徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

広響チャンネルを聞く

 コンサート欠乏症が深刻化しつつある事態ですが、広響がYouTubeの広響チャンネルでメンバーが練習場に集まって収録した無観客演奏を公開しているのでそれを聴きました。

www.youtube.com

内容
・グリーグ:「ホルベルク組曲」から前奏曲
・モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」(Vn:佐久間聡一、Cond:下野竜也)
・ハイドン:チェロ協奏曲第1番(Vc:マーティン・スタンツェライト)
<下野竜也・指揮講座 生徒:高和雅>
・ベートーヴェン:ロマンス第2番(Vn:蔵川瑠美)
・イベール:木管3重奏のための5つの小品(Ob:板谷由起子 Cla:品川秀世 Fg:徳久秀樹)
・モーツァルト:クラリネット5重奏曲より(Cla:品川秀世)
・チャイコフスキー:弦楽セレナーデより (Cond:下野竜也)
・エンディング/グリーグ:「ホルベルク組曲」からリゴードン

 

 画質についてはホームビデオレベルなんですが、音についてはいつも広響の定期演奏会を収録している「ブレーン・ミュージック」に協力してもらったとのことで、なかなかに良好な音質で収録されています。

 

 一聴した正直な感想は「あれっ、広響ってこんなに上手かったっけ」ってもの(笑)。広響のコンサートは何度か行ってますが、元気はあるがややアンサンブルが雑な大雑把なオケという印象があったので、今回結構精緻なアンサンブルを聴かせているのは意外(笑)。私が何度か行った大編成ではなく、広島チェンバーオーケストラというような雰囲気の小編成だったからでしょうか。なかなかまとまりの良い冴えた演奏を聴かせている。こういうのもなかなか良いなと感じさせられました。

 それとオマケのように入っていた下野竜也による指揮講座は「ああ、指揮者って単に棒を振り回してるんじゃなくて、さすがにこんな細かいところも考えてるんだな」ってことがど素人の私のような人間にも分かって良かったです。

 なお「ブレーン・ミュージック」の収録が良好であることも大きく効いている。いくら演奏が良くても先の京都市響の定期のように、音声が遠目のボンヤリしたものだったら演奏の真価は伝わってこない。その点、今回の広響の配信は生々しい良好な音声で行われているので各楽器の微妙なニュアンスのようなものまで伝わってくる。

 3月の定期演奏会と東京公演が中止になった直後に収録されたものとのこと。東京公演は広響にとっても大きなイベントであったろうから、それが中止となったのは痛恨であったろうと思われる。まるで戒厳令下のような状態で音楽発表の場が制限される中で、せめて音楽を伝えたいの思いであろうと考える。今後も広響を応援したいところである。

 

4オケも飛びました

 まあこれも予想通りではあるのですが、4/18にフェスティバルホールで開催予定だった4オケコンサートも飛んじゃいました。中止かと思っていたら延期とのことですが、その延期日程が2021,3.3とのことなのでまる1年先。正直なところ行けるかどうかの予定なんて分からない・・・とカレンダーを見ていたら平日の水曜日です。開演時刻は変化無しで14時からとのことなので平日の昼からの公演。普通のサラリーマンとかなら休暇を取らないと聞きに行けません。これは結構払い戻しの請求ありそう。私は休みとって行くつもりですが、本当に行けるかどうかはその時にならないと分からない。チケットの払い戻し期間が今月いっぱいというのがツライところ。

drive.google.com

 それにしても中止だと思ってましたが延期とは、やはり中止時の払い戻しが財政的にキツいオケが増えてきたのではという気がする。日本センチュリー交響楽団は大分前から寄付を募ってましたが、関西フィルも最近になって寄付を依頼し始めています。大阪交響楽団なんてこんなことがある前から財政は厳しいということを聞いているので推して知るべし。一番財政的に強いように感じられる大フィルでもこれだけキャンセルが続けばもう火の車でしょう。

 

 もう4月中のコンサート開催はまず無理でしょう。4/24の京都市響の定期、4/29の関西フィルの定期などはまだアナウンスが出てませんが、現状を見るとまず自粛のままGWに突入で、果たしてGW明けに自粛が解けるかどうかが微妙なところだろうと思われます。なお当然といえば当然ですが、5/6のトスカニーニフィルも中止のアナウンスが出ました。彼らはイタリアですから、どう考えても来られるわけもない。

 5月ぐらいに事態が正常化したら良いんですが・・・。正直難しいというのが現実でしょう。目下のところ私が一番気になっているのは、5/15,16の大フィルの定期、デュトワが来日できるかどうかです。去年あれだけの名演を聴かせてくれただけに、これが流れると残念すぎる。

 

ベルリンフィルデジタルコンサートホールでペトレンコを聴く

 外出禁止令でオケの方もリハーサル自体が不可能になってきているので、先月は何件かあったライブ配信も今月は全く期待できない状態。そんな中、次々とコンサートの中止の報が舞い込んできて、その度に特定記録郵便でチケットを送り返している日々である。そろそろコンサート欠乏症が重症化しつつあるので、先月に1ヶ月の無料手続きをしたベルリンフィルデジタルコンサートホールを視聴することにする。

www.digitalconcerthall.com

 それにしても流石だと思うのは、映像も綺麗し音質も良いこと。また立ち上げ時に一瞬止まるようなことはあっても、一旦始まったら途中で音が途切れるようなこともない。さすがに有料サービスのことだけはある。このクオリティがないとなかなかお金は取れないだろう。YouTubeやニコニコ動画やカーテンコールなんかとはレベルが違う。

 

 

 で、今回聴いたのはキリル・ペトレンコ指揮の2020.2.15の公演。曲目はストラヴィンスキーの3楽章の交響曲、ベルント・アロイス・ツィンマーマンのバレエ組曲《アラゴアーナ》(ブラジル風奇想曲)、ラフマニノフの交響的舞曲というややマイナー曲の3本立て。

 ストラヴィンスキーについては初めて聞く曲なのだが、簡潔な音楽の中にストラヴィンスキーらしいやや古典を思わせる響きがある曲。ペトレンコの演奏は最初から切れ味鋭く、ベルリンフィルもなかなかに鋭い演奏。引き締まっていて聴き応えあり。意外と面白い曲だなと思わせる。

 ベルント・アロイス・ツィンマーマンについてはいかにも現代音楽の響きではあるが、曲自体はオーソドックスで特に奇々怪々なわけではない。バレエ組曲ということもあるのか、意外に馴染みやすい曲。

 そしてラフマニノフの交響的舞曲については、私は今までN響や他の日本のオケで聴いたことはある曲だが、その時にはあまり面白くなくて喧しいだけの退屈な曲という印象だった。しかしペトレンコがキレッキレでベルリンフィルもさすがに冴え渡る演奏。こういう演奏で聴くと全く別の曲に聞こえ「意外と面白い曲じゃん」と曲の印象まで一変してしまった。

 ペトレンコのキレッキレの演奏に場内も大盛り上がりの模様で、結局はペトレンコの一般参賀まであったという内容。やっぱりベルリンフィルは格が違うと感じずにはいられなかった。

 

 

4月のコンサート軒並み中止へ

 大体予想通りで覚悟はしていたのであるが、ここに来て4月のコンサートが軒並み中止の連絡が相次いでいる。まず4/10,11の大フィルの第537回定期演奏会が中止との報が伝わってきた。続いて京都市響の4/12のスプリングコンサートも中止である。京都市響は4/24に定期演奏会があるが、正直なところそれも怪しいだろう。さらには予想通りではあるがサンクトペテルブルクフィルの来日も中止。これはロシアが出国禁止処置を取っているから当然予測されていた結果ではある。

 ちなみにMETライブビューイングの方も上映予定館の閉鎖などが相次いでいる(関西、首都圏の劇場は軒並みこの週末は閉鎖)ことから、ムビチケなどの払い戻し方針が示された模様。またMET本体での今シーズン上演終了を受けて、終盤プログラム(「トスカ」と「マリア・ストゥアルダ」)は急遽過去のアーカイブ(「トスカ」が2018年版、「マリア・ストゥアルダ」は2013年版)に切り替えられることとなったようである。この辺りも残念ながら想定内ではある。

 

 なお先月度に中止されたコンサートはライブ配信などが行われたが、それは中止になるまでにリハーサルなどを終えていたからであり、今月度に中止のコンサートはそもそもリハーサルの時点からほぼできない状態であろうから、ライブ配信などの措置は不可能であろうと思われる。もっとも無料のライブ配信をしても、オケにとっては経済的メリットは一銭もないのだから、聴衆にとっては救いになっても、オケにとっては何の救いにもならないが。

 いずれも返金処理されるようだが、コンサートキャンセルに伴う損害はチケットの払い戻しだけでなく、それに纏わる事務的経費も伴う。確実に各オケの財政は毀損して行っているようであるが、政府は「あくまで自粛だから補償はしない」という姿勢を貫いている。ということは勝手に判断して開催しても良いということになるが、それをさせないように日本人特有の「同調圧力」をフル行使して、自粛に逆らうところは自警団紛いの連中が総攻撃するように仕向けている。

 実際にここまでコロナが蔓延しつつある状況でコンサート開催が困難であるのは私も理解するが、金銭的補償一切無しの「自粛」という形で負担を全て主催者側に押し付けるのは卑劣極まりない態度であると軽蔑する。諸外国では「文化の危機」と救済用の予算を投入している国が大半であるのに、「自分のお友達には税金を投入しても、国民には一切税金を使わない」という今の政府は既に末期症状である。

 

京都市交響楽団のライブ配信を聴く(日本センチュリー交響楽団もチラチラチェックしながら)

 今日は京都市交響楽団と日本センチュリー交響楽団のライブ配信がほぼ重なる時刻に。日本センチュリー交響楽団の方をタイムシフトで聴ければと思っていたが、残念ながらタイムシフト放送はないらしい(なぜ?)。では京都市交響楽団がアーカイブになるのを待つという手もあるのだが、実際にところはこっちもアーカイブになるかは保証がない。結局は両者を天秤にかけて比較した結果、京都市交響楽団をチョイス。日本センチュリー交響楽団は裏で音を切った状態でちょくちょくチェックするという形に。

 

京都市交響楽団第643回定期演奏会

広上 淳一(常任指揮者兼ミュージック・アドヴァイザー)
森谷 真理(ソプラノ)

シューベルト:交響曲第5番変ロ長調 D.485
マーラー:交響曲第4番ト長調

 シューベルトは弦楽主体の非常に滑らかで美しい曲。爽やかさの中に優美さがある。こんな沈んだご時勢下には心安らぐような曲である。さすがに京都市響のアンサンブルは美しい。また広上はこのオケを徹底的に優しく美しく鳴らす。

 後半のメインはマーラーの4番。苦悩が見え隠れする曲が多いマーラーの中で、珍しいぐらいに清々しくて爽やかな曲がこの曲なのであるが、広上の表現はそれを徹底的に美しく、そして非常に明るく描く。ゆっくり目のテンポで進む第1楽章などはまさに天上の音楽を思わせる美しさ。やや暗い影がよぎる部分がある第3楽章でも基本的に音楽が暗黒面に落ちることはない。力強く生命の讃歌を歌い上げるかのような趣がある。そして天上の歌が入る最終楽章へとなだれ込み、音楽は美しくうっとりとしたまま終わる。

 さすがに広上節が炸裂していたし、広上の小動物的なタコ踊りも絶好調であった。そして京響も広上の意図に従って見事な音楽を展開する。この両者のコンビが既に最高レベルにまで達していることを改めて感じさせる見事な演奏であった。

 

裏では日本センチュリー交響楽団がかなりの名演の模様

 ちなみに京都市響が休憩に入ったところで日本センチュリー交響楽団に切り替えると、ちょうど1曲目のフィンガルが始まるところであった。このフィンガルがかなりの名演。この曲は下手をするとまとまりのないグダグダの演奏になることが多いのだが、センチュリーの小編成であることも効果を上げているのか、非常にまとまりの良いキレのある演奏。また裏の京都市響を意識しているのか、飯森もオケも非常に気合いが入っているのが画面を通じても伝わってくる。今回の飯森は明らかに「良い時の飯森」。音楽に躍動感があり生き生きとした生命に満ちている。

 次のメンデルスゾーンの2本のクラリネットのための協奏的小曲が始まったが、この曲は初めて聞く曲なのだがこれが結構格好良い。またクラリネットの演奏もなかなかに見事で名演の予感。途中で京都市響の休憩が終わったので断腸の思いで放送を切り替えたが、これは最後まで聴きたいという思いを非常に持った。

 京都市響のマーラー終了時にはベートーベンの交響曲第7番の第3楽章の途中であったが、やはりセンチュリーと飯森のただならぬ気合いの入り方が伝わってくる。相当に熱を帯びた演奏であり圧倒された。日本センチュリー交響楽団のコンサートは何度か行っているが、正直なところここまで熱を帯びた演奏は初めて聴いたような気がする。

 

ライブ配信のレベルでは残念ながらニコニコ動画の圧勝

 結局のところコンサートの内容としてはほぼ互角に近いような印象を受ける(センチュリーの方を断片的にしか聴いていないので断定はできない)が一番の問題だったのはライブ放送の品質。以前からカーテンコールのライブ配信は音質・画質共に問題が多いが、今回ももろにそれが出ていた。最初から音量レベルが低すぎる上に風呂場のような籠もった音声で明瞭さに欠ける。さらに致命的なのがマーラーの第4楽章で、ソプラノの声がかすかに遠くから聞こえてくるだけ。マイクセッティングが根本的になっていないのである。この楽章でソプラノの声が聞こえてこないことは音楽の本質自体に関わる重要事だけにこれは深刻。正直なところ、クラシック専門配信サイトを名乗っている割にはお粗末に過ぎると断言せざるを得ない。非常に残念なことながら、ライブ配信としてはニコニコ動画に惨敗と言わざるを得なかった。カーテンコールの今後の奮起に期待したい。

 今回の配信で日本センチュリー交響楽団はかなりプラスの宣伝になったろうと感じる。いろいろと苦境が伝えられるオケだけに、これが転機となれば喜ばしいことである。ただカーテンコールの方は逆に悪評が広がることになりかねない。まさかとは思うが「無料だから仕方ない」という認識なら、これは組織としての存廃に関わる事態であると考えた方が良いと思う。私としてはヨーロッパなどに比べて非常に遅れている日本のコンサート配信の現状を考えると、クラシック専門配信サイトに期待するところ大であるので、何とかしてもらいたいところである。

 

海外でも無観客ライブ配信が出てきているようです

 日本で各地のコンサートが全滅状況で、無観客ライブ配信が行われていますが、同様の状況は海外でも発生している模様。YouTubeにも複数上がっているようです。


The Philadelphia Orchestra: BeethovenNOW: Symphonies 5 & 6


MSO Live | Rimsky-Korsakov's Scheherazade

 

 フィラデルフィア管弦楽団のライブを聴いてみました。3/12のライブとのことです。指揮はヤニャック・ネゼ=セガンで曲目はHabibiのJeder Baum spricht(すべての木が話す-Google翻訳)にベートーヴェンの交響曲第5,6番。

 Habibiなる人物が不明なのだが、ザッと調べたところによると作曲家兼ピアニストのIman Habibiのことと思われる。Jeder Baum sprichtは現代音楽的な奇っ怪なものではなく、結構普通の管弦楽曲で実際に木々がざわめいているような雰囲気のある曲。ネゼ=セガンはこの曲から続けて「運命」に突入する。

 フィラデルフィア管弦楽団は以前に来日公演を聴いた時に、あまりに屈託のない陽性な音を出すなと感じたのであるが、この運命においても全くその通り。見事なほどに屈託皆無の運命である。前進力があって軽快な力強い音楽であり、正直なところ「運命」の演奏としてはいささか疑問がある。

 このカラーがプラスに働くのは次の「田園」において。生き生きとした演奏が曲想と合致するので、下手すると退屈になりかねないこの曲が、実に瑞々しく躍動感溢れるものとなっている。

 この陽性の音色はオーマンディー時代のゴージャスなフィラデルフィアサウンドの残り香だろうか。しかしどんな曲でも常にこのサウンドとなれば、やはり深刻な曲の場合にはどうしても軽薄さにつながってしまう。以前に私が来日公演を聴いた時に不満を感じたのもまさにその点だった。まるで映画音楽のように聞こえたブラームスを私は「ぬるい」と感じたのだが、そのことを思い出した。

 

radikoで群馬交響楽団の定期演奏会を聴く

 3/21の群馬交響楽団の定期演奏会はFM群馬で無観客生放送で中継されたが、残念ながら関西の私には聴く方法がなかったことから、この度radikoのプレミア会員(月額350円+税)になってタイムフリーのエリアフリー視聴をすることにした(放送後一週間以内の番組を視聴できる)。

 正直なところ音はあまり良くないなという印象。明らかに高音端がスパッと切られているのは、腐りかけの私の耳でも分かるし、音全体がやや団子な印象。現地のマイクのセッティングが悪いのか、元々のFM群馬の音が悪いのか、radikoの音が悪いのかは定かではないが。

 それにしてもやはり絵が全くないというのは意外にしんどい。特に今回のコンサートは、指揮者はロマンスグレーのダンディ大友にソリストは美人ヴァイオリニストの荒井里桜というビジュアル系コンサート(笑)なので、これで映像無しは寂しすぎるだろうというところである。

 私は元々はピュアオーディオ派で音楽は常に音だけ聞くのが当たり前だったんだが、映像無しだと寂しく感じるようになったとは、全く堕落したものである(笑)。まあテレビ放送が好きなわけではなくて、ライブが好きなわけではあるが。

 

群馬交響楽団第556回定期演奏会

指揮/大友直人
ヴァイオリン/荒井里桜

シベリウス/ ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47
エルガー/ 交響曲 第2番 変ホ長調 作品63

 荒井のヴァイオリンは技術的には全く問題がない。またなかなかに良い音色を出している。ただこの曲はそもそもが淡々としたところがある曲だけに、もう一段深い感情表現が欲しいところである。決して淡泊な演奏でもないのだが、まだそこまで大胆には表情付けはしていない印象である。さらに心の奥にグッとくるようなところがあればもっと魅力的になる。

 二曲目のエルガーはいかにもの複数の旋律が錯綜してロンドンの霧のように入り乱れる曲。こうなると音楽が団子になりがちなのだが、大友はなかなか上手く交通整理しているようには感じられる。正直な印象は「よくは分からないが、なかなか綺麗な曲じゃないか」というところ。エレガントで雰囲気の良い演奏というのは、大友らしいところではある。

 群馬交響楽団の演奏はラジオを通してのことなのでハッキリしたことは言えないが、技術水準が高いオケというわけではないのか、所々音色が濁るところはある。それでもラジオを通してでも熱気は伝わってくるような気がする。もう少し切れ味スッキリの演奏ができるようになれば、さらに一段上のステージに上がれるのではないかという気がする。

 

京都市交響楽団の3/28の定期演奏会のライブ配信決定

 中止になった京都市交響楽団の3/28の定期演奏会がカーテンコールで無観客ライブ配信されるようです。広上のマーラー交響曲第4番とのことなので私としては是非とも聴きたいと思っていたコンサートですからありがたい限りです。

www.kyoto-symphony.jp

 

 ただ3/28の午後2:30からというのは、同じ日にやはり午後3時からニコニコ動画で無観客生配信するという日本センチュリー交響楽団ともろに競合です。まさかライブ配信までが競合するとは・・・。

www.century-orchestra.jp

 まあ私としては京都市交響楽団の方を生で聞いて、ニコニコ動画の方は多分タイムシフトでも聴けると思うから(以前の東京交響楽団の時はそうだった)、それが終わってから日本センチュリーかな。

 ちなみに今、カーテンコールで慶応ワグネルのマーラーの交響曲第10番を聴いているんだが、やはりカーテンコールは若干音量が小さめだ。それにしてもさすがにアマチュアの雄と言われるワグネルは上手い。単純に一回のコンサートだけの比較だったら、ここより落ちるプロオケもある。

 

山形交響楽団の定期演奏会を改善されたアーカイブ配信で再度聞く

 先のライブ配信では音量が低すぎて良く聞こえないという残念な結果に終わった山形交響楽団の定期演奏会ですが、問題であった音量については再調整されたものが、カーテンコールのサイトで4/5までアーカイブ配信されることになったようです。おかげで一曲目からバッチリと聞こえるようになっております。画質面にはまだ不満がないわけではありませんが(ベルリンフィルのデジタルコンサートホールなどと比べるとやはり見劣りはある)、音楽は良好に聴けるようになりました。と言うわけで前回には感想を述べるところまで行かなかった前半について。

curtaincall.media

 

山形交響楽団第283回定期演奏会

指揮:阪哲朗
ヴァイリオン:神尾真由子

ロベルト・シューマン:序曲、スケルツォとフィナーレ 作品52
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
ロベルト・シューマン:交響曲 第2番 ハ長調 作品61

 一曲目はシューマンらしくロマンティックで躍動感溢れる曲。例によって構成の甘さは垣間見えるが魅力的な曲である。さて山形交響楽団の演奏であるが、溌剌として颯爽としている。ところどころアンサンブルに乱れがないわけではないが、阪が軽快なノリの良い指揮を行っているので、明らかに欠点よりも魅力の方が遥かに優って聞こえている。

 二曲目は神尾をソリストに迎えてのチャィコの協奏曲。相変わらず神尾のヴァイオリンは圧倒的な表現力であり、冒頭から魂を鷲掴みするようなところがある。阪の指揮と山形交響楽団は過度に感情表現に走ることはなく、神尾の情感タップリのロマンティックな演奏をしっかりと地味目に支えるという印象。決して出しゃばらず、結果としてはソリストに注目が集まるというところがある。この曲は神尾のヴァイオリンを堪能するだけで十分である。

 この後はシューマンの交響曲で、これについては以前に記しているので省略するが、一曲目の雰囲気がそのまま三曲目に通じることで、コンサート全体での統一感的なものが現れている。

 

 今回のアーカイブ配信によって、ようやく山形交響楽団の定期演奏会の真価を体感できることになり非常にありがたいところである。なお近日中に先日の大阪フィルの定期演奏会のアーカイブ配信もあるとのことなので、まだ未体験の方は是非とも視聴されることをお勧めするし、「あの感動をもう一度」というのもありだろう。さすがに井上道義らしい一筋縄ではいかないハルサイなので聴き応えありである。

 今回カーテンコールがこのレベルでの配信が可能であると分かったことで、ベルリンフィルのデジタルコンサートホールに相当する日本のライブ配信システムをカーテンコールをベースに確立するということも可能性として考えられるのではという考えに至った。日本オーケストラ連盟辺りが中心に、それが無理なら有志のオケが協力して考えてもらいたいところである(N響や読響などの自身の配信メディアをもっているオケは乗ってこないことが予想されるので)。オケがコンサートチケット以外からも収益を得る手段となり得るし(上手くいけば一度のコンサートで何度でも美味しいということになる)、さらにはファンの裾野を広げることにも貢献できるので。私としてもわざわざ出向くことのできない地方のコンサートを聴いたり、ダブルブッキングになってしまったコンサートを聴くことができれば非常にうれしい。災い転じて福となすで、今回の逆境が日本のオケの新たな展開につながれば喜ばしいところである。

 

関西フィルの3/31の定期演奏会も中止です

 どうなるかの動向に注目していた3/31の関西フィルの定期演奏会ですが、残念な予想が的中して中止となりました。どうやらクラリネット奏者アレッサンドロ・カルボナーレ氏の来日が不可能となった模様。ヨーロッパでの状況悪化の影響が直撃した模様です。

kansaiphil.jp

 

 関西フィルとしては代役を立てるとか無観客ライブ配信なんかも検討したそうですが、それよりも近い将来同じ演者の同じプログラムで再演をすることを考えているとか。まあそれが正解でしょう。無観客ライブをしても楽団には一銭も入りませんので、財務基盤が決して強いと言いにくい関西フィルとしてはしんどいでしょう。

 とりあえず払い戻しがあるようですので、それをいずれ行われる再演に充当することにしますか。実際は再演が確定なら延期という形でチケットをそのまま使えるようにする方が簡単と思いますが、まだ先の見通しが分からないのでスケジュールの設定なんかが難しいんだろう。

 これで3月内のコンサート全滅で、4月に自粛突入は必至。恐らくムジカエテルナは遠からず中止がアナウンスされると予測できるので、次の焦点は大阪フィルの4/10,11の定期と4/12の京都市響スプリングコンサート。なおMETの方からも公演中止とかの報が伝わってきていることから、予想外の展開としてはMETライブビューイングの方にまで中止が出てくるかも知れない。その時にはムビチケの払い戻しはあるんだろうか?

追加

 関西フィルの方から払い戻しの方法についての案内が出ました。

kansaiphil.jp

 

自粛の日はベルリンフィルの無料配信で

 コロナのどさくさ紛れの、安倍の「僕チンに献金しない業界は全部公演中止ね」政策のせいであらゆるコンサートが中止に追い込まれ、挙げ句の果ては外出禁止令で家にお籠もりを余儀なくされている方が多い(まさしく私がそうなんだが・・・あっ、コロナに感染したという意味じゃないよ)と思いますが、そういう層をターゲットにしているのかベルリンフィルが映像配信している「デジタルコンサートホール」を1ヶ月間無料公開とのこと。当然ですが日本人でも可です。と言うか、下記のページにアクセスすると「日本語で」手続きが出来ますので、私のようにドイツ語はおろか英語も不自由な者でも全く心配がありません。メールアドレスを登録するだけで誰でも見ることが出来ます。なお3/31までに登録し、クーポンコード「BERLINPHIL」を使用してくれとのこと。

www.digitalconcerthall.com

 


 早速ラトル指揮のシューマンの「春」を視聴。やけに快速ですっ飛ばす演奏は賛否ありますが、さすがにベルリンフィルは配信で聴いても上手いです。

 ベルリンフィルとしてはこの無料視聴から一部でも後に有料視聴に移行してくれたら、ビジネス的にも万々歳というところでしょう。確かに音質、画質共に明らかにYouTubeなんかよりは良いし、月額1700円ほど(ユーロと円の相場で動くでしょうが)となると、私も心がグラッと来ます。さすがに天下のベルリンフィルは商売も上手い。

 この姿勢は日本のオケも見習うべきでしょう。もっとも日本に単独でベルリンフィルほどの集客力を誇るオケはないので、どこかのオケが単独でこのシステムを確立するというのは採算的にしんどいと思いますが。日本のオケ連盟辺りが中心となってシステムを確立して、各オケの動画ごとに100円とかの金を集めて配信するという方法はありではと感じます。そして収益は連盟とオケで分配する。上手くいけば海外のファンさえ獲得できる可能性もあります。もっとも有料で配信するとなると、今のような「無料配信だから仕方ない」というような音声レベルの不安定さ(音量が極端に低かったり、音声が入らなかったり)は許されないことになるでしょう。なおカメラワークの稚拙さも解決したいところではありますが、それをしようとすると負担が大きいので、最悪は客席からの固定カメラでも仕方ないと思います。音声さえキチンとしていたら許されるでしょう。実際にライブに行っても、ステージ上をウロウロと歩き回ることは出来ないのですから。なお個人的には客席からの固定カメラの方が臨場感があるので好きですが(カメラが次々と切り替わって音場定位と映像が合わないのは落ち着かない)。

 今のように「無料配信」ではオケの方に宣伝以外の見返りは全くないので、これを続けるのは無理ですから、今のうちに次代を睨んだ方策が必要でしょう。それでなくても国内でのクラシック分野は衰退傾向にあるのですから。

 

京都市交響楽団の定期演奏会も中止

 昨晩のグダグダの専門家会議とやらの発表を聞いた時から大体予想はついていたが、3/28,29の京都市交響楽団の定期演奏会も中止ということになったようです。ライブ配信でもして欲しいところですが、その予定はないようです。この公演は自粛の4月突入の最後の防波堤のような位置の公演だったので、これはなし崩し的に4月の公演もすべて怪しくなってくるでしょう。

www.kyoto-symphony.jp

 先日大フィルが無観客公演ライブ配信をしましたが、次の4/10,11の定期演奏会も怪しくなってきました。4/10の京都でのムジカエテルナはロシアの現在の状況から見てもかなり難しいでしょう、その後のサンクトペテルブルクも怪しいです。京都市響は4/12にスプリングコンサートを行いますが、大フィルの定期が飛ぶようだと、多分それも無理です。そして最終防衛線は4/18の4オケ公演辺りか。ここを突破されるようだとGWが自粛期間に突入することになり、オケのコンサート自体はほとんどありませんが、日本の各観光地が壊滅的打撃を受けていよいよ日本経済壊滅ということになりかねない。

 

大阪フィルの定期演奏会のライブ配信を聴く

 今日は午後7時より放送された大阪フィルの定期演奏会のライブ配信を聴いた。配信は山形交響楽団の時と同じカーテンコール。正直なところ嫌な予感がしていたが、残念ながら予感的中で、最初のハイドンは音量レベルが低すぎて良く聞こえない状態(しかも冒頭部は音声自体が切れていた)。しかも画質も荒く、止まることも多々。モーツァルトの時から音声レベルは何とかなり、ストラヴィンスキー以降は画質・音質共に安定した印象(それでも途中で1回止まったが)。

 開演前に井上道義によるトークがあったが、例によって脱線しがちで、挙げ句に国境を封鎖するのは馬鹿らしいとか、テンションが上がりすぎたのかついには「死を恐れるな!」とか言い出したので、オイオイこれはヤバいぞと思っていたら、さすがにストップがかかった模様(笑)。まあマエストロの気持ちはよく分かる。私なんかでも「パチンコを禁止しないくせにコンサート禁止なんて馬鹿げたことをするな! 献金の額で判断するんじゃねぇ!安倍の馬鹿野郎!」とか言いそうだし(笑)。

 

大阪フィル第536回定期演奏会

指揮:井上道義
ヴァイオリン:アイレン・プリッチン

ハイドン/交響曲 第2番 ハ長調 Hob.Ⅰ:2
モーツァルト/交響曲 第5番 変ロ長調 K.22
ストラヴィンスキー/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調
ストラヴィンスキー/バレエ音楽「春の祭典」

 

 ハイドンは残念ながらまともに聞こえなかったのでモーツァルトから。

 モーツァルトのかなり初期の作品になるのだが、さすがにモーツァルトらしく完成度の高い曲。弦楽のアンサンブルが軽妙かつ美しいが、それを近年アンサンブル力の向上がめざましい大フィルが美しく奏でる。

 プリッチンをソリストに迎えてのストラヴィンスキーの協奏曲は、音色は非常に現代音楽的なのであるが、意外にシンプルで軽快な曲調はどことなく古典派の音楽を思わせて、それがあえてハイドンやモーツァルトと組み合わせた理由のように感じられる。

 プリッチンが演奏後のインタビューで、オケとの掛け合いが云々という話をしていたが、確かに室内オケとソリストの対話のような場面が多々あり、それが音楽全体の緊張感を高めている。しかしこの辺りも今回の大フィルに揺らぎはなかった。またメロディラインがハッキリせずテンポも独特で難曲と思われるこの曲を、ソリストのプリッチンは抜群の安定度で演奏していた。この辺りは実に見事と言うべきだろう。

 さて休憩後のメインである「春の祭典」。井上はキレッキレッではあるが、野放図にブンチャカ鳴らすのではなく、抑制もかけてアンサンブルをキチンとまとめてきたという印象。だから雑にならない演奏。そもそものバレエ音楽らしく「踊れる」演奏でもある(まあ指揮者の井上は実際にタコ踊りしてるけど(笑))。ただ単に爆音で鳴らすだけなら簡単なんだが、井上の組み立てた音楽をはそんな単純なものではなかった。また現在の大フィルはその井上の要求に応えるだけのレベルに到達しているのが感じられた。爆発的エネルギーを秘めながらも端正な演奏と言うことで、これがハイドンから始まった今回のコンサート全体のコンセプトにつながるのかと感じた次第。

 

 休憩時間にソリストのインタビューをしたり、井上道義の楽屋裏トークがあったりなど、通常のコンサートでは出来ないサービスをしようという精神が見事であった。非常事態を逆にチャンスにつなげようという発想は、良い意味での大阪らしい。実際に今回の配信は大阪フィルのファンを増やす効果は確実にあると感じられた。

 次回の定期は4/10で尾高によるミサ・ソレムニスだが、それまでに事態が正常化していることを祈るのみ。そうでないとさすがに音楽界全体が限界になる。

 

日本センチュリー交響楽団も3/28にライブ配信を行う模様

 日本センチュリー交響楽団が3/28の豊中名曲シリーズを無観客公演でライブ配信するということをアナウンスしました。配信方法などについてはまだ未定のようですので、今後の情報に注目してください。

www.century-orchestra.jp

 それにしてもコンサートの自粛がいよいよ3月の最終週にまで及んできました。こうなったらどこかが英断しないとズルズルと際限なく自粛(と言う名の強制)が延長されそうです。そもそも日本人は同調圧力が異常に強いので、最初にコンサート開催を決定するところはそれなりの風当たりを覚悟する必要があり(これ見よがしに批判したり妨害しようとする輩までいますから)、なかなか踏ん切りがつかないところだと思います。コンサートを再開して感染が増えたらどうするんだという声も当然あるでしょうが、私は「パチンコさえ規制しない状態でコンサートだけ規制するのは非合理である」と考えています。

 しかしこのまま延々と自粛が続いていたら音楽界だけでなくて日本経済全体が壊滅するのは必至です。本来はそうならない対策のために正確な感染状況の情報が必要なのですが、感染者が増えるとオリンピックが出来なくなると意図的に検査人数を減らして感染者が増えていないように見せている状況では対策の打ちようもありません。

 ライブ配信の増加で「金を出さずに音楽が聴けてラッキー」と思っている方もいるようですが、本来は彼らの演奏はただでは成立しません。こういう事態が続いていると楽団の経営や演奏家の生活が危なくなります(もう既にセンチュリーは特に危ない模様で小口寄付の依頼まで回ってきました)。結果として、コロナは沈静化しても音楽界が死に絶えたということになりかねません。何事も「ただより高いものはない」ということも頭に置いておいてください。
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明日3/19 PM19:00~大阪フィルライブ配信

 中止になった第536回定期演奏会をライブ配信するとのことです。以下のページにリンクがありますが、当日直前になると大阪フィルのHPがアクセス集中でダウンしてリンクをたどれなくなる可能性がありますから(山形交響楽団の時に経験済み)、事前にリンク先をブックマークに登録しておくことをお勧めします。

 内容は井上道義によるハルサイという、ファンにとっては非常に楽しみな曲です(それだけにホールで聴きたかった)。

www.osaka-phil.com

 それにしてもいよいよ自粛(と言う名の事実上の禁止)が今月一杯まで伸びて来つつある。3/22の京都市交響楽団の兵庫公演も中止との発表があった(広上のマーラーの5番は非常に聴きたかったのだが)。段々と自粛の範囲が際限なく広がりつつあり、最終週の京都市交響楽団の定期演奏会も危ぶまれる自体。このまま4月までこの自粛(と言うことになっている事実上の強制)が際限なく続くようだと、各楽団の存続が危ぶまれてくる。政府は禁止命令だけ出しておいて、経営が危なくなると都合良く「自己責任」を振りかざすだけだし。しかしやたら自己責任を振りかざす政府の長が、今まで全く何の責任も取ったことがない人物なのは何の冗談だ? 私は他人に対して自己責任という言葉を使用する者を一切信用しません。自己責任という言葉は本来は自分に対して使用するものです(命の危険を省みずに戦地に潜入するジャーナリストや、人跡未踏の地を探検する冒険家など)。