうも指揮者のライスキンと息が合ってなかったのを感じた。それが最後まで違和感として残った印象である。1位のスロヴァキア国立放送交響楽団はハッキリ言ってオケの実力不足。所詮はフジコ・ヘミングのバックのためのイベントオケとしてあてがわれたというところが実態なのだろうか。フジコ・ヘミングの演奏もひどかったが、さらに客層が驚くほどひどく、これで今後は余程のことがない限りフジコ・ヘミングはパスすることに決めた。そして2位の関西フィルはデュメイのキャンセルのしわ寄せ。来年度はこれは勘弁してもらいたい。

 

 

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