徒然草枕

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ベルリンフィルデジタルコンサートホールでラトル指揮のブリテン他

時間差ライブ配信を堪能する

 ベルリンフィルデジタルコンサートホールではライブ生中継なども行われるのだが、それは時差の関係で日本では真夜中になるために実際に聴くのは社会人にはまず不可能。しかしプログラムによっては、日本時刻の夜ぐらいに合わせて時間差ライブ放送をしてくれる時がある。アーカイブに収録されるのは大抵1~2週間かかることになるので、この時間差ライブはなかなかに貴重な機会。恐らく日本人の会員もそれなりの人数いるということであろう。

 今回、ラトル指揮の公演が午後8時より時間差ライブ配信されることとなったので、それを視聴。ラトルらしい20世紀音楽プログラムである

 

ベルリンフィルデジタルコンサートホール時間差再配信

指揮:サー・サイモン・ラトル
テノール:アンドリュー・ステイプルズ
ホルン:シュテファン・ドール

ヒナステラ 協奏的変奏曲
ブリテン テノール、ホルンと弦楽のためのセレナーデ
ブリテン 《青少年のための管弦楽入門》

 一曲目のヒナステラはアルゼンチンを代表するクラシック作曲家。以前からラトルはロンドン交響楽団でのコンサートなどでも取り上げたことがある。20世紀の作曲家になるが、この曲自体はまだ無調性とかの尖った曲ではなくてメロディラインの比較的ハッキリした聞きやすい曲。また私はアルゼンチンの音楽には全く不明なので明確には判断しかねるが、恐らくアルゼンチンの民族性というのが濃厚に出ている曲なんだろうと感じる。なおこの曲はオケの各楽器がその個性を活かして自己主張する曲なので、三曲目のブリテンの《青少年のための管弦楽入門》に対応しているとも言える。この辺りはラトルの構成の妙か。なおラトル指揮によるベルリンフィルの演奏とはとにかく明朗快活という印象。全く知らない近代曲にもかかわらずなかなかに魅力的に聴かせる。

 二曲目はブリテンの曲であるが、ホルンが絡んだ歌曲という印象。マーラーの「さすらう若人の歌」などをさらに前衛的にしたというところか。ドールのホルンの妙技は流石に見事であるが、テノールのステイプルズの表現力もかなりのもの。繊細な曲調を実にデリケートに表現していて美しい。またドールのホルンとの丁々発止の掛け合いもなかなかに聴かせる。

 最後は日本ではブリテンの代表曲として挙げられることの多い曲である。オーケストラの各楽器を順番に紹介していく構成になっているために、実際にまさに音楽学習用にナレーションまで加えた構成になっている録音なども多々見られる。しかしながらラトルはこの曲をオケの楽器の多彩な音色を活かした変奏曲として演奏している。だから音楽構成を考えての緩急や強弱などのメリハリもつけている。オケの楽器を順番に並べていくという構成からの無理は若干あるが、こうして聴くと単なる学習用の入門曲というだけではなく、音楽としてもありかもという気はする。