徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

お知らせ

アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

麒麟がくる第37話「信長公と蘭奢待」

馬鹿殿、開始3分であっさりと退場

 信玄の大勝で調子に乗って信長に反旗を翻した馬鹿殿・義昭ですが、武田軍が急に甲斐に戻ってしまった上に、頼みの浅井・朝倉は動かず、結局は一間しかない槙島城(笑)にあっという間に織田軍に攻め込まれ、開始3分であっさりと敗戦してしまいました(笑)。義昭を捕らえて自信満々の藤吉郎が今までにも増してキショさ120%。光秀の「やっぱりこいつ嫌だわ」という感覚がビンビンと伝わってきます。

 そして最後まで将軍に付いていた兄を見限って、実はひっそりと信長側に寝返っていたちゃっかり者の細川藤孝。この作品では武直な男のようにしてましたが、実はどうしてどうして計算高い。しっかりと情勢を見極めて既に馬鹿殿を見限っていた(いつの間に?)。これには兄貴が怒るのも当然。

 それにしてもあの人がなぜここまで変わってしまったのかというのを改めて感じさせる内容になっておりました。義昭自身が立場が変わってしまったことでこうなってしまったということを暗に言ってましたが、まあ権力が人を変える。権力が人を堕落させるというような怖さを一身に表現した人物となっておりました。彼は。

 結局は命は助けられたものの押し込められてしまった馬鹿殿は、それでも懲りずにあちこちに書状を送っております。そしてそういう落ち目になった義昭に対し、さすがに常にその時の一番の権力者に寄り添うことを信条としている小池百合子お駒は早速見切りを付けた模様。多分、あれは別れを告げに来たのでしょう。鞆の浦まで付いていくとは思いにくいので。

 

舞い上がった厨二病信長の回りに漂う微妙な空気

 権力は魔物という展開ですが、その魔物に新たに取り付かれた厨二病患者が信長。信玄が死んだらしいという情報を聞いて、早速朝倉を一気に攻め滅ぼす。で、こちらもあっさりと3分で滅亡。なんてインスタントな。結局は最後は親族衆に裏切られてしまうと言う見事なナマ倉ぶり。それでもまだナレ死させられた斉藤義龍よりはマシか。

 京の周辺を押さえて完全に舞い上がった信長(当時の天下とは近畿一円のことだから、まあこれで天下を手に入れたと言える)は、蘭奢待を所望。要するに今まで足利将軍が蘭奢待をもらったらしいけど、自分は足利将軍に取って代わったんだから、蘭奢待もらっても良いじゃんという厨二的発想。これに対して心の底では「オイオイ」と思いながらも表立っては御追従している光秀。いよいよ悲しき中間管理職の空気が漂い始めた。

 一人で舞い上がっている厨二病患者の回りにかすかに吹き始めた隙間風。信長を適当にコントロールして上手く使ってやろうと思っていた玉三郎も、さすがに勝手に舞い上がっている厨二病には辟易とし始めた模様。信長がうれしそうに献上してきた蘭奢待を「こんなものいらんわ」とさっさと毛利に送ってしまう。これって、今度は毛利を使って信長をやってしまうおうという裏の意図が透けて見える。おっとりと見せて裏でいろいろと画策があるという空気。うーん、さすが玉三郎は一筋縄ではいかない曲者。

 なかなかにここに来て、信長の回りのギクシャクした空気がビンビンと伝わってきて、しかもその空気が光秀を直撃している。光秀は最初に義昭に対して「なぜあの人がこんなになってしまった」と悲しさをもろに出していたが、次は信長に対して「なぜあの人がこんなになってしまったんだ」と泣きながら本能寺の変を起こすのかな。何となく空気が本能寺に直結し始めて来た。で、あの細川藤孝はしゃあしゃあと光秀を裏切る(笑)。そして光秀に勝利するのがあのいかにも嫌らしい秀吉。うーん、見事に後の伏線があちこちに張り巡らされてきた。

 

麒麟がくる第36話「訣別」

馬鹿殿立つ!!

 馬鹿殿がとうとう突っ走っちゃいました。光秀は義昭と手合わせしながら、あの穏やかだった人がなんでこんなに殺伐とした馬鹿殿になったんだという悲しさと苛立ちで、完膚なきまで義昭を叩きのめしてしまいましたが、あのシーンに光秀の心情を表現させている。確かに光秀でなくても「この人、ちょっと変わりすぎたんでは」って気はしますからね。なんでこうなったって感じかな。

 そして光秀も帝に謁見してお言葉を頂き感動、信長と同様に帝に惹かれていることを感じている。うーん、流石に玉三郎は凄い(笑)。まあ実際に御所というところには天皇をありがたく感じさせるための様々な演出があり、それにはまってしまったら天皇に心服させられるように計算はされてますから。実際の光秀もかなり帝重視で動くことになり、それが後に信長と距離が出来る一因にもなるんですが。

 佐久間信盛が柴田勝家と共に光秀の元を訪れた時には、光秀に今後も信長に直言をして欲しいということを言っていたが、あれは佐久間が暴走気味の信長に対して不安を感じ始めていることを匂わせている。恐らく、後に佐久間は信長によって追放されるということへの伏線となっているんだろう。松永が信長についていきかねるということを匂わせていたが、今後信長が暴走することで周囲と軋轢を増していくことの伏線があちこちに張り巡らされている。

 そしてあちこちと信長との仲を取り持とうとしていた光秀の思惑はこれにて完全に破綻ということに。光秀は義昭と涙の別れ・・・ってのが今回の内容ですが、多分現実は「将軍に付いていても力はないから御利益少ないし、やっぱりここは力があって取り立ててくれる信長に付いた方が得」という計算尽くで、義昭と袂を分かって信長に付いたってところでしょうけどね。このドラマの光秀は熙子に「京と美濃のどちらが近いのですか」と言われて迷っていたが、現実の光秀は「いや、もう京には義理はないから」って言ったと思う(笑)。

 

家康はケチョンケチョンにやられたようですが

 まあ三方原で信玄が家康に圧勝って報が伝わってきているから、義昭が舞い上がるのも分からなくもないが。普通は信玄がこの直後に亡くなるなんて考えもしないわな。実際にあそこで信玄が亡くなっていなかったら、信長はどうなっていたかはかなり怪しい。

 ちなみに家康は大敗して馬上でクソちびりながら浜松城に逃げ込むことになったが、武田軍が深追いしなかったこともあって、意外と戦力は減ってないんですよね。少ない兵で鶴翼の陣を敷いたせいで薄くなっていた本陣を、武田軍の魚鱗の陣の分厚さで押されたせいで、本陣は呆気なく壊滅しちゃったんですが、早々に決着が付いて全軍崩壊のせいで、実は主力はほぼ無傷だったりしている。だからこそあれだけ手痛い敗戦にも関わらず、家康はその後にすぐに建て直しできている。同じ惨敗でも主力をほとんど壊滅させた長篠の武田勝頼とは状況が違う。これも信玄が本気で家康を滅ぼす気だったら、追撃で家康軍をほぼ消滅させてから、浜松城を囲んで家康を自刃に追い込んでいるところでしょうけど、信玄にしたら家康なんて京に上る途上の障害物ぐらいの認識だから、邪魔する力がなくなったら「次や、次」って感じなんですよね。これは家康には幸いだった。

 この後は、舞い上がって挙兵しちゃった義昭は、ハシゴを外された形になってしまって信長にケチョンケチョンにやられて京から追い出される羽目になってしまいます。これで事実上馬鹿殿退場です。となると常に権力者のそばに寄り添っていた世渡り上手の小池百合子お駒はそろそろ乗り換えですかね。何しろ光秀を始め、秀吉から家康など蒼々たる面々とコネがありますから(笑)。

 

麒麟がくる第35話「義昭、まよいの中で」

将軍は暴走、光秀の立ち位置も破綻寸前

 うーん、義昭が馬鹿殿の上にヒステリー症状まで出て来ていよいよ暴走中。迷いって言うか、自分自身でも言っていたように優柔不断なんだな。一方の光秀は良い人を通しすぎた八方美人が祟ってもろに破綻寸前って雰囲気になってきた。

 積極的に「あんなとんでも組織なんてやっちまえ」と信長に比叡山焼き討ちをけしかけた光秀なのだが、実際に戦になると信長のあまりにもえげつないやり方に光秀の方がトラウマレベルの精神的ダメージ。一方の厨二信長は「だって帝がほめてくれるんだ」と完全に有頂天。とことん碇シンジ路線を突っ走ってます。いよいよ狂気が滲んできてアンコントロールになりつつある。松永久秀も「正直なところついていきかねる」ということを滲ませており、後の謀反の伏線を張っている。

 おっとりと構えているように見えて、実はかなりの曲者という玉三郎の帝は、何やら信長を上手く誘導して利用しようという意図が垣間見える。「褒めて欲しそうだったから、褒めてやった。」とさり気に信長はコントロールしやすいということを匂わせている。どうも何やら企んでいる模様。その帝が今度は光秀と密かに面会するということだから、この作品は最終的には本能寺朝廷黒幕説なんだろうか?

 そしてついには光秀暗殺未遂事件発生。光秀は鉄砲の腕に関しては秀でていたという話はあるのですが、剣の腕の方は定かではない。しかし本作の光秀は若い頃から剣豪レベルで剣を使うんですよね。細川藤孝とは剣と剣でマブダチになったわけだし、松永久秀の危機も大乱闘で救っていたりする。で、今回は久しぶりに剣を振り回していた。

 

一応の危機を脱した光秀だが、将軍は信長と決裂直前

 危機一髪で将軍の下に逃げ込んで、将軍に「かつてはあんなに二人で夢を語り合ったのに・・・」というバターンで口説いて、結局は逆に摂津を排除することに成功する。これでついに化け物退場のようです。しかし時既におそし、義昭はハッキリと「だって信長のことが嫌いだもん。馬が合わないのよ。」と明言してしまって決裂はほぼ確定。

 将軍は光秀のことが信用できないと不審感を持ったようだが、しかし光秀の信長べったりの行動を見てたら仕方ないわな。越前攻めの時でも幕府の面々は静観だったのに、光秀はホイホイと信長に付いていったし、今回の叡山攻めでも実際は光秀がけしかけたみたいなものなんだから。その挙げ句に信長から志賀をもらっているわけだから、こりゃ完全に信長に付いたと見られるのはある種当然ではある。

 次回はいよいよ義昭がヒステリーを起こして打倒信長を決意してしまって、光秀は行きかがり上、義昭と決別せざるを得なくなるんだろうな。だけど信長で本当に大丈夫なのかという不審感も今回の叡山焼き討ちをきっかけに持っている。この辺りが違和感として段々と大きくなって、本能寺の変につながるというストーリー設計なんだろうな。

 それにしてもさすがに下品なおばさんぶりが炸裂していた秀吉のオカンとか、相変わらずどことなく信用できない曲者っぷりが半端ない秀吉本人とか。どことなく光秀と秀吉の相性の悪さのようなものも今のうちから漂わせている。この辺りも最終的には伏線として大きく働くんだろうな。

 

麒麟がくる第33話「比叡山に棲む魔物」(二大魔獣夢の競演)

焼き討ちされて当然という叡山の化け物

 いやー、今回はなかなかすごかった。この作品では「比叡山なんてとんでも組織は焼き討ちされて当然」というスタンスで行くというのは前話で示されていたが、その焼き討ちされるべき悪の頭領として登場したのが天台法主の覚如。小朝が演じるこの覚如が超俗物で妖怪そのもの。帝の弟だが醜かったせいで比叡山に出されたというコンプレックスを抱えており、帝になった美しい兄貴(それがまた坂東玉三郎というのがすごい)を見返すためにひたすら俗世での金と権力を追求したという化け物である。

 しかもこの化け物と、これまたこの作品屈指の化け物である鶴太郎の摂津が密談中。まさに二大魔獣というか、二大妖怪というか、もうこうなると織田信長でなくてウルトラマンか鬼太郎が登場する必要があるのではないかという凄さ。脇でウロチョロしていたナマ倉義景の小者っぷりが際立っていて(交渉にやって来た光秀に対して愚痴まじりの嫌みを言うのが限界)、見事に妖怪の引き立て役になっていた。この妖怪の毒気に当たられて、光秀は「叡山討つべし」の意を固める。

 

相変わらず中二病丸出しの信長を焚きつける光秀

 一方の信長は叡山と膠着している挙げ句に、三好や六角も一向宗と組んで動き出しているので完全包囲状態。しかも尾張では弟が討たれて足下に火がつき始めた。京を捨てて美濃に引き返すと言い始める信長に対して、光秀は「坊主に負けて逃げて帰ってきたと帰蝶様に笑われるでしょうな」とキツい一言。マザコン信長は痛いところを突かれて半ば錯乱気味に「だって帝がほめてくれたんだ」「父さんだってきっとほめてくれる」と例によって完全に中二病丸出しの碇シンジ状態。浅井が裏切った時には「逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ」と抵抗していたのに、今回は「もう嫌なんだ。」状態。しかし叡山討つべしを決意している光秀は帰蝶を持ち出しながら信長を焚きつけ、結局は帝を通して一旦叡山と講和することに誘導する。完全に信長のコントロール法を心得てしまっている光秀だが、これが最後まで続けばそもそも本能寺の変は起こらない?

 

危ない奴になりつつある光秀

 そしてひたすら馬鹿殿路線驀進中の将軍様は相変わらず右往左往。その挙げ句に宿敵筒井順慶と同席されられた松永久秀がぶち切れて幕府から離反を表明。摂津が幕府を恣にしようとして着々と幕府滅亡への布石を敷いている。ここでぶち切れた光秀も摂津に対して「叡山と一緒に絶対にお前も滅ぼす」宣言。なんかやけに血の気の多い奴になってきた。

 で玉三郎の仲介で何とか叡山とは一旦講和した信長は尾張方面を鎮めてから、いよいよ満を持して叡山焼き討ち。ぶち切れた厨二男は「皆殺し」を宣言。光秀も叡山焼き討ちには異議はないが、さすがに主人公としては老若男女皆殺しはダークすぎるので、密かに「女子どもは逃がせ」との命令を自分の家臣にはしているという偽善者ぶり(笑)。そして叡山で大殺戮が始まったのだが、その内容たるや何やら遊女みたいな連中が出て来たりなど「叡山は焼き討ちされても当然のトンデモ団体なんです」ということを強調する仕掛けは念押しのように施されていた。

 まあ見事でした。鶴太郎のキモすぎる演技と小朝の妖怪っぷりが相まって、まるで化け物映画(笑)。正直なところ、全く出す必要もないのにわざわざ女性の敵岡村を無理矢理に出演させていたという不要シーン以外は完璧でしたね。しかしこの叡山の描き方、苦情は来ないんですかね?

 

麒麟がくる第32話「鶴太郎キモすぎ」・・・でなくて「反撃の二百挺」

中二病炸裂の信長に全能すぎる主人公

 なんかかなり目まぐるしく動き始めています。「帝が褒めてくれるんだ」と中二病丸出しの碇シンジ・・・でなくて織田信長はナマ倉義景を攻めますが、ここでまさかの地味な義弟の浅井長政の裏切り。なおこの情報は信長はお市からの連絡で知ったとされるのが一般的ですが、なんとこのドラマでは明智光秀が第一報を察知している。一体いつの間に光秀はそんな情報網を整備してたんだ? まあ主人公アゲは大河の常道と言っても、これはあまりに無理がある展開のような気はする。

 で光秀の「逃げろ」との説得に対し「だけど帝が褒めてくれたんだ」と抵抗する中二病信長、それを「織田信長は死んではいかんのです」と迫力で説得する光秀。なんか台詞が強烈すぎて別の作品になってしまっている印象を受けたな。そして一人お籠もりした信長はひとしきりの発狂吠えをしてから「逃げる」。うーん、本当に分かりにくい男だな。マザコンで承認欲求の塊の中二病ということはよく分かるが。

 

 後の秀吉こと木下藤吉郎はなんかわけの分からんことを言って金ケ崎の殿に立候補しましたが(実際に秀吉を演じている役者の滑舌が悪すぎて、いつも台詞の2/3は実際に何を言っているかが聞き取れない)、早い話は自分の売り込みをしたいから功績を挙げるチャンスをくれって話でしたね。挙げ句は何かとまるでお付きのように光秀につきまとうようになりましたが、相変わらず何を考えているかが分からないところがある曲者。

 そしていつも一番の権力者の横に常に寄り添う小池百合子お駒は、知らない間に将軍をたらし込んでいるし。しかも最初はこの薬ではお金は取らないなんて言っていたくせに、今やバリバリの女性経営者。既に東庵先生なんてあごで使われる使用人状態。その内にプロフェッショナル辺りに登場しそうな女性カリスマ経営者路線をまっしぐら。そりゃ久しぶりに対面した光秀も驚くわ。

 

各人の思惑が怪しくなってきたが、すべてを食っているのはあの人の怪演

 そして馬鹿殿臭が半端なくなってきた将軍様は、段々と信長に対しての不信感を募らせつつある。そろそろ義昭の叛逆のフラグが立ち初めて来た。にしてもこの馬鹿殿が何かやったところで世の中がどうこうなるような気は全くしないのだが・・・。

 さらにそろそろ比叡山焼き討ちの段階に来そうですが、この作品は「比叡山は焼き討ちされても当然のトンデモ集団だった」という路線で来るような雰囲気。この状況だと、光秀は何の抵抗もなく躊躇わずに焼き討ちを主導しそうだな。これもこれで斬新な解釈ではあるな。要は主人公様に刃向かう奴は全て滅ぼされて当然の極悪人集団なのだという論理である。

 というようにかなり各人物がドタバタと動き始めたんだが、そのすべてをくってしまいそうなのが片岡鶴太郎の怪演。いやー、無駄に気持ち悪すぎでしょ。よく公家なんかだったらやや誇張して気持ち悪く演じる場合があるけど、摂津は一応幕臣で武家だし。何か怪しすぎる存在になってます。あそこまでコテコテに演じる必要あるんですかね? あまりに気色悪すぎて他の何も頭に入ってこないわ。

 

麒麟がクルクル 第27話「宗久の約束」

微妙な空気が満ち満ちていた今回

 信長の命を受けて京の状況を調べるために潜入する光秀。それにしても彼って毎回こんな任務ばかりなんだが、侍と言うよりも隠密だな。

 そこでは木下藤吉郎と再会。藤吉郎は相変わらずの調子良さだが、どうもその裏に油断できない抜け目のなさが漂う曲者。初めて会った時から、光秀の方は藤吉郎に胡散臭さを感じて完全には心を許していない微妙な空気がこの二人の間には流れている。そもそも光秀は最初から武士の出である程度の教養があるが、これに対して藤吉郎は完全な成り上がりなので肌が合わないということもあるが、後の微妙な関係を反映させているんだろう。

 そして数年ぶりに再会したお駒との間にも微妙な空気が漂う。それは完全に庶民目線で「戦はいかなる理由があろうとも嫌」というお駒に対して、「大義のためなら少々の犠牲も仕方ない」と支配者目線で考え始めている光秀との考えの違い。最初はかなり庶民に近い目線で見ていた光秀が段々変わりつつあることも匂わせている。この辺りも後の伏線になりそうな気配がある。

 そしてとにかく大者と縁がありすぎるお駒は、堺のフィクサー・今井宗久とも縁が。そして光秀を仲介することに。宗久の言っていることは「ぶっちゃけ、商売の保証がされるなら三好でも織田でもどっちでも良い。ついでに京で戦はしないでね。」って話。バーサーカー勝家辺りはともかく、光秀としてもいくさはしなくて良いならしないに越したことがないと考えてはいる。

 で、将軍の意見も聞くといった信長だが、ろくに状況も考えずに「そりゃ良い考え」とホイホイ無防備な上洛に賛成する将軍に、本音で「やっぱりこいつは使えねぇ」と考えている信長との間に漂う微妙な空気。脳天気な義昭はそれには全く気づいていないようだが。この次に光秀に信長が「将軍に仕えるのか自分に仕えるのか今決めろ」と迫ったのは「お前、いつまであんなアホに従うつもりなんだ」という意味なんだろう。ここでも微妙な空気が漂っていたが、少なくともこの時点で信長は光秀を使えると考えているので、切る気は毛頭ない。

 まあ何だかんだ言いながらも信長は非武装で上洛したようですが、これについては将軍の意向を汲んだという形にしながら、その実は三好が逃げたから戦う必要がなくなったってだけ。もし三好が京で徹底抗戦するつもりだったら、信長は躊躇わずに京を焼きはらったでしょうね。光秀はひとまず安堵ってところだが、既に両者の思惑の微妙なズレのようなものは現れつつあるな。

 と言うわけで、今回のキーワードは「微妙な空気」。そういう細かい各人の思惑のズレのようなものがなかなか上手く現されていたと感じた今回。今後、この微妙な空気がドンドンと拡大し、まずは将軍義昭と信長の対立、さらには最終的には本能寺の変にまでつながっていくんだろう。

 

麒麟がくる? 第26話「三淵の奸計」

ムカイリ将軍散る

 光秀を口説きまくっていたムカイリ将軍はついに華々しく散ってしまい、「あのお方にこそ仕えたかった」と熱愛宣言をしていた光秀はすぐに義昭に転ぶというかなりめざましい展開がここ数話でしております。

 ムカイリ将軍の最後は、一応は剣豪将軍らしい見せ場を作っておりました。最期は障子に囲まれて刺し殺されるという意味不明のオチになってましたが、実はあれは本来は畳なんですよね。障子だと刀を防ぐことが出来ないので無意味です。名刀ぶん回して大奮戦する剣豪将軍に手を焼いた三好勢が、畳を押し立てて盾にして将軍を取り囲み、一斉に刺殺したってのが、言われている剣豪将軍の最期なんです。しかしこの作品、将軍の住居が畳敷きでなくて板張りになっていたからそれが出来なかった(笑)。それで窮余の策が障子ってオチでしょう。

 ムカイリ将軍は頑張ってましたが、歴史的に見ると彼は三好の言いなりにならなかったせいで殺されるんです。完全に言いなりになる馬鹿殿だったら殺されなかったんですけど、中途半端にやる気と能力があったから殺されざるを得なくなったと。もっと能力があったら、逆に三好を押さえたんだろうけど所詮はボンボンなんでそこまでの能力はなかった。まあ昔から、完全な馬鹿殿よりもむしろ半端に能力のある殿の方が暴君になったりして結局は倒されます。典型的なのが殷の紂王。希代の暴君のように言われているのは、多分に代わって天下を取った周による脚色としても、そもそも紂王って若い頃は頭の冴えを見せており、これは名君が登場したと周囲に期待された人物なんです。

 

一介の浪人の光秀に振り回されるナマ倉義景

 で、ムカイリ将軍を失った光秀は義昭の器量を見定めることをナマ倉義景から命じられるが、「自分は将軍なんて無理」って逃げようとしている義昭の姿を見て「こりゃ駄目だ」と義景に報告、それを聞いて義景は「やっぱ上洛は無理か」と判断するが、次に「自分が将軍になったら弱い者を助けることが出来るかもしれない」と語った義昭にグッときた光秀が「回りが支えたら結構良い将軍になりますよ」と言ったら、今度は義景は突然に「よっしゃ、上洛だ」・・・えっ? あのバカ倉義景の優柔不断は光秀が黒幕だったってこと? それがこのドラマの筋ですか。まあ主人公の活躍ぶりを無理矢理に拡大するのは大河ドラマの常ですが(「篤姫」なんて幕末のゴタゴタはすべて篤姫が裏で関与していたことになっていた)、さすがに光秀が大者過ぎる。そもそも朝倉に居候しているだけの一介の浪人がどこまで影響力持ってるねん。

 そして一旦「よっしゃ上洛だ」と舞い上がってしまったら、完全に暴走するバカ倉義景。本当にこの作品での義景の描き方ってひどいな・・・。まあ歴史的に見たら実際に無能っぷりが際立ってるからな・・・。

 んで、舞い上がって暴走している義景を押さえるための陰謀が、息子殺害・・・ってダークすぎるな。まあ実行したのは家老やら景鏡らってことになってますが、三淵も暗にそう仕向けてますからね。どうせ景鏡って最終的に義景を裏切って自刃に追い込むんだから、このぐらいのことしても良いかもしれないけど・・・。まあ家中でこんなゴタゴタが起こるようなところが上洛どころじゃないわな。実際の歴史でも朝倉家の中って無茶苦茶だったし。それにしても溺愛していた息子を失って完全にナマ倉化した義景の駄目っぷりがこれまた際立つ。

 それで慌てて光秀は信長の元に。ようやく光秀が歴史の表舞台に登場するということになるようです。今後は歴史のある世界に入っていくので、ストーリー的にはあまり無茶は出来なくなります(笑)。しかしこの展開を見ていたら、無理矢理に年内に話を収めるつもりなんだろうか? もしそうならかなりドタバタした展開になってしまうが。それとも来年の春前ぐらいまで引っ張るんかな? その辺りは公式発表はなかったんでしょうか? 最期はまさかの信長ナレ死なんて大技になりかねない。

 

麒麟がくる第22話「今日よりの再開」・・・でなくて「京よりの使者」

久しぶり登場の将軍はいじけて荒んでいた

 放送は約3ヶ月ぶりぐらいだが、番組上は4年が経過。光秀は馬を盗んだことを咎められた様子もなく(貧乏浪人がいきなり馬で桶狭間に駆けつけるなんて、盗んだとしか思えん)、相変わらずの貧乏生活をしている。そこに突然現れる細川藤孝。藤孝は京で実権がなくて完全にいじけてしまっている将軍様のお守りをお願いしに来た・・・というところ。

 ここで熙子が藤孝に魚を出すのを見て光秀が「一体こんな金どこから?」という反応を示すところが貧乏人としてはリアルなところである。で、この場で赤ん坊のお玉(後の細川ガラシャ)が細川藤孝とご対面。この辺りは後にお玉が藤孝の息子と結婚することの伏線のつもりだろう。ちなみにこの夫婦は元々は夫婦仲は悪くなかったんだが、お玉の親父のせいで暗転することになります。

 そして大者食いのお駒は今度は大和で次期将軍様と面会ですか。あり得ないほどに大者に絡む女性である。この義昭、一般的に言われている義昭のイメージと違って、かなり立派な志を持っているような描かれたか。なんですか。この人も将軍になって麒麟が来る世を目指そうとするが、信長の傀儡で何も出来なくてグレちゃんでしょうか。この調子だと、麒麟は大平の象徴でなくてまるっきり呪いの魔物だ。

 その大和では曲者松永久秀が伊呂波大夫を口説こうとして見事に撃沈しているというのがお笑い展開。こういう展開も松永久秀の今ひとつ読めないところを現そうとしているようですが、それ以上に良く分からんのが伊呂波大夫。いくらなんでもあまりに存在がスーパー過ぎる。関白がパシリとは全く以て何者だ。

 

辛うじて鉄砲玉にされるのは逃れたが・・・

 光秀は朝倉義景から京の状況を調べてくるように命じられ(お前、キチンと仕事せんかったら家族が危ないぞという脅しつき)、京に出向くが将軍の家臣連中から「恐らく三好長慶を討つことを頼まれる」と告げられる。この時の光秀の偽らざる本音は「うっわー、やべぇ、このままだと俺は鉄砲玉にされる」ってとこなんじゃないかと推察。幸いにして光秀の顔を見た将軍は、かつての志を思い出しでもしたか「三好長慶を討ったところで回りの心はさらに離れるだけ」なんて悟ったようなことを言い出して、光秀安堵というところ。だけど実際に三好長慶を討つことを命じられたら「いや、相手もう病気で寝込んでるので、放っといても長くないですから」ってサラッと言ってたりして(笑)。

 結局光秀は「信長の力を借りましょう」と尾張に行くことになったけど、確か信長は一回上洛した時に将軍なんて役にも立たんとぶち切れていたのでは? 何にせよ義輝の時には駆けつけてませんから説得は失敗は確定です。で、その間に将軍が暗殺されてしまうのかな。この前やっていた予告では、さすがに将軍はナレ死ではなくてそれなりに見せ場は作ってもらえるようだが。

 それにしても記録に何も残っていない時代だからいくらでも話を作り放題なんだが、光秀があまりにスーパー浪人過ぎるだろ。まあ大河にはよくあることだが。

 

麒麟がくる第21話「俺たちの戦いはこれからだ」・・・でなくて「決戦!桶狭間」

裏切りを思いとどまる家康になぜか駆けつける光秀

 さて前回「まさか史実に反して家康ここで裏切りか?」と思わせた家康君(この時はまだ松平元康)は、三河勢と織田勢を併せても今川勢に劣勢すぎると、「お願いですから今川を切ってください」という岡村隆史(女の敵)の棒説得を拒絶して裏切りを思いとどまります。まあこれは当たり前の対応。この時点で織田が勝利できると判断したとしたら、それは優れた状況判断と言うよりはあまりに大博打打ち。ビビりで小心者の家康がそんな無茶な判断するわけがない。それにそもそもこの時点で背いたら三河勢は完全に敵中孤立でフルボッコである。

 一方、本作品の主人公は食うにも困っている浪人暮らしのはずなのに、どうやって入手したか不明の馬を駆って、従兄弟(後の明智秀満)を連れて二人で尾張に駆けつけてます。ここで光秀が一人駆けつけたところでどうなるものでもないはずなのだが、そこは「大事件には主人公としては絶対に立ち会わないといけない」という高度な使命感とご都合主義にのみ駆られての行為。さすがに明智光秀は生真面目な人です(笑)。

 

一方の信長は・・・相変わらずよく分からん

 家康の寝返り失敗の報を受けた信長。ただこの時の反応が、それに対して落胆しているのやら、苛立っているのやら、それとも心底どうでも良いと思っているのかが全く不明です。これがわざとそういうキャラクターとしての描き方をしているのか、それとも役者の演技力によるのかも不明。いきなり「人間50年」を歌い出すあたりなどは、かなり情緒不安定なキャラということではあるんだろうとは感じるが。とにかく本作の信長で一貫しているのは「マザコンで落ち着きがない」というところ。なお帰蝶が時々何を考えているのかが分からなくなるのは、多分に役者の演技力の問題でしょう。

 で、家臣連中には清洲に籠もると告げた信長だが、「あいつらの中には今川に通じている者もいるから信用できない」と最初から前線にいる奴らだけでことを決するつもり。ここで信長は、今川が軍を分けているので本陣は手薄のはずというのを、わざわざ図解と数式入りで池上彰並の親切な説明。いや、週刊こどもニュースでないんだから、ここまで丁寧な説明もいらんと思うのだが。それとも番組制作側の想定する視聴者レベルってこうなの?

 その挙げ句に唐突に出陣前に帰蝶に隠し子を紹介。「はぁっ?」状態になっている帰蝶に後を押し付けてさっさと出陣します。やっぱりこの信長、何を考えているのかがどうも分からん。少なくとも言えるのは、この時代の大名がどこかで子を作ったからといって、正室に「すまん」と謝るということはまずないということ。どうも信長が帰蝶に頭が上がらないというのを描きたいようである。このホームドラマは。

 善照寺砦に到着した信長は義元の本陣を急襲するという計画を部下達に披露。ただし今川の本陣が現在6~7千と聞いて、「もう少し減らせないか」と思案中。信長軍は3000らしいから、確かに1/2以下とやや分が悪い。またこの時に家康に背後を突かれることを警戒している。まあこれは妥当。この信長、結構キチンと戦略を立てられるようだ(笑)。

 

サボタージュを決め込む家康

 さて家康は三河衆を引き連れて夜明け前に織田方の丸根砦を攻撃してこれを落とす。やるべき仕事を終えて大高城に戻ってきた家康を待っていたのは、今川義元が三河の守に任じられたという報と、休む暇もなく次の戦場に向かえとの今川からの無茶ぶり。さすがにこれには家康もぶち切れて、部下共々、とうとうサボタージュを決め込むことに。なお一般には我慢強いと言われている家康ですが、それは人質生活で我慢を強いられたせいであり、実は基本的にはキレやすい性格とも言われてます。ちなみにこのシーン、家臣一同で床を叩きつけることで意思表示してましたが、どうせなら「貴様ら!」と怒り狂う今川家臣に対して、「何か問題でも?」と睨み付ける若きホンダム(本多忠勝)という演出でも良かったような気もする。ナレーションで「この若者こそ、後に徳川最強とも言われた本多忠勝である」と一言入れれば、戦国ファンは驚喜するのに。まあ今時の若手俳優で、一瞥だけで相手をひるませられる迫力出せる奴はいないか・・・。

 

桶狭間でモブキャラに討ち取られる義元

 で、義元は桶狭間で休憩中。そこに信長軍動くという報が。兵が300程度とのことに義元は鷲津砦に行かせた兵を差し向けようとしたが、その兵は乱取り(要は敵兵の死骸から鎧をはいだり食料を盗んだりの略奪行為)中で動かず、義元ぶち切れるがどうしようもないので本陣の兵を向かわせることに。こうしてさりげに今川軍の統率の悪さと士気の低さようなものも描写しているのは細かい。

 一方、ここで義元が本陣から1000以上の兵を割いたと聞いた信長は「これなら行ける」と出陣決定。そして雨で混乱している今川本陣を急襲。この辺りの合戦シーンは以前のダラダラした長良川の戦いよりは合戦っぽい。一応殺陣にはなっているし。なおどうも今川義元は輿に乗ってお歯黒のごじゃる丸という描かれ方が多いのだが、ここの義元は一応「海道一の弓取り」らしく、輿には乗ってるものの鎧を着て、最後は自ら戦っているし、数人を返り討ちにしている。そして最後は恐らくこれ以降は二度と出てこないだろうモブキャラ・毛利新介の必殺ワザで討ち取られるというそれなりの大ボス的な見せ場を作っている。今までの今川義元の中ではまだ描かれ方が一番良いのでは? そしてこの後、毛利新介が高々と「毛利新介、今川義元討ち取ったり」と戦場に高らかと宣言するのであるが、これがどう聞いても拡声器で場内放送しているみたいでいささかマヌケ。なお毛利新介が今川義元を討ち取ったのは一応史実。

 

最後に一番の衝撃が来た

 で、最後は本当に駆けつけただけの光秀が信長一行を出迎えて信長と対話(ありえねぇ)。ここで信長が「今まで母にも父にも褒められたことがない」などとまた中二病全開の愚痴。それに対して光秀の「帰蝶様はお褒めになりましょう」の言葉に「帰蝶はいつでも褒める。あれは母親じゃ。」とマザコン完全確定の台詞。これが今回の一番強烈な一撃。「ララァは私の母になってくれるかもしれなかった女性だ」の一言でマザコン完全確定したシャア・アズナブル並の強烈な台詞である・・・。

 こうして「大河ドラマ 今川義元 完」・・・ではないのだが、これから本ドラマは長期のお休みに入る模様。と言っても現状では再開の見込みがないのでは。今の状況でドラマを撮影しようとすると、枠内に入ったキャラクターが交互に台詞を喋るというまるっきり昔のRPGゲームみたいなドラマにでもするしかない。それとも全侍がマスクとフェイスガードをつけて合戦するという画期的な戦国ドラマにするか。一体、これからどうするの?

 

麒麟がくる第20話「お駒モテモテ」・・・でなくて「家康への文」

大者食いっぷりを本格的に開花させているお駒

 いよいよ桶狭間前夜になってきたようだが、今回の一番大きな話題は「お駒モテモテ」というわけでもないが、今までの明らかに「少女」というのを前面に出していたお駒のヘアスタイルが変化して「女」を出して来た。そうなると元々「大者食い」だったお駒らしく、早速家康をたらし込んで・・・というわけではないが、ガキの頃からお駒にポヤーンとしていた家康が、もろにお駒に色目を使っている(笑)。お駒からお守り代わりの薬をもらって先鋒として出陣する家康。「必ず生きて帰ってくる」との決意表明。これがアニメかなんかだったら死亡フラグスレスレだが、まあ歴史ドラマだからここで家康が亡くなることはないので安心してみていられる(笑)。

 

暗躍するスーパー浪人光秀と翻弄されているマザコン信長

 一方の光秀は浪人生活一直線でどうやら食うにも困り始めている模様。にもかかわらず、どうやら天下のことばかりが気になるようで、桶狭間の合戦の裏で帰蝶に入れ知恵している模様。この番組最大の策士は今まで帰蝶だったんだが、どうやらそれを影で操る真の黒幕登場という趣。信長は完全に帰蝶に踊らされている道化だが、背後に光秀がいるらしいことは何となく気付いている模様・・・って、この浪人すごすぎ。いくら何でも光秀がスーパー過ぎるだろう。

 で、光秀の策で信長は家康の母に会いに行って、家康に寝返りを誘うように依頼という展開。ここで「10年離れていようと、50年離れていようと母は母だ」とマザコン信長ぶりを全開しているが、あんた、その母が大切にしていた弟をぶっ殺して母に縁切られた直後なんではとのツッコミを入れたくなる。まあ相変わらず悲しい厨二男である。

 

ドラマの演出上、無理矢理歴史事実を歪める模様

 で、生活に困っている光秀は鉄砲の腕を売り込んで朝倉義景の元への仕官を売り込んだのだが、結局は光秀の売り込みは蹴鞠のために後回し。相変わらずやる気のなさと無能っぷりが際立っている義景の人物像には一切ブレが無し。これにぶち切れたプライドだけは高いニートの光秀は、何を思ったか終わりに駆けつける模様。しかし浪人一人が一体なにをするつもりだが・・・。まあドラマとしては光秀も歴史の生き証人として何らかの形で桶狭間という大イベントに関与させたいんだろうが。にしても、相変わらず無理くりに大事件にからむ主人公である。

 このドラマ的には、家康は既に桶狭間の時点で裏切っていたという線でいくのか。これはなかなかに大胆。何しろ歴史的にはこの時点では家康は今川を裏切る気がなく、義元討たれるの報に這々の体で三河に逃げ帰って、そこで自刃も考えたということになっているから、ここでは歴史事実を無視するつもりの模様。もっとも実際には織田側から家康に対して何らかの働きかけは当然ながらあり得る話ではある(家康がそれに乗るかどうかはともかくとして)。

 

問題はこの後なんだが・・・

 で、いよいよ来週が桶狭間の合戦で「義元討ち取ったり」となる模様なのだが、どうやらそこで収録分が終わってしまって、しばらく歴代大河ドラマ名場面集でしのぐつもりらしい。何とも苦しい話だが、まあとりあえず桶狭間までやっていたら一応の格好はつくだろう。もっとも再開がいつなのか知らないが、1ヶ月ほど間が抜けてしまったら、年末までのスケジュールだったら、この後がかなり駆け足になってしまう可能性があるだが・・・。その辺りをどう始末つけるんだろうか。何しろ現時点では、光秀はまだ足利義昭にさえ会ってないんだから(と言うか、まだ剣豪将軍こと足利義輝が健在)、信長と面会するのも随分先(このドラマではなぜか信長と既に知り合い設定だが)。年末までの予定でいったら、話数が足らなくなって終盤にドタバタする可能性あり。こりゃ剣豪将軍もナレ死させられそうだな・・・。

 

麒麟がくる第19話の感想など

 実は私は先週の金曜から謎の発熱をして寝込んでしまった。コロナを疑ったりもしたが、この2ヶ月ほど家からほとんど出てないので、もしコロナなら完全に「感染経路不明」。それに症状としては発熱、異常なだるさ、喉の痛み、頭痛、体の関節の痛みなどはあるのだが、咳が全く出ない。と言うわけでどう考えても「新型肺炎」とは思えない全く謎な病気なんだが、とりあえず3日後の日曜になってようやく熱が下がった。しかしまだ体のだるさは残っており、体の痛みはあちこちにあるのだが(特にずっと寝続けていたので腰の痛みがひどい)何とか起き出してきた。で、起き出したところで最初に見たのがこれという次第。

 

麒麟がくる第19話「信長を暗殺せよ」

 冒頭は先週のダーク信長の続きを受けて、今度は母と息子のぶつかり合い。母は常に私を無視してきたと中二病丸出しで訴える信長に対し、母は「お前は今まで何度も私の大事なものを壊してきた」と信長の凶暴性(というか、これは性悪か?)を訴え、信勝を殺したことでお前は母まで殺した、と完全に見捨てられてしまう。そしてここで呆然としている中二病信長。なんか前回でついにダーク信長覚醒かと思っていたのだが、結局は中二病に戻ってしまった。結局は本作の信長って親の愛情を得られなかった悲しい不良息子って線で突っ走るのか? 何かいよいよ持って帰蝶に操られているだけの万年中二病に見えてきた。

 

 さて越前で浪人生活にいそしんでいる光秀(まだ十兵衛だが)は最近発見された資料に従って、越前で寺子屋の先生をやっている模様。その光秀になぜか朝倉義景からの呼び出しが。出向いた光秀に義景は「最近ようやく京に戻った将軍から上洛するように言われたが、わしは中央のゴタゴタに巻き込まれたくないし、京まで行くのも面倒だがら、お前が代わりに献上品の鷹を持って行ってくれ」というお話。いかにもダメダメ義景だが、いくらなんでも将軍の上洛要請を受けての使いに家臣でも何でもない浪人を送り込むってあり得なさすぎだろう。まあこの番組での光秀はなぜかガキの頃から細川藤孝とはマブダチ(しかも斬り合った挙げ句に「お前なかなかやるな」という黄金の青春ドラマパターン)で、将軍に対してはそのあり方を示した超大物ってことになっているが・・・。

 で、将軍と謁見した後に能に招待される光秀だが、そこで何と斉藤義龍と遭遇。かわいさ余って憎さ百倍という調子で光秀をにらみつける義龍との間に不穏な空気が・・・。そしてこの後に細川藤孝を通して、義龍が上洛中の信長を待ち伏せて暗殺しようと目論んでいるらしいとの情報が。これを聞いた光秀、なぜか信長とも既に知り合いってことになっているので、これはやばいとこれもなぜか知り合いになっている上に命を助けた貸しのある松永久秀の元へ。そして松永久秀が義龍に圧力をかけて(この辺りはいかにも久秀の曲者っぷりが出ていて良いが)暗殺計画はお流れ。何かただの一介の浪人である光秀があまりに大活躍しすぎの上に大物にコネがありすぎ。実際にこれだけのコネを持っている人物だったら、さすがの朝倉義景も三顧の礼で家来に迎えようとしそうなものだが・・・。

 

 そんな裏のゴタゴタも知らずに無事に上洛した信長は、将軍に謁見すると今川を抑えて欲しいとお願い。しかしそれに対して「今川以上の官位をやるから、そうしたら今川も手を出すまい」ぐらいしか言えない将軍。しかしそんなもの屁の突っ張りにもならないことは、信長と将軍も含めてその場の全員が分かっている。で、将軍なんてあてにもならんと光秀に愚痴をたれた後に信長はさっさと帰ってしまう。

 その直後に光秀に対して義龍からの呼び出しが、下手すりゃいきなりバッサリかと警戒しながら赴く光秀に対し、義龍はまさかの「もう一度自分に仕えないか」の提案。家臣は自分の力を恐れて従っているが、腹の底で何を考えているか分からない、自分が国を治めていくためには信頼できる側近が必要、だから戻ってきてくれないかという口説き。そして光秀の、道三を討ったことを後悔しているのかという問いに対しては「後悔していると言えば戻ってくれるか」とグタグタ。つまりは「別れてみてから分かったけど、やっぱり私にはあなたしかいないの」という熱烈なプロポーズです。まあ見事な「ツンデレ」ぶりです。義龍、あんた間違いなく道三の息子だわ。

 モテモテの光秀だが、彼はこの義龍の必死のプロポーズをにべもなく断り、失意(というより失恋に見えた)の義龍は落胆の様子を隠さずに「もうお前と会うことも二度とないだろう」と光秀を見送る。しかしここで今回の一番の驚きの場面が。この後ナレーターが「斉藤義龍はこの2年後に病死する」の一言。えぇっ!斉藤義龍ナレ死で終わり! そこまで雑魚扱いだったの!

 まあ相変わらずいろいろとツッコミどころの多い内容ではありました。それにしてもやっぱり基本は光秀を中心にしたホームドラマですね。

 

ニートがくる・・・でなくて麒麟がくる第18話

越前編(ニート編)突入

 先週は全く緊迫感なく脱出を始めた光秀一行であるが、今回はなぜか急に切迫している。そこに良すぎるタイミングで駆けつけるお駒。まあこれは話が出来すぎ。さらに帰蝶はいろは大夫を差し向けて光秀一行を朝倉領に落ち延びさせる手はずをつけているという次第。とにかく光秀一行は史実通りに越前に逃亡することに。

 そしていかにも戦に弱そうというよりも、いかにも戦をする気もなさそうで天下を覗う気持ちなど毛頭なさそうな朝倉義景と対面する光秀。面倒臭そうに困ってるだろうから金はやろうという義景に対し、プライドからそれを拒む光秀。しかしあばら屋に入った途端にいきなり金に困ってお駒に質屋に行ってもらわないといけないという甲斐性無しぶり。それでも俺はこのままでは終わらないと考えだけはデカイというニートっぷり。

 この光秀がニートっぷりを発揮している間に、予想通りにお駒を助けたのは光秀の親父であったということが分かるのと、岡村が急に駿河に帰ると言って離脱するイベント。岡村についてはこのまま番組からフェードアウトしてしまっても、今後の展開上全く困らないような気がする。諸々問題もあったし、演技も上手くはないしで、このまま自然消滅の線もあり。

 

ダーク信長登場か

 一方の優柔不断な信長は柴田勝家がもたらした弟信勝の謀反の知らせにアタフタ。そこに登場するのがこの番組一番の策士である帰蝶。信勝を呼び出して討ち取ってしまえと信長を焚きつける。そして兄貴が病気と聞いてホイホイやって来る信勝に対して、信長は初めて腹を割っての兄弟の対話。結局はその後、信勝が持参した毒で信勝を殺すという狂気的な姿を垣間見せるという展開。涙を流しながらヒステリックに弟の命を奪うダーク信長が発現する。

 信長がいささかお馬鹿に見えてしまうが、こういうややヒステリックな面があって、その背後に狂気を秘めているというのは信長らしくもある。いかにも仕えにくそうな主君であり、その辺りは光秀の本能寺の変の伏線か。一方の朝倉義景は「こんな奴なら、そりゃ織田に本気で攻められたらあっという間に滅ぶよな」という妙に説得力のあるキャラである。

 あまりに全ての黒幕が帰蝶になってしまっている策士っぷりはどうかとも思うが、他のキャラクターについては概ねこんなところかというイメージ。まあ無難に展開したというところでしょうか。ただ目下のところの一番の問題は、撮影終了分が6/7放映回で終わりということで、その後はしばし中断になるということが決定されていること。朝倉領の中でニート生活を送っているだけで終わってしまいそうな予感。

 

NHK大河ドラマ「斎藤道三」最終回・・・でなくて「麒麟がくる」第17話

 大河ドラマもいよいよ序盤の最大の山場である斎藤道三の最期がやって来た。ここに向けてドラマの方も盛り上げてきている。とは言うものの、正直な感想を言うとどことなくあちこち締まらなかったなというのが私の本音。

 

今ひとつピリッとしない合戦シーン

 長良川の合戦シーンではエキストラも動員してドローンを使用した空撮(これは最初の頃の織田信秀との合戦でも多用していた)を駆使してのかなり気合いの入った撮影・・・を行っていたようなんだが、初期の合戦シーンでも感じたが、どうも生きるか死ぬかの切迫感が伝わってこず、所詮はあちこちの地方の古戦場なんかである「合戦ごっこ祭」のように見えてくるのは何だろうか・・・。エキストラからいわゆる殺し合いをしているという緊張感が全く伝わってこない。また以前から気になっているのだが、どうもこの番組、緊迫感の演出自身が今ひとつである。どちらかと言えば常にホームドラマくさい。

 

道三の最期の描き方はもっと盛り上げを

 圧倒的不利な状況の中で突然に単騎駆けして、義龍の元に現れて一騎討ちを申し込む道三とそれを受ける義龍というこれまたあり得ないシチエーションが登場するのであるが、史実的には無茶でもこれはドラマの演出としては一応許容範囲内。ここで対立した父と子の本音がぶつかり合うという見せ場のシーンなんだが、盛り上がるはずのシーンで今ひとつしらけてしまったのはなんだろうか。やはりここではもっと両者が腹の中をさらけ出してぶつけ合うぐらいの展開が欲しかった。義龍から「あんたは俺のことを最後まで認めなかった。俺をここまで追い込んだのはあんただ。」ぐらいの絶叫とかがあっても良かった気がするし、それに対して道三の最期は「皮肉なものだな。お前の実力に気付かされるのが最後の最後の時だったとはな・・・」ぐらいの台詞が欲しかったところ。そもそもホームドラマ色の強い大河であるから、もっと父子の感情の行き違いの悲劇のようなものを正面に出しても良かった気がする。

 

理解しにくい帰蝶の立場に存在感の微妙な信長

 織田信長の描き方も中途半端であったし、帰蝶も何を考えているか今ひとつ不明だった。今回のこのドラマの描き方だと、帰蝶が裏で煽った結果として、弟たちは命を落とし、道三も無謀な戦いに突入したという形になっている。何を考えて帰蝶がそういうことをしてしまったのかというのが、今回の脚本と帰蝶の演技からは全く伝わってこなかった。正直なところ、帰蝶が予期せぬ形の悲劇になってしまったのか、ある程度その方向に意図的に誘導したのかも不明。その結果、脇でウロチョロしていただけに見えた信長の小者感が半端ない羽目になってしまった。

 

主人公の存在感のなさに緊迫感のなさ

 また主人公の存在感の限りない軽さ。結局は何もしないで戦場を走り抜けていただけで、しかも道三が殺された直後に義龍の前に現れて敵対宣言をしていくというあり得なさ。さらには今にも義龍勢に明智城が攻められて落城するかという緊迫するシーンであるはずなのに、延々と家臣との別れを告げていたり、挙げ句は母親が自分は行かないと突然にごて始めるという緊迫感皆無の展開。熙子も相変わらずのんびりしたもので、危機感のかけらも感じられない。一体義龍軍はどれだけのんびりしてるんだという気がした。これだと光秀を無理矢理に義龍の元に行かせず、義龍は光秀と袂を分かつことになったことを内心で残念に感じつつ明智城総攻撃を命じる形にした方が良かった。そして義龍自身がわざと引き延ばしを図って、光秀が逃亡したことを知ってから総攻撃をさせるという形にするのが正解のような気がするのだが。

 

 ホームドラマとして描くのなら、あくまでホームドラマとしてもう少し各人の内心を丁寧に描くべきだし、歴史ドラマとして描くなら、やはり生きるか死ぬかの場面はもっと緊迫感を持たせるべきだしというわけで、私としては今回は「万事が中途半端」という感を強く受けた。さてこれから光秀浪人編に入るわけで、下手したらもっとドラマが弛緩しかねない危険を秘めているのであるが、どうなるやら。ここまで「それなりに無難に進めていた」と感じていたこのドラマだが、正直なところここに来て不安が増してきた。

 

麒麟がくる、一気見

 お籠もりついでに今まで録りだめていた「麒麟がくる」を一気見した。話は序盤の佳境である斎藤道三の最期の前夜というところまでであり、どうやら次回に道三は死に、光秀は熙子を背負って明智城から逃亡することになりそうである。

 この辺りは光秀の人生については全く何の記録も残っていない時代になるので、脚本家が好き勝手に話を作っているのだが、一応話自体は通っていてまずまずまとも。ここ数年のひどすぎる大河の中ではこれは画期的かもしれない。

 もっとも見ているとツッコミ入れたくなる箇所も多々あったので、まずはツッコミを列挙しておくか。

 

1.いろいろな事件に影でからみすぎの光秀

 まあ大河の主人公には付きものなので仕方のないところではあるが、織田と今川の合戦から畿内での将軍周辺の争いまで、あらゆるところでなぜか光秀が関与することになってしまう。早々と信長と面識を持っている上に将軍にまで直接会って「お前がしっかりしないから世の中がまとまらないんだ」というハッパをかけてしまったり(直接に言ったわけではないが)などのスーパー過ぎる活躍。まあ江ちゃん10才が神君伊賀越えに同行するよりはまだマシだが、最近のファンタジー大河っぽくて気にはなる。

2.光秀しか側近のいない嫌われ者の道三

 道三が何かと言えば光秀ばかり重用し、他に側近はいないのかと思わせる内容。もっとも息子と争った時に道三側に付いたものがほとんどいなかったので、領内で家臣に人望がなかったのは確かにそうなのかもしれないが、明確に道三に付いてたのは露骨に媚び売っていた光秀のおじさんぐらいしかいないみたいで、何かことあればまだガキだった光秀に頼っていたように見える。しかも土岐頼芸を追放する話で、光秀に「どちらかと言えば嫌いです」と断言された時にもろにショックを受けたようにしか見えなかったツンデレ親父でもある。

3.突然に熙子にプロポーズする光秀

 いきなり初対面(一応幼なじみ設定)の時から、「サクラ大戦の真宮寺さくらでもここまで媚び媚びではなかった」と感じるぐらい露骨に媚び媚びで登場の熙子。しかもいきなり昔の結婚約束まで引っ張り出してくるという猛アピール。正直ドン引きしても良さそうなのに、なぜか光秀がポヤーンとしているなと思ったら、二回目の登場でいきなりのプロポーズ。思わず「!?」

 

4.光秀に振られた途端に大物にモテモテのお駒

 光秀にからむ少女として、マチャアキの助手のお駒がいるが、光秀を取り巻く女性は正室の熙子だけで側室もいなかったということが「記録」に残っているので、登場時から振られることは確定していた。予定通りに唐突な熙子の登場で見事に振られているが、途端に今まで女性として見られていなかった節がある彼女が急にモテモテ。以前から挙動の怪しかった菊丸(女性の敵・岡村隆史)だけでなく、突然登場した木下藤吉郎(後の豊臣秀吉)は露骨に色目を使うし、松平元康(後の徳川家康)までポヤーンとしている状況。どれだけ大物にもてるねん。

5.策のない道三に策士すぎる帰蝶

 最初に織田信秀を打ち破って以来、策らしい策を見せないマムシの道三に対し、娘の帰蝶が何かと策士すぎ。信長と道三の面会を裏でお膳立てし、義龍が家督を継いでからは影で弟を焚きつけて、結果としては道三が滅ぶきっかけを作ってしまったことになる。一方の道三は帰蝶に一方的に踊らされているだけのようにも見える。もしかしてこの作品の斎藤道三は「殿といっしょ」の斎藤道三か?

      

6.父子関係の悪すぎる奴らが多すぎ

 話の核の一つである道三・義龍の親子が最期は殺し合いにまでなる関係だからなのかもしれないが、番組に登場する父子がことごとくうまくいっていない。信長は父の愛情を求めながら父に愛されなかった中二病息子として描かれているし、家康まで「父のことは嫌いだったから別に殺されても恨んでいない」と明言しているし(もしかしたら、今後同じことを今川氏真が言う場面があるかも)、主人公の光秀においてはそもそも父親がいないという状態。三谷幸喜が、女性不信のせいで女性をまともに描かないと言われていたが、この作品の作者も父子関係に何か思うところがあるのではと感じてしまうぐらいの極端さ。

 

 まあ初期の目に突き刺さる色彩はいくらかマシになったようだし、光秀の馬鹿っぽすぎる演技(初期の設定は10代ぐらいだろうから、若者と言うよりも馬鹿者になってしまっていた)あたりも光秀の年齢が上がってきたことで落ち着いてきた。また庶民派的でありながら奥深い危なさを感じさせる信長など、なかなかに斬新な描き方のキャラクターなども見える。ツッコミ所はあっても目下のところ決定的な破綻もなく、久しぶりに「見る気のする大河」になっている。これからしばし光秀浪人編に突入すると思われるのだが、ここをどういう描き方をするか。それと作品全体としては本能寺の変をどれだけ説得力を持って描けるかが勝負所となりそう。

 それはそうとコロナの影響はこの作品にもそろそろ及びかけているとのことで、それでなくても沢尻容疑者の件での撮り直しとかでドタバタしたので、スケジュールがかなり厳しく、途中で打ち切りという可能性も囁かれているとか。下手したら、話が途中までで終わって、最期は主人公がナレ死なんて可能性も・・・。それとも信長の家臣となった光秀が空を仰ぎながら「麒麟がくる世の中にするぞ」と呟きながら「俺たちの戦いはこれからだ」で終わるのかも・・・。キングダムも4話で放送中止になってしまったし、いよいよこっちの世界も洒落にならなくなってきた。

 

麒麟がcool!・・・じゃなくて、麒麟がくる第2,3話

 先週は第2話を見る暇がなくて3話とまとめ見。第2話では織田との合戦があったのだが、圧倒的劣勢下の戦いを道三が計略によって大勝するという話に、その戦いの裏で糸を引いていた守護の土岐頼純を眉一つ動かさずに暗殺するという道三の凄みを見せた回。これに対して第3話は道三の操り人形にされてしまっている土岐頼芸が何やら策動し、道三の息子の義龍を焚きつける話。そして義龍も道三を排除する胸の内を光秀に打ち明ける。

 

 

道三の凄みを描いた第2話

 第2話の合戦シーンはそれなりに金をかけているなということが覗われ、NHKがこの大河にかなり本気で力を入れていることが垣間見えた。いかにも今時らしくドローンをやたらに多用していたのが目についたが、今時はどの番組でもこれである。ただドローンによる「鳥の目」がどれだけ効果を上げるかは使い方次第。青色発光ダイオードが開発された時、まるでうれしいかのように何でもかんでも青色になったことがあったが、昨今は誰でも彼でもドローンを使いたくて仕方ないという様子が垣間見える。ただその使用に必然性があるかと言えばいささか疑問もある。

 大規模なオープンセットを組んだようでこれだけでも予算は結構かかっているだろう。エキストラもそれなりの人数用意したようだ。ただどうして実際に合戦シーンとなるとセット臭さを隠しきれない部分もあり、「風雲稲葉山城」めくのは仕方ないところ。いかにも重機で掘りましたという印象の堀については、もう少しハンドメイド臭を出せなかったのかと感じた次第。また「堅固な山城で容易には落とせない」と言っていた稲葉山城が、どこから見ても単なる平城にしか見えなかったのもご愛敬か。

 道三の本木雅弘はそれなりの演技をしていたと思うが、ただやはり道三のイメージとは少し違うし、義龍と並んだ時に義龍が老けて見えることもあって親子というイメージにならないのが気になるところではある。

 

 

義龍の心情を語らせた第3話

 第3話は今まで存在感の薄かった道三の息子の義龍が、自らの腹の内を光秀に語るという回。この辺りは光秀についての記録が全くないので創作の自由度が極めて高いが、光秀が帰蝶と幼なじみであり、さらには義龍とは共に机を並んで学んだマブダチというのはかなり大胆な設定。帰蝶に対してはある程度身分を考えて物を話す光秀が、義龍に対してはフラットにあけすけに話するのは、この時代としてあり得るか?という疑問は少々あり。

 なお義龍が道三の息子ではなくて頼芸の息子であるというのは当時から言われていたところであったようだし、義龍もそう考えていたのではと思われる。また道三に不満があった家臣達もそれ故に義龍の元に集結したということはあったようだ。

  帰蝶を演じている川口春奈の演技については今のところはまあ及第点。ただ彼女のキャラとしてあまりに現代女性であることが滲んでしまうのはどうだろうかというところがある。挙措などの細かいところが時代劇でなくて現代劇になってしまうのは、彼女の芸歴を考えた場合にはまだ仕方ないか(そもそも本当に時代劇の挙措が出来ている者は、目下のところ出演者に皆無に近いが)。身分に段違いの差があるお駒と普通に女子高生トークの雰囲気になってしまっているのは、少し設定としてどうなんだという疑問はあり。

 なお腹に一物を持ちながらも道三の前ではバカ殿を演じているように見える土岐頼芸の裏表なんてのも今回の見所ではあったようだ。これからは頼芸が徹底的に義龍を焚きつけて、ついには義龍が道三を討つというところまでいくことになるのだろう。ただ義龍のマブダチの光秀はその時に義龍に美濃を追われているのだが、それはどうなるんだ? 光秀は義龍に付こうとするが、頑固な叔父が道三に付いてしまってそれに巻き込まれるという展開だろうか? となると、義龍は泣きの涙で明智を攻撃し、恐らく光秀の逃亡は暗に見逃すという展開を持ってくると思われる。

 そして第3話のラストでようやく海道一の弓取り今川義元が登場。ラブリンが黒昇太とは違った義元をどう演じるかが見所ではある。

 

 

 総じて目下のところは無難に作っているという印象であるが、不安要素としてはNHKのスタッフの方にも既に時代劇経験のあるものが減ってきていて、演出その他にどうしても軽さが見えてしまうところ。ドラマが全体的に時代劇としての重量感がないというのは否定できない。これが後々に崩壊要素にならなければ良いが。