徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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青天を衝け 第5話「栄一、揺れる」

不満の高まっていく栄一

 先週、無能役人に偉そうに大金を請求されて頭に来た栄一ですが、一週間経ってもまだ怒ってました(笑)。まあ今の世の中のシステムが根っこからダメであることを痛感したことでしょう。回りの影響で攘夷思想に染まり初めて来たようです。もうすぐ一端のテロリストになる日も近い(笑)。

 で、そこに降って湧いたのが姉の婚約解消。どうも迷信深いアホなおばさんが狐憑きとかの馬鹿を言い出して・・・って話になってますけど、実際は結婚相手は商家としても成功していて本人も申し分ない相手ってことですから、本当は嫉妬で壊しにかかったんじゃないですかね。さすがに大河ドラマではそこまで醜い描き方を露骨にはしませんが。実際に親戚の中で一家だけがステイタスが上がりそうな状態になったら、足を引っ張ろうとするってことはよくあります。またどうやら焚きつけたのが叔父でなくて叔母ってのも。

 そして婚約解消になった姉はしばし放心状態。それなのにその原因を作った叔母は勝手に狐憑きだとか馬鹿げたことをいってインチキ修験者一行を連れてくる状態。こりゃ栄一もキレますわ。本音では「そもそも原因作ったのはお前だろ!」と言いたいところでは。そして修験者共のインチキを完膚なきまでに暴いてしまうと。さすがに元々口の減らないガキです。それが順調に成長した模様。

 

社会不安があるとインチキな迷信が流行します

 そう言えば恐山のイタコなんかも、なぜか呼べるのは日本人だけで外国人はダメだとか。ゴッドマーズ(元祖腐女子が熱狂した美形キャラ合体ロボットアニメです)のファンのオタが、「マーグの霊を呼び出してくれ」と言ったら「外国人はダメ」と言われたとか(笑)。

 そう言えば私も大学生の時、いきなり顔のところに手をかざされて「パワーを感じるか」なんて言われたから、「お前の手から出ている遠赤外線を感じる」と言って、そのパワーなら私も持っていると逆に手をかざしてやったことがあったな。いつの時代にも胡散臭い奴はいますが、世の中が不安になるとそういう輩がはびこるんです。昔から宗教というのは、悩み事で精神の抵抗力が落ちたときに忍び寄ってくるタチの悪い病気ですので。

 で、この騒ぎのドタバタの合間にさり気に「アマビエ様」まで登場してましたね。この時も実際にアマビエ様って出て来たんだろうか?

 

攘夷バーサーカーと化している斉昭と切れ者?慶喜

 その頃幕府では開国に纏わるドタバタで斉昭が吠えまくってました。先週の「英雄たちの選択」では斉昭は外国の状況も心得た上で、実は現状では一時開国もやむなしという冷静な判断を行っていたといってましたが、全くそんな影は微塵もない。あれではただの攘夷バカです。挙げ句の果てがロシア船が転覆したら、この際に皆殺しにして攘夷を実現しろなんて超外道発言までしてるし・・・。どうも竹中斉昭はただの熱血バカにしか見えんな。

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 そして相変わらず草薙慶喜は賢そうなところも鋭そうなところも全く見えず、つねに画面に「ヌボーッ」と文字が見えているような雰囲気。うん、確かにこいつが将軍になったらそりゃさっさと大政奉還するだろうなと妙にそこのところだけは説得力がある。また鳥羽伏見の戦いの時に大阪から自分だけ逃げ出したのも・・・。そうか、むしろこの方が説得力のある慶喜像か(笑)。だとしたら、こんな奴が最後の切り札という状況の将軍の人材不足こそが一番の根底問題か。

 

安政地震で斉昭の安全弁が亡くなってしまった

 そして安政の大地震が起きて(下田での地震はこれの余震か?)、水戸藩邸も被害が出て(水戸藩江戸藩邸から江戸城まですべて同じセットにしか見えなかったのが安っぽいですが)どうやら斉昭の懐刀の藤田東湖が亡くなる。斉昭が「トーコ、トーコ」と叫んでいるから、最初は嫁のことかと思った。

 ロシア人の時には「天災で家族や大事な人が亡くなったら悲しいのは異人でも同じ」と言われても「そんなこと知るか」とうそぶいていた斉昭にもろにそういう境遇が押し寄せて、まさに「因果応報」という文字が画面に浮かびそうな展開です。この後、斉昭を引き立てていた阿部正弘も亡くなりますし(この番組だと斉昭が過労死に追い込んでいるよな)、斉昭は失意の中で身を引くという展開か。

 

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青天を衝け 第4話「栄一、怒る」

何か冒頭から気が抜けるんだな・・・

 うーん、まだやってるんですね。北大路欣也の無駄遣い。あの「こんばんは、徳川家康です」ってのは一回こっきりのネタでこそ生きる手なんですが・・・。毎回毎回やられたらマヌケでしらけます。そもそも徳川家康が幕末の紹介する意味が不明ですし。私が作るなら、吉幾三がやっていた将軍の役を北大路欣也にして、もう少し出番を増やして強い印象を残してから(慶喜の器量を見込んで後を託したという形にする)、その後に解説に起用します。「私は不本意にも途中でこの世を去ってしまったのですが、その後の幕府は大変なことになっていました・・・」ってな調子で。ハッキリ言ってあの全くメリハリのない見せ場皆無のOPといい、この家康による解説といい、初っ端から肩が落ちそうになるんです。

 

商売に励む栄一は世の中の不条理に直面する

 さて本編の方ですが、さらに商売に精を出している栄一を描いています。巧みに農家同士の競争心を煽って藍の品質を上げるという方法を行っているようです。この辺りは天性の商売人の素質を感じさせるところです。親父さんよりも商売の才能はありそうです。封建時代の一農民でありながら、自由主義経済に素早く対応できそうな素質を感じさせるところです。

 で、その栄一が世の中の矛盾に直面するのが今回。最初から「能力もないのに威張りくさっているだけの典型的な嫌な奴」である領主がまたも偉そうに莫大な金を要求してきます。実際は農民に金をたかっている立場のくせに、何を偉そうに上から要求するんだと栄一が怒りを感じるのですが、結局はこの怒りが「徳川の世はもうダメだ」という考えにつながって、その後の攘夷運動に走る切っ掛けになるというのは別の番組で紹介されていました。まあここで栄一が怒りを感じるのは当然で、国民から集めた金を自分や友人などに個人的にばらまいておいて、さらに一方的に増税して国民から巻き上げる額を増やすような権力者には、怒りを感じない奴の方がバカだと言うことです。

 

開国で大混乱の幕府で慶喜待望論も出ているようですが・・・

 幕府の方はペリーの再来航でドタバタしたようです。水戸の斉昭は「攘夷だ!!」と吠えているようですが、確かにペリー艦隊単独ぐらいなら追いやることは可能ですが、それで諸外国をすべて排除できると考えているのはさすがに世界を知らなすぎるでしょう。この時点で水戸が本当にそれをやったら長州がされたことを水戸が体験することになったでしょう。まあそうなったらそうなったで歴史は変わりましたが。なお斉昭と井伊直弼で意見が対立して板挟みになった阿部正弘がいかにもしんどそうでしたが、そりゃこれではストレスで早死にするわなと妙に納得する(阿部正弘は39才で急死している)。なおこの時の両者の対立が後の桜田門外につながると考えると妙に感慨深い。

 そして何だかんだで慶喜待望論が湧き上がってきているようなんだが、その草薙慶喜が全く英明なところを感じさせないヌボーッとした捉えどころのない人物というのが・・・。相変わらずの棒演技だし。何かここのところのあまりのズレは「もしかしてここは笑いを取りに来ているシーンなんだろうか?」などと見ていて悩んでしまいそうなところなんだが、そういう意図があるようでもない。

 というわけで、まだ主人公が世の中にほとんどかんでいないということを考慮したとしても、何か今ひとつパッとしない話なんだな。もう少し何とか話が盛り上がるんだろうか? でないと私も付き合いきれなくなる可能性が・・・。

 

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青天を衝け 第3話「栄一、仕事はじめ」

栄一が商人としての才を発揮する

 いよいよ黒船来航があったようですが、栄一はまだ商売に励んでいる状態で歴史には絡みません。ようやく一人前の商売人と認められるだけの仕事をやりましたというお話。まあ子供の頃からを描いているので、どうにもストーリーのテンポが遅いです。

 主人公は既に大人になってるんですが、実際はこの時点での栄一は生年とペリー来航の年から計算するとまだ13才のようです。つまりは中二にさえなっていない。そりゃ確かに子供だわな。大人の俳優使っているせいでどうもそこのところがピンとこない。大人の俳優に子供としての演技をさせるから、どうしても主人公がバカっぽく見える。前の「麒麟がくる」でも最初はそんな感じがあったが(鉄砲を前にしての光秀の猿踊りとか)、本作でもその辺りは顕著。成人するまではもう一段階子役を使っても良かったかもしれない。大人の俳優を出すのは結婚してからで良かったのでは。

 

徳川慶喜の草薙剛の演技が・・・

 一方、幕府の方では十二代将軍が亡くなって排斥されていた徳川斉昭が復帰するという事態が発生、斉昭は息子の慶喜を将軍に奉じて、いよいよ念願の尊皇攘夷を実行・・・と思っていたにもかかわらず、当の慶喜に「将軍になる気はない」と言われてしまう始末。かなり激しく内部は動いているようなんですが、どうにもコップの中の嵐に見えてしまうのはなぜなんだろうか?

 とそれは良いんですが、どうにかならないのかと感じるのは草薙剛の棒演技。まああまり演技が上手い方とは思っていませんでしたが(ナレーションやっていた時から基本は棒読みでしたから)、壮絶なまでの棒演技。まあ歴史的に「何を考えていたのか分からない」と言われている慶喜を、いよいよ本当に何を考えているか分からないキャラにするという効果は出てますが、これって決して計算してのことではないでしょう。ハッキリ言ってあの棒演技は今後致命傷になる可能性も。あまりに台詞が棒読み過ぎて、全然頭の中に降りてこない。第1話の栄一との出会いの時から感じていたが、今回はかなり顕著だった。臨終に瀕している将軍とのやりとりなんか「なんじゃ、そりゃ」のレベルだった。

 目下のところ、ペリーが来航して幕府の中央ではドタバタが始まりましたが、それが栄一の故郷には及んでいない。まあ実際にそんなものだったかもしれません。この後、栄一は意欲が空回りしすぎて、厨二病丸出しの尊皇攘夷テロ計画まで立案するらしいんですが、その辺りのことがこれから登場するんでしょうか? 次回の予告を見る限りでは、何やら次回に世の中を矛盾を感じるんじゃないかという気がするから、その後尊皇攘夷思想に走るんでしょう。

 

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青天を衝け 第2話「栄一、踊る」

やっぱり北大路欣也の無駄遣い

 今回も冒頭から家康登場。相変わらずの「北大路欣也の無駄遣い」です。家康が幕末の状況を説明するというのが意味不明だし、内容も大したことは言っていないし。本当に何のために出してるんだろう。こんな意味も不明なところで北大路欣也を起用するんなら、もっと本編中の重要な役に起用すれば良いのに・・・。

 相変わらずOPはメリハリもインパクトも全くない音楽に合わせて、何か奇妙なダンスを踊っているという良く分からないもの。やっぱりこのOPだけは感心しないな。もう少しマシな曲ぐらい用意できなかったんだろうか。武士ではなくて市民なのであまり激しい曲を持ってこなかったというのは分かるが、この曲だと大きなことも特に成せないんじゃないかという気がする。今年の大河コンサートは盛り上がらなさそうだな。去年の「麒麟がくる」なんてOPはいかにもで良かったのに。どうも「江」以来の腑抜けっぷりに思える。

 

早速社会の矛盾を目撃か

 前回では冒頭からダダこねまくっていただけのウザ沢栄一でしたが、今回はようやく家業を手伝うようになったようです。ただ相変わらず口は減らないガキのようですが。

 ところで栄一は無能な代官に偉そうに金をたかられることが頭に来て、徳川の世はもう終わりだと考えるようになり、尊皇攘夷思想に染まった挙げ句にテロリスト寸前まで行く(そのテロ計画がこれまた厨二病丸出しの雑なものでしたが)という話が以前ににっぽん!歴史鑑定やヒストリアなどで登場してましたが、この番組では既に9才の時にそれを目の当たりにしてしまったようです。確かに身分社会ってそんなもんです。半分身分社会になりかかっている今の日本でも、無能な世襲政治家が偉そうに国民に金をたかってます。

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そして踊っている内に大人になってしまった栄一

 前回はあまりに中身に動きがなさ過ぎてしんどかったですが、さすがに今回はようやくその布石ぐらいまでは来ました。なおタイトルは「栄一、踊る」ですが、実際には踊っている内に大人になってしまいました(笑)。

 ただ大人と言っても最初は10代から始まるんで、この頃ってとにかく主人公がバカに見えてしまうんですよね。明智光秀なんかも最初は10代で始まってますので、「鉄砲だ」って鉄砲の前で猿踊りしていた様はかなりお馬鹿に見えましたからね。この辺りはもう少し落ち着いてくるまで致し方ない。

 とりあえずペリー来航前夜の江戸に行くことになったようですので、これから尊皇攘夷の嵐に巻き込まれることにになるんでしょう。元々厨二病丸出しの奴ですから、そりゃそういう過激思想に染まるのも理の当然というもの。それに水戸藩って、斉昭を始めとして尊皇攘夷の巣だし。その挙げ句には井伊大老を暗殺してしまいますから。

 

そして活躍するのやらしないのやら未知数の無気力慶喜

 ただ親父の斉昭はやけに暑苦しいオッサンですが、何か日本を託された慶喜の方は「ヌボー」として何考えているか分からないところがありますね。またこの慶喜を草薙剛が演じると言うからいよいよ持って鋭く感じられるところが一切ない。今回登場したところでも全身からやる気のなさのオーラが立ちのぼっている感じである。実際の慶喜も、優秀だと言われていた割には今ひとつつかみ所のない人物だったという評がありますね。確かにさっさと幕府を終わらせてしまうと、晩年は趣味の写真とかに精を出していたという良く分からんオッサンです。果たしてどういう慶喜像が登場するやら。

 ちなみに渋沢栄一って、幕末の動乱には全く関与してないんですよね。パリ万国博覧会の使節団の一員として渡欧すると、向こうにいる間に大政奉還が起こって、帰ってきたらもう明治になっていたんで。と言うことがありますから、前作の衝撃の「主人公ナレ死」に続いて、本作は「明治ナレ新」が登場するかも。

 

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青天を衝け 第1話「栄一、目覚める」

ガキがギャアギャア走り回っているだけで中身がない

 渋沢栄一を描く新大河ですが、まあまだ最初ですから、栄一がガキの頃ということで話の中身は全くなし。やたらにうるさいガキが走り回っているだけです。だから正直なところ、今回に関しては全く面白くないですね。

 まあ栄一がどんなガキだったのかは描いてますが。とにかくヤンチャで喧しい奴だったという描き方です。確かに男にしてはやたらにに口数が多いし、口が減らないという印象です。頭の回転は悪くなさそうなので、成長していったらかなり屁理屈並べる奴になりそうな気配。

 何か栄一の意味不明な歌に合わせてカイコが踊るシーンがあったが、あれはひたすら気持ち悪いだけだったな。どういう意図であんなシーン入れたのかが意味不明。別に虫と心を通わせることが出来るナウシカのような少年って意味があるわけでもないだろうし。単なる映像の遊びとしてももう少しマシなものを作れたと思うんだが。

 

全体的に冴えない感が否定できない

 そしてなぜか突然に徳川家康が登場しての歴史の解説。しかしなんで幕末の説明に徳川家康なんだ? まあ北大路欣也の無駄遣いという感が強かったな。あの空前の腑抜け大河だった「花燃ゆ」でも北大路欣也を意味不明の無駄遣いしてたから、正直なところ嫌な予感しかしない。

 OP映像はかなり凝っているような印象を受けましたが、その割には意味不明の円舞とか今ひとつ冴えない内容。また音楽の方も全く何も印象に残らず、かといってスケールの大きさを感じさせるわけでもなくという音楽。何か全体的に「冴えない」んですよね。

 結局は話としては栄一の方ではなく、裏でチラホラ出ていた慶喜の方がメインとして見るべきなんでしょうか。ただそれにしても、慶喜が一橋家の養子になったってだけの内容だったから、あまり進んでいない。

 まあまだ話が動き出す前ですから、結局は何も始まっていない。正直なところ、今回に関しては面白くないというか見ていて苦痛なレベルだったな。ちょっと引きとしては弱すぎるんじゃないか?

 

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麒麟がくる最終回「本能寺の変」

将軍暗殺の命に覚悟を決める

 いよいよ最終回となりました。

 家康饗応の席での修羅場で、信長の仕打ちに対して忸怩たるものを感じながら別室で控えている光秀。しかしそこに現れた信長は笑顔を浮かべながら「あれは家康が客の立場で饗応役を指名するという無礼をしたので、家康の反応を見たかったんだ」と悪びれずに言う。それを聞きながら「こいつは一体何を考えているのだ」と不審な様子の光秀。しかしその場でさらに、秀吉から長宗我部が邪魔だから何とかして欲しいという話が来ているので、長宗我部を討つことにしたと告げる信長。「長宗我部とは親交が厚いし、長宗我部は信長に心服しているから、これは明らかに秀吉の言いがかりだ。」と反対する光秀に対して信長は決まったことだと突っぱねる。

 と言うわけでここに来て突然に本能寺の変の理由の一つとして近年になって有力視されている四国政策説が登場。この作品、これまで様々な説を網羅してきましたが、これで世間で言われている説はほぼフルコンボでしょう。しかしここでさらに信長から一押しがある。光秀に対して鞆にいる将軍を殺害しろとの命を下す。この命にもろに動揺する光秀。恐らくこれが最後の一押しになったと思わせる瞬間である。

 

完全に退路は塞がれている光秀

 何か決意を秘めた様子で屋敷に戻ってきた光秀は、細川藤孝に面会を求めるんだが、そうこうしている内に世間では「いずれ光秀が謀反するのでは」という空気が広がってしまっている。例のパシリ関白の周辺といい、何やら既に本能寺が既定の路線になってしまった空気が漂いだしている。いろは大夫に至っては「背いて欲しい」とまで無責任に言い切る始末。もう完全に周辺から退路が断たれた雰囲気になっている。

 この後は光秀が信長との対話を思い出している。将軍がいなくなれば戦はなくなるから、お前と一緒に茶でも飲んで過ごさないかと言い出す信長。そして戦のことを考えずに子供の頃のように長く寝たいと。まさに子供のような表情で語る信長に対して、いよいよ持ってもう信長が分からなくなってきたと感じている光秀。「私に将軍は討てません」と答えた時の信長の表情が狂気を帯びたものに変わる瞬間が今の信長の全てを物語っている。

 

もろに日和っている藤孝

 藤孝と面会する光秀は、将軍殺害を命じられたが拒絶したと伝える。これに対して相変わらず藤孝の態度は何となく煮え切らない。以前に信長の行き過ぎを止める時は自分も声を揃えると言った決意はまだ変わっていないかと詰め寄る光秀に対し、どことなく挙動の怪しい藤孝。光秀は「こいつとうとう日和ったな」と内心で感じたたのではないかと思わせる様子がある。一方の藤孝はこれは光秀がいよいよ事を起こす決意をした可能性があると判断、そのことを秀吉に伝える使者を送る。やっぱりこいつは秀吉に通じていたようである。この番組では藤孝が秀吉と通じていて、事前に藤孝経由で本能寺の変の情報を入手、万全の準備で乱を待ち構えていたという説を採用している模様。しかしこれは実際にそうだったんではと私も思っている。とにかく秀吉の手際の良さが異常すぎたので。

 

しかし光秀は決意を固める

 悩む光秀は愛宕山にこもって思索中。信長との対話をまた思い出すが、信長に対して「あの優しかった方が戦で変わってしまった」と本音をぶつける光秀に対して、「変えたのは戦ではなくてそなただ」と言い切る信長。この時に帰蝶の「今の信長を作り上げたのは光秀であり、作り上げた者が始末を付ける必要がある」という言葉が頭を過ぎる。その挙げ句に狂気を帯びた瞳で「将軍を討ち、帝をも越えて自分が万乗の主になる」と言い切る厨二病が極限炸裂した信長と、それをもはや絶望しかない表情で見あげる光秀。この時に光秀の決意が固まる。

 愛宕山を出た光秀は重臣達に謀反の意志を伝える。そして密かに使いとしてやって来た女性の敵・岡村に家康への文を託す。本能寺の変の後、光秀の動きがやけに鈍かったのは家康がやって来るのを待っていたのではと私は考えているのだが、この番組も家康は内々に光秀に通じていたというようである。実際に本能寺の変の頃に一番危うい立場にいたのは実は家康である。それまで家康は武田への盾としての存在価値があったが、武田家が滅んだ今となっては信長にとっては同盟者としての家康の価値はない。家康は信長に殺害される危険を感じていたが、実際にその可能性もあった。家康にしたら、信長の同盟者であり義弟にまでなっていた浅井長政の非業の最期も頭を過ぎったろう。

 

そして本能寺の変が発生だが、一番の衝撃はその後

 一方、藤孝からの知らせを受け取った秀吉は半ば嬉々として「これで天下が回ってくる」と既に万全の準備を黒田官兵衛に命じている。うーん、これが真相だろうなと私も思う。それにしてもこの作品の秀吉って、君側の奸を極めたとことん嫌な奴だな。これは見事なほど。

 で、いよいよ本能寺を取り囲む明智勢。謀反を起こしたのが明智とあれば「是非もなし」と半ば諦めたような表情で最後の戦いに挑む信長。蘭丸らと共に獅子奮迅の戦いをするが多勢に無勢、銃でも撃たれてこれが最後と自害に臨む。切腹の前に、かつて光秀と初めて出会った頃の思い出が頭を過ぎる。共に笑い夢を語ったあの日。同じ回想は光秀も行っていた。どうしてこんな悲劇的な結末になってしまったのかという思いが両者の頭を過ぎったであろう。それまで無表情で事の成り行きを眺めていた光秀の顔に、この時には初めて悲しみの表情が浮かぶ。

 結局この辺りが一番の見せ場だったようである。乱が収束して駆けつけたいろは大夫に「必ず麒麟を呼んでみせる」と笑顔で言い切る光秀だが、しかし実は今回の一番の衝撃のシーンはこの直後。颯爽と馬で去って行く光秀に対してナレーションが重なり、その後の経過を説明。そして「光秀は敗れた」と一言で突然に乱の三年後。まさかの主人公ナレ死である。

 

綺麗に収めるための工夫ではあるんだろうけど・・・

 まあ斉藤義龍をナレ死させたぐらいだし、この後の回りに見捨てられて、あの嫌らしい秀吉に敗戦し、その挙げ句に落ち武者狩りにやられて命を落とすなんていう光秀の姿なんて見たくはないという思いは、多くの視聴者が持っているところだろう。ただ本能寺の変を光秀の最高到達点として、後はナレ死で終わらせるというのはかなり大胆な展開。しかもこの後登場したお駒に「光秀が生きているという噂もある」と語らせ、なぜかラストシーンでは光秀が登場するという謎展開。もしかして光秀天海僧正説まで網羅か?

 うわー、やりよったというのが正直な感想だが、まあ光秀の最後を綺麗にまとめようとしたらあのくらいしか手はなかったかな。あれだけ嫌らしい扱いをした秀吉が天下を手に入れるところなんて見たくもないところだし(だからこそ、本能寺の変以降、秀吉は一切登場していない)。

 

一貫して厨二っぷりの炸裂していた悲しき信長

 結局は本作での信長は最初から最後まで首尾一貫してマザコン厨二男の範囲から飛び出さず、その厨二男が想定外の巨大な権力を手に入れたせいで狂って自滅していくというドラマになっていた。本作では画期的というほどに信長の器量の小ささを描いていたが、そのためには信長の先進性の象徴である設楽が原の合戦での鉄砲三千丁での勝利と、鉄甲船を使用して毛利水軍を壊滅させた第二次木津川口の合戦を完全に省いてしまうという徹底ぶりだった。

 まあこのような扱いはかなり極端なものに感じるが、信長がかなり厨二臭い部分があったのは事実だろうと思うし、狂気を帯びていたというのも事実だろう。光秀を主人公として美しく描けば、必然的に信長のそう言う部分をクローズアップするというバランスになったと言える。

 また権力の魔物性をかなり強調しているのも本作。登場時は確かに素朴で心優しきところのあるマザコン男だった信長が、権力と共に豹変して狂気を帯びてくるという描写はなかなか秀逸だったように感じる。またその裏面として、やはり一時は権力に魅入られて狂気の馬鹿殿化していた義昭が、鞆に行ってから憑き物が落ちたように清々しい表情となり、かつての「心優しき人」に戻っている様子を見せている。これを見ていると、もしかして信長も権力を捨ててさえいたらかつての心優しき男に戻れたのだろうかと悲しさを感じさせるものになっている。この辺りの権力というものの描き方も本作の胆だろう。玉三郎が言っていたように、木を登っていった武士は誰も帰ってこなかったのである(なぜか義昭だけは途中で落っこちて戻ってきたが)。

 それにしても本作では厨二信長もすごかったが、結局のところは全ての黒幕は帰蝶という展開はどうなんだという気もするところだが。これも斬新と言えば斬新なんだが、実際の史実では帰蝶は安土時代の前にとっくに死んでいるとも言われており、これはあまりに大胆なんでは。結局は厨二信長は権力と帰蝶にもてあそばれた悲しい男だった。

 

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麒麟がくる第43話「闇に光る樹」

信長の暴走と秀吉の暗躍

 いよいよ本能寺前夜である。

 ようやく丹波を平定して、降伏した波多野氏を「命を助けるように頼んでおいたから」と信長の元に送り出し、細川藤孝と共に戦勝報告に向かう光秀。難儀だった丹波の平定を果たして上機嫌の信長だが、その信長が光秀と藤孝に見せたのは塩漬けにした波多野兄弟の首。助けるように言っていたのに対してのこの仕打ちに一瞬顔を引きつらせる光秀だが、今の信長はもう誰の言うことも聞く状態でないことが分かっていることから、言葉を飲み込む。もうこの時点で光秀の内心には信長に対する不信感が満ち満ちていることを示している。最早諫言をすることさえあきらめてしまったのである。

 その後光秀は信長に呼び出されるのだが、その間に秀吉は藤孝と何やら密談。結果として本能寺の変後に藤孝は光秀を裏切るのであるが、どうもこの辺りは既に藤孝が秀吉と通じているようであることを匂わせる。自身も信長に対する不信感があるように匂わせながら、何やら探りを入れてくる秀吉が実にいやらしい。

 

信長に対して内心で殺意を高める光秀

 そして信長に呼び出された光秀は、信長があくまで帝をすげ替えるつもりであることを聞かされ、東宮を二条の御所に移らせることを命じられる。やむなく藤孝と共にそのことを東宮に依頼する光秀だが、あまりに朝廷を軽んじる信長の態度には不満が爆発寸前。その光秀を「上様の行き過ぎをお止めする時には私も声を揃える覚悟」と言って藤孝が光秀を押しとどめる(こんなことを言っておきながら、後で裏切るんですが)。で、その藤孝は後でパシリ関白といろは大夫と共に手を付けられなくなった信長のことを愚痴っている。今や信長を止められるのは光秀しかいないのではという話になっているが、実はその当の光秀がもう信長は手がつけられないことを痛感しているという状況。

 そしてようやく本願寺が降伏するのだが、今まで苦戦ぶりをネチネチと信長に責められていた佐久間信盛はこれを期に追放されてしまう。あまり深く描いてはいないが、この一件も光秀の不信感を高めたのは間違いない。結局この頃から光秀は巨大な樹を切り倒そうとしている夢を見るようになる。その樹とはまさに信長がそれを登って月にまで行ってしまった樹。その樹を切り倒そうとしているということは、まさに信長の命を・・・。夢のことをお駒に話ながらも、さすがに最後の言葉まで言えない光秀。光秀の内心に膨れあがった信長に対する殺意を象徴的なシーンで描いています。

 

最後の一押しを帰蝶が、状況を家康が作ってしまう

 光秀はそのまま京を訪れているという帰蝶の下へ。そして道三だったらどうするだろうかとの相談。これに対して帰蝶は「毒を盛る」と一言。今の信長は道三と光秀が作り上げた化け物であり、それを作り上げた者が責任を果たす必要があるだろうということ。これが道三の考えだと言いつつ、そのような道三を大嫌いだという帰蝶であるが、ここに複雑な感情を覗かせる。帰蝶としては信長の命を取るのは忍びないが、彼女自身も今の信長は最早制御不能の化け物になってしまったことを感じているのは明らか。その帰蝶の話を聞きながら、どことなく吹っ切れた雰囲気の光秀。二人の胸中には「何でこんなことになってしまったのだろう」という後悔の念のようなものが過ぎったのは間違いない。まあぶっちゃけ、権力とは想像以上に魔物であったということと、信長が彼らが期待したよりは器量が小さかったということが原因なんだが。それにしても本作、最後の最後まで一番の黒幕は帰蝶だった。これは実に大胆。それにしても父と兄と弟に次いで夫まで死に追い込んでしまうんだから、魔性の女というか、疫病神というか。

 そしていよいよ武田が滅んで、信長は家康を招いて宴席を催すと言うが、心の底では信長を警戒している家康は光秀を饗応役にするように依頼、さらに光秀にはそれをことわらないようにと頼み込む。客人の側が饗応役を指定するということをいぶかしむ信長に対して、秀吉が「家康は暗殺を恐れて親しい光秀を指名したんだろう」と吹き込む。家康はまだ自分を恨んでいるなと殺意を含んだ不信感を抱くと共に、光秀に対しても敵意を垣間見せる狂気の信長。そして宴席当日、後は丹羽長秀に任せて坂本に戻れと命じる信長に対し、家康との約束の手前、あくまで饗応役を最後まで務めると主張する光秀。そして饗応の席で最終事態が勃発、光秀の膳に言いがかりをつけて荒れ狂う信長に対して、ついに殺意のこもったまなざしを向ける光秀、そして無意識で夢で見た巨木を切り倒す手つきを・・・。

 

そして最終回は1時間SP

 ついに本能寺前夜になってしまいました。緊迫感が漲っており、いよいよ持って狂気を帯びてきて手を付けられなくなった厨二信長。それに対して周囲から追い詰められるような形で謀反を決意せざるを得ないところにまで来てしまった光秀。ラストの信長と光秀の睨み合いは最早両者とも視線に狂気を帯びていてゾッとするところ。そして白熱の最終回は1時間SPで本能寺から光秀の最後までを描く模様。結局は天下はあの「嫌な」秀吉のものとなるんだよな・・・。

 

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麒麟がくる第42話「離れゆく心」

信長から人心が離れているのを痛感する光秀

 もう完全に本能寺直前。周囲が光秀を戻れない道へと追い込み始めた。

 有岡城の荒木村重が謀反。これは光秀にとっても信長が決定的に人望を失っている証明と感じられたのは明らか。そして説得といいながら信長の権威を振りかざして脅しをかけるだけの秀吉。この作品の秀吉はとことん嫌な奴として描かれていますが、それにも拍車がかかってきた。秀吉の増長した態度を見る度に、光秀の心の中には「こんな奴を側近として重用する信長はもうダメだ」という意識を強めざるを得ない。光秀から見れば秀吉は次々と信長の家臣を讒言で陥れていく君側の奸そのもの。

 

会見した将軍も光秀に謀反をけしかけている

 そして荒木村重の謀反の背景にも将軍がいることを感じた光秀は、将軍と会見するために鞆の浦へ(大胆な歴史捏造である)。そこには毛利はそもそも京に上る気などないということを知りながらも、毛利の保護下にいるしか仕方ないということを感じている義昭の姿が。光秀にとっては非常に哀れを感じる将軍の姿。京に戻らないかと誘ってみるが、信長がいる京に戻れば殺されるのがオチであると答える義昭に対し、そのことを否定できない光秀。この時に義昭が「そなた一人の京であれば考えもしよう」と言ったのが実に意味深。これはつまり、光秀に対してお前が信長に取って代わったらその時には京に戻るとけしかけている言葉でもある。これは信長の今の状況に懸念を感じ始めている光秀にとっては非常に心に刺さる言葉である。

 将軍と会見して戻ってきた光秀を待ち構えていたのは、例によっての嫌な奴秀吉。もう既に光秀に対して媚びる態度さえなく、隙あらば光秀の足下をすくってやろうと虎視眈々と狙っているのがありあり。例によって信長の権威を振りかざして威圧にかかるところを正面から切り捨てる光秀。この両者の対立も既に引き返せぬところまでいってしまった。そしてこうなった以上、秀吉が信長のそばで何だかんだと光秀の悪口を吹き込んでいるのは明らか。光秀もそのことは大体想像ついているはずだが、それでも正攻法しかとらないのが明らかに彼の限界。

 

家康への対応をきっかけに厨二信長との決定的な決裂に

 そして光秀をさらに追い込む家康の登場。家康までもが信長に対する謀反をほのめかせている。そして嫡男の信康の処分を命じられたことに対して、よりによって光秀に仲介を依頼。「これはまた厄介なことを押し付けられた」と感じていないはずはないのであるが、それでも信長に正面から挑んでしまう不器用な光秀。視聴者はそれを見ながら「やめとけ、やめとけ、あいつはもうダメだ」と言いたくなるところである。

 光秀は信長に対して真っ正面から家康に対しての命令を撤回するようにと依頼するが、舞い上がってしまっている厨二病患者はもうそんな言葉は耳に入らない。それどころか、これで家康を試してもし叛逆するようなら叩きつぶすと言い始める。これを聞いた時の光秀の絶望的な感情がビンビンと伝わってくる。しかもさらに光秀が帝と会っていたことを持ちだし(これは光秀の周辺を探り回っている秀吉が「光秀が帝と何か悪だくみを図っている」とでも吹き込んだんだろう)、何を話したか明かせと迫る。これに対して適当に答えておけば良いのに真っ正直に「話せない」と答える真面目人間光秀。ぶち切れた厨二はついに暴力行使にまで及び、これで両者の関係も決定的破綻。この時の光秀の絶望を通り越して明らかに敵意が目覚めた目線と、もう何が何やら分からなくなってきた狂気に満ちた厨二信長のいかれた目つきがなかなかに双方共に良い演技である。

 

全包囲で光秀は一本の道に追い込まれていく

 屋敷に戻った光秀はお駒から義昭の手紙の話を聞きつつ、先ほどの義昭の言葉を明らかに反芻している様子。恐らくその内心には信長に対する叛意がムクムクとこみ上げてきているところだろう。あの微妙な表情はそれを自らも否定できなくなってきたことを現している。結局はタイトルの「離れゆく心」というのは、回りの連中が信長から離れつつあるということを示しているが、同時に光秀の心もとうとう信長から離れてしまったということを表現しているのだろう。

 朝廷からも反乱をけしかけられ、信長に背いた連中からもけしかけられ、将軍からもけしかけられ、さらに家康からもけしかけられている。もう周囲全てが光秀を反乱に追い込んでいくという逃げ場のない状況になってきたが、どうも最後の安全弁は信長が自らぶっ壊してしまった模様。これだけ完全包囲だと、もう光秀が選ぶべき選択は一つしかなくなってしまっている。

 結局はあーあ、とうとうここまで来ちゃったよと視聴者は皆思ったことだろう。次の大河の開始が2/14からとのアナウンスがあったことから考えると、最終回は2/7か? となれば後2回か。これは来週にも本能寺になるかも。もしくは「敵は本能寺にあり!」と叫ぶところで終わりかな。

 

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麒麟がくる第41話「月にのぼる者」

秀吉に正面から宣戦布告した光秀

 京を追放されたもののドッコイ生きてた鞆の浦の将軍義昭は、相変わらずあちこちに裏で画策しているようです。光秀は丹波平定で思いの外まだ将軍の権威が残存していることと、それ以上に信長が人心を失いかけていることを痛感するというところから話が始まります。

 そして相変わらず調子の良い秀吉が光秀の元を探りに来たようですが、とうとう光秀は秀吉に真っ正面からケンカを売ったようです。さすがにいきなり平蜘蛛を出してこられたらビビるでしょう。ハッキリと「お前が裏でいろいろと画策しているのは知っているぞ」とぶちまけましたね。さらに「お前はいろいろと信長に讒言して回りの奴を陥れているだろ」とも。前から光秀と秀吉の間は微妙な緊張感を孕んでいましたが、これでついに全面的に敵認定を明言したということになります。秀吉も君側の侫臣って感じが強くなってきました。いよいよ持って本能寺待ったなしの雰囲気が漂い始めています。

 さらには秀吉は女の敵・岡村が密偵だと睨んでいるということを光秀にほのめかしましたね。これを秀吉の「あいつ殺す」メッセージだと受け取った光秀は、これを岡村に告げて岡村退場。このシーンで実に感動的な岡村の棒演技が繰り広げられます。だからなんでこんなのを起用するの? 恐らくNHKに対する功績(チコちゃん絡みだろうな)を考慮しての人事だろうけど、これは完全に大失敗だな。明らかにこの作品の汚点になってるわ。

 

周囲の人望を完全に失っている信長

 で、信長のところで使いっ走りとして使用されている近衛がブウたれてました。ヒストリアで以前紹介していた島津との交渉に走っていたんでしょう。

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 なんだかんだで信長が力は持っているけど回りの人望を決定的に失っているという様をまざまざと描き出しています。しかし完全に舞い上がった厨二男はそういう回りの声が全く聞こえてこない。自分が京での評判が良いと言いきったのは、そういう声しか回りから上がってこなくなっている裸の王様状態になっているのと、既に信長自身が嫌な現実は見る気がないという現実逃避モードにも突入しているのも垣間見えます。舞い上がってしまった厨二的全能感と、初期の頃にしょっちゅう見えていた「逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ」の本質的マザコン部分が入り乱れていよいよもって制御不能の状態になってきているのが描かれています。

 そして光秀は平蜘蛛を信長に献上して諫める(大胆な歴史捏造だな)。光秀はもっと周囲からの人望を高めて世を平らかにするということを信長に平蜘蛛を通して訴えたのですが、信長はそんな平蜘蛛を売り払うと発言したのは、そんな面倒臭いことは御免だと光秀の讒言を門前払いしたということです。この時の光秀の「ああ、こいつはもうダメだ」という絶望的な表情が全てを物語っています。いよいよもってMK5ならぬMH5(マジで本能寺の5年前)って空気になってきてます。

 

さらに何やら暗躍をし始めた朝廷

 そこに朝廷からの働きかけが来る。光秀は王維の詩を見ていたようですが、王維は権力の動乱に巻き込まれたことから厭世的な雰囲気が強いということ。そこに公家のオッサンは信長の変貌に戸惑って実は距離を置きたくなっている光秀の心情を読み取る。そして帝直々に「月にのぼる者」の話が。つまりは今まで多くの者が権力に魅入られて高く登って行きすぎた挙げ句にそれっきりになったという話。信長も権力に魅入られてしまって完全に変わったんじゃないかということを光秀に伝え、信長の監視を光秀に命じる。いよいよ本能寺への戻れない道に突入してしまった。

 前話で完全に本能寺に向けて進み始めたということを感じたが、今回はいよいよその道が引き返せないものになったことを確信させる内容になってました。次回予告を見ればついに光秀が信長に殴り飛ばされていたようだし、こりゃ後数回で本能寺に突入するようだ。結局は「権力は魔物である」というのがこの作品のテーマか?

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麒麟がくる第40話「松永久秀の平蜘蛛」

あからさまに精神的に追い詰められていく光秀

 熙子を亡くして傷心の光秀に対して怒濤のように試練がやって来ています。今回の見所は段々と狂気を帯びてきたように見える光秀の表情でしょう(長谷川博己がなかなかに良い演技をしています)。

 最初は芦田プロのたま(後のガラシャ)がお駒と女子トークしてますが、そこで「以前は無口だった父上がいろいろと話すようになった」ということが。父と娘の交流で微笑ましいようにも感じられますが、その背後には妻を亡くして傷心の光秀が娘に若干依存気味になりつつあるのを匂わせています。その直前の熙子の爪を器に入れながら、呆然とした印象の光秀の姿と重ね合わせると、光秀の心理の奥底がかなりの衝撃でヤバくなってきているのを現しています。

 

その光秀をさらに追い込む松永久秀の反乱

 そしていろは大夫に呼び出された光秀が出向くと、あの公家のオッサンが光秀に「帝が信長のことを懸念している」ということを光秀に吹き込む。いかにも公家らしく深層心理のところで光秀の信長に対する不信感を煽ろうとしている様子が覗える。

 さらには光秀は松永久秀と直接面談(ありえねぇ)。光秀は「飲まずにいられない」と酒を飲んでいるが、これはやはり光秀が心理的に相当追い込まれているのを現している。そして松永は光秀に対して寝返り宣言(ありえねぇ)。ここで松永は「信長は能力主義と言っていたが、実は家柄とかを優先している」と指摘。これって実は最近は実際に「信長は実は今まで言われていたほどに合理主義ではなかった」という説も出て来ています。光秀は「信長様には信長様の考えが」と言いながらも、迷いが実は滲んでいるというのが見所(長谷川博己が良い演技をしている)。ここで松永が光秀に平蜘蛛を託すというのはこれまた実に大胆な歴史捏造。松永は実際には「この平蜘蛛だけは絶対に信長には渡さん」と平蜘蛛に火薬を詰めて自爆したと言われていますので(まあこの説も信憑性は低いが)。この平蜘蛛に松永のあらゆる想いが込められているということなんだが、これが実は光秀にとっては致命的なブービートラップであったというのが今回の肝。この辺りの鬼気迫るやりとりが今回の重要な見所。光秀は将軍を失った上に、ここで長年の盟友(この番組では幼い頃からの師でもある)松永久秀を失うことが確定。光秀の回りからいろいろな人が去って行く。「戦などしたくない」という光秀の絶叫が痛切。

 そして信貴山城の戦いだが、残念ながら例によって合戦シーンは非常にチープ。なおここで伝令として佐久間が現れますが、彼は光秀に対して親近感のようなものを示していましたが、間もなく信長によって追放されることになります(そのことはこの後の信長との会見シーンでも匂わせているが)。恐らくこれもさらに光秀に対する追撃となるだろう。

 そして信長に反旗を翻した松永久秀は呆気なく数分で敗北します。平蜘蛛を光秀に託してしまったので自爆するわけにはいかなくなった(笑)松永は自分の自慢の茶道具に火を付けた上で「普通に」切腹します。さすがに今までのナレ死だった連中とは違って結構見せ場を作ってもらってます。鬼気迫る松永と、涙をこらえながら「エイエイオー」の光秀というのも一つの見所。

 

いよいよ危なさを増してきた厨二信長と追い込まれた光秀のすれ違い

 で、厨二信長はなぜか倉庫のようなところでヒステリー泣き。いよいよ危ない奴度が全開になってきています。この信長は欲しかった松永の茶器が全滅してしまったことか、松永が自分を裏切ったことか、どちらが悔しくてヒステリー泣きしているのかが不明なのですが、それはこの後に数ヶ月ぶりに現れた帰蝶様さえ「私も分からない」と言ってしまっています。いよいよ信長が糸の切れた凧になってしまった象徴的シーンの一つでもあります。

 で、呼びつけられた光秀は焼け焦げた松永所蔵の名品が並べられた広間で帰蝶様と再会。しかし帰蝶様は手のつけられなくなった信長と距離を置くことを明言している次第。帰蝶の「疲れた」という言葉は信長を見放してしまったことを意味する実は重い言葉。これは信長の最後の安全弁が飛んでしまった状態。

 そして帰蝶退出後の信長と光秀のやりとりが今までにない妙な緊張感を孕んだものに。信長は「すべて知っているんだぞ」ということを匂わせながら光秀に平蜘蛛の所在を尋ねるのだが、なぜかここで光秀は信長に平蜘蛛のことは知らないと答える。この後のシーンで光秀は「言ってしまったら楽なのになぜか否定してしまった」といろは大夫に言っていたが、つまりここでは信長に対する忠誠心よりも、松永の平蜘蛛は絶対に信長には渡したくないという意志の方を優先してしまったということで、初めて光秀の中で信長に対する叛意が目覚めてきたことを示している。そして信長の方も光秀が初めて自分に嘘をついたと光秀に対する不信感を強める。その裏では「してやったり」風の藤吉郎の存在が(この作品の藤吉郎ってやっぱりとことん嫌な奴だな)。

 

本能寺への引き返せない道

 またここで信長は光秀にたまの細川忠興との婚礼を命じるのだが、実はこれも地味に光秀を精神的に追い込むことである。最初からどうも光秀はたまの婚礼に対しては明確な抵抗を示しているが、この時も屋敷に戻ってからたまにこのことを伝えようとしながら結局は伝えきれていない。妻を失った挙げ句に娘も手元から離すことに対する葛藤が滲みまくっている。

 そしていろは大夫が平蜘蛛を持参する(ありえねぇ)。その平蜘蛛を見て「これは松永の罠だ」と狂気に満ちた表情で叫ぶ光秀。確かに罠の側面はある。結局はこの平蜘蛛に込められた松永の怨念の結果、光秀はあからさまに信長との溝を作ってしまったわけであるから。いろは大夫は平蜘蛛には松永の想いがこもっているという類いの事を言っていたが、それは裏を返せば松永からの光秀に対する「次に信長を見捨てるのはお前だ」という想いもこもっている。これはいよいよ「どうしてあの方はこんなになってしまった」と泣きながら本能寺で信長を討つことになりそうだ。

 と言うわけでとうとう本能寺に対して引き返せない道に踏み込んでしまったことを濃厚に匂わせているのが今回。かなり白熱したやりとりが見所になっていましたが、最後まで曲者なりに意地を通した松永、狂気を帯びてきた光秀、そしてこちらもやはり狂気を帯びてきた信長、なかなかに各人鬼気迫るものがありドラマを盛り上げています。私的にはいろは大夫から平蜘蛛を受け取った時の完全に狂気に満ちた光秀の表情が頭に焼き付いてしまったな。長谷川博己、これはなかなかにすごい演技だと思う。

 

麒麟がくる第39話「本願寺を叩け」

本願寺相手に大苦戦の信長

 信長軍、本願寺を相手に苦戦中。帝が気にしているの一言でぶち切れた厨二男は暴走して本願寺勢の銃の的に。光秀が必死で諫めている背後で、松永久秀の「もうこいつはダメだな」という冷たい視線が。もう松永は明日にでも信長を裏切りそうな雰囲気ですが、どうやら来週に裏切るようです(笑)。既に暴走する厨二男は光秀でさえも制御不能に。着実に本能寺への道が舗装されつつあります。

 それにしても合戦シーンがかなりショボくなっており、ここのところの一連の合戦もナレーションとアニメーションだけで終わらせることが多くなっています。序盤にオープンセットの岐阜城でのドローンによる空撮とか予算をかけすぎて予算切れになったのか、コロナの影響でエキストラを大規模に動員した撮影が出来なくなったのか(多分こっちが大きいんだと思うが)。まあそれなりに合戦らしい合戦をしていたのは桶狭間までですね。何しろナマ倉義景の最後までナレ死に毛が生えた程度でしたし、将軍様に至っては何やら見慣れた屋内セットの中で藤吉郎にふん縛られただけでしたから。

 ところで本願寺勢は実際にかなり強かったようです。特に本願寺には日本最強の傭兵集団である雑賀衆が荷担しておりました。雑賀衆の鉄砲隊は恐らく当時の日本で最強です。これが豊富な武器弾薬を抱えて、実質的に堅固な城塞である本願寺に立て籠もっているわけですから、攻め手もちょっとやそっとでは落とせません。しかも背後では一向宗門徒のゲリラ部隊もジハードしてましたし。さらに信長がぶち切れていたように、臣下の中にも本音では本願寺と争いたくない奴もいました。だから信長にとっても実は本願寺との戦いが一番ハードな戦いだったと思われます。

 そして光秀は心労・過労・戦の傷などが複合してぶっ倒れてしまう。何とか回復したものの、入れ替わりで熙子が倒れてそのまま帰らぬ人に・・・って今回はそれだけしか内容がなかったな。ちなみに光秀が病気でぶっ倒れたのは史実で、それを看病していた熙子が看病疲れか病気になって亡くなるのも史実です。ちなみに光秀は最愛の妻を失ったショックで一気に認知症が進んだなんて説までありますが、まさか本作はこの説ではないでしょう。

 

段々とトンデモ化していく信長

 信長はヒステリーだったと言われていますが、本作品の信長も見事にヒステリー発作を起こしてます。しかしさらにタチが悪いのは、単なるヒステリーだけでなく、そこに厨二臭がプンプンと漂っていること。「お前らの弾なんか当たるか!」「バーン」「やられた」ではまるっきりギャグです。まあ雑賀衆の鉄砲の腕前を考えたら、本当にあんなことをしたらあの時点で「NHK大河ドラマ織田信長 完」です。史実で信長が実際に足に流れ弾を受けて負傷したという記録があることを反映してでしょうが、実際はあそこまで厨二ではありません(笑)。

 なお信長は毛利からの物資補給を断ったら本願寺に勝てると勢い込んでましたが、そうやって動員した九鬼水軍は初戦でものの見事に毛利水軍の焙烙玉の前に粉砕されてしまうので、また再び信長がぶち切れることになるだろうと推測されます(恐らく合戦自体はナレーションだけで片付けるだろうな)。

 それにしても信長が段々とトンデモになっていきます。比叡山の描き方からも明らかなように、本作は「主人公と敵対するような奴は、討伐されても当然なトンデモな奴」という描き方で一貫するという方針が見えています。ですから焼き討ちを食らった比叡山は徹底して「あんなトンデモ集団は焼き討ちされて当然なんだ」という描き方を執拗にされていました。

 また将軍についても、いずれは光秀は離反するというのが確定していたので、最初はそれなりに「良い人」だったのが、段々と馬鹿殿っぷりがひどくなっていき、とうとう最後には「そりゃ光秀が見切りを付けるのも当たり前の馬鹿殿」状態になっていました。

 このパターンから行けば、いずれ信長も「そりゃ、本能寺で討たれて当たり前の手のつけられない厨二男」という流れになるんではという予感が強烈にしているところです。

 

麒麟がくる第38話「丹波攻略命令」

あっさりと退場する三淵藤英

 光秀の元に預けられていた三淵藤英に対して、信長が書状一枚で「即刻切腹させろ」との指示。さすがに元同僚に対して後ろめたさを感じる光秀だが、三淵藤英は「いや、もう分かってたから今更ジタバタ見苦しいことはしない」とあっさりと切腹。「自分は幕府の家臣となった以上、そこから変わるような器用さはなかった」という類いの事を言っていたが、これはある意味ではちゃっかりと寝返った弟やら光秀に対する当てこすりでもある。この辺りが光秀には実は地味にダメージ与えている。

 

光秀と信長の間に漂い始めている微妙な空気

 で、光秀は藤孝と共に信長の家臣として三好討伐。そして帰ってきたと思ったら、稲葉一鉄の元から逃げ出した斉藤利三(春日局の親父ですね)が「あんな暴君のために命賭ける気にならないから雇って欲しい」と逃げ出してきている。ちなみにこれ、史実では光秀がスカウトしたと言われてるんだけど真相は不明。ただ浪人上がりでそもそも家臣団的なものがなかっただろう光秀が、人材登用に必死だったのは容易に推測でき、斉藤利三をヘッドハントした可能性はかなりある。とにかくこれに対して信長は「稲葉に返せ」と言ったのも史実のようだが、光秀はそれを頑として拒絶したらしい。

 その時に信長がぶち切れて光秀に暴力をふるったという話もあって、それが光秀にとって怨恨となって本能寺につながったという説もある。しかしこの番組の厨二信長は、確かにブチ切れはしたんだがすぐに思い直して光秀に媚びを売っている。さすがにまだ光秀に本気でケンカ売る度胸はないらしい。ただ段々と光秀にとっても信長がアンコントロールになりつつあるのを匂わせている。舞い上がってしまった厨二男はかなりタチが悪いようである。着々と本能寺への布石が打たれている。目下のところ、信長に諫言できる存在は光秀だけって状態になってるんだが、信長が全く頭の上がらない帰蝶様はどうなったんだ?

 

本能寺の原因にはどの説を採る気なんだろう?

 そして信長から丹波攻略を命じられる光秀だが、これが実は難題。番組でも言っていたがこれが非常に長い戦いとなり、しかもその間にも信長から「石山本願寺攻めにも協力しろ」「中国方面に行っているサルを助けろ」と無茶ぶりされまくって、挙げ句に過労でぶっ倒れたり、光秀の看病疲れで熙子が病気になって死んでしまったりなどいろいろあります。信長のあまりの人使いの荒さに段々と不満が募ってきて・・・って展開に持ってくるのかな。

 ただここに来て厨二信長に愛想を尽かせ始めている玉三郎が、光秀を上手く使ってやろうという意図を見せ始めているので、こういう朝廷絡みのしがらみも光秀を本能寺に向かわせた背景として登場する可能性あり。いろは大夫に顎で使われていたパシリ関白もまた話にかんでくるようだし。

 さらには宣教師たちも登場した。本能寺の変の背景としては、怨恨説、野望説、朝廷黒幕説、イエズス会黒幕説、対長宗我部政策の食い違い説などなど諸説ありますが、この番組ではどれを本命として持ってくるのかは今ひとつ不明。今のところもしかして全部ぶっ込んでくるつもりなのではなんて気までする。なお最近では「完全に旧来社会をぶち壊した新秩序を目指していた信長と、幕府を中心とした旧来型秩序を目指していた光秀のグランドデザインの相違説」なんてのもある。光秀がやたらに「麒麟がくる世」を繰り返していることと、光秀と幕府との関わりをかなり前から細かく描いている(記録が残っていない時代にまでわざわざ光秀と幕府との関わりがあったことにしている)ことを考えると、私はこれが本命なのかという気はしているが。

 もっともこの作品の信長を見ていると、「完全に舞い上がった厨二病男の暴走を持て余した挙げ句、見るに見かねて泣きながら斬る」って展開があるかなという気がしてきている(笑)。もっとも「情けない」展開であるが、ここまでの進行を見ていると実はこのオチが一番説得力があったりする(笑)。

 

麒麟がくる第37話「信長公と蘭奢待」

馬鹿殿、開始3分であっさりと退場

 信玄の大勝で調子に乗って信長に反旗を翻した馬鹿殿・義昭ですが、武田軍が急に甲斐に戻ってしまった上に、頼みの浅井・朝倉は動かず、結局は一間しかない槙島城(笑)にあっという間に織田軍に攻め込まれ、開始3分であっさりと敗戦してしまいました(笑)。義昭を捕らえて自信満々の藤吉郎が今までにも増してキショさ120%。光秀の「やっぱりこいつ嫌だわ」という感覚がビンビンと伝わってきます。

 そして最後まで将軍に付いていた兄を見限って、実はひっそりと信長側に寝返っていたちゃっかり者の細川藤孝。この作品では武直な男のようにしてましたが、実はどうしてどうして計算高い。しっかりと情勢を見極めて既に馬鹿殿を見限っていた(いつの間に?)。これには兄貴が怒るのも当然。

 それにしてもあの人がなぜここまで変わってしまったのかというのを改めて感じさせる内容になっておりました。義昭自身が立場が変わってしまったことでこうなってしまったということを暗に言ってましたが、まあ権力が人を変える。権力が人を堕落させるというような怖さを一身に表現した人物となっておりました。彼は。

 結局は命は助けられたものの押し込められてしまった馬鹿殿は、それでも懲りずにあちこちに書状を送っております。そしてそういう落ち目になった義昭に対し、さすがに常にその時の一番の権力者に寄り添うことを信条としている小池百合子お駒は早速見切りを付けた模様。多分、あれは別れを告げに来たのでしょう。鞆の浦まで付いていくとは思いにくいので。

 

舞い上がった厨二病信長の回りに漂う微妙な空気

 権力は魔物という展開ですが、その魔物に新たに取り付かれた厨二病患者が信長。信玄が死んだらしいという情報を聞いて、早速朝倉を一気に攻め滅ぼす。で、こちらもあっさりと3分で滅亡。なんてインスタントな。結局は最後は親族衆に裏切られてしまうと言う見事なナマ倉ぶり。それでもまだナレ死させられた斉藤義龍よりはマシか。

 京の周辺を押さえて完全に舞い上がった信長(当時の天下とは近畿一円のことだから、まあこれで天下を手に入れたと言える)は、蘭奢待を所望。要するに今まで足利将軍が蘭奢待をもらったらしいけど、自分は足利将軍に取って代わったんだから、蘭奢待もらっても良いじゃんという厨二的発想。これに対して心の底では「オイオイ」と思いながらも表立っては御追従している光秀。いよいよ悲しき中間管理職の空気が漂い始めた。

 一人で舞い上がっている厨二病患者の回りにかすかに吹き始めた隙間風。信長を適当にコントロールして上手く使ってやろうと思っていた玉三郎も、さすがに勝手に舞い上がっている厨二病には辟易とし始めた模様。信長がうれしそうに献上してきた蘭奢待を「こんなものいらんわ」とさっさと毛利に送ってしまう。これって、今度は毛利を使って信長をやってしまうおうという裏の意図が透けて見える。おっとりと見せて裏でいろいろと画策があるという空気。うーん、さすが玉三郎は一筋縄ではいかない曲者。

 なかなかにここに来て、信長の回りのギクシャクした空気がビンビンと伝わってきて、しかもその空気が光秀を直撃している。光秀は最初に義昭に対して「なぜあの人がこんなになってしまった」と悲しさをもろに出していたが、次は信長に対して「なぜあの人がこんなになってしまったんだ」と泣きながら本能寺の変を起こすのかな。何となく空気が本能寺に直結し始めて来た。で、あの細川藤孝はしゃあしゃあと光秀を裏切る(笑)。そして光秀に勝利するのがあのいかにも嫌らしい秀吉。うーん、見事に後の伏線があちこちに張り巡らされてきた。

 

麒麟がくる第36話「訣別」

馬鹿殿立つ!!

 馬鹿殿がとうとう突っ走っちゃいました。光秀は義昭と手合わせしながら、あの穏やかだった人がなんでこんなに殺伐とした馬鹿殿になったんだという悲しさと苛立ちで、完膚なきまで義昭を叩きのめしてしまいましたが、あのシーンに光秀の心情を表現させている。確かに光秀でなくても「この人、ちょっと変わりすぎたんでは」って気はしますからね。なんでこうなったって感じかな。

 そして光秀も帝に謁見してお言葉を頂き感動、信長と同様に帝に惹かれていることを感じている。うーん、流石に玉三郎は凄い(笑)。まあ実際に御所というところには天皇をありがたく感じさせるための様々な演出があり、それにはまってしまったら天皇に心服させられるように計算はされてますから。実際の光秀もかなり帝重視で動くことになり、それが後に信長と距離が出来る一因にもなるんですが。

 佐久間信盛が柴田勝家と共に光秀の元を訪れた時には、光秀に今後も信長に直言をして欲しいということを言っていたが、あれは佐久間が暴走気味の信長に対して不安を感じ始めていることを匂わせている。恐らく、後に佐久間は信長によって追放されるということへの伏線となっているんだろう。松永が信長についていきかねるということを匂わせていたが、今後信長が暴走することで周囲と軋轢を増していくことの伏線があちこちに張り巡らされている。

 そしてあちこちと信長との仲を取り持とうとしていた光秀の思惑はこれにて完全に破綻ということに。光秀は義昭と涙の別れ・・・ってのが今回の内容ですが、多分現実は「将軍に付いていても力はないから御利益少ないし、やっぱりここは力があって取り立ててくれる信長に付いた方が得」という計算尽くで、義昭と袂を分かって信長に付いたってところでしょうけどね。このドラマの光秀は熙子に「京と美濃のどちらが近いのですか」と言われて迷っていたが、現実の光秀は「いや、もう京には義理はないから」って言ったと思う(笑)。

 

家康はケチョンケチョンにやられたようですが

 まあ三方原で信玄が家康に圧勝って報が伝わってきているから、義昭が舞い上がるのも分からなくもないが。普通は信玄がこの直後に亡くなるなんて考えもしないわな。実際にあそこで信玄が亡くなっていなかったら、信長はどうなっていたかはかなり怪しい。

 ちなみに家康は大敗して馬上でクソちびりながら浜松城に逃げ込むことになったが、武田軍が深追いしなかったこともあって、意外と戦力は減ってないんですよね。少ない兵で鶴翼の陣を敷いたせいで薄くなっていた本陣を、武田軍の魚鱗の陣の分厚さで押されたせいで、本陣は呆気なく壊滅しちゃったんですが、早々に決着が付いて全軍崩壊のせいで、実は主力はほぼ無傷だったりしている。だからこそあれだけ手痛い敗戦にも関わらず、家康はその後にすぐに建て直しできている。同じ惨敗でも主力をほとんど壊滅させた長篠の武田勝頼とは状況が違う。これも信玄が本気で家康を滅ぼす気だったら、追撃で家康軍をほぼ消滅させてから、浜松城を囲んで家康を自刃に追い込んでいるところでしょうけど、信玄にしたら家康なんて京に上る途上の障害物ぐらいの認識だから、邪魔する力がなくなったら「次や、次」って感じなんですよね。これは家康には幸いだった。

 この後は、舞い上がって挙兵しちゃった義昭は、ハシゴを外された形になってしまって信長にケチョンケチョンにやられて京から追い出される羽目になってしまいます。これで事実上馬鹿殿退場です。となると常に権力者のそばに寄り添っていた世渡り上手の小池百合子お駒はそろそろ乗り換えですかね。何しろ光秀を始め、秀吉から家康など蒼々たる面々とコネがありますから(笑)。

 

麒麟がくる第35話「義昭、まよいの中で」

将軍は暴走、光秀の立ち位置も破綻寸前

 うーん、義昭が馬鹿殿の上にヒステリー症状まで出て来ていよいよ暴走中。迷いって言うか、自分自身でも言っていたように優柔不断なんだな。一方の光秀は良い人を通しすぎた八方美人が祟ってもろに破綻寸前って雰囲気になってきた。

 積極的に「あんなとんでも組織なんてやっちまえ」と信長に比叡山焼き討ちをけしかけた光秀なのだが、実際に戦になると信長のあまりにもえげつないやり方に光秀の方がトラウマレベルの精神的ダメージ。一方の厨二信長は「だって帝がほめてくれるんだ」と完全に有頂天。とことん碇シンジ路線を突っ走ってます。いよいよ狂気が滲んできてアンコントロールになりつつある。松永久秀も「正直なところついていきかねる」ということを滲ませており、後の謀反の伏線を張っている。

 おっとりと構えているように見えて、実はかなりの曲者という玉三郎の帝は、何やら信長を上手く誘導して利用しようという意図が垣間見える。「褒めて欲しそうだったから、褒めてやった。」とさり気に信長はコントロールしやすいということを匂わせている。どうも何やら企んでいる模様。その帝が今度は光秀と密かに面会するということだから、この作品は最終的には本能寺朝廷黒幕説なんだろうか?

 そしてついには光秀暗殺未遂事件発生。光秀は鉄砲の腕に関しては秀でていたという話はあるのですが、剣の腕の方は定かではない。しかし本作の光秀は若い頃から剣豪レベルで剣を使うんですよね。細川藤孝とは剣と剣でマブダチになったわけだし、松永久秀の危機も大乱闘で救っていたりする。で、今回は久しぶりに剣を振り回していた。

 

一応の危機を脱した光秀だが、将軍は信長と決裂直前

 危機一髪で将軍の下に逃げ込んで、将軍に「かつてはあんなに二人で夢を語り合ったのに・・・」というバターンで口説いて、結局は逆に摂津を排除することに成功する。これでついに化け物退場のようです。しかし時既におそし、義昭はハッキリと「だって信長のことが嫌いだもん。馬が合わないのよ。」と明言してしまって決裂はほぼ確定。

 将軍は光秀のことが信用できないと不審感を持ったようだが、しかし光秀の信長べったりの行動を見てたら仕方ないわな。越前攻めの時でも幕府の面々は静観だったのに、光秀はホイホイと信長に付いていったし、今回の叡山攻めでも実際は光秀がけしかけたみたいなものなんだから。その挙げ句に信長から志賀をもらっているわけだから、こりゃ完全に信長に付いたと見られるのはある種当然ではある。

 次回はいよいよ義昭がヒステリーを起こして打倒信長を決意してしまって、光秀は行きかがり上、義昭と決別せざるを得なくなるんだろうな。だけど信長で本当に大丈夫なのかという不審感も今回の叡山焼き討ちをきっかけに持っている。この辺りが違和感として段々と大きくなって、本能寺の変につながるというストーリー設計なんだろうな。

 それにしてもさすがに下品なおばさんぶりが炸裂していた秀吉のオカンとか、相変わらずどことなく信用できない曲者っぷりが半端ない秀吉本人とか。どことなく光秀と秀吉の相性の悪さのようなものも今のうちから漂わせている。この辺りも最終的には伏線として大きく働くんだろうな。