今年はコンサートに行くことが出来るだろうか?
2022年の到来だが、いきなり当初に予測されたペースを上回る状況でオミクロンの感染拡大が起こることになり、今年度のコンサートの状況もかなり怪しくなってきた。各オケの本年度の会員券などの申し込みは行ったものの、下手するとまた大量のチケットを無駄にしないといけなくなる恐れもと気が重くなっているところである。また海外からの渡航禁止(の一方で米軍はフリーパスで通過させてるんだから、さすがの無能無策政権)で続々と出演者変更も相次いでいる状況。今年度も正常化からはほど遠そうである。
さて新年最初のベルリンフィルデジタルコンサートホールの時間差ライブはバレンボイム指揮によるヴェルディのマイナー作集。ヴェルディの唯一の弦楽四重奏曲は今回はオーケストラ版で演奏とのこと。これにヴェルディの内面世界を描いたという「聖歌四篇」を組み合わせるというややマニアックな内容である。
ベルリンフィルデジタルコンサートホール
指揮:ダニエル・バレンボイム
ソプラノ:リューボフ・メドベージェワ
ベルリン放送合唱団
ヴェルディ《シチリアの晩鐘》序曲
弦楽四重奏曲ホ短調(弦楽合奏版)
《聖歌四篇》
最初の序曲は一般的に「シチリア島の夕べの祈り」のタイトルの方が通っている作品。シチリア島での反フランスの蜂起に伴う虐殺事件を題材にしているオペラとのことだが、曲調は激しいスペクタクルと抒情が入り交じった変化の激しいもの。
バレンボイムの指揮はオケにあまり細かい統制は加えずに自由に鳴らさせるところがある。そのせいか所々で音楽の焦点がぼやっとする嫌いがなくもない。正直なところもう一段シャープな切れ味が欲しいと感じる場面もあった。
同様の感は次の弦楽合奏版の弦楽四重奏曲にもつきまとう。そもそも管楽器抜きの音楽なので、音楽自体がシャープさにかける上に、弦楽器の数が増えることで余計にモワッとした音楽になる。よく聞いているとヴェルディらしい歌曲的な旋律が浮上するのだが、それがベールの奥に引っ込んでいるようなもどかしさがある。全体的に核がないことをどうしても感じてしまう。
休憩を挟んでの最後は聖歌四篇であるが、ヴェルディの内面世界を描いた歌曲と言われるだけあって、非常に荘厳さに満ちた作品である。ハーモニーが美しく、非常に深い精神性を感じさせる曲であり、実に感動的な音楽である。
とは言うものの、私としてはやはり曲調的に単にフワフワと美しいのではなく、もう少しピンと張りつめたものも欲しいと感じるのだが、残念ながらそういう空気が感じられないのである。それが今回のバレンボイムによる指揮全体を通して感じた一番の不満。一言で言えばつまりは「ぬるい」のである。