徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

お知らせ

アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

青天を衝け 第12話「栄一の旅立ち」

栄一、平岡円四郎にスカウトされる

 栄一がついに血洗島から京に向けて旅立ちます。こうして栄一達が天下に向けて羽ばたいていく・・・と言えば聞こえが良いですが、実際はあの雑極まりない計画が漏れた危険があるので、京に向けて遁走したというのが実態です。

 栄一達は江戸に行ったようですが、そこで慶喜配下の平岡円四郎にスカウトされる。まあ慶喜の家臣は彼しかいないみたいな状況ですから、明らかに人材不足でしょう。にしても、一橋家の家臣が江戸市中で農民をスカウトするか? まあ正史でも栄一は円四郎の手引きで京に行けたらしいから、それまでに円四郎と接触していたのは事実だったらしい。となると円四郎はめぼしい奴には次々と勧誘をかけていた可能性がある。まるで自衛隊のスカウトである。

 で、その円四郎は命を狙われているという話がありましたが、実際に円四郎は最後はテロで命を奪われるようです。まあジョーイの巨頭である斉昭の息子だけに、慶喜の本意は攘夷にあると下が勝手に忖度していたのだが、慶喜は「攘夷なんて日本の実力で出来るわけないじゃん」と攘夷に動く気配が微塵もなかったので、下の連中が「これは君側の奸たる平岡円四郎が慶喜の意向を歪めているに違いない」と勝手に暴走したという展開です。まあいつの時代でもそうですが、テロに走るような輩は視野が著しく狭いので、往々にして自分に都合の悪い現実は直視せず、現実の方を自分の妄想に合わせて歪めようとするものです。で、円四郎はその犠牲になったと。

 

雑なテロ計画は長七郎に完膚なきまでに否定されて頓挫

 で、バカ兄貴の雑なテロ計画ですが、京に行って世の中の現実を散々見てきた長七郎によって完膚なきまでに否定されます。一言で言えば「こんな雑な計画は成功するはずもなく、単なる犬死になる」という単純明快なもの。栄一は「自分達が挙兵すれば、それに呼応する奴らがいくらでも出てくる」などという根拠なき楽観論を掲げてましたが、んなことは起こるわけもないのは分かりきったこと。長七郎に「薩摩はイギリスにボコボコにされて攘夷を捨てたし、京でも攘夷派の公家達が天皇の意向で追放された」なんて最新の状況を教えられたら、情報から孤立している田舎者としては「あれ?攘夷派って知らない間にすごくヤバい状況になってね?」って考えざるを得ないというところ。

 まあここで長七郎の説得を振り切って実行していたら、見事に栄一達は犬死にして「大河ドラマ 渋沢栄一 完」でした。長七郎のおかげです。もっとも長七郎にしたらこれは現実に完全にうちひしがれた大きな挫折であり、これはどうも彼のメンタルによろしからぬ影響を与えたのか、後に乱心したのではと言われる事件を起こし、実際に最後は病死なんですよね。何となく既にメンタルが危険な兆候は現れていたようだが。栄一とは対称的に不幸な結末を辿る人物です。

 結局は計画断念に至るわけですが、栄一達はとにかく派手にやり過ぎたので役人に目をつけられている可能性が高く、結局は京都に逃走することに。栄一の自白に「そんなアホな計画を考えていたのか」といささか呆れた感のある親父ですが、どうやら自身も過去に厨二な黒歴史を持っていたらしき親父は、栄一に金を渡して逃走を援助。やっぱりなんだかんだで本質的には甘い親父です。にしても実際は一番災難なのは嫁です。現実に栄一はこの後も散々に嫁を泣かせる模様。

 で、栄一厨二テロリスト編は終了、次回からは京都編に突入とのこと。そしてその後は「テロリスト、幕臣になる」で、「気がついたら明治になっていた」って展開か。それにしても北大路欣也の無駄遣いはまだやってるのか? いよいよもって登場意味が不明になってきているが。

 

次話はこちら

www.ksagi.work

前話はこちら

www.ksagi.work

 

青天を衝け 第11話「横濱焼き討ち計画」

バカ兄貴が立てた雑極まりないテロ計画

 いよいよ舞い上がったバカ兄貴が雑なテロ計画を立案します。高崎城を襲撃して武器を奪い、そのまま鎌倉街道を通って横浜に移動、横浜を焼きはらって異人を襲撃するという極めて雑極まりない計画。

 そもそも高崎城を落とすという時点でそれが可能なのかが疑問。さらにもしうまくいって高崎城を落とせたとしても、すんなりと横浜までたどり着けるのか。とにかく舞い上がったバカ兄貴が突っ走っていますが、実行したら失敗が約束されているような雑極まりない計画。長七郎のことは犬死にだと全力で止めたクセに、自分達は犬死ににはならないという妙な根拠のない自信。

 で、栄一には子供が産まれるのだが、残念ながらこの子供は麻疹の流行でなくなってしまう。この年は麻疹とコレラの流行で多くの人が亡くなったのだとか。またこの時代、生まれてすぐの子供が死ぬなんてのごく普通の時代でしたから。子供が普通に産まれて普通に育つようになったのなんてつい最近で、とにかくまず出産が母子ともに無事に終われば御の字、さらに子供が成長するのは半分程度なんて時代ですから。この時代には兄弟の内の何人かは子供の時に失っているというのは極々普通でしたから。

 

子供が出来たのに何やってるんだこの厨二は

 もう完全に舞い上がっている栄一は江戸で武器と同志を計画のために集める。とは言うが、これも極めて雑。飲み屋で大っぴらに大声で密談やってるんだから、あれは明らかにもう目をつけられているだろう。普通密談ってのはもっと密かにやるものだが、あれだったら「ここにテロリストが集まってますよ」と大声で宣伝しているようなもの。だから密談の類いを酒を飲みながらしてはいけない。ちなみに現代でも、企業機密はセキュリティや何やらでガチガチにロックをかけているが、実は当の機密は近くの飲み屋で当事者の口からダダ漏れって例が少なくありません。

 息子を失った栄一には次は娘がすぐに生まれたようだが、世直しだと舞い上がってしまっている栄一は、それも省みずに親父に「大義のために働きたいから勘当してくれ」と依頼。オカンなんか「この厨二はバカなことを考えてるな」というのは丸分かりだが、結局は何だかんだいいながらも根本的には甘い親父はそれを認めた模様。嫁さんまで栄一と一緒になって親父に頼んでいるのだから、まあ「何と立派な嫁さん」っていうことだろうが、実際には「アホか」というのが本音ですね。無駄死にしようとしている旦那を後押ししてもダメだろ。

 結局はこの雑なテロ計画は、京で世の中の現実を散々眺めてきた長七郎から「そんな雑な計画成功するわけないだろう」とケチョンケチョンにやられて実行前に頓挫することになるようです。最初に無駄死にしようとしていた奴から、今度は計画を止められるというお笑いになってしまうのが次回のようです。

 

ひたすら貧乏くじに振り回されている慶喜

 一方の慶喜は将軍後見職として政治の舞台に返り咲きましたが、本人は完全に貧乏くじを引かされたという意識が強い。回りはジョーイの鬼こと斉昭の息子だけに、これでようやく本格的に攘夷が実行できると喜んでいるのだが、当の慶喜は「日本の実力考えても攘夷なんて本当にやれると思ってるの?」という極めて現実主義的な考え。実際に実力で攘夷実行しようとした薩摩と長州は外国艦隊に報復されてボコボコにされてますから、結果としては両国とも「現状では攘夷は不可能」と嫌でも悟るのですが。まあ長州に唆されて舞い上がっている公家衆がピーチクパーチク盛り上がっていたようですが、慶喜にしたら「そんなに攘夷をしたいのなら、じゃあお前達が戦ってみろ」ってなもんでしょう。

 結局はこの後、慶喜は本人の意向と関係なしにドンドンと貧乏くじを引かされることになっていきます。「こんなのやってられるか」という投げやりな空気が実によく出ておりました。実際に慶喜は、最後の頃になったら本当に面倒臭くて馬鹿らしくなっていたんではって気もします。それにしてもこれが最後の切り札だったわけですから、徳川幕府の一番深刻かつ致命的な問題はやはり人材の枯渇だったような気が。

 

次話はこちら

www.ksagi.work

前話はこちら

www.ksagi.work

 

青天を衝け 第10話「栄一、志士になる」

栄一、テロリストになる

 喜作までが江戸に行くと聞き、すっかり舞い上がった厨二栄一は自らも江戸に行きたいと親父殿に懇願。何だかんだで意外と甘いところのある親父はそれを了承して、栄一は念願の江戸へ。しかし8年前に来た時と違って物価高騰や疫病の流行などで活気がなくなっている。

 で、喜作の誘いでテロリストアジトに出入りする栄一。神の国に異人を入れた天罰だという話に対して「それなら何で神風を起こしてくれんのじゃろか」と相変わらず思ったことをそのまま口にしてしまうKY栄一。危うく他の血の気の多い連中に袋叩きにされかねなかったところを辛うじて助け船を出してもらえましたが、本当にガキの頃から進歩のない奴である。

 そしてものの見事に分かったような分かっていないような状態で「とにかくジョーイだ!!」と完全に浮かれてテロリスト仲間になっている栄一。人を斬るための剣術訓練にまで参加しますが、百姓に人が切れるかの言葉に意地になってエヴァンゲリオンの碇シンジ状態で刀を滅茶苦茶に振り回して回りに取り押さえられることに・・・。何か半端ない厨二臭が漂っています。

 

お千代は目出度くおめでたで浮かれる栄一

 一方、江戸に行った旦那のことを「倒幕で浮かれてたから変なのに巻き込まれなければ良いんだけど」と心配していたお千代は、子供がなかなかできないことを伯母からネチネチと攻められてます。親父さんは「根は良い人」という言い方をしていたが、いや、あの伯母さん明らかに根っこから陰険でしょ。

 で、江戸から浮かれて帰ってきた栄一。親父は脳天気にこれでバカ息子も満足しただろうと思っていた様子だが、お千代は厨二旦那が良からぬ企みに参加しようとしている空気を感じている雰囲気。そんな矢先にお千代が妊娠判明、栄一は完全に浮かれてしばしジョーイ云々はどこかにぶっ飛んでお千代もひとまずは安心。

 しかしその頃幕府ではワンコ(井伊)に変わって老中筆頭になった安藤信正が公武合体を強力推進中。和宮の一行をもてなさないといけなくなった血洗島では、また田畑ほったらかしで動員がかかり、例によって偉そうにしながら何でも巻き上げるクソ代官に栄一は再び不満を蓄積中。腹の中で「絶対幕府倒す」という決意を固めているのが明らか。

 

公武合体で暴発する若きテロリスト達

 一方のテロリストアジトでは安藤信正を討つなどと息巻いて盛り上がっている連中が。で、長七郎もその仲間に連なることに。しかし帰ってきた長七郎からそのことを聞いた栄一らは「犬死にだ」と猛反対。まあそりゃそうだ。実際にワンコが死んでも幕府は特に何も変わっとらん。しかし「理屈だけで何も動かない」と痛いところを長七郎に突かれたバカ兄貴が「俺も動く」とかわけの分からんことを言い出したので、これが来週につながるんだが。

 で、テロリスト共の親玉の大橋訥庵は慶喜にも「この機に立って欲しい」と書状を送ったようだが、例によって慶喜はそんな気は微塵もなく、あっさりと無視されている。まあ勝手に下が忖度して突っ走ってもなってとこだろう。それにしても相変わらずやる気があるのかないのか分からん男だ。

 結局は長七郎は栄一らの必死の説得で参加はしなかったようだが、他の連中は安藤を討とうとして自爆。そりゃワンコが殺されての昨日の今日だから、あちらも警戒を強めてるだろう。それをワンコの時と全く同じやり方で実行しようとしたようだから、あまりに工夫がなさ過ぎ。テロリスト共は脳筋系ばかりでどうやらまともに作戦立案できる奴がいない模様。

 暴走した連中がもろに自爆という報を聞いた長七郎は、自分は参加しなかった後ろめたさもあって江戸に駆けつけようとしているが、当然のように今は江戸では一味の捜索中だから、そこに戻れば飛んで火に入るである。と言うわけで栄一達は必死で長七郎を止めるために走ったところでさて次回とのこと。次回が「横濱焼き討ち計画」だから、いよいよ「英雄たちの選択」でもやってた雑なテロ計画の登場か。

tv.ksagi.work

 

次話はこちら

www.ksagi.work

前話はこちら

www.ksagi.work

 

青天を衝け 第9話「栄一と桜田門外の変」

ワンコ井伊の暴走と尊皇攘夷で浮かれる栄一

 忠誠心だけで突っ走るワンコ井伊。いよいよ反対者を弾圧する安政の大獄に踏み切ります。斉昭は江戸を追い出され、慶喜は強制的に隠居させられて幽閉。ここでまたへそを曲げてヒッキーになる慶喜。やっぱり何考えているか良く分からん。とにかく無意味に頑固なことだけは分かった。これがやはり同じく無意味に頑固な栄一と共感するという展開か?

 一方の栄一は完全に新婚ボケ。そこに帰ってきたのはやっぱり長七郎だったか。長七郎から江戸の現況を聞かされた栄一は「井伊って悪い奴なんだな」という非常に単純な認識。まあとにかくお目出度い奴です。バカ兄貴は井伊が異人を受け入れたせいでコレラが流行った、尊皇攘夷だと勝手に浮かれているし・・・。

 完全に浮かれてしまっている栄一に対し、親父さんは「百姓が公儀のことなんかどうするんだ」というスタンスですが、まあこれが普通の反応でしょうね。千代にしても「うちの旦那を変に唆さないでくれ」という意識が滲み出ていたし。それでなくても浮かれやすい栄一だから、乗せられたらテロリストになってしまう懸念を感じているんでしょう。

 

桜田門外の変発生、呆気なく殺害されるワンコ井伊

 で、主人公周辺が浮かれている内に江戸ではどんどんときな臭い状況に。江戸から追放された斉昭の意志を勝手に忖度した連中が、脱藩しては続々と江戸に集まって極めて不穏な状況に。その不穏な噂を聞いた家茂が井伊に「危険だから大老やめた方が良いんじゃないか」と持ちかけるのだが、ワンコ井伊は忠誠心だけは高く、根拠なしに「自分は大丈夫ですから」と辞める気なし。まあ井伊としてはターゲットリストはほとんど塗りつぶしたから、自分に敵対できるものはもういないと高を括っていたのでは。しかしテロリストなんてどこからでも湧いて出てくるんですが。

 そしてついに桜田門外の変が勃発。井伊は籠に乗ったまま銃撃され、その後に籠から引きずり出されて首をはねられます。ちなみに井伊直弼は実は居合いの達人だったという話なんですが、受けた銃弾が腰のところを貫通しており、恐らくこの時点で身動きとれない状態になっていたと推測されています。まあ要人警護の専門家の観点からは、ここでは騒動が起こりそうになった時に何はともあれ井伊の乗った駕籠を警護して現場から離れる必要があったのに、それが全くされなかったのは警護の完全な手落ちとされています。確かに様々な悪条件があったとしても、あまりに呆気なくやられてるんですよね。それなりの警護の人数がいたにもかかわらず、それも江戸城の目の前で。

 

そしてジョーイの斉昭も去る

 結局はこの事件は幕府の権威を決定的に失墜させることになってしまいます。臣下に勝手に忖度された斉昭は「俺はそんなこと望んでないぞ」と騒ぎますが完全に後の祭りです。まあテロなんてものは往々にして下が勝手に上の考えを忖度して、往々にして過激化していくものです。だから上としては「○○しろ」と言わなくても、「○○なんてことが起こったとしても仕方ない」とかの言い方をしただけで下はその通りにします。まさにトランプが支持者をけしかけた手法で、かつてはナチもこれで突撃隊にユダヤを襲撃させました。この辺りは先週のダークサイドミステリーで登場してます。

tv.ksagi.work

 なおこの番組では斉昭は、水戸藩が幕府に楯突いたことになってしまったと心配してましたが、本音では実際にこのテロを暴挙として反対していたかは微妙なところがあります。

 しかし間もなくこの斉昭も倒れてそれっきりになってしまいます。結局は斉昭は慶喜が将軍になるのを見てません。だけど慶喜が将軍になった時にもし斉昭が生きていたら、かなりうるさかっただろうと思われます。大政奉還なんて実現しなかったかも。

 

にしても、最後の最後まで井伊直弼の描き方がひどすぎ

 それにしても最後まで井伊直弼の描き方が大概だったな。元々それだけの手腕は無かったにもかかわらず、将軍にそのワンコぶりが評価されて大老に任命され、その将軍の無茶な遺言に従うために何の落ち度もなかった慶喜を強引に処分、さらには小者特有の執拗さで叛逆分子になりそうな奴らを片っ端からしょっ引くという恐怖政治を実施と、全く救いようのないダメっぷりを晒してます。だけど実際の井伊直弼と言えば、賛否はあるものの彼なりの筋の通った考えがあり、それに従って身の危険は感じつつも覚悟を決めてあえて強引な手法をとった政治家というところがあるんですが、そんな感じは微塵も出してませんでしたね。実際に井伊直弼を里見浩太朗辺りが演じたドラマにしたら全く印象が変わります。しかしこの作品では、超小者の保身失敗という感じでした。本当にこの描写、彦根市はこれで良いのか? さすがにこの描き方だと「大河にも登場した井伊直弼ゆかりの彦根城」という宣伝もしにくいと思うのだが。

 ところで実は桜田門外の変自体が、血生臭い要人テロ事件にもかかわらず、水戸に行った時にあっちでの扱いが大概なことに私は絶句したこともあります。

f:id:ksagi:20210411211748j:plain

水戸駅で販売されている土産物

 

事件で完全に舞い上がってしまった栄一は順調にテロリストへの道を

 そして桜田門外の変を聞いた栄一周辺は異様な盛り上がり。まあ尊皇攘夷にかぶれた彼らにとっては壮挙という認識なんでしょう。完全に思想がテロリストになってきてます。で、従兄弟の喜作は江戸に行くことになったとのことで、それを聞いた栄一も親父に江戸に行きたいと直訴。果たしてどうなるかというところで次回。

 そして次回は栄一が志士になるとのことで、どうやら栄一テロリスト編に突入の模様。あのお調子者の従兄弟やあのバカ兄貴と共に舞い上がって雑なテロ計画を立てますが、結局はそのテロ計画はあの長七郎の反対で中止になるということは、先週の「英雄たちの選択」でもやってましたね。舞い上がった厨二男の暴走になります。やっと慶喜と出会うのが近くなってきた。今月中には出会うか? ただ栄一は戊辰戦争の最中はバリにいて、結局は本当に歴史に全く絡んでないんですが。

tv.ksagi.work

 

次話はこちら

www.ksagi.work

前話はこちら

www.ksagi.work

 

青天を衝け 第8話「栄一の祝言」

ようやくお千代と引っ付く栄一、知らぬはバカ兄貴ただ一人

 前回勢いでお千代に告白した栄一ですが、お千代も最初からその気、二人で良い雰囲気になっているところに突然乱入してきた喜作がお千代をかけての勝負を申し込む。何なんだ? この怒濤の展開は?

 で、栄一は必死で勝負を挑むが喜作が優勢。思わず「栄一さんしっかり」と声をかけるお千代。実のところはここで勝負あったなんですが、全く場の雰囲気を理解できずにやって来たバカ兄貴が喜作の勝利を宣言。しかし勝った喜作は実際は勝負に勝っても実質負けている。お千代に栄一と結婚するように告げて去って行く。状況が全く分かっていないのはバカ兄貴一人。その後、栄一にお千代との結婚の許可を求められて「お前達好き合っていたのか?」なんて大ボケかましてます。弟たちは全員気がついていたというのに、知らぬはバカ兄貴ばかりなり。ここまで空気を読めない男が何か大きな事を成せるとは思えん。

 お千代を諦めた喜作ですが、その喜作についてきた女性が。これが向こうの方が気に入って喜作に結婚を申し込んできたという女性のようです。まあそれにしても都合よく新たな女性が現れることで。そして喜作もあっさりと乗り換え(笑)。何か都合よすぎるよな。

 

馬鹿殿に振り回されるワンコ井伊

 一方の幕府の方では馬鹿殿家定の命でワンコ井伊が大老に。回りの誰もどころか、本人までもが「器でない」と認識している大老抜擢・・・それにしても井伊直弼の描き方がひどすぎるな。良くも悪くも今まで井伊直弼と言えばそれなりの存在感を持った大者として描かれたものだが、ここまで見事にワンコ扱いとは。ある意味でなかなかに画期的な直弼像だな。しかし彦根市はこれで納得するのか?

 そしてワンコは主人に対する忠誠心だけはあるようで、次期将軍は紀州藩主の慶福でという方向で動き始める。しかもそのドタバタの間に、ハリスと交渉していた奴が勝手に通商条約を調印、井伊は「えっ、聞いてないよ」っていうマヌケぶり。オイオイ・・・。

 慶喜はここで井伊を呼びつけて一喝。平伏するしか出来ない超小者ワンコ。とりあえず朝廷と大事にならないように慶喜は手を打ちますが、次期将軍については「慶福で良いんじゃない」。井伊は一安心してましたが、こりゃ慶喜の家臣でなくてもずっこけるわ。初めて少しは鋭そうなとこを見せたと思ったら、突然のこの腰砕け。やっぱりこの慶喜、何考えているのか良く分からん。その挙げ句に嫁さんには「どことなく寂しい」なんて意味不明のことを言っているし。

 一方、次の将軍が決まる否や、頭に不自由のある家定は突然倒れる。しかし最後の最後まで「斉昭とか春嶽とか慶喜は処罰しろ」とせこい私怨剥き出しの無理難題を言い残してこの世を去り、忠誠度だけのワンコはそれを実践。さすがにこの期に及んで慶喜は「なんで俺が処罰されないといかんねん!」と怒りを感じた模様だが、後の祭り。追い詰められたワンコがいよいよ暴走する独裁者になってきました。しかしとことん小者な直弼だな。良いのか?彦根市。

 

相変わらず中央とは無関係の平和な主人公周辺

 井伊の暴挙に桜田門外前夜の雰囲気の江戸と無関係に、栄一はのんびりと結婚式を上げています。やっぱり中央と別世界になっている。で、驚いたことに喜作は既に押しかけ女房をもらっていた模様。立ち直り早すぎ。で、その渋沢家に向かう一人のくたびれた人影が・・・ってとこで終わりだったんだが、あいつ誰だっけ? この作品の登場人物、私は関心が薄いのか、正直なところ区別がつかん(笑)。帰ってくるとしたら江戸に行ってテロリストの仲間入りしていたあいつかな。安政の大獄で仲間が次々とパクられて逃げてきたか? とりあえずワンコ井伊は来週もう討たれるようですが。にしても主人公、「世の中を変える」とデカいことを言っている割には、いつまで経っても世の中と絡まない。この作品、ちょっと前置きが長すぎないか?

 

次話はこちら

www.ksagi.work

前話はこちら

www.ksagi.work

 

青天を衝け 第7話「青天の栄一」

なんとなくまとまりの悪い感じがつきまとう

 相変わらずの初っ端からの北大路欣也の無駄遣い。今回なんて「これから出てくるのは実は漢詩なんですが、そのままだと皆さんは意味が分からんだろうから、あえて現代語訳で読みます」と言っただけ。「何じゃこりゃ」。こんなものわざわざ徳川家康に言わせる必要もないし、もう既に世の中が完全に徳川家康と関係ない世界になってる。いつまでこの北大路欣也の無駄遣い続けるんやら。初っ端から力抜けること甚だしいんだが。

 さて本編の方は相変わらず世の中の動きに全く無関係に、今時あり得ないようなラブストーリーをやっている主人公の渋沢栄一と、さすがにそれだけだとあまりに大河ドラマでなくて単なるホームドラマになるから、世の中の動きに連動する慶喜がダブル主役の形で進行しています。しかしこの互いのドラマがまだ全く絡んでこないのがこのドラマが今ひとつ締まらない原因となっています。

 

急に分別を持ち始めた人々

 で、慶喜周辺ですが、相変わらず「ジョーイ、ジョーイ」の斉昭ですが、初めて少しは分別のあるようなことを言いました。これには驚いた。さすがの攘夷バーサーカーも、盟友であった阿部正弘を過労死に追い込んだらさすがに少々懲りたか。初めて「英雄たちの選択」で登場していた斉昭像と少し被ったな。

 そしてヌボーの草薙慶喜ですが、初めて「少しは何か考えているらしい」という様子が見えました。自分の器量では無理と言いつつ、実際は「こうなってしまったら、自分が何とかしないといけないのかも」という気が少しはして来たようです。そのうちに「逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ」とか言い始めるかも(笑)。今までは「あえて火中の栗を拾いになんか行きたくないよな・・・」って感じだったのですが、ついに「もしかしてこの状況を何とか出来る可能性のあるのって、俺だけ?」って認識が出て来つつあるような。

 で、それを何となく促したのが、前回に完全にキ印になっていたあの嫁さん。何か急に落ち着いて分別を持ち始めたようです。相変わらず夫婦としては異常によそよそしいですが、とりあえず何やら落ち着いた模様。

 というわけで今までどちらかと言えばバカを晒していた人物達が唐突に分別を持ち始めました。これは違和感全開ですね。阿部正弘が過労死しただけでそんなに急に目覚めるものですかね?

 

対称的にバカを極めつつある方々

 その一方で対称的にバカを晒しているのが、13代将軍の家定。絵に描いたような「阿呆」として表現されてますね。家定は病弱だったとされているが、これだと身体の病でなくて頭の病だ。松平春嶽のことを「私を見下したような態度をしているから嫌いだ」なんて言ってましたが、そりゃ春嶽もこんな将軍だったら見下すわ(笑)。斉彬の意向を受けて家定をコントロールしようとしている篤姫でしたが、亭主のあまりのバカっぷりに持て余している感が。

 で、この馬鹿殿が大老を誰にするかで悩んだ挙げ句に、「こいつで良いんじゃね」って目をつけたのがワンコの井伊直弼ですか。しかしこの井伊直弼、描き方がひどすぎますね。あれだともろにワンコです。ワンコが将軍の権威を笠に着て安政の大獄をやらかしたってことにするの? それだと桜田門外で討たれるのは自業自得って感じになっちゃうんですが・・・。これだと彦根市からかなり苦情が出そう。実際は井伊直弼は彼は彼で考えがあり、それなりの政治家だったんですが。

 家定が自分で菓子を作ったりしていたというのは本当らしいですね。wikiによるとそのために春嶽などからは「イモ公方」と呼ばれていたって・・・あっ、やっぱり馬鹿にしているわ(笑)。

 

世間とは無関係に恋愛驀進中の栄一

 そんな幕府中とは無関係に、栄一は青春ドラマ驀進中。喜作が千代を嫁にもらう宣言したことでわっさもっさ。しかしそりゃお前が煮え切らん態度取るからだろうというツッコミが日本中から殺到しそうな雰囲気。

 結局は悶悶としていた栄一だが、実は栄一と千代が両思いらしいってのは、江戸に行っている長七郎は感づいていたようだし、弟の平九郎も何となく感じている模様。結局は分かっていないのはそういう機微にはいかにも鈍そうな長兄の惇忠だけか? 喜作も実際はうすうす感じていたから先手を打って動いたような感じもあるし。

 で、悶悶としていた栄一は長七郎からの手紙と、商いのために行った先での山越えで、番組タイトルの「青天を衝け」となって、気持ちが盛り上がったままお千代に突撃して「お前が欲しい」と直撃プロポーズ。何か回りくどい。これでようやく史実通りに納まると言うことか。あまりに栄一周辺にエピソードがないので無理矢理に取って付けた話って感がありありだな。だけどこのエピソードって、栄一の人物を描くのに何か意味があったろうか? まあ相変わらずの口だけヘタレって印象は強くなったが(笑)。

 そして振られた形の喜作はNHK公式HPによるとよしなる女性と結婚して、見事に尻に敷かれる模様。この女性って、話中に出ていた縁談が持ち上がった相手だろうか? とにかく向こうの方が喜作を気に入ってアプローチしたとのことになっている。まあ喜作のようなタイプは実際には尻に敷かれるぐらいの相手の方が上手く行くのは事実。このことは栄一も言ってたな(笑)。

 というわけで何か急にキャラが変わったり何だかんだでドタバタしてますが、栄一周辺は相変わらず平和な日常。もっとも長七郎はどうも江戸でテロリストになりそうな気配ですが。

 

次話はこちら

www.ksagi.work

前話はこちら

www.ksagi.work

 

青天を衝け 第6話「栄一、胸騒ぎ」

「栄一、ムラムラする」

 何か今回は栄一は青春やってます。お千代がモテモテのようですが、栄一も明らかにお千代のことを意識しだしているようですが、その心をまだ整理し切れていないなという、今時の十代なら絶対にない展開の青春ラブストーリーになってます。

 まあそれは良いんですが、お千代がどう見ても美人に見えないのが・・・。典型的な今時の顔の女優さんですから、ああいう田舎の女スタイルがとにかく似合わない。おかげですごく間の抜けた顔に見えて全く美人に見えない。NHKって昔から朝ドラにしても大河にしても、美人をブスく使うのが上手いんですが(笑)、多分今回も典型的なそういうパターンだろうな。

 しかし今回のタイトルの「栄一、胸騒ぎ」ってのはこれの意味だったんでしょうか? まあ栄一は目下のところ日本の大局には全く関与してませんから、これしか該当ないですよね。しかしこれだと胸騒ぎでなく、「栄一、ムラムラする」が正しかったような・・・。

 

トーコが死んでジョーイと吠えまくりの斉昭

 で、冒頭はいきなり藤田東湖死亡を伝える瓦版のようなものが登場しましたが、静止して読んでみたら、火の元のために屋敷に戻った老母を助けようとして鴨居の下敷きになったというようなことを書いてあったな。これって実際にそんな感じなんだろうか。ちなみにこういう瓦版や新聞って結構適当に作ってある場合が多いんですが、さすがに大河ともなればそこまで作り込んでいたか。まあスタッフも私のように止めて読むような視聴者は想定済みでしょう。なんせビデオテープの時代と違い、デジタルの時代は静止画を「テープがちびる」という心配なしにいくらでも見れる時代なので。この辺りはVHSvsベータ戦争をもろに経験している私には隔世の感があるわ。

 それにしても冒頭のマヌケな「徳川家康です」と、あのメリハリのないOPはこのまま行くのかな。まあOPはまさか途中で変えられないだろうし、どうせ私が視聴するときもOPはすっ飛ばしてるからいいんだけど、あの北大路欣也の無駄遣いはどうにかしないと初っ端から脱力半端ないのだが。

 東湖を失ってしばし茫然自失の斉昭でしたが、復活したら途端にまた「ジョーイ、ジョーイ」と吠えてます。この斉昭見ていたら、「英雄たちの選択」で言っていた優れた政治家という資質は全く見えず、やっぱり単なるバーサーカーにしか見えんのだが。

 そしてそのバーサーカーの圧力を受けまくっている阿部正弘はドンドンと顔色が悪くなっていく(明らかにそういうメイクをしている)。その挙げ句にとうとう最後には倒れてしまいました。このまま急死ですよね。彼は。やっぱりこの作品では斉昭が殺してるわ。

 

切れてる慶喜は相変わらずで

 で、切れ者と言うよりも切れてる人の慶喜は相変わらず。どうやら宮中から嫁さんをもらったようだが、嫁さんを全く相手にせずに放りっぱなしだから、嫁さんがヒステリーを起こしてご乱心状態に。こりゃひどいわ。後でオカンに「嫁で苦労している」というようなことをポロッと愚痴ってるが、オカンからは暗に「そりゃ、あんたが悪いんと違うか」と言われております。ごもっともです。それでなくても京から納豆王国の水戸に嫁入りってだけで環境激変でストレスが多いのに(関西から関東に行くと、食い物のまずさと朝食に絶対に付く納豆でキレます(笑))、頼みの旦那は自分に興味がないのか、それとももしかしてそもそも女に興味がないのか、全く放りっぱなしってんだから癇癪も起こしたくなるというもので。

 あまりにいつまでも栄一と慶喜が何の接点もないまま二重ドラマだとあれだと思ったのか、初めて接点がでましたが、単に連れションしただけという意味不明の内容でした。うーん、これも目下のところは単なる蛇足。

 

次話はこちら

www.ksagi.work

前話はこちら

www.ksagi.work

 

青天を衝け 第5話「栄一、揺れる」

不満の高まっていく栄一

 先週、無能役人に偉そうに大金を請求されて頭に来た栄一ですが、一週間経ってもまだ怒ってました(笑)。まあ今の世の中のシステムが根っこからダメであることを痛感したことでしょう。回りの影響で攘夷思想に染まり初めて来たようです。もうすぐ一端のテロリストになる日も近い(笑)。

 で、そこに降って湧いたのが姉の婚約解消。どうも迷信深いアホなおばさんが狐憑きとかの馬鹿を言い出して・・・って話になってますけど、実際は結婚相手は商家としても成功していて本人も申し分ない相手ってことですから、本当は嫉妬で壊しにかかったんじゃないですかね。さすがに大河ドラマではそこまで醜い描き方を露骨にはしませんが。実際に親戚の中で一家だけがステイタスが上がりそうな状態になったら、足を引っ張ろうとするってことはよくあります。またどうやら焚きつけたのが叔父でなくて叔母ってのも。

 そして婚約解消になった姉はしばし放心状態。それなのにその原因を作った叔母は勝手に狐憑きだとか馬鹿げたことをいってインチキ修験者一行を連れてくる状態。こりゃ栄一もキレますわ。本音では「そもそも原因作ったのはお前だろ!」と言いたいところでは。そして修験者共のインチキを完膚なきまでに暴いてしまうと。さすがに元々口の減らないガキです。それが順調に成長した模様。

 

社会不安があるとインチキな迷信が流行します

 そう言えば恐山のイタコなんかも、なぜか呼べるのは日本人だけで外国人はダメだとか。ゴッドマーズ(元祖腐女子が熱狂した美形キャラ合体ロボットアニメです)のファンのオタが、「マーグの霊を呼び出してくれ」と言ったら「外国人はダメ」と言われたとか(笑)。

 そう言えば私も大学生の時、いきなり顔のところに手をかざされて「パワーを感じるか」なんて言われたから、「お前の手から出ている遠赤外線を感じる」と言って、そのパワーなら私も持っていると逆に手をかざしてやったことがあったな。いつの時代にも胡散臭い奴はいますが、世の中が不安になるとそういう輩がはびこるんです。昔から宗教というのは、悩み事で精神の抵抗力が落ちたときに忍び寄ってくるタチの悪い病気ですので。

 で、この騒ぎのドタバタの合間にさり気に「アマビエ様」まで登場してましたね。この時も実際にアマビエ様って出て来たんだろうか?

 

攘夷バーサーカーと化している斉昭と切れ者?慶喜

 その頃幕府では開国に纏わるドタバタで斉昭が吠えまくってました。先週の「英雄たちの選択」では斉昭は外国の状況も心得た上で、実は現状では一時開国もやむなしという冷静な判断を行っていたといってましたが、全くそんな影は微塵もない。あれではただの攘夷バカです。挙げ句の果てがロシア船が転覆したら、この際に皆殺しにして攘夷を実現しろなんて超外道発言までしてるし・・・。どうも竹中斉昭はただの熱血バカにしか見えんな。

tv.ksagi.work

 そして相変わらず草薙慶喜は賢そうなところも鋭そうなところも全く見えず、つねに画面に「ヌボーッ」と文字が見えているような雰囲気。うん、確かにこいつが将軍になったらそりゃさっさと大政奉還するだろうなと妙にそこのところだけは説得力がある。また鳥羽伏見の戦いの時に大阪から自分だけ逃げ出したのも・・・。そうか、むしろこの方が説得力のある慶喜像か(笑)。だとしたら、こんな奴が最後の切り札という状況の将軍の人材不足こそが一番の根底問題か。

 

安政地震で斉昭の安全弁が亡くなってしまった

 そして安政の大地震が起きて(下田での地震はこれの余震か?)、水戸藩邸も被害が出て(水戸藩江戸藩邸から江戸城まですべて同じセットにしか見えなかったのが安っぽいですが)どうやら斉昭の懐刀の藤田東湖が亡くなる。斉昭が「トーコ、トーコ」と叫んでいるから、最初は嫁のことかと思った。

 ロシア人の時には「天災で家族や大事な人が亡くなったら悲しいのは異人でも同じ」と言われても「そんなこと知るか」とうそぶいていた斉昭にもろにそういう境遇が押し寄せて、まさに「因果応報」という文字が画面に浮かびそうな展開です。この後、斉昭を引き立てていた阿部正弘も亡くなりますし(この番組だと斉昭が過労死に追い込んでいるよな)、斉昭は失意の中で身を引くという展開か。

 

次話はこちら

www.ksagi.work

前話はこちら

www.ksagi.work

 

青天を衝け 第4話「栄一、怒る」

何か冒頭から気が抜けるんだな・・・

 うーん、まだやってるんですね。北大路欣也の無駄遣い。あの「こんばんは、徳川家康です」ってのは一回こっきりのネタでこそ生きる手なんですが・・・。毎回毎回やられたらマヌケでしらけます。そもそも徳川家康が幕末の紹介する意味が不明ですし。私が作るなら、吉幾三がやっていた将軍の役を北大路欣也にして、もう少し出番を増やして強い印象を残してから(慶喜の器量を見込んで後を託したという形にする)、その後に解説に起用します。「私は不本意にも途中でこの世を去ってしまったのですが、その後の幕府は大変なことになっていました・・・」ってな調子で。ハッキリ言ってあの全くメリハリのない見せ場皆無のOPといい、この家康による解説といい、初っ端から肩が落ちそうになるんです。

 

商売に励む栄一は世の中の不条理に直面する

 さて本編の方ですが、さらに商売に精を出している栄一を描いています。巧みに農家同士の競争心を煽って藍の品質を上げるという方法を行っているようです。この辺りは天性の商売人の素質を感じさせるところです。親父さんよりも商売の才能はありそうです。封建時代の一農民でありながら、自由主義経済に素早く対応できそうな素質を感じさせるところです。

 で、その栄一が世の中の矛盾に直面するのが今回。最初から「能力もないのに威張りくさっているだけの典型的な嫌な奴」である領主がまたも偉そうに莫大な金を要求してきます。実際は農民に金をたかっている立場のくせに、何を偉そうに上から要求するんだと栄一が怒りを感じるのですが、結局はこの怒りが「徳川の世はもうダメだ」という考えにつながって、その後の攘夷運動に走る切っ掛けになるというのは別の番組で紹介されていました。まあここで栄一が怒りを感じるのは当然で、国民から集めた金を自分や友人などに個人的にばらまいておいて、さらに一方的に増税して国民から巻き上げる額を増やすような権力者には、怒りを感じない奴の方がバカだと言うことです。

 

開国で大混乱の幕府で慶喜待望論も出ているようですが・・・

 幕府の方はペリーの再来航でドタバタしたようです。水戸の斉昭は「攘夷だ!!」と吠えているようですが、確かにペリー艦隊単独ぐらいなら追いやることは可能ですが、それで諸外国をすべて排除できると考えているのはさすがに世界を知らなすぎるでしょう。この時点で水戸が本当にそれをやったら長州がされたことを水戸が体験することになったでしょう。まあそうなったらそうなったで歴史は変わりましたが。なお斉昭と井伊直弼で意見が対立して板挟みになった阿部正弘がいかにもしんどそうでしたが、そりゃこれではストレスで早死にするわなと妙に納得する(阿部正弘は39才で急死している)。なおこの時の両者の対立が後の桜田門外につながると考えると妙に感慨深い。

 そして何だかんだで慶喜待望論が湧き上がってきているようなんだが、その草薙慶喜が全く英明なところを感じさせないヌボーッとした捉えどころのない人物というのが・・・。相変わらずの棒演技だし。何かここのところのあまりのズレは「もしかしてここは笑いを取りに来ているシーンなんだろうか?」などと見ていて悩んでしまいそうなところなんだが、そういう意図があるようでもない。

 というわけで、まだ主人公が世の中にほとんどかんでいないということを考慮したとしても、何か今ひとつパッとしない話なんだな。もう少し何とか話が盛り上がるんだろうか? でないと私も付き合いきれなくなる可能性が・・・。

 

次話はこちら

www.ksagi.work

前話はこちら

www.ksagi.work

 

青天を衝け 第3話「栄一、仕事はじめ」

栄一が商人としての才を発揮する

 いよいよ黒船来航があったようですが、栄一はまだ商売に励んでいる状態で歴史には絡みません。ようやく一人前の商売人と認められるだけの仕事をやりましたというお話。まあ子供の頃からを描いているので、どうにもストーリーのテンポが遅いです。

 主人公は既に大人になってるんですが、実際はこの時点での栄一は生年とペリー来航の年から計算するとまだ13才のようです。つまりは中二にさえなっていない。そりゃ確かに子供だわな。大人の俳優使っているせいでどうもそこのところがピンとこない。大人の俳優に子供としての演技をさせるから、どうしても主人公がバカっぽく見える。前の「麒麟がくる」でも最初はそんな感じがあったが(鉄砲を前にしての光秀の猿踊りとか)、本作でもその辺りは顕著。成人するまではもう一段階子役を使っても良かったかもしれない。大人の俳優を出すのは結婚してからで良かったのでは。

 

徳川慶喜の草薙剛の演技が・・・

 一方、幕府の方では十二代将軍が亡くなって排斥されていた徳川斉昭が復帰するという事態が発生、斉昭は息子の慶喜を将軍に奉じて、いよいよ念願の尊皇攘夷を実行・・・と思っていたにもかかわらず、当の慶喜に「将軍になる気はない」と言われてしまう始末。かなり激しく内部は動いているようなんですが、どうにもコップの中の嵐に見えてしまうのはなぜなんだろうか?

 とそれは良いんですが、どうにかならないのかと感じるのは草薙剛の棒演技。まああまり演技が上手い方とは思っていませんでしたが(ナレーションやっていた時から基本は棒読みでしたから)、壮絶なまでの棒演技。まあ歴史的に「何を考えていたのか分からない」と言われている慶喜を、いよいよ本当に何を考えているか分からないキャラにするという効果は出てますが、これって決して計算してのことではないでしょう。ハッキリ言ってあの棒演技は今後致命傷になる可能性も。あまりに台詞が棒読み過ぎて、全然頭の中に降りてこない。第1話の栄一との出会いの時から感じていたが、今回はかなり顕著だった。臨終に瀕している将軍とのやりとりなんか「なんじゃ、そりゃ」のレベルだった。

 目下のところ、ペリーが来航して幕府の中央ではドタバタが始まりましたが、それが栄一の故郷には及んでいない。まあ実際にそんなものだったかもしれません。この後、栄一は意欲が空回りしすぎて、厨二病丸出しの尊皇攘夷テロ計画まで立案するらしいんですが、その辺りのことがこれから登場するんでしょうか? 次回の予告を見る限りでは、何やら次回に世の中を矛盾を感じるんじゃないかという気がするから、その後尊皇攘夷思想に走るんでしょう。

 

次話はこちら

www.ksagi.work

前話はこちら

www.ksagi.work

 

青天を衝け 第2話「栄一、踊る」

やっぱり北大路欣也の無駄遣い

 今回も冒頭から家康登場。相変わらずの「北大路欣也の無駄遣い」です。家康が幕末の状況を説明するというのが意味不明だし、内容も大したことは言っていないし。本当に何のために出してるんだろう。こんな意味も不明なところで北大路欣也を起用するんなら、もっと本編中の重要な役に起用すれば良いのに・・・。

 相変わらずOPはメリハリもインパクトも全くない音楽に合わせて、何か奇妙なダンスを踊っているという良く分からないもの。やっぱりこのOPだけは感心しないな。もう少しマシな曲ぐらい用意できなかったんだろうか。武士ではなくて市民なのであまり激しい曲を持ってこなかったというのは分かるが、この曲だと大きなことも特に成せないんじゃないかという気がする。今年の大河コンサートは盛り上がらなさそうだな。去年の「麒麟がくる」なんてOPはいかにもで良かったのに。どうも「江」以来の腑抜けっぷりに思える。

 

早速社会の矛盾を目撃か

 前回では冒頭からダダこねまくっていただけのウザ沢栄一でしたが、今回はようやく家業を手伝うようになったようです。ただ相変わらず口は減らないガキのようですが。

 ところで栄一は無能な代官に偉そうに金をたかられることが頭に来て、徳川の世はもう終わりだと考えるようになり、尊皇攘夷思想に染まった挙げ句にテロリスト寸前まで行く(そのテロ計画がこれまた厨二病丸出しの雑なものでしたが)という話が以前ににっぽん!歴史鑑定やヒストリアなどで登場してましたが、この番組では既に9才の時にそれを目の当たりにしてしまったようです。確かに身分社会ってそんなもんです。半分身分社会になりかかっている今の日本でも、無能な世襲政治家が偉そうに国民に金をたかってます。

tv.ksagi.work

tv.ksagi.work

 

そして踊っている内に大人になってしまった栄一

 前回はあまりに中身に動きがなさ過ぎてしんどかったですが、さすがに今回はようやくその布石ぐらいまでは来ました。なおタイトルは「栄一、踊る」ですが、実際には踊っている内に大人になってしまいました(笑)。

 ただ大人と言っても最初は10代から始まるんで、この頃ってとにかく主人公がバカに見えてしまうんですよね。明智光秀なんかも最初は10代で始まってますので、「鉄砲だ」って鉄砲の前で猿踊りしていた様はかなりお馬鹿に見えましたからね。この辺りはもう少し落ち着いてくるまで致し方ない。

 とりあえずペリー来航前夜の江戸に行くことになったようですので、これから尊皇攘夷の嵐に巻き込まれることにになるんでしょう。元々厨二病丸出しの奴ですから、そりゃそういう過激思想に染まるのも理の当然というもの。それに水戸藩って、斉昭を始めとして尊皇攘夷の巣だし。その挙げ句には井伊大老を暗殺してしまいますから。

 

そして活躍するのやらしないのやら未知数の無気力慶喜

 ただ親父の斉昭はやけに暑苦しいオッサンですが、何か日本を託された慶喜の方は「ヌボー」として何考えているか分からないところがありますね。またこの慶喜を草薙剛が演じると言うからいよいよ持って鋭く感じられるところが一切ない。今回登場したところでも全身からやる気のなさのオーラが立ちのぼっている感じである。実際の慶喜も、優秀だと言われていた割には今ひとつつかみ所のない人物だったという評がありますね。確かにさっさと幕府を終わらせてしまうと、晩年は趣味の写真とかに精を出していたという良く分からんオッサンです。果たしてどういう慶喜像が登場するやら。

 ちなみに渋沢栄一って、幕末の動乱には全く関与してないんですよね。パリ万国博覧会の使節団の一員として渡欧すると、向こうにいる間に大政奉還が起こって、帰ってきたらもう明治になっていたんで。と言うことがありますから、前作の衝撃の「主人公ナレ死」に続いて、本作は「明治ナレ新」が登場するかも。

 

次話はこちら

www.ksagi.work

前話はこちら

www.ksagi.work

 

青天を衝け 第1話「栄一、目覚める」

ガキがギャアギャア走り回っているだけで中身がない

 渋沢栄一を描く新大河ですが、まあまだ最初ですから、栄一がガキの頃ということで話の中身は全くなし。やたらにうるさいガキが走り回っているだけです。だから正直なところ、今回に関しては全く面白くないですね。

 まあ栄一がどんなガキだったのかは描いてますが。とにかくヤンチャで喧しい奴だったという描き方です。確かに男にしてはやたらにに口数が多いし、口が減らないという印象です。頭の回転は悪くなさそうなので、成長していったらかなり屁理屈並べる奴になりそうな気配。

 何か栄一の意味不明な歌に合わせてカイコが踊るシーンがあったが、あれはひたすら気持ち悪いだけだったな。どういう意図であんなシーン入れたのかが意味不明。別に虫と心を通わせることが出来るナウシカのような少年って意味があるわけでもないだろうし。単なる映像の遊びとしてももう少しマシなものを作れたと思うんだが。

 

全体的に冴えない感が否定できない

 そしてなぜか突然に徳川家康が登場しての歴史の解説。しかしなんで幕末の説明に徳川家康なんだ? まあ北大路欣也の無駄遣いという感が強かったな。あの空前の腑抜け大河だった「花燃ゆ」でも北大路欣也を意味不明の無駄遣いしてたから、正直なところ嫌な予感しかしない。

 OP映像はかなり凝っているような印象を受けましたが、その割には意味不明の円舞とか今ひとつ冴えない内容。また音楽の方も全く何も印象に残らず、かといってスケールの大きさを感じさせるわけでもなくという音楽。何か全体的に「冴えない」んですよね。

 結局は話としては栄一の方ではなく、裏でチラホラ出ていた慶喜の方がメインとして見るべきなんでしょうか。ただそれにしても、慶喜が一橋家の養子になったってだけの内容だったから、あまり進んでいない。

 まあまだ話が動き出す前ですから、結局は何も始まっていない。正直なところ、今回に関しては面白くないというか見ていて苦痛なレベルだったな。ちょっと引きとしては弱すぎるんじゃないか?

 

次話はこちら

www.ksagi.work

 

麒麟がくる最終回「本能寺の変」

将軍暗殺の命に覚悟を決める

 いよいよ最終回となりました。

 家康饗応の席での修羅場で、信長の仕打ちに対して忸怩たるものを感じながら別室で控えている光秀。しかしそこに現れた信長は笑顔を浮かべながら「あれは家康が客の立場で饗応役を指名するという無礼をしたので、家康の反応を見たかったんだ」と悪びれずに言う。それを聞きながら「こいつは一体何を考えているのだ」と不審な様子の光秀。しかしその場でさらに、秀吉から長宗我部が邪魔だから何とかして欲しいという話が来ているので、長宗我部を討つことにしたと告げる信長。「長宗我部とは親交が厚いし、長宗我部は信長に心服しているから、これは明らかに秀吉の言いがかりだ。」と反対する光秀に対して信長は決まったことだと突っぱねる。

 と言うわけでここに来て突然に本能寺の変の理由の一つとして近年になって有力視されている四国政策説が登場。この作品、これまで様々な説を網羅してきましたが、これで世間で言われている説はほぼフルコンボでしょう。しかしここでさらに信長から一押しがある。光秀に対して鞆にいる将軍を殺害しろとの命を下す。この命にもろに動揺する光秀。恐らくこれが最後の一押しになったと思わせる瞬間である。

 

完全に退路は塞がれている光秀

 何か決意を秘めた様子で屋敷に戻ってきた光秀は、細川藤孝に面会を求めるんだが、そうこうしている内に世間では「いずれ光秀が謀反するのでは」という空気が広がってしまっている。例のパシリ関白の周辺といい、何やら既に本能寺が既定の路線になってしまった空気が漂いだしている。いろは大夫に至っては「背いて欲しい」とまで無責任に言い切る始末。もう完全に周辺から退路が断たれた雰囲気になっている。

 この後は光秀が信長との対話を思い出している。将軍がいなくなれば戦はなくなるから、お前と一緒に茶でも飲んで過ごさないかと言い出す信長。そして戦のことを考えずに子供の頃のように長く寝たいと。まさに子供のような表情で語る信長に対して、いよいよ持ってもう信長が分からなくなってきたと感じている光秀。「私に将軍は討てません」と答えた時の信長の表情が狂気を帯びたものに変わる瞬間が今の信長の全てを物語っている。

 

もろに日和っている藤孝

 藤孝と面会する光秀は、将軍殺害を命じられたが拒絶したと伝える。これに対して相変わらず藤孝の態度は何となく煮え切らない。以前に信長の行き過ぎを止める時は自分も声を揃えると言った決意はまだ変わっていないかと詰め寄る光秀に対し、どことなく挙動の怪しい藤孝。光秀は「こいつとうとう日和ったな」と内心で感じたたのではないかと思わせる様子がある。一方の藤孝はこれは光秀がいよいよ事を起こす決意をした可能性があると判断、そのことを秀吉に伝える使者を送る。やっぱりこいつは秀吉に通じていたようである。この番組では藤孝が秀吉と通じていて、事前に藤孝経由で本能寺の変の情報を入手、万全の準備で乱を待ち構えていたという説を採用している模様。しかしこれは実際にそうだったんではと私も思っている。とにかく秀吉の手際の良さが異常すぎたので。

 

しかし光秀は決意を固める

 悩む光秀は愛宕山にこもって思索中。信長との対話をまた思い出すが、信長に対して「あの優しかった方が戦で変わってしまった」と本音をぶつける光秀に対して、「変えたのは戦ではなくてそなただ」と言い切る信長。この時に帰蝶の「今の信長を作り上げたのは光秀であり、作り上げた者が始末を付ける必要がある」という言葉が頭を過ぎる。その挙げ句に狂気を帯びた瞳で「将軍を討ち、帝をも越えて自分が万乗の主になる」と言い切る厨二病が極限炸裂した信長と、それをもはや絶望しかない表情で見あげる光秀。この時に光秀の決意が固まる。

 愛宕山を出た光秀は重臣達に謀反の意志を伝える。そして密かに使いとしてやって来た女性の敵・岡村に家康への文を託す。本能寺の変の後、光秀の動きがやけに鈍かったのは家康がやって来るのを待っていたのではと私は考えているのだが、この番組も家康は内々に光秀に通じていたというようである。実際に本能寺の変の頃に一番危うい立場にいたのは実は家康である。それまで家康は武田への盾としての存在価値があったが、武田家が滅んだ今となっては信長にとっては同盟者としての家康の価値はない。家康は信長に殺害される危険を感じていたが、実際にその可能性もあった。家康にしたら、信長の同盟者であり義弟にまでなっていた浅井長政の非業の最期も頭を過ぎったろう。

 

そして本能寺の変が発生だが、一番の衝撃はその後

 一方、藤孝からの知らせを受け取った秀吉は半ば嬉々として「これで天下が回ってくる」と既に万全の準備を黒田官兵衛に命じている。うーん、これが真相だろうなと私も思う。それにしてもこの作品の秀吉って、君側の奸を極めたとことん嫌な奴だな。これは見事なほど。

 で、いよいよ本能寺を取り囲む明智勢。謀反を起こしたのが明智とあれば「是非もなし」と半ば諦めたような表情で最後の戦いに挑む信長。蘭丸らと共に獅子奮迅の戦いをするが多勢に無勢、銃でも撃たれてこれが最後と自害に臨む。切腹の前に、かつて光秀と初めて出会った頃の思い出が頭を過ぎる。共に笑い夢を語ったあの日。同じ回想は光秀も行っていた。どうしてこんな悲劇的な結末になってしまったのかという思いが両者の頭を過ぎったであろう。それまで無表情で事の成り行きを眺めていた光秀の顔に、この時には初めて悲しみの表情が浮かぶ。

 結局この辺りが一番の見せ場だったようである。乱が収束して駆けつけたいろは大夫に「必ず麒麟を呼んでみせる」と笑顔で言い切る光秀だが、しかし実は今回の一番の衝撃のシーンはこの直後。颯爽と馬で去って行く光秀に対してナレーションが重なり、その後の経過を説明。そして「光秀は敗れた」と一言で突然に乱の三年後。まさかの主人公ナレ死である。

 

綺麗に収めるための工夫ではあるんだろうけど・・・

 まあ斉藤義龍をナレ死させたぐらいだし、この後の回りに見捨てられて、あの嫌らしい秀吉に敗戦し、その挙げ句に落ち武者狩りにやられて命を落とすなんていう光秀の姿なんて見たくはないという思いは、多くの視聴者が持っているところだろう。ただ本能寺の変を光秀の最高到達点として、後はナレ死で終わらせるというのはかなり大胆な展開。しかもこの後登場したお駒に「光秀が生きているという噂もある」と語らせ、なぜかラストシーンでは光秀が登場するという謎展開。もしかして光秀天海僧正説まで網羅か?

 うわー、やりよったというのが正直な感想だが、まあ光秀の最後を綺麗にまとめようとしたらあのくらいしか手はなかったかな。あれだけ嫌らしい扱いをした秀吉が天下を手に入れるところなんて見たくもないところだし(だからこそ、本能寺の変以降、秀吉は一切登場していない)。

 

一貫して厨二っぷりの炸裂していた悲しき信長

 結局は本作での信長は最初から最後まで首尾一貫してマザコン厨二男の範囲から飛び出さず、その厨二男が想定外の巨大な権力を手に入れたせいで狂って自滅していくというドラマになっていた。本作では画期的というほどに信長の器量の小ささを描いていたが、そのためには信長の先進性の象徴である設楽が原の合戦での鉄砲三千丁での勝利と、鉄甲船を使用して毛利水軍を壊滅させた第二次木津川口の合戦を完全に省いてしまうという徹底ぶりだった。

 まあこのような扱いはかなり極端なものに感じるが、信長がかなり厨二臭い部分があったのは事実だろうと思うし、狂気を帯びていたというのも事実だろう。光秀を主人公として美しく描けば、必然的に信長のそう言う部分をクローズアップするというバランスになったと言える。

 また権力の魔物性をかなり強調しているのも本作。登場時は確かに素朴で心優しきところのあるマザコン男だった信長が、権力と共に豹変して狂気を帯びてくるという描写はなかなか秀逸だったように感じる。またその裏面として、やはり一時は権力に魅入られて狂気の馬鹿殿化していた義昭が、鞆に行ってから憑き物が落ちたように清々しい表情となり、かつての「心優しき人」に戻っている様子を見せている。これを見ていると、もしかして信長も権力を捨ててさえいたらかつての心優しき男に戻れたのだろうかと悲しさを感じさせるものになっている。この辺りの権力というものの描き方も本作の胆だろう。玉三郎が言っていたように、木を登っていった武士は誰も帰ってこなかったのである(なぜか義昭だけは途中で落っこちて戻ってきたが)。

 それにしても本作では厨二信長もすごかったが、結局のところは全ての黒幕は帰蝶という展開はどうなんだという気もするところだが。これも斬新と言えば斬新なんだが、実際の史実では帰蝶は安土時代の前にとっくに死んでいるとも言われており、これはあまりに大胆なんでは。結局は厨二信長は権力と帰蝶にもてあそばれた悲しい男だった。

 

前話はこちら

www.ksagi.work

 

麒麟がくる第43話「闇に光る樹」

信長の暴走と秀吉の暗躍

 いよいよ本能寺前夜である。

 ようやく丹波を平定して、降伏した波多野氏を「命を助けるように頼んでおいたから」と信長の元に送り出し、細川藤孝と共に戦勝報告に向かう光秀。難儀だった丹波の平定を果たして上機嫌の信長だが、その信長が光秀と藤孝に見せたのは塩漬けにした波多野兄弟の首。助けるように言っていたのに対してのこの仕打ちに一瞬顔を引きつらせる光秀だが、今の信長はもう誰の言うことも聞く状態でないことが分かっていることから、言葉を飲み込む。もうこの時点で光秀の内心には信長に対する不信感が満ち満ちていることを示している。最早諫言をすることさえあきらめてしまったのである。

 その後光秀は信長に呼び出されるのだが、その間に秀吉は藤孝と何やら密談。結果として本能寺の変後に藤孝は光秀を裏切るのであるが、どうもこの辺りは既に藤孝が秀吉と通じているようであることを匂わせる。自身も信長に対する不信感があるように匂わせながら、何やら探りを入れてくる秀吉が実にいやらしい。

 

信長に対して内心で殺意を高める光秀

 そして信長に呼び出された光秀は、信長があくまで帝をすげ替えるつもりであることを聞かされ、東宮を二条の御所に移らせることを命じられる。やむなく藤孝と共にそのことを東宮に依頼する光秀だが、あまりに朝廷を軽んじる信長の態度には不満が爆発寸前。その光秀を「上様の行き過ぎをお止めする時には私も声を揃える覚悟」と言って藤孝が光秀を押しとどめる(こんなことを言っておきながら、後で裏切るんですが)。で、その藤孝は後でパシリ関白といろは大夫と共に手を付けられなくなった信長のことを愚痴っている。今や信長を止められるのは光秀しかいないのではという話になっているが、実はその当の光秀がもう信長は手がつけられないことを痛感しているという状況。

 そしてようやく本願寺が降伏するのだが、今まで苦戦ぶりをネチネチと信長に責められていた佐久間信盛はこれを期に追放されてしまう。あまり深く描いてはいないが、この一件も光秀の不信感を高めたのは間違いない。結局この頃から光秀は巨大な樹を切り倒そうとしている夢を見るようになる。その樹とはまさに信長がそれを登って月にまで行ってしまった樹。その樹を切り倒そうとしているということは、まさに信長の命を・・・。夢のことをお駒に話ながらも、さすがに最後の言葉まで言えない光秀。光秀の内心に膨れあがった信長に対する殺意を象徴的なシーンで描いています。

 

最後の一押しを帰蝶が、状況を家康が作ってしまう

 光秀はそのまま京を訪れているという帰蝶の下へ。そして道三だったらどうするだろうかとの相談。これに対して帰蝶は「毒を盛る」と一言。今の信長は道三と光秀が作り上げた化け物であり、それを作り上げた者が責任を果たす必要があるだろうということ。これが道三の考えだと言いつつ、そのような道三を大嫌いだという帰蝶であるが、ここに複雑な感情を覗かせる。帰蝶としては信長の命を取るのは忍びないが、彼女自身も今の信長は最早制御不能の化け物になってしまったことを感じているのは明らか。その帰蝶の話を聞きながら、どことなく吹っ切れた雰囲気の光秀。二人の胸中には「何でこんなことになってしまったのだろう」という後悔の念のようなものが過ぎったのは間違いない。まあぶっちゃけ、権力とは想像以上に魔物であったということと、信長が彼らが期待したよりは器量が小さかったということが原因なんだが。それにしても本作、最後の最後まで一番の黒幕は帰蝶だった。これは実に大胆。それにしても父と兄と弟に次いで夫まで死に追い込んでしまうんだから、魔性の女というか、疫病神というか。

 そしていよいよ武田が滅んで、信長は家康を招いて宴席を催すと言うが、心の底では信長を警戒している家康は光秀を饗応役にするように依頼、さらに光秀にはそれをことわらないようにと頼み込む。客人の側が饗応役を指定するということをいぶかしむ信長に対して、秀吉が「家康は暗殺を恐れて親しい光秀を指名したんだろう」と吹き込む。家康はまだ自分を恨んでいるなと殺意を含んだ不信感を抱くと共に、光秀に対しても敵意を垣間見せる狂気の信長。そして宴席当日、後は丹羽長秀に任せて坂本に戻れと命じる信長に対し、家康との約束の手前、あくまで饗応役を最後まで務めると主張する光秀。そして饗応の席で最終事態が勃発、光秀の膳に言いがかりをつけて荒れ狂う信長に対して、ついに殺意のこもったまなざしを向ける光秀、そして無意識で夢で見た巨木を切り倒す手つきを・・・。

 

そして最終回は1時間SP

 ついに本能寺前夜になってしまいました。緊迫感が漲っており、いよいよ持って狂気を帯びてきて手を付けられなくなった厨二信長。それに対して周囲から追い詰められるような形で謀反を決意せざるを得ないところにまで来てしまった光秀。ラストの信長と光秀の睨み合いは最早両者とも視線に狂気を帯びていてゾッとするところ。そして白熱の最終回は1時間SPで本能寺から光秀の最後までを描く模様。結局は天下はあの「嫌な」秀吉のものとなるんだよな・・・。

 

次話はこちら

www.ksagi.work

前話はこちら

www.ksagi.work

 

麒麟がくる第42話「離れゆく心」

信長から人心が離れているのを痛感する光秀

 もう完全に本能寺直前。周囲が光秀を戻れない道へと追い込み始めた。

 有岡城の荒木村重が謀反。これは光秀にとっても信長が決定的に人望を失っている証明と感じられたのは明らか。そして説得といいながら信長の権威を振りかざして脅しをかけるだけの秀吉。この作品の秀吉はとことん嫌な奴として描かれていますが、それにも拍車がかかってきた。秀吉の増長した態度を見る度に、光秀の心の中には「こんな奴を側近として重用する信長はもうダメだ」という意識を強めざるを得ない。光秀から見れば秀吉は次々と信長の家臣を讒言で陥れていく君側の奸そのもの。

 

会見した将軍も光秀に謀反をけしかけている

 そして荒木村重の謀反の背景にも将軍がいることを感じた光秀は、将軍と会見するために鞆の浦へ(大胆な歴史捏造である)。そこには毛利はそもそも京に上る気などないということを知りながらも、毛利の保護下にいるしか仕方ないということを感じている義昭の姿が。光秀にとっては非常に哀れを感じる将軍の姿。京に戻らないかと誘ってみるが、信長がいる京に戻れば殺されるのがオチであると答える義昭に対し、そのことを否定できない光秀。この時に義昭が「そなた一人の京であれば考えもしよう」と言ったのが実に意味深。これはつまり、光秀に対してお前が信長に取って代わったらその時には京に戻るとけしかけている言葉でもある。これは信長の今の状況に懸念を感じ始めている光秀にとっては非常に心に刺さる言葉である。

 将軍と会見して戻ってきた光秀を待ち構えていたのは、例によっての嫌な奴秀吉。もう既に光秀に対して媚びる態度さえなく、隙あらば光秀の足下をすくってやろうと虎視眈々と狙っているのがありあり。例によって信長の権威を振りかざして威圧にかかるところを正面から切り捨てる光秀。この両者の対立も既に引き返せぬところまでいってしまった。そしてこうなった以上、秀吉が信長のそばで何だかんだと光秀の悪口を吹き込んでいるのは明らか。光秀もそのことは大体想像ついているはずだが、それでも正攻法しかとらないのが明らかに彼の限界。

 

家康への対応をきっかけに厨二信長との決定的な決裂に

 そして光秀をさらに追い込む家康の登場。家康までもが信長に対する謀反をほのめかせている。そして嫡男の信康の処分を命じられたことに対して、よりによって光秀に仲介を依頼。「これはまた厄介なことを押し付けられた」と感じていないはずはないのであるが、それでも信長に正面から挑んでしまう不器用な光秀。視聴者はそれを見ながら「やめとけ、やめとけ、あいつはもうダメだ」と言いたくなるところである。

 光秀は信長に対して真っ正面から家康に対しての命令を撤回するようにと依頼するが、舞い上がってしまっている厨二病患者はもうそんな言葉は耳に入らない。それどころか、これで家康を試してもし叛逆するようなら叩きつぶすと言い始める。これを聞いた時の光秀の絶望的な感情がビンビンと伝わってくる。しかもさらに光秀が帝と会っていたことを持ちだし(これは光秀の周辺を探り回っている秀吉が「光秀が帝と何か悪だくみを図っている」とでも吹き込んだんだろう)、何を話したか明かせと迫る。これに対して適当に答えておけば良いのに真っ正直に「話せない」と答える真面目人間光秀。ぶち切れた厨二はついに暴力行使にまで及び、これで両者の関係も決定的破綻。この時の光秀の絶望を通り越して明らかに敵意が目覚めた目線と、もう何が何やら分からなくなってきた狂気に満ちた厨二信長のいかれた目つきがなかなかに双方共に良い演技である。

 

全包囲で光秀は一本の道に追い込まれていく

 屋敷に戻った光秀はお駒から義昭の手紙の話を聞きつつ、先ほどの義昭の言葉を明らかに反芻している様子。恐らくその内心には信長に対する叛意がムクムクとこみ上げてきているところだろう。あの微妙な表情はそれを自らも否定できなくなってきたことを現している。結局はタイトルの「離れゆく心」というのは、回りの連中が信長から離れつつあるということを示しているが、同時に光秀の心もとうとう信長から離れてしまったということを表現しているのだろう。

 朝廷からも反乱をけしかけられ、信長に背いた連中からもけしかけられ、将軍からもけしかけられ、さらに家康からもけしかけられている。もう周囲全てが光秀を反乱に追い込んでいくという逃げ場のない状況になってきたが、どうも最後の安全弁は信長が自らぶっ壊してしまった模様。これだけ完全包囲だと、もう光秀が選ぶべき選択は一つしかなくなってしまっている。

 結局はあーあ、とうとうここまで来ちゃったよと視聴者は皆思ったことだろう。次の大河の開始が2/14からとのアナウンスがあったことから考えると、最終回は2/7か? となれば後2回か。これは来週にも本能寺になるかも。もしくは「敵は本能寺にあり!」と叫ぶところで終わりかな。

 

次話はこちら

www.ksagi.work

前話はこちら

www.ksagi.work