徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

ニコニコ生放送でノット指揮の東京交響楽団

今回はマーラーの巨人

 5/22のライブの収録をタイムシフトで先日視聴したところであるが、本日は6:30よりノットによるライブの生放送があったのでそれを聴くことにする。

 それにしても緊急事態宣言の延長(これ自体は当然だと思う。むしろここで解除されたら驚く。)により、関西ではまだ当分の間はコンサートに出かけるという状況にはなれないであろうことは想像に難くない。こうなってくると音楽を聴ける機会はこういうネット中継だけになってしまう。

 なお関東の方では通常通りにコンサートが開催出来るのか、本公演もミューザに普通に観客を入れて行っているようである。とは言うものの、コロナの変異株は空気感染するようであるという話も出ており、本当にそれで大丈夫なの?という疑問はある。ましてや東京は明らかにオリンピックに向けて検査数を異常に絞っている状態だから、現在発表されている感染者数を額面通りに受け取ることは出来ない。さすがにミューザも映像で見る限りでは観客は半分以下というところだろうか。この挙げ句にオリンピックを強行開催でもしようものなら、東京を中心に確実にとんでもない事態になることは容易に想像出来る。

 生配信の形で聴くのは久しぶりなのだが、生配信の場合は休憩時間がそのままなのを忘れていた。20分の休憩時間の間に、教ドキュの方のネタのために昨日の「歴史探偵」を倍速再生で視聴したりなど、相変わらず私の方も何かとドタバタしている。まあさすがにコンサートは倍速再生で聴くわけにはいかないが。

 

東京交響楽団特別演奏会

指揮:ジョナサン・ノット
ピアノ:児玉麻里
ヴァイオリン:グレブ・ニキティン(東京交響楽団コンサートマスター)
曲目:
ベルク:室内協奏曲-ピアノ、ヴァイオリンと13管楽器のための
マーラー:交響曲 第1番 ニ長調 「巨人」

 一曲目のベルクはやはり私には奇々怪々な曲である。13管楽器をバックにしてヴァイオリンとピアノが奇妙な旋律を奏でるという曲。正直なところメロディラインがハッキリとないので私としてはかなりしんどい曲である。もっともこういう曲は演奏する方も大変だろう。メロディラインが存在しないだけに、周囲とズレても分かりにくいから、楽譜だけが頼りということになる。もっとも逆にいうと、滅茶苦茶に演奏していてもなかなか分からないということにもなるが。ヴァイオリンとピアノの掛け合いはなかなか白熱したものがあったが、まあ残念ながら私には曲が皆目わけが分からない。

 休憩後の二曲目は、先ほどとは一転しての巨大編成でのマーラーの巨人である。一楽章はやや抑え目のテンポでゆったりと優雅という印象。解釈によってかなり暴力的な演奏もあるこの曲にしては穏やかで角の取れた演奏。音色が明るいのが特徴でもあり、重苦しくはならない。もっともノットの表現意図を完璧に再現するには、弦楽陣にもう一段の緻密さと音色の色気が欲しいようには感じられる。

 第二楽章は舞踏的なノリの良さが前面に出る。いささかエッジの効いたワルツという趣。とにかく乱暴にならず明るいことでは一貫している。第三楽章も重苦しくならずにひたすら甘美。ゆったりタップリねっとり歌っている印象である。よくある苦悩の影が過ぎるタイプの演奏ではなく、ひたすら若者の夢の世界というイメージ。

 最終楽章はまず嵐のような狂乱が来るところであるが、やはりノットの演奏はここも乱暴にならずにかなり抑制がかかっている。とにかく雑にならないように気をつけている様子である。そして中盤になると例によってのネットリじっとりした楽園が繰り広げられる。やはりこういう演奏になると東京交響楽団の弦楽陣にもう一層の色気が欲しいところ。そして決して絶叫にはならないファンファーレで曲を締める。

 この曲はよく青年マーラーの苦悩を秘めた曲ともいわれるのであるが、その苦悩の影がほとんど見られなかったのが最大の特徴。むしろ青年特有の夢や憧れといった印象の作品である。そういう意味では先日の4番の延長線上にある演奏である。やや毛色の変わった演奏であるだけに、それをどう考えるかが評価の分かれ目である。私としては、やはり4番の時に言ったように、楽園だけでは退屈してしまうのが本音。