今日はMETアンコール上映と関西フィルのハシゴ
昨日は在宅勤務だったが、金曜日の今日は週末にかけて再び大阪方面に繰り出すことにした。コンサートは19時からなので昼過ぎてからの出発でも良さそうなものだっが、ついでだから現在なんばパークスシネマで開催中のMETアンコール上映でも見に行こうと考えて、午前中に出発する。
予定通りに大阪に到着すると、まずは重たいキャリーをホテルに置くことにする。今回の宿泊ホテルは大阪の定宿、新今宮のホテルサンプラザ2ANNEX。午前中からチェックイン可能なので、チェックイン手続きを済ませてから部屋に荷物を入れる。
部屋はシンプルな和室(ということになっているが、畳はなくてフローリングである)。これを選んだのは、この方がデスクを使いやすいから。なお畳を廃したのはメンテ費用の問題があるだろうし、現在何かと話題の南京虫などにもこの方が対応しやすいからだろうと推測する。
部屋に荷物を置くと直ちに外出、地下鉄でなんばに向かう。なんばパークスシネマはなんばとは言うものの、かなり南で遠い。延々と歩くことに。とりあえずチケットは確保する。
ところで劇場にアメリカ内戦をテーマにした映画の宣伝が出ていたが、これって自身の犯罪をもみ消すためにどんな手使っても大統領にならないといけないトランプが、もし選挙に負けたら支持者引き連れてアメリカ共和国なるものを作るとかいう与太話に基づいてるのかな? まああの男とその支持者なら、アメリカ二分出来ないまでも大規模テロぐらいはしかねないが。
さて朝食がまだなのだが、レストランフロアは11時からの営業とのことなので待たされる。フロアが開くとすぐにそば屋の「しのぶ庵」に入店、「山芋とろろ付けそばと並テンブラ盛り(1408円)」を注文する。
上映開始は11時半からなのであまり時間がない。と言うわけで比較的早く出てくると予想されるそば屋を選んだのだが、それでも駅そばとは違うのでそれなりに時間がかかっていささか焦る。料理が出るまでに10分ちょっと。時間がギリギリなのは、長年のサラリーマンジョブ経験で磨かれた固有スキルの「爆速食い」で凌ぐ。そば自体は悪くはないんだが、まあ場所柄CPは激烈に悪い。
とりあえず上映開始までに会場に入場は出来る。場内の入りは10人程度。まあMETは大抵このぐらいのものである。
METライブビューイングアンコール ヴェルディ「エルナーニ」
指揮:マルコ・アルミリアート
演出:ピエール・ルイジ・サマリターニ
出演:マルチェッロ・ジョルダーニ、アンジェラ・ミード、ディミトリ・ホヴォロストフスキー、フェルッチオ・フルラネット
ヴェルディの初期のマイナー作。実際に私も今回初めてこの作品のことを知った次第。とは言うものの、いかにもヴェルディの作品らしく、歌手にはかなりの技倆が求められ、ガンガン歌うという音楽。もっとも気持ちが良いぐらいに歌いまくるので、聴いていて実に聴き応えがある。
例によって音楽は最上であるが、ストーリーについてはその時代特有の倫理観や宗教観なんかが反映されるので「なんでそうなるの?」という納得しがたいものである。キャラをつかみがたい皇帝に、若者のアホさと老人の醜い妄執だけが印象に残るというように突っ込みなしには見られないところがあったりする。登場人物が全員アホすぎて、それが故に一直線にラストの大悲劇に突入するという「むりくり悲劇」感が半端ない。まあそのような説得力の乏しいドラマに、超絶見事な音楽を付けることで無理矢理に盛り上げるという、とかくヴェルディの作品においてはありがちなパターンではある。
とは言うものの、音楽は超一流、歌手陣も超一流であり、聞き惚れるような素晴らしいアリアも出まくりで中身はかなり濃い。ヴェルディの若き頃の作品ということもあってか音楽自体にも若さと生命力があふれている印象。それを実力ある歌手陣が遺憾なくその技を披露してくれる。結局はストーリーの不自然さは横において、終始その音楽に圧倒されたというのが本音。
なおストーリー面では毎回何かと不満の出るヴェルディのオペラだが、今回の作品なんかももし私がストーリーを書いたら、全く異なる展開にする。
「暴虐なるカールを倒せ!」と挙兵するシルヴァ、彼の元にカールの圧政に不満を抱いていた諸侯が集結、一大決戦となる。そして乱戦の最中で見事に父の敵討ちを果たすエルナーニ。シルヴァに「ありがとう、おかげで父の無念を晴らすことが出来た。もう思い残すことはない。私の命を奪ってくれ。」と顔を向ける。シルヴァは角笛を取り出すと、それを地面に叩きつけると踏みつぶす。「なぜ」と問うエルナーニに、シルヴァ「私はエルヴィーラを本当に愛している。その彼女が悲しむ姿を見たくはない」。そこに解放されたエルヴィーラが現れ、エルナーニと抱き合う。それに対して安堵と悔恨の入り交じった一瞥を送るとその場を去るシルヴァ。「さて、私は残りの人生を、カールの暴政の後始末に費やすことにでもするか・・・。大変だが、どす黒い復讐に費やす老後よりは意味があろう」やや皮肉めいた笑顔が浮かぶ。
以上、いかにも「ありがち」かつ「甘々」なストーリーになってしまいます。私はどうしても「悪党は悪党なりに、自身が信じる正義のために悪行を行っている」というスタンスをとるので、意味もなく人殺しをしたがるような輩は登場しないので、どうしても甘めのストーリーしか考えられない。まあこの辺りが私は小説家の才能はないってことなんだが。
オペラの鑑賞を終えると次の目的地に移動・・・なんだが、3時間半の長丁場上映の直前にそばをかき込んだだけなので体がいささかガス欠。移動の前に3時のお茶をしたい。6階のレストランフロアを覗いたら「PANCAKE HOUSE」なるパンケーキ屋がある。そこで入店して「フワフワパンケーキのプレーン(1408円)」を注文する。
注文はテーブル上のQRコードを読み込んでスマホで行う形式。最近増えてきた省力化兼注文間違いトラブル防止(注文違い発生時は一方的に客のミス)のシステムだろう。しばし待たされて分厚いパンケーキが3枚入った皿が到着する。
どの辺りがふわふわなんだろうと思っていたら、ナイフを入れた途端にパンケーキがつぶれる。パンケーキと言うよりは表面を薄く焼き固めたプリンか何かのようである。今時のとにかく軟らかいものが受けるという風潮に合わせたか。ただ正直ふわふわパンケーキと言うよりも、生焼けパンケーキ感が半端なく、私のようなジジイとしてはもっとシッカリと焼いてあるものの方が好み。そういう者のためには通常のパンケーキもメニューにはあるようだが。
喫茶で燃料補給の後は、コンサート前に美術館に一カ所立ち寄っておきたい。今日のコンサートはいずみホールで開催なので、その近所にある山王美術館に立ち寄ろうと考える。地下鉄と京阪を乗り継いで京橋へ移動する。目的の美術館は対岸のホテルの前にある。
「藤田嗣治・佐伯祐三・荻須高徳展-パリを愛し、パリに魅了された画家たち-」山王美術館で'25/1/31まで
所蔵品の中からパリ絡みの画家である藤田嗣治、佐伯祐三、荻須高徳の作品を展示。
まず最初は佐伯祐三から。佐伯はパリに渡ってヴラマンクの批判によって新しい画風に開花し、まさに燃え尽きるように30歳という若さで早逝した画家である。その最初期の作品から、まさにヴラマンクに「アカデミック」と批判されたことで新たな画風を志してそれに目覚めていく過程、そして一時帰国したものの描くものがないことに苦闘していた下落合時代、さらに再びパリに渡ってそこでまさに燃え尽きるまでの時代を通しての作品が網羅されており、小規模ではあるが佐伯の生涯を概観できるようになっている。
その佐伯の後輩として初期にはもろに彼の影響を受けてパリの風景を描いた画家が荻須高徳である。特に最初期には佐伯の影響が露骨すぎて、彼の作品と区別がつかないぐらい。この時期はリスペクトと言うよりも模倣に近いように思われる。それが徐々に画風が変化。佐伯の影響を受けた荒々しい筆致から、独自のカラフルで品の良い作風へと変化を遂げる。その変化が分かるような展示がなされている。
藤田についてはやはり人物画がメインということで、藤田の特徴が最も出ている子供の絵が展示のメインとなる。とは言うものの、藤田もパリの街並みを描いた作品は存在するようであり、そのような展示もある。やはり佐伯などとは根本的に異なり、やや洒落た感がするのはやはり藤田。
なお渡仏時に佐伯にアドバイスをもらうなど直接の関わりがあった荻須と違い、藤田は一足先に既にパリで成功した画家であり、渡仏した佐伯との直接的な関わりは全くなかったとのことで、この辺りも藤田と彼らの作品の距離感なんかにももろに影響していそうである。
美術館の見学を終えると17時前。コンサートの開場が18時の開演が19時からだから、それまでの間に夕食を摂りたい。何を食べたいかと考えた時に、頭に浮かんだのはなぜか炒飯。そこでIMPの「梅蘭」に入店。鶏肉そばに半炒飯を付ける。
あっさり風味の鶏肉そばは悪くはない。特に最近体調が著しく悪い私には優しい味。炒飯については可もなく不可もなくというところ。
炒飯をつつきながら原稿執筆をしていたが、まだ時間があるのとどうも口の中が重いこともあり、気分転換に「杏仁豆腐」を追加注文する。うーん、これはちょっと私の好みよりは味が薄すぎ。
デザートを終えたところで6時を回ったのでホールに向かう。ホールでは観客の入場が始まっているところ。何だかんだでこじんまりとしたいずみホールはおおよそ満席か。
関西フィルハーモニー管弦楽団 住友生命いずみホールシリーズVol.58
オーギュスタン・デュメイ(指揮)
関西フィルハーモニー管弦楽団
ヨゼフ・スーク:弦楽セレナード 変ホ長調 op.6(抜粋)
ドヴォルザーク:管楽セレナード ニ短調 op.44
弦楽セレナード ホ長調 op.22
一曲目のスークの弦楽セレナードは1楽章と4楽章のみだが、明るくて快活な曲想が非常に心地よい。そして何よりも関西フィルの美しいアンサンブルが抜群に心地よい。
しばし座席替えの時間があってから、二曲目はドヴォルザークの管楽セレナード。管楽器に低弦(コントラバスとチェロ)を加えた構成になっているが、フルートが除いてあるので、全体的にやや低重心。ただ曲調は軽快で結構古典的な曲のように聞こえる。演奏自体はオーボエの佛田とクラリネットの梅本が中心。こちらもまずまずのアンサンブルを披露してくれる。
休憩明けの三曲目はドヴォルザークの弦楽セレナード。このジャンルではチャイコフスキーのものに次いでぐらいの知名度の曲で、私も以前に聞いたことのある曲ではある。この曲においても関西フィルはかなり密度の高い美しいアンサンブルを披露する。またデュメイに鍛えられた弦楽陣のネットリしっとりした音色が非常に美しい。なお相変わらず、デュメイは細かい仕掛けというか、独自の表現が結構随所にちりばめてあり、個性の強い演奏であることも感じさせる。
何にせよ、いかにもいずみホール向きの美しいアンサンブルを堪能したのである。またホールの規模的にもこのぐらいのサイズでの演奏が最も適していることも同時に感じられたのである。デュメイの指導の下で鍛えられてきた関西フィルのアンサンブルも、かなり完成の域に達してきたように思われるが、そろそろ高齢で健康問題がチラホラし始めているデュメイについて、今後の関係はどうなっていくのかが気になるところ。
コンサートを終えるとホテルに戻ってくるが、部屋に入った途端に布団にダウンしてしばし動けなくなる。今日はかなりキツすぎた。朝から12時間以上ぶっ続けで活動している上に、歩数も一万歩を越えている。若い頃ならともかく今の私の体にはこれはキツすぎる。当初予定ではホテルに戻ると入浴してから執筆予定だったが、頭が回らないどころか机に向かう物理的体力がない状態。
しばしそのまま完全に活動停止して、就寝時間が近づいてきた頃に何とか無理矢理に起きだして、大浴場で入浴だけはしておくことにする。正直、大浴場に繰り出すだけで体がキツい。こういう時には部屋風呂の方が良いなと思ったりする。とりあえず浴槽に体を浸けると、体がガチガチなのが感じられたので浴槽内で良く伸ばしておくが、間違いなく明日にツケがきそう。
入浴を終えると部屋に戻ってきてバタンキュー。布団の上に寝っ転がってタブレットで明日の予定をチェックしていたら、ウトウトして顔面にタブレットを落下させる始末(それも2回も)。結局はこの日はそのまま就寝に入る。
この遠征の翌日の記事