徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

山形交響楽団のライブ配信はやや残念な結果に(その後の追加情報あり)

 山形交響楽団のライブ配信が今日あったのだが、残念ながら結果は「失敗」と言わざるを得ないだろう。と言っても演奏がひどかったというわけではない。極めて残念なことにそれ以前の環境面で致命的な問題が多数あった。

 

問題が山積み過ぎた「CURTAIN CALL」のライブ配信

 今回のライブ配信はクラシック専門の配信ページという「CURTAIN CALL」で行われたのであるが、まずそこにたどり着くのが難儀の極み。ライブ配信の直前になって山形交響楽団の案内ページがダウンするというトラブルが発生したので、まずそこまでたどり着けなかった者が多いのではないだろうか。私はTwitterの方から何とか辿ることが出来たが。

 そしてさらに大問題だったのが画質及び音質である。サーバの能力が貧弱なのか放送画質が常に最低レベルであり、ワンゼク画面を引き伸ばしたような荒い汚い画面で見ていると目が痛くなってくる。しかしさらに致命的だったのが音質。最初プレトークが始まった時から蚊の鳴くような声で、こちら側のスピーカーを最大ボリュームにしても何を話しているかが聞き取れなかったから嫌な予感がしたが、そのまま本番に突入してしまった。おかげで第一曲目は演奏の内容はほとんど分からず。放送中に徐々に音量の修正はしたようだが、それでも基本的に音量が小さすぎるのは変わらずで、神尾のヴァイオリン協奏曲は演奏の細かいニュアンスは全く聞こえない状態。しかも放送中に度々映像・音声共に止まる(いきなりクルクル矢印が登場)。我が家は一応光回線であり、マシンはデルのワークステーションを使用しており、回線・マシン性能共に問題はないはずなので、恐らくこれは先方のサーバの貧弱さと推測される。これは音楽ライブ配信サイトとしては致命的。

 荒い画面を通して神尾がなかなか熱演している様子は伝わってくるのだが、肝心の音の方が全く伝わってこない状態はかなりのストレスを溜める。しかもよく見ていると音声と映像に若干のズレがあるのが感じられる。これも音楽配信としては致命的。

 

様々な改善必要点が目につく

 音量についてはマイクのセッティングの問題も考えられるが、そもそも冒頭のマイクを使ったアナウンスでも蚊の鳴くような音しかしていなかったことを考えると、単純にマイクレベルのチューニングの問題と思われ、そもそも放送技術が著しく低いということを感じさせられる。クラシック音楽はダイナミックレンジが広く音量の変化が激しいので、基本の音量レベルを上げすぎていると大音量時に音割れの危険があるので音量レベルを低めに設定することは良くあるが、それにしても度を超しているというものである。恐らく事前にテストさえしてないのだろう。クラシック専門ストリーミング配信を名乗っている割にはあまりにお粗末に過ぎる。

 サーバの能力に関しては想定外の多数の観客が視聴したためにアップアップになった可能性があるが、視聴者数は2千人程度で、ホールの収容人数及び午前中にあった東京交響楽団のライブ配信の視聴者数(5千人を超えていた)などと比較した場合、これで送信に問題が生じるようなら能力的に問題外と言わざるを得ない。

 ページを見た時にラインナップに大阪フィルの名前が見えたことから、来週の大阪フィルの定期演奏会はここで配信されるものと推測されるが、大阪フィルは山形交響楽団よりも知名度が遥かに高い上にそもそもフェスティバルホールを訪れる人数だけでも2千人を超えるという人気オケであることを考えると、これは本番に著しい不安を感じずにはいられない。

 私は日本においてもクラシックのライブ配信というものはもっと行われるべきと考えている。そうなった場合にYouTubeやましてやニコニコ動画では諸々の問題が多すぎると感じているので、専門サイトの存在は不可欠と考えている。しかし紛いなりにもクラシック専門サイトを名乗る存在がこれでは多くの懸念を否定できない。

 

演奏の内容については・・・

 結局は残念ながら前半の二曲は「鑑賞」というレベルに達しなかったので感想の書きようがない(謂わばコンサートに行ったら隣にドタバタとやたらに騒ぐおかしな客がいたために音楽を全く集中して聴けなかったという状態に近い)。

 どうやらTwitterでも「音量が小さすぎる」という意見が大量に寄せられたようで(私も書いた)、ラストのシューマンは音量面は解消したのであるが、残念ながら良い音声とは言いがたいものでもあった(音の広がりが全くなくモノラルに近い)。恐らく遠くのマイクだとレベルが低いので近くのマイクに切り替えたものと思われる。何にせよクラシック専門ストリーミング配信としては厳しいことを言わざるを得ない。

 

 さてメインのシューマンは小編成オケらしくコンパクトでまとまりのある演奏であった。アンサンブルに若干の雑さが垣間見える場面が皆無であったわけではないが、概ね良好な演奏であったように感じられた。阪の指揮は奇をてらわないオーソドックスなもの。その辺りはこのオケのカラーとも合っているように感じられた。シューマンの曲は構成自体にやや難があるので、下手をすれば弛緩した冗長なものになりかねない危険もはらんでいるのであるが、そこのところは上手く処理していた印象である。

 

 神尾の協奏曲の時点では視聴者は2千2百人ほどいたのだが、後半のシューマンでは1千6百人ほどに減っていた。神尾のファンが前半だけで満足して離脱したのか、前半の音のひどさに愛想を尽かして逃げ出した客がいるのか、その辺りは定かではないが、折角のライブ配信でしかも山形交響楽団の熱演をつまらぬ問題でふいにしては残念に過ぎる。

 

追加情報(3/23)

 カーテンコールのサイトがリューアルされ、山形交響楽団の演奏会もアーカイブとして4/5まで配信されています。ライブ配信では問題のあった音量についても修正されているようですので、視聴をお勧めします。

curtaincall.media

 

東京交響楽団のライブ配信を聴いた

 今日の午前11時よりニコニコ動画で東京交響楽団のモーツァルト・マチネのライブ配信があったのでそれを聴いた。休日の朝11時という早朝(笑)の放送であったために危うく聞き逃すところだった。

tokyosymphony.jp

 

東京交響楽団 モーツァルト・マチネ 第40回

指揮:原田慶太楼
ピアノ:金子三勇士

モーツァルト:フルート四重奏 第3番 ハ長調 K.285b
モーツァルト:交響曲 第35番 ニ長調 K.385 「ハフナー」
モーツァルト:ピアノ協奏曲第13番 ハ長調 K.415 (387b)

 モーツァルトを集めたコンサート。原田のトークによるとモーツァルトが同じ年に作曲した曲を集めたらしい。

 一曲目は室内楽。フルートの軽やかな音色と弦三部が美しい曲。八木のフルートがなかなかに良い音を出している。

 二曲目はモーツァルトのハフナー。モーツァルトの曲は淡々と演奏する指揮者も多いが、原田の演奏は最近の若手に多いロマンティックなタイプの指揮。音の強弱などを強調気味で、テンポのメリハリも強く濃厚な表情付けを行っていく。あまりにこれをやり過ぎるといささか下品な演奏になる危険があるのだが、その手前で留まるバランスの良いもの。小編成の東響も原田の指揮に応えてなかなかにまとまりのある演奏。魅力的なモーツァルトの交響曲となった。

 最後は金子を加えてのモーツァルトのピアノ協奏曲。13番は私は初めて聞く曲なのであるが、こうして聴くとなかなかに美しい良い曲だと感じるのはさすがにモーツァルト。金子の演奏は適度な溜などがあり、原田を上回ってのロマンチックな演奏。おかげで明るい曲調の中に突然に刺す陰影などの表情が鮮やかである。下手な演奏をすれば単調な曲になることさえあるモーツァルトを見事に展開した。

 金子のアンコールもなかなか良かったが、やはり原田のオケアンコール「上を向いて歩こう」は、こういうご時世だけに泣けた。早く普通にホールでコンサートを聴ける日常が戻ってくることを願いたい。

 

 視聴者は6万人近くいた模様で、ニコニコ広告やギフトなども飛び交っており、合計して80万近く集まっていた模様である。これがオケの収益になるのなら少しは救いがあるところである。もっとも見ている側としては、やたらに画面に流れる字幕の多さはいささか鬱陶しさも感じずにはいられないところなのだが。

 この後は今日の19時から山形交響楽団のライブ配信もある。先日導入したところのスピーカーが大活躍である。ただ居ながらにして各地のオケの演奏を聴けるのはありがたいが、やはりホールで聴くのとは根本的に異なる。今後、こういうライブ配信の形もオケの収益化の一環として大いに検討すべきところであるとは感じるが、やはり原点であるところの生演奏を聴きたいものである。

www.yamakyo.or.jp

 最新の報告ではコロナウイルスは感染後5週間体内で生存するとの話も出てきている。そうなると現在の2週間を前提にしている対策は全く無意味ということになってくる。このまま異常事態を長期続けることは社会にとって致命傷となりかねず、次のレベルの対策へと移行する必要に迫られつつある(感染を前提に重症化させないための医療体制を確立する)。となれば現在のような無理なコンサート中止を長引かせることは有害無益という判断がそろそろ出てくるべき時期になったように感じる。

www.bloomberg.co.jp

 

山形交響楽団も無観客ライブ配信をするそうです

 なんか各地に広がってます。ただライブ配信はいくらやっても楽団にとっては一銭にもならないので、早急な事態の収束を願うばかりです。

www.yamakyo.or.jp

 山形交響楽団によると、3/14,15に山形テルサホールで開催予定だった第283回定期演奏会が中止に追い込まれたため、無観客でライブ配信することに決定したとのこと。放送は3/14の19時からとのことです。放送はクラシック専門生放送プラットフォーム「カーテンコール」にてとのことで、配信URL等は後日楽団HPで案内するとのこと(と言ってももう明日ですが)。

www.yamakyo.or.jp

 神尾真由子氏をソリストにチャイコのヴァイオリン協奏曲を演奏するというかなり気合いの入ったコンサートだっただけに、山形交響楽団としても痛恨でしょう。それに山形交響楽団の年間の定期演奏会数を考えると、楽団の財政に与える負担も懸念されるところです。とにかく出来るだけ早いうちに事態を正常化しないと、このままでは早晩破綻する楽団が出てくる可能性が心配されます。

 山形交響楽団は以前に一度だけ大阪公演を聞いたことがありますが、アンサンブルを重視した小規模オーケストラで、地方で頑張っている楽団の一つです。今年は6月に大阪公演があるのでそれに行こうと思っていたところです。

 3/14は午前11時から東京交響楽団のモーツァルトマチネのライブ配信もニコニコ動画で行われますので、それとのダブルヘッダーということになるでしょうか。

 

大阪フィルも無観客ライブ配信をするとのこと

 いよいよもって収拾がつかなくなってきたコロナであるが、案の定当初予定の16日では終息の目処が立たず、急に後10日ほどの自粛を云々(安倍語でデンデン)言い出した。これを受けて19,20というギリギリの日程で開催予定だった大阪フィルの定期演奏会がぶっ飛んでしまうことになったようだ。

www.osaka-phil.com

 大阪フィルの公式アナウンスでは19日に無観客公演を行って、それをインターネットで無料配信するとの話。詳細はまだ未定とのこと。既にこの週末のコンサートは大分前に全滅していたが、いよいよ影響がその次の週に及び始めた。こうなると次に動向が注目されるのはその翌週の京都市交響楽団ということになる。

 それにしても社会を大混乱させる措置を行ったものの、予想通り一旦こうなってしまったらそれを終わらせる時期を決められなくなってしまった。このまま行けば短くても月末ぐらいまでズルズルと延長される気配が濃厚だが、その前に日本経済がもたないだろう。もう既に倒産する企業も出てきているという。相次ぐ公演中止でクラシック界だけでなく音楽業界全体が大ダメージを蒙っており、ギリギリ無理しても3月一杯がデッドラインだとの声が出ている。

 にもかかわらず相変わらず現政権は利権ばかりを最優先して、国民すべてを犠牲にしてオリンピック利権の死守に必死である。オリンピックどころか、そんな予算があるのならコロナ関係で被害を受けているところに配分するべきである。また安倍に巨額の献金をしているパチンコ業界に対しては未だに自粛さえ呼びかけない状態。この政権こそが今の日本が抱えている最大の病巣というしかない。人間、病気になると体の悪いところが分かると言うが、日本もコロナという病気になって一番悪いところがどこか明らかになったようである。

東響のライブ配信に向けてPC用のスピーカーシステムを一新した

 先日、AmazonでポチッとしたPC用のスピーカーが到着したので早速セットアップ。以前はRolandの安物のアンプ内蔵型スピーカーを使用していたのでとにかく音が貧弱だったが、まあPC用ということで仕方なしに間に合わせていたのだが、先日東響のライブ配信を聞いた時に、さすがにこのスピーカーシステムではニコニコ動画でもツラいと痛感したことから急遽調達。

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私のPCシステム(before)

 今回購入したのはFOSTEXのかんすぴシステムP802-S。アンプは以前に購入したLepai デジタルアンプ LP-2020Aが余っていたのでそれを使用することを前提にして、あえてアンプ内蔵ではない単体のスピーカーを選択することにした。

今回購入したスピーカー(画像クリックでAmazonに飛びます)
アンプは後継機に代わっているようです。

 

 

  私もかつてはオーディオマニアとして、アンプには20万円近く、スピーカーは1本5万円クラスという当時の一般マニアの間ではミドルクラスと言われるレベルのシステムを揃えていたこともあった。ちなみにFOSTEXはその頃に自作スピーカーのユニットでお世話になったメーカーでもある(当時作ったテレビ用スピーカーが実は今でも単なるテレビ台として健在)。当時の私は長岡鉄男氏の自作スピーカーの本がバイブルだった(笑)。スピーカー自作だけでなく、スピーカーに鉛を載せたり、ケーブルを変更して音の変化をチェックしたり、アナログプレーヤーなんかもかなり改造をしていたりなど、予算の不足している分は技術でカバーしようというタイプのマニアであった。

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私のPCシステム(after)

 しかし今はアンプは老朽化で退役、スピーカーはエッジを張り替えてまだ一応現役ではあるが、音楽生活がライブ中心に変化したことで、滅多に鳴らすこともなくなってしまった。その上に私自身の耳も老化のせいでモスキート音なんて全く聞こえないぐらいに腐ってしまっている(若い頃は、可聴帯の上限とされていた20KHz以上の音も聞こえていたので、CDの音の悪さには辟易していた)。というわけで、現在の私はオーディオの灯を入れることも滅多になくなってしまっている。

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2本で1万円のスピーカー

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数千円のアンプ

 そのような経歴のある私からすると、数千円のアンプに2本で1万円のスピーカーでこれだけの音が出ると言うのは笑うしかないというところ。2wayスピーカーになったことで、明らかに以前のシステムよりはレンジは広がっている。特にこのアンプは以前に液晶テレビ導入に伴ってうちのAVシステムを更新した時に間に合わせに導入したアンプだが、その時に意外にスピーカーをドライブするので感心していたのだが、今回も十分にスピーカーをドライブしてくれている。かなりCPの高いアンプである。

 さすがにCDをスピーカーに向き合って聴く気にはならないが、日常的にPCのサウンドを鳴らしたり、BGM的に使用するにはもう十二分だろう。とりあえず3/14の東響のライブ配信はこのシステムで臨むことにする。

tokyosymphony.jp

 

東京交響楽団のライブ配信を見る

東京交響楽団も無観客公演ライブ配信を実施

 昨日はびわ湖ホールの「神々の黄昏」のストリーミング配信を見たが、今日は東京交響楽団がニコニコ動画で行ったコンサートのライブ配信を聞く事にした。これもびわ湖ホールと同様に安倍の「コロナ対策やってるポーズ」のためのコンサート禁止令の影響である。

tokyosymphony.jp

 ところでこの配信の開始の前にびわ湖ホールの「神々の黄昏(2日目)」も少し見てみたが、昨日よりはブリュンヒルデのたくましさ(声の面で)が目立つという印象を受けた。昨日のブリュンヒルデのミュターは見た目は逞しい(笑)が、ソプラノのせいかやや声にはか細さを感じる部分もあったのだが、今日の池田はメゾソプラノのせいか声に野太さを感じさせる。

 東京交響楽団のコンサートは午後2時から。ミューザ川崎からの中継。こちらの放送は複数カメラを切り替える映像と固定カメラの映像の2タイプを選べるようになっている。私としては固定カメラの方が落ち着く。

 

東京交響楽団 名曲全集第155回

指揮:大友直人
ピアノ:黒沼香恋(ミューザ・ソリスト・オーディション2017合格者)
オルガン:大木麻理(ミューザ川崎シンフォニーホールオルガニスト)

ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
ラヴェル:ピアノ協奏曲ト長調
サン=サーンス:交響曲第3番「オルガン付き」

 ドビュッシーはかなり色彩的な曲であるが、それを大友は実にキラキラと表現した。オケの演奏にも各楽器のソロになかなかの冴えが感じられる。弦の滑らかさも十分で、ドビュッシーの演奏としては成功していると感じる。

 二曲目のラヴェルのピアノ協奏曲は、いかにもラヴェルらしいジャズ的要素を感じさせる非常に軽妙な曲。黒沼のピアノも実に軽やかである。軽快でアクロバチックに駆け抜けたという印象。

 メインがサン=サーンスであるが、大友はやや速めのテンポでキビキビしたリズムを刻んでくる演奏。ところどころ細かい仕掛けはあるものの、大友らしい比較的オーソドックスでてらいのない演奏でもある。この曲は指揮者によってはもろに情感が表に出る演奏もあるのであるが、大友の演奏はその辺りにはクールさを感じる。

 総じての印象としては大友らしいお洒落さを感じさせる演奏というところだろうか。パトスが先行するタイプではなく、その辺りのバランスは品良くまとめたところがある。

 

 時折映る空っぽの客席が悲しさを感じさせた。また拍手が皆無の中でのソリストアンコールというのも奇妙な印象を受ける。どうしてもいろいろな点で「異常さ」が際立ってしまう。オケもかなりやりにくかったろう。

 安倍の意味不明のお達しの影響による窮余の策であるが、しかしやはりPCでの視聴となると音の悪さは致命的となる。オペラなどの場合は演劇的要素のおかげでビジュアル刺激によって音の悪さを誤魔化せる部分があるが、オケコンサートのように純粋に音が中心となる場合にはやはり音の悪さはツラい。何よりもショボい音で聞くパイプオルガンの音色というのは決定的に情けない。いつまでこんな異常事態が続くのかと溜息が出るところである。

 東京交響楽団では3/14のコンサートもライブ配信するようである。実のところ私はPCのあまりの音の悪さに嫌気がさしてきたので、とうとうPC用のスピーカーをAmazonでポチッとしてしまった(小型のデジタルアンプは既に所有)。これも余計な出費というやつである。まあ今は中止になったコンサートのチケットの払い戻しが諸々あるので、その代金を回しておく事にする。

Amazonでこれをポチッとしてしまった
(画像クリックでAmazonに飛びます)

 ところでコンサートその他は徹底的に敵視されているが、狭いホールに多人数を押し込めてのパチンコ屋に規制をかけようという様子は微塵もない。あれこそ経済に与える影響を考えた時に一切の悪影響がないのだから(博打が規制されたところで表の経済は何も困らない)、本来は真っ先に規制されるべきものだろう。それにも関わらず規制の動きさえ一切存在しないのは、日頃からの政治家への献金の額というのが覿面に反映しているのだろう。何しろ今の政権は利権中心にしか物事を考えないのだから。

 

びわ湖ホールオペラ「神々の黄昏」のストリーミング配信を見る

苦肉の策の無観客公演

 今日の午後1時からYouTubeで配信されたびわ湖ホールの「神々の黄昏」を見た。午後1時から2回の休憩を挟んで7時前までというなかなかハードな上映である。

 これは本来は今日と明日に上演されるはずの企画でびわ湖ホールが4年がかりで実行したプロジェクトの締めである。しかしここに来て安倍の「コロナ対策やってるふり」のライブ禁止令のせいで上演ができなくなり、無観客上演でライブ配信した次第。やはりこれだけの企画を尻切れトンボにするわけにもいかないからの苦肉の策だろう。

 この企画は大人気で、今回のチケットも完全に売り切れていたらしいから(私もチケットを確保していた)、びわ湖ホールにしたら大損害である(当然のように世の中の大損害に対しては安倍はびた一文保証しないどころか、この期に及んでもまだ自分の利権だけは確保しようとしている)。今回の上演は収録して、後日DVDとして発売するとの事。恐らくライブビューイングもいずれするだろうと予測する。なるべく少しでも回収するべく必死だろう。

 さて配信の方だが、私が見た時に視聴者は1万人以上はいた。びわ湖ホールは2000人弱のホールだから、明らかにチケット購入客以外の多数が注目して配信を見たという事になる。これが今後のファン層の裾野を広げる事に貢献すれば、少しはびわ湖ホールも今回の決断の意味が出るところだろうが、どうなるやら。

 

 

ユーチューブであるが故の限界も

 ただ肝心の配信の方は、YouTubeだけにどうしても画質はかなり悪いし、音の方も悪い。しかも我が家ではPCで視聴するしかないのでさらに画質、音質共にショボくなる。一応、途中で音声が途切れるというような事はほとんどなかったが(終盤で2回ほど音声が一瞬途切れた場面がある)、映像は明らかに一瞬止まった事は多数(止まりこそしないもののブロックノイズは常に)。一応うちは光ケーブルなんだが・・・。

 予想通り映像は引き目の固定カメラでステージ全体を写すというアングル。実際に劇場に見に行っているのと同じような映像で、私的にはMETライブビューイングのような出演者のアップに次々切り替えていく映画的な映像よりも、歌手と音声の位置が合致するので落ち着いて見られた印象。ただやはりロングだけだと細かい部分が見えないので、メイン画面はロングで固定した上で、画面上部にサブ画面を作って出演者のアップも欲しかったと思える。私は以前からMETライブビューイングに関しても、メインロング映像+サブアップ映像の構成にするべきと提案(?)しているのだが、残念ながら未だに採用されない(笑)。

 なおドイツ語上演字幕なしなので、ドイツ語が全く出来ない(大学時代の第二外国語にドイツ語を選択したにもかかわらず)私には内容がチンプンカンプンになってしまう。そこで利用したのがオペラ対訳プロジェクトのページ(https://w.atwiki.jp/oper/)。ここの原詩と訳詞をサブディスプレイに表示させ、歌を追っかけながら読んでいた次第。おかげでメイン画面とサブ画面を行ったり来たりで目は疲れたが、内容はキチンと把握する事が出来た。ちなみに第三幕冒頭にチラッと横に字幕があるのが映ったのだが、字幕表示器を置いた状態で上演してたのか? それだったらもう少しだけ画面を引いたら字幕も写せたのに、なぜかあえてそれを避けたのか? やはり後で発売される「字幕入り」のDVDを売るためか。

 で、とりあえず内容の感想の方を。

 

 

びわ湖ホールプロデュースオペラ ワーグナー「神々の黄昏」

指揮:沼尻竜典
演出:ミヒャエル・ハンペ
美術・衣裳:ヘニング・フォン・ギールケ

ジークフリート:クリスティアン・フランツ
ブリュンヒルデ:ステファニー・ミュター
アルベリヒ:志村文彦
グンター:石野繁生
ハーゲン:妻屋秀和
グートルーネ:安藤赴美子
ワルトラウテ:谷口睦美
ヴォークリンデ:吉川日奈子
ヴェルグンデ:杉山由紀
フロスヒルデ:小林紗季子
第一のノルン:竹本節子
第二のノルン:金子美香
第三のノルン:髙橋絵里

管弦楽:京都市交響楽団
合唱:びわ湖ホール声楽アンサンブル
新国立劇場合唱団

 びわ湖ホールの4年がかりの大型企画ニーベルングの指輪のいよいよ完結編。世界中を振り回す事になった指輪事件の大ラスと、英雄ジークフリートや神々の終末が描かれるという壮大なストーリーである。

 演出は今までびわ湖リング同様に映像を多用したものになっている。ラストのヴァルハラの炎上などは全部この映像を使用した演出によって片付けてしまった。予算に制約のある中ではこういう方法しか仕方ないところであろう。

 今回はここまで狂言回しだったヴォータンは城に引きこもりで全く出てこないので、ジークフリートが中心の話となる。英雄ジークフリートが奸計にはまって命を落とし、その死が天界をも巻き込んだ大破滅につながる顛末が描かれる事になる。前作の「ジークフリート」では確かに腕っ節は半端なく強いが、いささかうぬぼれが強くて基本的にはお馬鹿なキャラであるジークフリートであるが、本作でもその脳天気ぶりとうぬぼれは相変わらずで、それによって命を落とす事につながってしまう。基本的に馬鹿と悪人ばかりで、善人は見当たらないというワーグナー的な「嫌な」世界である。

 ジークフリートとブリュンヒルデという主役を除くと、重要人物は陰謀家のハーゲンになるが、これを演じた妻屋が抜群の安定感と存在感の歌唱で舞台全体を引き締めていた。これに絡むグンターの石野もなかなかに見せた。

 お馬鹿なジークフリートのフランツはなかなかに余裕を感じさせる歌いっぷりであった。自信に満ちているものの軽さと危うさが同居しているジークフリートのキャラクターを上手く表現できていたように感じられた。また色惚けブリュンヒルデを演じたミュターは若干の線の細さを感じさせる部分がないわけでもなかったが、概ね過不足のない表現をしていたように思われた。

 管弦楽は京都市交響楽団だけあって安定性はある。ドラマチックな作品をドラマチックな演奏で盛り上げた。少なくともPCを通して見た感じでは大スペクタクルミュージックになっているように思われた。

 それにしても無観客上演という出演者としてはテンションを保つ事が困難な状況は大変であったろうと思われる。このような中で今回の上演にこぎ着けた関係者の努力には敬意を表したい。

 

 

 ただやはり、一幕が終わったところでも場内が静まりかえっているというのは何か切なさを感じさせるものがあった。特にツラいのは観客なしでのカーテンコールの虚しさ。出来る事ならこんな異常な形でなく、通常の上演を行いたかったであろうし、私もそういう状況で上演を見たかったところである。これだけの企画はなかなか再び行う事は困難と思われるので、下手すればこの作品を舞台で見る事は私には一生ないかも知れない。

 なお明日3/8も同じ時刻でメンバーが交代して中継があるようである。ただ私はさすがにPCに6時間張り付きというのはかなり疲れたので、明日の上演は恐らくパスすることになると思う。

 

 

びわ湖ホールが「神々の黄昏」の無観客公演をYouTubeでストリーミング配信するとか

 びわ湖ホールから先ほど中止となった「神々の黄昏」の公演を無観客で上演してYouTubeで配信する旨のアナウンスがあった。

www.biwako-hall.or.jp

 もっともドイツ語上演字幕なしなので、内容を知らない者(私がそうです)にはチンプンカンプンになるだろうと思われる。また生で複数カメラを切り替えるなんて技術があるとも思えないので、恐らくやや遠目の固定カメラになるのではと思っている。

 なお後日複数カメラ映像を編集して字幕を入れたDVDを作成して販売するとのこと。しかし何しろ急遽の事で機材等をどの程度手配できたのか怪しいので、画質・音質等には期待できないであろうとの予想をしている。そもそも今時BDでなくてDVDって・・・。それだけで推測がつきそうに思える。

 DVDの発売だけでなく、恐らく延期になっているMETライブビューイングに合わせて、びわ湖ホールの公演もライブビューイングを行うのではと推測しているが、その時にMETに比べていろいろな面で劣りまくっているのが明確にということにならなければ良いが。

 

びわ湖ホールから唐突にパンフが送られてきた

 安倍の場当たり的な「コロナ対策やってますアピール」の思いつきで、日本中のオリンピック関連と政治家の資金集めパーティー以外のイベントがことごとく中止を余儀なくされているが、その煽りを食ってびわ湖ホールで開催予定だった沼尻オペラの「神々の黄昏」も中止されることになってしまった。

 今日おもむろにびわ湖ホールからパンフレットが送られてきた。多分、もう既に作っていたものの上演中止で捨てるぐらいならとチケット購入者に送ってきたのだろう。チケット払い戻しのための申込書も同封してある。なお向こうも対応にドタバタしているのか、なぜか私のところには同じものが2通も送られてきた。

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パンフを見てると悲しくなってくる

 ワーグナーの指輪を4年がかりで上演するという大型企画だったのだが、よりによって最終夜が中止とは痛恨の極み。コロナ騒ぎが落ち着いた秋頃にでも上演することは不可能なのだろうか? このまま終わりではあまりに尻切れトンボ感が強くて締まらない。大型企画だけに再セッティングというのが容易ではないことは想像つくが、このまま終わりという形にはしてもらいたくないところ。

 なお、今回の上演の前の復習及び前座企画としてMETライブビューイングでの指輪の上映も行われていたのだが、こちらも「ラインの黄金」以降は延期とのお達し。延期とは言っているものの、いつ上映が行われるかも全く未定なので、結局はこっちも払い戻しになるようだ。これは下手したらこれを見て上演されなかった「神々の黄昏」を想像してねという話になりそう。

 それにしてもびわ湖ホールは、開館記念20周年記念のマーラーの千人の交響曲の時も、台風の直撃を受けてゲネプロを本番に繰り上げるなんてドタバタもあったし、なんか呪われてるのか?

 

METライブビューイング「ヴォツェック」を見てから早々に帰宅する

 翌朝は7時半に目が覚める。大抵は朝に近くの部屋がドタバタし始めるので目が覚めるのだが、今日は朝からほとんど物音がないので、外が明るくなってきたことで目が覚めた。

 昨日買い求めたパンを軽く腹に入れるとテレビを付ける。社会は大混乱だが、どうやらメディアを総動員して「非常事態だから仕方ない」という印象操作をしようと必死のようだ。実際のところは非常事態になったのは1から10まで安倍の無策のせいなのだが。多分この男は今まで、何か都合が悪いことが起こったらヒステリーを起こして「知らない!知らない!自分の責任じゃない!」と叫んでいたら回りが忖度しまくってどうにかしてくれたのだろう。実際にモリカケのようなとんでもない犯罪でもそうやって逃げおおせてしまった。だから今回のコロナについても「そんなもの認めたらオリンピックが出来ない!」となかったことにしていたのだが、残念なことにコロナウイルスは全く忖度してくれなかったためにパニックになり、慌ててドタバタと思いつきで動いたというところのようだ。ただ悲しいかな社会常識というのが根本的に欠けているため、打ち出した方針がことごとく的外れで、日本中を混乱させただけというわけだ。

 本当にこんな馬鹿やトランプのような頭のおかしな奴に日本や世界を滅茶苦茶にさせるぐらいなら、私が世界征服して絶対的独裁者として支配した方が人類にとっては幸福なのではないかと思えてくる。しかもこんな奴らが選挙で選ばれているというのが救いがたい。人類はどこまで底なしに馬鹿なんだという絶望的な思いにとらわれそうになる。「愚かな人間共よ」という定番台詞が素で出てきそうになる。マジでショッカーでも結成したくなってきた。現実問題として、私は自身が有能な政治家としての資質を持っているとは感じないが、少なくとも安倍のような嘘つきで卑怯者ではないと思っている。

 

 

 今日の大阪ステーションシティシネマのMETライブビューイングをネットで予約すると、10時前にはチェックアウトして劇場に向かう。大阪駅に到着するとルクアの地下2階の「えん」で朝食を摂ってから劇場へ。安倍の場当たり政策の影響は映画館にも跳ね返っているようで、ステーションシティシネマもガラガラの状況である。経済にかなりの悪影響もありそうだが、安倍にしたら自身の消費税増税という失策による景気後退を全部コロナのせいに出来るから万々歳なんだろう。

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ルクア地下二階の「えん」

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朝から鯛茶漬け

 

 

METライブビューイング ベルク「ヴォツェック」

指揮:ヤニック・ネゼ=セガン
演出:ウィリアム・ケントリッジ
出演:ペーター・マッテイ、エルザ・ヴァン・デン・ヒーヴァー、クリストファー・ヴェントリス 、ゲルハルド・ジーゲル、クリスチャン・ヴァン・ホーン

 先週のアクナーテンに続いて問題作登場という印象である。音楽的にはアクナーテンよりも現代音楽色が強く、正直なところ私の好きなタイプではない。メロディラインがないので歌手には大変だろう。オケと合わせるだけでも相当に大変だと思われる。ただそれだけ大変な思いをしても、音楽的に感動につながるかというところが甚だ疑問ではある。

 ストーリーは貧乏兵士の妻が貧乏暮らしに疲れて浮気をし、それに気付いた夫が半ば錯乱の状態で妻を殺害、そして自らも水死するという全く以て何の救いもない話。これは第一次大戦に従軍して、戦場の理不尽さと残酷さを体験したベルクがそれを表現した作品らしい。いかにも現代音楽(と言うよりも20世紀音楽なんだろうが)に合わせて、おどろおどろしい演出の舞台が繰り広げられる。

 救いなのは上演時間が90分程度と短いところ。実際のところ演じ手の集中力もそのぐらいが限界だと思われるし、観客の方もこれ以上長くなるとツラい。演じる方も見る方もそれだけ負担のある作品である。

 

 

 本来はこの後に大阪歴史博物館に寄りたかったのだが、どうやら安倍のお達しで休館中とのこと。大して観客の来ない博物館が閉館することがどれだけコロナの感染予防につながるのかは甚だ疑問であるが、公立のところはとにかくお上の意向を「忖度」することが必須のようである。

 仕方ないので「美々卯」で昼食を摂ってから帰宅することにする。相変わらず美々卯のうどんは高くて美味いが、ここも昼時にもかかわらず通常の週末だと考えられないぐらいに客が少ない。

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美々卯もガラガラでした

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うどんの定食を頂く

 昼食後に帰宅したが、帰宅後の買い物ではどこにもティッシュとトイレットペーパーが置いていないという状況に散々振り回されることになるのである。朝のニュースでそういうことが起こり始めているということは聞いていたが、ここまで露骨にデマで踊るとは、日本人に対する失望感ばかりがこみ上げてくる。こんな国民だからこそ、あんな男が総理としてふんぞり返ることが出来るのか。つくづく国民の生活を破壊するだけの総理はいらない。

 

 

コロナ騒ぎの中、関西フィル第307回定期演奏会に出かける

 自身の無策でコロナを蔓延させてしまって、このままでは自分やお友達の利権満載のオリンピックが開催できなくなるとパニクった安倍の意味不明のイベント禁止命令のせいで、日本中が大混乱である。昨日辺りまでは関西は比較的冷静だったのだが、東京の方で官邸の圧力によってオリンピック関連以外のあらゆるイベントが中止を余儀なくされる中、関西でも右にならえで一斉にイベントの中止が決定された。私に関係のあるところでも、2/29のエーテボリ交響楽団が中止、3/1のびわ湖ホールでのMETライブビューイングが延期、3/7のワシントンナショナル交響楽団が中止、3/8のびわ湖ホールでの「神々の黄昏」が中止と予定が滅茶苦茶である。とりあえず安倍は2週間後に「適切な対策のおかげでコロナは終息した」と根拠のない安全宣言を出してオリンピック開催に持っていこうと考えていると思われる。この社会的混乱は謂わばそのためのアリバイ作りであるのは明白である。実際にこの間に患者数が増えないよう、検査を極力受けさせないように政府が全力で妨害をしているとか。

 

 そんな中、今日の関西フィルの定期演奏会は開催するという果断な決断。多分指揮者もソリストももう来日していてリハーサルも終わっているので、ここで中止にすると関西フィルは甚大な損害を被ることになる(ギャラは払わないわけにはいかないだろう)。それでなくても既に関西フィルは依頼公演がいくつか吹っ飛んで財政的ダメージを受けていると思われることから、これ以上の財政的ダメージは許容できないという判断だろう。そこで私の方も「開催されるなら当然出かける」という判断で出向くことにした。

 仕事を早めに終えてからJRで移動するが、心なしか乗客の数が少ない気がする。大阪に到着するとホールに向かうがその途中で「やまがそば」で夕食に「そば定食」を摂る。

 

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福島のやまがそば

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そば定食

夕食を終えるとホールに到着する。観客は来ているが、やはり明らかに数が少ない。ザッと見たところ入りは6割程度か。特に会員席に空席が目立つ。やはり会員には高齢者も多いし、コロナを警戒しているのだろう。また今日のプログラムが結構地味プログラムということも影響はあるように感じる。

 

関西フィルハーモニー管弦楽団 第307回定期演奏会

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[指揮]ゴロー・ベルク
[ピアノ]ダナエ・デルケン

シューマン:序曲、スケルツォとフィナーレ op.52
クララ・シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 op.7
ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 op.98

 ベルクはなかなかにガンガンと鳴らさせるタイプの指揮者のようである。一曲目はいかにもシューマンというロマンティックさのある曲だが、これを管楽器を中心にガンガンと鳴らしてくる。

 二曲目は嫁シューマンことクララの曲であるが、いかにも女性らしい優美さを感じさせる曲。それに対してデルケンの演奏は実にロマンティックである。旋律を謳わせる部分がかなりある甘い演奏。特に彼女の演奏はアンコール曲(実は知らない曲だったのだが、曲目をチェックしてくるのを忘れてしまった)で更なる真価を発揮していた。甘く優美な演奏である。

 三曲目は関西フィルの真価が発揮されやすい弦楽セクションが美しく響く曲なのだが、ベルクはこの曲もやはり基本姿勢はガンガン鳴らしてくるというもの。これはこれでロマンティックな演奏ではある。彼はかなりノリで振ってくるところがあることも感じたのであるが、ただその演奏タイプが関西フィルのカラーとマッチしているかどうかに若干の疑問があった。関西フィルは12編成で大音量オケではないのに、やや煽りすぎの感があるので弦楽がヒステリックに聞こえる場面もあったし、管が割れて聞こえる場面も多々あった。悪いタイプの演奏ではないのだが、相性の問題を少し感じたのである。


 コンサートを終えると新今宮に移動する。実は明日は大阪でMETライブビューイングを見る予定。そもそもの予定はその後にエーテボリ交響楽団のコンサートがあり、日曜はびわ湖ホールでMETライブビューイングを見るはずだったので、ホテルは2泊を予約していた。しかし急遽明日の1泊はキャンセル、さらには来週の宿泊も全面キャンセルである。ホテルの方も客が少ないようで、特にいつも大量に見かける外国人観光客の姿があからさまになくなっていた。さらにそれに輪をかけて日本人もいない。この事態が長く続けばホテルの経営も怪しくなりそうだ。喧しい外国人がいなくなるのは個人的には有り難いが、社会全体としてはそういうわけにもいかないだろう。

 この日は疲れていることもあり、途中で買い込んだ夜食を腹に入れると間もなく就寝したのである。

 

福田美術館の美人画展に立ち寄ってから、METライブビューイングで「ラインの黄金」を鑑賞

 翌朝は6時過ぎぐらいに勝手に目が覚める。とりあえず昨晩放送の食の起源をタブレットで倍速再生して要点をまとめておくと、朝シャワーで目を覚ます。

 朝食はレストランでバイキング。特に品数が多いわけでもないが、それなりに食べられる内容。

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朝食バイキング

 ホテルを9時前にチェックアウトすると直ちに移動する。今日は13時からびわ湖ホールでMETライブビューイングだが、その前に嵐山の福田美術館に立ち寄るつもり。福田美術館は10時開館なのでそれに合わせて行動する。

 

 

山陰線で嵐山に向かう

 JR京都駅に到着すると山陰線ホームへ。キャリーは途中のコインロッカーに放り込む。ここには結構多くのロッカーがあるのだが、改札内で使いにくいのかこの時間でもほとんどが空いている。帰りに京都駅に立ち寄る場合ならここのロッカーを使う手がありそうだが、そもそも京都日帰りの時にはキャリーは持ってこないし、泊まりの時は駅にキャリーを置いておくわけには行かないし、確かに使いにくい。

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山陰線ホーム手前はコインロッカーが多い

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山陰線ホーム

 その内に折り返しの山陰線列車が到着。乗り込む客はかなり多い。列車は京都市街の西の縁を回りながら嵯峨嵐山駅へ。ここで大量下車。駅は大混雑である。嵐山は大体10時頃に目を覚ますので、それに合わせてやって来た者が少なくないと見える。なお隣にはトロッコ列車のトロッコ嵯峨駅があるが、トロッコ列車は3月まで運休中らしい。

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嵯峨嵐山駅では大量の降車

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嵯峨嵐山駅

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トロッコ列車

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トロッコ嵐山駅

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3月までは運休だそうな

 福田美術館までは10分ちょっと。ゾロゾロと移動する人混みについていく感じ。ようやく美術館に到着したのは開館直後だが、もう既に窓口に行列が。相変わらず窓口の対応が雅に過ぎる(一体一人の客にどれだけ時間を要してるんだ)。

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到着時には既に窓口はこれ

 

 

「美人のすべて~初公開、松園の「雪女」」福田美術館で3/8まで

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 上村松園の作品を中心として美人画の秀作を展示。松園以外にも伊藤小坡、鏑木清方などといった一流どころを揃えている。質量共に充実している。正直なところ開館記念展で松園の作品が結構展示されていたのでそれ以上の作品があるのかと疑問を持っていたのだが、どっこい結構な作品数が登場している。

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典型的な松園美人

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清楚で品がある

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松園が何度も画題にしたという静御前

 松園の作品らしく清澄で上品な美人画がズラリと並んでいる。

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やはり松園の美人画は見事

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とにかく美しいです

 ちなみに伊藤小坡及び鏑木清方の作品はことごとく撮影禁止であったが、これは著作権の絡みだろうか?(松園は没後70年ほど経っているが、伊藤小坡と鏑木清方は50年程度)

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これは池田蕉園と池田輝方夫妻の作

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そして木島桜谷の屏風作品

 なお初公開という雪女の絵も展示されていたが、印象としては雪女と言うよりも幽霊のような儚さとおどろおどろしさを感じた。なお流石に雪女と言うべきか、なぜか撮影に失敗して後で調べるとまともに写真に写っていなかった。

 

 

嵐山で昼食を摂ってから移動

 展覧会の鑑賞を終えるとびわ湖ホールまで移動しないといけないが、その前にどこかで昼食をと考える。しかし大抵の店は開店が11時からの様なので開いている店が少ない。そこで開いていた「梵梵」に入店する。注文したのは湯葉そばの定食

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開いていた梵梵に入店

 出来合のかけそばに湯葉を三切れ入れましたというような内容である。まあ観光地食堂ということか。正直、これで1500円は高い。

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明らかに観光地メニューでした

 ところで嵐山は若い女性に人気のお洒落スポットだが、こういう場所にはなぜかお洒落なだけでCPが激烈に悪い店が並ぶことになりがちなので、私にとっては鬼門である。若い女性というのはCPなんかは気にしないのだろうか? そもそもスポンサー(彼氏)付きだから金のことは考えないということか。そんな女性が家庭を持ったらCP至上主義のオバタリアンに変貌したりするのだから、つくづく女性という存在は理解の埒外にある。

 

 

 嵯峨嵐山駅に戻ってくる途中で「お肉屋さんのコロッケ」という看板に惹かれる。そう言えば私の子供の頃といえばコロッケは肉屋の定番商品であった。1つ100円とのことなので購入する。

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お肉屋さんのコロッケ

 何の変哲も工夫もないコロッケ。表面が脂でテラテラ光っているのはコクを出すのにラードでも加えているのだろう。とにかく「懐かしい」の一言に尽きる。かつて私が生まれ育った神戸の長田の下町の光景が目に浮かぶ。

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このテカリが懐かしいです

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普通のポテトコロッケだが美味い

 嵯峨嵐山から山陰線に乗るとキャリーを回収してから乗り換え。そのままびわ湖ホールへ向かう。上映は中ホールで。開場後しばらくはホール内に観客が20人足らずぐらいしかいなかったので大丈夫だろうかと心配したが、最終的には100人弱ぐらいにはなったようだ。

 

 

METライブビューイング「ラインの黄金」

指揮:ジェイムズ・レヴァイン
出演:ブリン・ターフェル、ステファニー・ブライズ
   リチャード・クロフト、エリック・オーウェンズ

 昨年ワルキューレで見た巨大な舞台装置であるマシンを使用した最初の公演らしい。舞台ではこのマシンをまさに変化自在に使用して効果を上げていた。もっともワイヤアクションがかなり多いので、演じる歌手は大変だろうと思うが。

 大がかりな舞台装置は使用しているが、演出の基本は変に奇をてらって時代の置き換えをするようなタイプではなくて、結構オーソドックス。マシンは映画的な効果を上げるのに使用していると感じられる。

 歌唱の方はさすがにMETだけあって豪華かつ万全。圧倒されるような内容である。主役である「堂々たるへたれ」のヴォータンを始め、本作のキーマンであるひねくれ者のアルベリヒ、そして狂言回し的なローゲなど、全キャラクターが存在感を主張している。

 またワーグナー作品をよく把握しているレヴァインのオケのコントロールも見事であった。つくづくセクハラ問題で彼のキャリアが終わってしまったことが勿体ない。

 なかなかに見応えのある内容であった。この辺りは流石。


 上映が終わると京阪とJRを乗り継いで帰宅する。びわ湖ホールでのイベント時は大津までの臨時バスが出ることが多いが、流石にこの程度の人数ではバスは運行しないようである。

 

 

METライブビューイング「アクナーテン」を見てから湯木美術館に立ち寄る

 翌朝は7時半に起床する。いささか体が重いので、とりあえず熱めの風呂で気合を入れる。

 目が覚めたところで近くの喫茶店に朝食を摂りに行く。今日立ち寄ったのは商店街の入口のところにある「香豆里」。しかし店に入った途端にもわっとしたたばこの煙にいぶされる。この辺りの喫茶店は場所柄喫煙可のところがほとんどなので、どうしてもその時の客によってはこういうこともある。これはたまらんなと思っていたら、まもなく喫煙者の一人が出ていったことでようやく少しマシになる。ただいつもこの調子だとしたら、3か月も通ったらCOPDで肺をやられそうだ。

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香豆里

 注文したのはミックサンドのモーニング。モーニングはサンドイッチの種類などで様々あり、トーストとゆで卵のモーニングは一番安くて400円、ミックスサンドは一番高くて580円である。なおひどい店だとエッグサンドとハムサンドを1つずつ出してミックスサンドと名乗るような店もあるが、ここのはキチンとしたミックスサンド。サンドの味自体は良い。またコーヒーも苦みの薄い私好みの味。

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味はまずまず

 朝食を終えるといったんホテルに戻って原稿入力(笑)。10時にチェックアウトすると大阪駅に向かう。METライブビューイングは大阪ステーションシネマで。しかしご時世柄かやけに映画館内に観客が少なく感じる。

 

 

METライブビューイング フィリップ・グラス「アクナーテン」

指揮:カレン・カメンセック
演出:フェリム・マクダーモット
出演:アンソニー・ロス・コスタンゾ、ジャナイ・ブリッジス、ディーセラ・ラルスドッティル

 かなりの異色作である。現代音楽ではあるが旋律のない騒音ではないのでそっちは意外と引っかからない。ただ執拗に繰り返す同じフレーズはかなり脳に突き刺さる印象。その執拗に繰り返すフレーズに乗せて、ゆっくりとしたまるで現代舞踏のような舞台が繰り広げられる。

 本作を見ただけですぐに想像つくのは、演じ手の身体的負担の大きさである。ジャグリングが重要なモチーフとして用いられているが、このジャグリングを要求されるのが本職のジャグラーだけでなくて合唱団も含めてである。しかも全編ジャグリングだらけなので、明らかなミスも何度か見られたが、それはうまく誤魔化していた。またかなりの身体的負担が求められるのはジャグリングだけでなく、歌手のゆっくりとした動きもかなりしんどいだろうと思われた。その上にまるで機械のような超高音の連発の歌唱。これは歌手は体力勝負である。

 ナレーション的な説明がところどころ入るが、出演者にはセリフがないので一種の無言劇のような趣がある。それでも何となく全体のストーリーは分かるような構成になっている。要は急進的な改革を進めたアクナーテンが、最終的には神官ら保守派の反発を受けて排除されてしまうという物語である。それをグラスは古代エジプト語やヘブライ語のフレーズを繰り返す独特の歌唱劇として展開した。これはもはやオペラと呼んでよいのかという疑問もないではないが、終始圧倒されるような舞台であったのは間違いない。

 主人公のアクナーテンを演じたカウンターテナーのアンソニー・ロス・コスタンゾを始めとして、超音波系ボイスで圧倒的世界が展開されたので、何となく頭がトリップしてしまった感覚がある。とにかく異質でありながらも惹き込まれたのは事実。かなり長丁場の作品にもかかわらず異常に集中力の高い作品だけに、体感的には長いとあまり感じなかった。またグラスの音楽に対する理解の深いカメンセックが困難な曲にかかわらずオケを見事にリードしたことも特筆すべきだろう。


 とにかく「変わった作品」というのが正直な感想だが、不思議と嫌悪感は催さなかった。私も以前に比べるとかなり許容範囲が広がったのかも(笑)。

 この後は昨日香雪美術館でポスターを見かけた湯木美術館に立ち寄ることにする。吉兆が所蔵する茶道具などを展示する美術館とのこと。美術館は淀屋橋南のオフィス街の中のビルの2階にある。

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湯木美術館

 

 

「利休イノベーションー茶道具の変革ー」湯木美術館で3/22まで

 茶の湯を変革して、侘茶の体系を確立した利休やその弟子たちに纏わる茶器類を展示。

 展示されていた長次郎作の黒茶碗などがいかにも武骨で利休好みなのだろうが、正直なところあまりに武骨に過ぎて、私などは一緒に展示されていた黒織部の軽妙さの方に惹かれる。侘茶の創始者だけあって、いかにも「渋い」のが利休の好みであるが、私のようなふざけた人間にはもう少しユーモアが欲しいか。笑える織部の方が性に合う。

 それにしても器の類には全く興味のなかった私が、いつの間にやら茶器に魅力を感じ、茶入れの曲線などに美しさを見出すようになっていた。元をたどれば「へうげもの」の影響なのであるが、漫画の効果ってつくづく侮れない。


 美術館自体は小さな展示室が1つあるだけなので、展示点数としてはあまり多くない。美術館内の落ち着いた雰囲気は良いが、入場料の700円はいささか高く感じられ、CPという身もふたもない見方をするとあまり良いとは言えない。もっとも吉兆なんかに来るような者は、こんな程度のはした金なんて意にも介さないのだろうが。

 

 

 ところでよくよく考えてみると、今日は朝にモーニングのサンドイッチを食べただけで、あとは劇場内でホットドッグをつまんだだけ。昼食を全く摂ってなかった。気が付けばガス欠寸前である。そこで通りかかった「OMATCHA SALON」「抹茶そば」を食べることにする。

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お洒落な店構え

 そば屋というわけではなくて抹茶のスイーツがメインの店のようだ。店内がガラガラだったのに、入店した途端に「席を片付けるから表で待ってくれ」と追い出されて思わずムッとする(しかもそのまましばらく放置)。この手によくあるお洒落なことだけが売りの店かと感じたが、出てきたそばは存外まとも。最初の悪印象さえなければ評価も変わるところだが、まあこの界隈に来ることは今後ほとんどあるまい。

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存外まともな抹茶そば

 

 

 これで大阪での用事は終わったので、明日に備えて京都に移動することにする。今日は京都で宿泊予定。九条の京都ユニバーサルホテルを予約している。

 阪急で烏丸まで移動すると地下鉄で九条へ。このホテルは駅から微妙に嫌な距離があるのが難点の一つ。また一階にコンビニが入居しているのは良いが、それがヤマザキ比率の異様に高いローソンなので残念ながら今一つ使えない。そこで途中でセブンに立ち寄って飲み物類と夜食を購入しておく。

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京都ユニバーサルホテル

 ホテルについて一息つくと夕食を摂りに食堂へ。このホテル、珍しいことに夕食がついておりCPとしては高いのだが、これが会社の研修施設感を強める大きな要因ともなっている。実際、今回はどこかの高校運動部と思われる団体と一緒だったし。なお夕食は可もなく不可もなくの内容だが、無性に腹が減っていたのでドカ食いしてしまった。

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今日の夕食

 夕食後は地下の大浴場で入浴。これがあるのがこのホテルの大きなメリット。なおここのホテル、マンション形式で廊下は屋外と同じなのでエレベータまでの移動が寒い。

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大浴場で入浴する

 入浴を終えるとゆったりしたところで、またもひたすら執筆作業(笑)。ホント、この調子で本業の方に精を出していたら、今頃重役は無理でも部長ぐらいにはなっていたかも(笑)。

 夜も更けてきて疲れが出てきたところで今日は就寝する。

 

 

大阪フィル第535回定期演奏会&「上方界隈、絵師済々」&「京都の若冲とゆかりの寺」

 この週末は大阪方面に大フィルのコンサートとMETのライブビューイングを聴きに行く予定。土曜日に家で朝食を摂ると出かけることにする。

 大阪に到着するとまずは今日宿泊するホテルに荷物を預けに行く。今晩宿泊するのは新今宮のホテル中央オアシス。この界隈では高級ランク(と言っても宿泊料5000円以下だが)に属するホテルである。荷物だけを預けるつもりだったが、もう部屋に入れるというので部屋に入って少し休憩することにする。

 昔はとにかくパワフルに一日中動き回った私だが、昨今はもう若くないせいか一移動一休みしないと結構しんどくなってきている。しばし部屋で「麒麟」の再放送を見ながら休息する。このドラマ、怪しい大阪商人のような松永久秀がなかなか斬新である。

 ある程度休息したところで出かけることにする。今日の大フィルの定期演奏会は15時からだが、その前にその向かいの美術館に立ち寄りたい。

 

「上方界隈、絵師済々1(後期)」中之島香雪美術館で3/15まで

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 京都の四条派を中心とする画壇と、大阪の画壇に注目した展覧会の後期。展示品を総入れ替えしての展示となる。本展の最初に登場するのは中国の絵師で長崎に2年ほど滞在した間に日本の絵師に強烈な影響を与えた沈南蘋。いかにも中国的というか、極めて精緻でカッチリと描いた硬質なタッチの絵である。滞在は短かったものの日本での人気はかなりで、後にも彼の作品は輸入されることになったという。また日本でも彼の影響を受けた南蘋派と呼ばれる流派が登場したという。次に彼の孫弟子にあたるという鶴亭の作品が登場するが、確かに精緻な作品となっている。

 一方京都の四条派の流れを汲む絵師も上方では人気であった。そんな一人が松村景文であるが、呉春の末弟で彼に絵を学んだという四条派の正統派である。しかし彼の作品のタッチはあくまで極めて軽快であり、応挙のような重さを感じさせない。面白かったのは彼と彼の弟子である横山清暉の鶴の絵が並んで展示してある(対幅になっている)のだが、景文の線があくまでのびやかで軽快であるのに対し、横山清暉の線は非常に細かくて緻密で、師匠よりも応挙の影響が垣間見えることである。

 次には大阪画壇の猿の絵師こと森狙仙が登場する。彼は猿の絵が非常に巧みだったというが、見ていると猿に限らず動物の毛並みをぼかしなども使用しながら表現するのが非常に巧みなのがよくわかる。このことから見ると、猿の絵師というよりもモフモフマニアだったのではという気がしてくる。

 前期の京都画壇に比べて、大阪画壇は町民が中心であるのが特徴。そのためか分かりやすい絵画が好まれたのか、私から見ても趣味に合致するような作品が多かった。

 なお森狙仙のモフモフ絵画を堪能したい方には以下のような展覧会が大阪歴史博物館(NHK大阪の隣である)で近日開催されるようだが、もう既にこのポスター自身に「もふもふ」と書かれているところから見ても、やはり彼の絵画から感じることは誰でも一緒ということか。

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美術館前にポスターを貼ってあった

 

 展覧会を終えると向かいのフェスティバルホールへ。新型コロナの影響がそろそろ言われ始めている時期だが、目下のところはまだ国内オケは普通にコンサートを行っているようだ。ただ今は横並びで他の状況を見極めているところだろうから、もしどこかのオケが公演中止を決定すれば、一斉に公演中止が相次ぐ危険はある。現に関西フィルなどではいくつかの依頼公演が主催者側の事情で中止されたことがアナウンスされている(関西フィルの財政に与える影響が懸念される)。なお今回も毎回行われているプレトークが中止となったのはコロナの影響ではないかと思われる。

 外来オケのキャンセルなども懸念されているが、現在のところ香港フィルが「香港でのホールが閉鎖されたためにリハーサルが出来ない」というあちら側の理由で延期になった以外は今のところキャンセルの話は聞こえてきていない。だがこれから感染爆発が起こる可能性を考えると先行きは不透明だ。それにしても日本は初期対応を完全にしくじった。国内封鎖の噂で中国から感染の可能性のある者が大量に流入してきた時に、全くのノーチェックで無制限に入国させたのが失策である。コロナが大騒ぎになって東京利権ピックの開催に影響することを恐れて、意図的にコロナなど大したことないように装おうとしたのだろう。国民の生命や財産よりも、自らの利権を最優先にする安倍政権の体質を端的に示している。なおコロナが蔓延することになればこれ幸いと、不況下での増税という明らかな政策の失敗によって招いた底なしの経済失速を、すべてコロナのせいに押し付ける気が満々のようである。例によって自らの利権と責任逃れしか考えていない。

 ホールの中も会員席などに明らかにちらほらと空席が見える。コロナの感染を恐れて外出を控えている者が少なからずいるのではと想像する。特にクラシックのファンは高齢者が多いし。

 

大阪フィルハーモニー交響楽団 第535回定期演奏会

指揮/秋山和慶
ヴァイオリン/辻彩奈

曲目/ハチャトゥリアン:組曲「仮面舞踏会」
   プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲 第2番 ト短調 作品63
   チャイコフスキー:交響曲 第1番 ト短調 作品13「冬の日の幻想」

 一曲目はハチャトゥリアンらしく異国情調溢れる怪しげだが楽しい曲。第2曲での崔氏のヴァイオリン演奏は流石に見事である。全体的になかなかまとまっていて大フィルも良演だった。

 二曲目のプロコのコンチェルトは辻のヴァイオリン演奏の見事さに尽きるだろう。表現の幅があり、奥行きが感じられて懐の深さを感じさせる。若くして辻には早くも巨匠の雰囲気さえ漂い始めたことを感じる。

 メインの冬の日の幻想は、若きチャイコの想いを描き出すようなロマンチックな演奏。やや早めのテンポで起伏豊かに描いた第一楽章が特に印象に残る。またしっかり謳わせた第二楽章も美しかった。秋山はこの曲を後期交響曲と同じスタンスで描いていることが感じられ、そのために交響曲第1番と言うよりも、交響曲第4.5番ぐらいに聞こえてくる。実際に後期交響曲に通じるチャイコらしさというものが浮上してきていた。

 正直なところ私は秋山に対しては「あまり上手くないオケを破綻なく無難にまとめる指揮者」というイメージぐらいしか持っていなかったのであるが、これはベテランをあまりに見くびりすぎていたというものだったらしい。今回秋山が溌剌と描き出したチャイコ像はなかなかにして魅力的であった。

 それにしてもこの半年以内にこのレア曲を3回も聴くという珍しい体験をしたのだが、3人3様で全く表現が異なっているのには驚いた。この辺りの表現の自由さは、定番曲と異なりまだ解釈が定まっていないということがあるのだろうか。今後の可能性さえも感じさせる。

 

 コンサートを終えるとなんばに移動する。目的は高島屋で開催中の展覧会だが、その前に夕食を通り道のなんばの地下で摂っていくことにする。流石にこのご時世柄、私も中国人が大挙している新世界をうろつくのは抵抗がある。

 入店したのは「洋食屋とんはる」。隣に「トンカツ豚晴」という店があることを見ると、とんかつ屋の洋食部門か。「ビーフカツのセット」を注文する。

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なんば地下の洋食屋とんはる

 出てきたビーフカツはボリュームは十分。やや肉が硬い気がするが、カチカチというわけでもない。最近はレアカツなどの柔らかいカツばかりの中でむしろこれは異色に見えるが、本来はこれも正しい関西のビフカツではある。味的には満足できるものでまずまずの内容。ソースの味も悪くない。1340円という価格を考えると満足できるものだろう。

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ビフカツセット

 夕食を終えると高島屋へ。展覧会が開催されているグランドホールは7階。高島屋のクレジットカードを持っている私は入場料金が半額になる。このカード、クレジットカードとして使ったことは一度もないが、なかなかに使いでのあるカードである(笑)。

 

「京都の若冲とゆかりの寺ーいのちの輝きー」

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 細見美術館所蔵の若冲の作品に加え、若冲ゆかりの京都の寺院が収蔵する若冲作品を集めて展示してある。一般に若冲の作品と言えば緻密で鮮やかな本画のイメージが強いようであるが、本展の展示作はほとんどが墨一色でサクッと描いた軽快で楽しげな作品である。

 細見美術館収蔵品は以前に同館で開催された若冲展で見た記憶のある作品ばかりである。楽しげで笑える作品もあるが、やはり鶏の若冲などとも言われるだけあり、鶏を描いた一連の作品は、単色でサクッと描かれていても躍動感に満ちている。

 一方寺院所蔵品は実に多種多様。かなり精緻に描いている作品もあれば、これは座興として描いたのかと感じるような自由奔放な作品もある。なお虎の絵のように本画でよく似た作品を見たことがある作品もある。とにかく若冲の画業の幅は実に広い。

 最後は若冲の弟子たちの作品も併せて展示されていたが、若冲の描き方に近づこうと苦闘しながらも成功していない作品から、最早真似をすることは諦めて開き直って独自の道を進んだのではないかと思わせる鶏の屏風まで様々であり、弟子の苦悩のようなものも感じさせられたのである。

 

 展覧会鑑賞後は高島屋のレストラン街をウロウロする。今日はお昼を抜いたせいで正直なところまだ微妙に腹が寂しい。かといってここでガッツリ食べるのは問題外。それに高島屋のレストラン街は「美々卯」だの果ては「吉兆」だのと私の懐具合とはかけ離れた店ばかりである。結局は見かけた「一凜堂」に入店する。パスタと甘味の店のようだが、さすがにここでパスタはない。と言うわけでせめてもの言い訳で「シーザーサラダ」を注文する。

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高島屋レストラン街の一凛堂

 非常にガッツリとしたサラダである。なかなかに美味いが、カロリーも結構高そうである(笑)。これではあまり言い訳になっていないような・・・。で、毒食わば皿まででついでにデザートも注文「宇治抹茶白玉パフェ」を注文する。

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ガッツリとボリュームもあるシーザーサラダ

 なかなかに美味いがいささか甘い(笑)。この手のパフェには増量のためにコーンフレークを入れてあることがよくあるが、ここのパフェはコーンフレークではなくてシリアルを入れている。これがパリパリとした歯ごたえで正解。コーンフレークよりも湿気にくいのがポイントだろう。ただ満足はしたが、やはり今の私にはパフェはいささか甘すぎたか。後々まで胃の中で甘さが渦巻くような感触が残ったのである。

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このパフェはいささか甘すぎたか

 腹を十分に満たしたところでホテルに戻る。このホテルは大浴場はないが風呂とトイレがセパレートタイプなので、風呂に湯を張ってゆったりとくつろぐことにする。このための高級ホテルである(笑)。

 風呂から上がるとテレビをつけるがろくな番組がないので原稿入力作業をすることにする(私は本当に本業の仕事以外は勤勉である(笑))。そして疲れたころに就寝することにするのである。

 

PACオケ第121回定期演奏会 ミラノフ&児玉桃のチャイコフスキー

 この土曜日はPACのコンサートに出かけることにした。実はPACは演奏レベル的にあれなのと、曲目がチャイコフスキーのマンフレッド交響曲という決して出来の良いとは言えない曲であることから当初は行くつもりがなかった。しかしこの日がスケジュール的に空白になったことから少し調べたところ、指揮がミラノフであるということ(ミラノフは以前にPACで結構名演をしている)とたまたま比較的良い席が売りに出ていたこと(多分直前キャンセルがあったのだと思う)から急遽聴きに行くことにした次第。

 

三ノ宮で昼食

 土曜の昼頃に家を出ると昼食は乗り換えの三ノ宮で摂ることにする。立ち寄ったのはミント神戸地下の「海山」。海鮮丼が中心の店のようだが、寿司居酒屋というところである。「まぐろつくし丼」を注文する。

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ミント地下の海山

 丼はマグロの赤身やビンチョウ、さらにネギトロなどが盛り合わせてある。ここに黄身醬油をかけて頂くらしい。味的にはまずまず。私的にはご飯が寿司ご飯であることが有り難い。

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マグロつくし丼

 昼食を終えるとまだホールに向かうに若干早かったことから、数年ぶりに三ノ宮センター街をうろついてみる。しかし全く何のあてもない繁華街ウォークはかえって孤独感を深めるだけ。以前の「偉人たちの健康診断」で、永井荷風は浅草などの繁華街をうろつきながら、そこで孤独感を深めて創作意欲に結びつけていたという類いの話があったが、文豪でない私はこの孤独感を何で埋めれば良いのだ? 劇場映画「わが青春のアルカディア」の主題歌(渋谷哲平が歌ったやつ)では「孤独でなければ夢は追えない」とあったが、私には今更追うべき夢ももうないし(もう既に人生の先は見えている)。

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 しばしサンブラ(三ノ宮をブラブラの略・死語)をした後、ホールに向かう。チケット販売サイトの情報では、今回はほぼ完売に近かったはず。補助席まで出ている模様である。それでも空席がいくらか目につくのはご時世か。

 

PACオケ第121回定期演奏会

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指揮:ロッセン・ミラノフ
ピアノ:児玉 桃

〜オール・チャイコフスキー・プログラム〜
ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調
マンフレッド交響曲

 チャイコフスキーのピアノ協奏曲は児玉の演奏は非常に力強くて堂々としたものである。またテクニック面でも揺らぎはない。ただいささか早弾きの傾向があり、音色は力強いもののいささか色気に欠けるきらいはある。ロマンティックに聴かせるべき場所で、ガツンガツンとやや固めのタッチなのはいささか残念。なおバックのPACオケについても、残念ながら所々でアンサンブルの甘さのようなものは垣間見える。

 後半のマンフレッド交響曲についてはミラノフはかなりスケールの大きな指揮を行っている。第一楽章についてはPACの管楽陣にもう一段のキレの欲しさを感じる。全体的に音色が甘いというか弱い。この楽章はもう少し厳しさが必要。第二楽章以降は尻上がりに調子が上がっていった印象だが、最終楽章についてはそもそも曲自体が冗長すぎる構成になってしまっているので、どうしても緊張感が緩んでダレてしまうのは否定できなかった。やはりこの曲はチャイコの魅力は散見できるものの、そもそもの曲自身の出来は今ひとつである。さすがにミラノフといえども、それはどうしようもなかったようだ。

 アンコールに「白鳥の湖」があったのだが、これがミラノフがノリノリのなかなかの名演。今のPACオケもマンフレッドのような厳しさを秘めた曲よりは、こういうロマンチックな曲の方が相性が良いように感じられた。