徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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白鷺館アニメ棟

青天を衝け 第27話「篤大夫、駿府で励む」

徳川家の財政のために大活躍の栄一

 栄一は民部公子の元に戻ろうと思っていたようですが、強引に引き留められる。未だにかつての尊攘派の残党が残っている水戸で民部公子に取り立てられたら、いずれは平岡円四郎と同じ運命を辿ることになり兼ねないという配慮。全く、水戸はいつまで修羅の国なんだ。水戸では栄一に振られた民部公子が「やはり栄一さんは兄の方が良いのね」・・・じゃなくて「やはり渋沢と兄のすぺしあるな関係か」と嘆いております。パリに行って以降、民部公子は常に栄一に熱烈なプロポーズを繰り返しているのだが、結局は振られ続けるという悲しい運命。

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 駿府に残った栄一は勘定方に任命されるが、徳川の禄を受けるつもりはないと「農民の矜恃」なる不可解なものを持ちだして抵抗。まあ徳川が困窮しているのは分かっているから、その徳川から金をもらうわけにはいかないという気もあるのだろうと思われる。しかしあまりの財政の火の車に、結局は栄一が陣頭に立って建て直しに邁進する羽目に。とにかく幕臣に金の勘定が出来る者が絶望的にまでいない。

 栄一が打ち出した策は駿河藩と商人が金を出し合って「コンパニー」を設立して利益を上げるという方式。いわゆる民間企業の立ち上げで、パリで見た会社組織がベースになっている。しかしやはり無意味にプライドだけが高く、商いは下賤と教え込まれている武士の価値観が邪魔をする。栄一の最初の障壁はこの「意識改革」になった模様」。武士の無駄なプライドはどうにもならないが、同様に商人の方は武士に対する不信感が強いのでこれも問題。栄一にしたら「俺の時代来たーーっ!!」ってところだが、パリでも感じていた「武士って使えねぇ」って思いもさらに強くなったところ。それにしてもここで再び三井が抜け目のない悪役として登場。さすがに商売人はチャッカリしてる。

 

 

すべてが順調に回り出したら新政府の横槍が

 一方の函館では幕府残党が風前の灯火。最後の覚悟を決めるイケメン土方。成一郞も同行しようとするがイケメンに「生きろ」とまるでもののけ姫のようなことを言われて送り出される。結局はこれで成一郞は生き残ることになり、明治になってから財界に入ることになります。イケメンはその後、華々しく散って歴史に名を残し、今ではあの5分の紹介にあったように五稜郭タワーのところにイケメン像が立って、未だに腐女子が多く訪れます。成一郞がこの時に土方と一緒に散っていたら、結局彼は名前は残らないでしょうが。

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五稜郭タワー内に立っているイケメン像

 武士と商人がギクシャクしていたコンパニーの方ですが、何だかんだ言っても事業が軌道に乗って利益が出始めたら動き始めます。武士の方も協力するしか自分の食い扶持を稼ぐ手はないし、商人の方も「これ、結構儲かりそう」と取り組み姿勢が変わってくる。

 で、順調に利益が上がりだしたら、それが新政府のド下品な大隈重信に目をつけられることに。それにしてもこの番組って、岩倉具視と言い、新政府方の人材ってド下品な奴らしかいないな。伊藤博文も何となく性悪なアホっぽかったし、五代なんて真っ黒そのもの。描き方が露骨すぎるというものだ。この作品ではとにかく栄一と敵対する立場の連中はとことん腹黒の根性悪として描かれるから。まあそれはともかくとして、ド下品大隈にしたら、そんな有能な人材を駿府に置いておくのは危険と、新政府に引き抜かれることになるんだろう。そもそも新政府って絶望的なまでに人材不足だし。で、栄一はいやいや新政府の役人になるという展開だな。

 

 

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青天を衝け 第26話「篤大夫、再会する」

栄一、故郷で幽霊に遭遇する

 今回の話は「栄一、故郷に帰る」です。で、そこでいきなり再会しているのは長七郎。錯乱して正気を失っていたはずなのに、やけに憑き物の落ちたような爽やかな顔をしていると思ったら、幽霊に再会していた模様。帰ったと思ってら既に死んでいて、次のシーンではお墓ってのではあまりに出番がないってことで、無理やりに出番を作った模様。前回の平九郎の件と言い、無理やりに出番や見せ場を作っている感がある。まあ平九郎なんかは下手したらナレ死させられかねないところだから、見せ場作ったのはまあ良しだろうが、さすがに長七郎は無理くり感が強いな。

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 で、まだ出るのか「解説の家康さん」。もうとっくに幕府は終わってるぞ。しかも「やめておきましょうか」と説明やめるぐらいなら、そもそも出てくる必要はなかろう。一体いつまで徳川幕府の亡霊がつきまとってるんだ。

 家庭を大切にする人・渋沢栄一(ひどい歴史捏造だな)は故郷に帰って家族と再会。娘は放ったらかしの間にかなり成長してます。回りは直参の幕臣にまで出世したということで英雄凱旋という印象ですが、実際は本人はこの時点ではプー太郎です。もっともフランス留学経験があるので、著しい人材不足の新政府ではその気になれば職はいくらでもあるでしょうが。もっとも栄一は現時点ではその気はない模様。これからは家族と一緒に暮らすとまた調子の良いことを言っている。

 

 

尾高の家の方は散々な状況です

 尾高の家の方は平九郎がなくなり、成一郞は函館へ、スッカラカンの家の中に密かに馬鹿兄貴だけが戻ってきている。おめおめと生き残ってしまったという類いの事を言っていたが、この兄貴、口先だけで役に立たないことは著しいんだが、なぜか不思議なほどに生命力はしぶとい。あの状態で幕府軍に関与しておきながら逃げ延びてきているとは何と言うしぶとさ。それに比べると純で真面目な平九郎は完全に割を食いました。おかげで栄一は妹に恨まれることに。お千代が「自分が殺してしまった」と気に病んでいたが、あれはお千代の責任ではない。しかし確かに平九郎の性格から言えば「武士として立派に職務を果たせ」よりは「何はともあれ生き残った者が勝ちだ」と言っといた方が良かったろう。まあこういう時代は真面目で要領の悪い人から死にます。

 函館の成一郞は相変わらず武闘派で突っ走って、イケメン土方と親交を深めているようだが、間もなく五稜郭は新政府軍に袋叩きにされてイケメンは命を落とすことになります。栄一はさっさと転向してしまいましたが、成一郞はそこのところを割り切れるのか。

 

 

慶喜の元に駆けつける栄一、これからが彼の本番

 故郷の状況を確認したらさっさと静岡に慶喜の様子を確認に行った栄一ですが、慶喜のやつれ果てた姿に思わず息を呑む。それにしても相変わらず慶喜ってヒッキー特性が高すぎる。それに草薙剛って、どうしてパリッと格好付けた姿よりも、こういうヨレヨレの姿の方が決まるんだろう? 栄一は慶喜に対して「もっとやり方があったでしょ」と詰め寄ろうとしたようですが、慶喜は「終わったことは今更仕方ない。そういう話をする気なんなら俺は帰る」というお話。仕方ないのでパリでのお話を始める栄一ですが、話を始めてしまったら生来の口数の多さが出て、絶好調のマシンガントークだった様子。結局はあれで慶喜の心を癒やしたことになるんでしょうか。

 とにかく今は徳川家はド貧乏のどん底にいますので、栄一が栄一としての活躍を始めるのが来週でしょう。謂わば渋沢栄一の人生はこれからが本番で、これまではプロローグのようなものです。しかしプロローグが長すぎて、後3ヶ月ほどで本番の方をキチンと描けるのか? どうも一年通しのテンポでシナリオを企画していたら、オリパラのせいで話数が減って、その上に麒麟がズレたせいで話数が大幅に減ったのに、序盤は撮影始めていたからそのままペース配分でやっちゃった・・・って感がすごくするんですよね。ここまで来たら栄一が一橋家に仕官するまでの与太話が完全に無駄だった。あんなもの総集編一本で終わりですから。私がシナリオ書いたら、第4話ぐらいでもう栄一は一橋の家臣になっている。これからのペースを考えたら、最初の銀行設立なんてナレ設立で終わらせることになるかも。

 

 

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青天を衝け 第25話「篤大夫、帰国する」

慶喜は周りからボロカスの扱いを受けた挙げ句に再びヒッキーに

 ようやく帰国した栄一達ですが、戻ってくると国の体制が変わってしまってました。と言っても突然に綺麗に明治に移行したわけでない。今でも幕府残党がドタバタとやっております。と言うわけで、いきなり家康が登場して「まだまだ出る」宣言。うーん、まだ続くのかこの北大路欣也の無駄使い。

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 大坂から逃げ帰ってきた慶喜は朝廷に対して恭順の姿勢を示すが、それに対する周りの冷たい目。抗戦派の小栗上野介は「なんでこいつ帰ってきとるねん」って雰囲気だし、篤姫には「ちゃち」と言われて腹を切れと言われるし、和宮には「慶喜は殺して良いから徳川家は残せ」と言われる始末。もうボロカスといって良い扱い。にもかかわらず相変わらず説明を全くしないんだよな、この慶喜は。結局はまた昔のようにヒッキーになってしまう。なんか最初からヒッキー属性だけがやけに高いんだな。ヒッキーになった挙げ句にボロボロの状態で現れるというのはこれで何回目だ?

 

それに振り回される不幸な人たち

 そしてそのドタバタの中で成一郞は上野の彰義隊の代表に担ぎ上げられたと思ったら、次のコマではなぜか別行動になっている。何やらいかにも混乱してドタバタした様子である。で、相変わらず馬鹿兄貴は意味不明のアジ演説。そして思い切り盛り上がっていたと思ったら次の瞬間には敗残兵になってしまっているというお粗末。それにもかかわらず気がつけばちゃっかりと生きて故郷に帰っている。本当に何をやりたいのか分からんが、結果としてやけにしぶといのがこの馬鹿兄貴だ。

 そしてそのドタバタの中で不幸な人・渋沢平九郎が壮絶な最期。ここまでかなり軽い扱いを受けていた人なのに、ここに来て急に今回の話の半分ぐらいを割いて濃密に描いてもらってます。うん、別にそうやって盛り上げるのは構わないけど、それするならこれまでに彼のこともっと描いておこうよ。ここまで彼のエピソードと言えば、栄一の妹からお守りもらって既にこの時点で死亡フラグ立てまくっていたってぐらいだから。今回単独で見ればなかなかの見せ場で演出もまずまずなんだが、所詮は今までの扱いが少なすぎたせいで、何やら脇役が突然に主役扱いされたという違和感があるんだよな。鳥羽・伏見の戦いから江戸城明け渡しとかは完全にナレだけで終わらせたコンパクト維新なのに。

 

武士を貫く成一郞と商人モードの栄一

 脳筋成一郞は函館まで行ってイケメン土方と共に戦闘中。上様の心情というのをまた勝手に推し量っているが、当の慶喜は何を考えているのやら。実際のところ慶喜がその考えをハッキリと下に示さないから、下の連中が好き勝手に上様のご意向を推し量った結果、対立して暗殺に走ったり、右往左往してしまったりと散々なことになっています。まあこんな状況見ていたら、篤姫や和宮がボロカスに言うのも分からないではないが。

 その一方で栄一はもう次の時代を見据えて商人としての活動を始めつつある模様。三井の番頭に「これからがワシら商人の戦い」と言われて、「もしかして俺の時代来た~っ」って思ってるんじゃないかって感じが。武士にこだわっている成一郞と対極の道に進み出しています。

 そして民部公子はまたも潤んだ瞳で栄一に「水戸に来て欲しい」と再びのプロポーズ。それに対して再び私には慶喜様がもういるのでとごめんなさいする栄一。本当に栄一モテモテだが、民部公子の周りにそんなに人材がいないのか?・・・って確かに頼りになりそうな人材が皆無だな。とりあえず栄一は慶喜に会いに行く模様。「あなたは一体何を考えてたんだ」と詰問ぐらいするんだろうか

 

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青天を衝け 第24話「パリの御一新」

コンパクト維新があっさりと進行してしまいました

 あのろくでもないオリンピックのせいでしばし放送が中断されての再開。そのためか最初は1分ほど「これまでの経緯」が軽く流されて本編。

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 さて今回のタイトルの「パリの御一新」だが、これはまさに、栄一達がパリにいて何も出来ない間に明治維新が終わっちゃいましたよとお話。大政奉還も鳥羽伏見の戦いでの敗戦も、そこからの慶喜の逃走もすべて台詞だけで片付けられてしまうと言う「ナレ維新」。もしかしたらあり得るとは思っていたが、本当にやってしまった。やっすい維新だな。恐らく歴代大河ドラマでの明治維新の中では予算最低(笑)。コンパクト五輪は嘘八百だったが、大河はコンパクト維新を実現してしまった。

 栄一が憤慨しておりましたが、慶喜の単独での逃走は今でも「一体何を考えていたんだ?」と謎扱いされているところですから、まあ理解は無理でしょう。結局のところ慶喜は、最後の最後まで部下から見た時には「何を考えているのか分からない上司」だったわけです。慶喜は慶喜で「自分の考えが分かってくれる部下が誰もいない」と感じていたようですが。まあ頭の悪い人ではなかったようですが、明らかに説明不足ってのはあったようです。頭の良い人に往々にしてありがちの悪癖です。周りに自分の意図を説明するのが面倒臭くなるんでしょう。しかも周りには打てば響くような奴がいなかったし(何しろ側近は次々と内輪で暗殺されるんだから)。

 

完全に商売人になりきっている栄一だが、嫁は攘夷派だった模様

 憤慨しつつも栄一は当座の資金調達に走り、そこでフランスの証券市場(合成撮影があまりに安すぎたが)を知って「これぞ自分が求めていたものだ」と盛り上がっています。結局のところ彼は武士ではなくて、心底商売人だったってこと。武士の誇りなんて邪魔としか思っていなかったからあっさりと髷も切っちまったのだが、その写真を送ったらお千代が「あさましきお姿」ときたもんだ。あれだけ嫌っていた異人と同じ格好をするとはってことのよう。どうやら栄一よりもお千代の方が余程筋金入りの攘夷だったようだ。なるほど、栄一がテロリストを目指した時に反対しなかったわけだ。旦那を死地に追いやってどうするんだと思っていたが、むしろお千代の方が強硬派だったか(笑)。お千代からの手紙を読んだ栄一は「そういや、武士の誇りなんてもんがあったっけ?」てな感じだろう。あの笑いは苦笑いか。お千代が舞踏会で鼻の下を伸ばしていた栄一を見たらどう言っただろうか?

 

そして平九郎には死亡フラグが立ちまくり

 で、従兄弟の成一郞と馬鹿兄貴はどうやら幕府派について戦った模様。見立て養子の平九郎もそれに付いていきます。成一郞は最初はそもそも上野の彰義隊の代表になっていたはずなんだが、それがなんやかんやの経緯で外れることになってしまって、結局それで命を拾うことになります。一方の平九郎はというと幕府方として最後まで新政府軍と戦って華々しく散ってしまったようです。今回、サラッと派手に死亡フラグが立っておりましたが、どうやら次回に正式にご臨終の模様。ハッキリ言って栄一のせいで不幸になってしまった可哀想な人です。

 結局のところバリにいた栄一達はヤキモキしたり、ぶち切れて叫びまくったりしてましたが、何も出来ない。川原を歩きながら民部公子に潤んだ瞳で「水戸に付いてきて欲しい」と愛の告白をされてましたが、栄一は振ってしまったようです。「私には慶喜様がいます」ってところでしょう(笑)。まあ実際に帰国後しばらくは慶喜の元で雑用やっていたようです。

 で、さすがに江戸幕府が滅んでしまったら家康様の出番はなくなったか。まああの北大路欣也の無駄遣い、全く意味なかったですからね。

 

ここまでの話って、結局ほとんど不要だったね

 ようやく話が動き始めたというところで、実際にこのドラマ、今までの分は総集編でザッと流して今ぐらいから見始めた方が正解なんじゃないかな。ここまで無駄に長すぎてダレまくっていたから、そこで落ちた者が少なくないと思う。実際に私がこのドラマを企画したら、ここまでで費やすのはせいぜい10話が最大。ハッキリ言って少年時代の話は全く意味がないので全面カットです。お千代との話ももっとあっさりとさせて、一橋家に仕官してからの話にもう少し割いて、このパリでの話はもっとじっくりと描きますね。どうも話数を割くべき場所を間違っているという気が強烈にする。

 

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青天を衝け 第23話「篤大夫と最後の将軍」

なんかパリに非常に馴染んでいる栄一

 600万ドル借款の件が、薩摩の横槍で頓挫してしまって任務が達成出来なくなった栄一達。しかし何とか資金調達して昭武の諸国に対する親善訪問は達成、その後は留学ということになったようです。日本からは栗本鋤雲がやって来て何とか巻き返しを図りますが、それは功を奏さないというのは、以前に「歴史探偵」でやっていた通り。

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 その際に一行は髷を落として洋装をすることを求められたよう。栄一はとにかくうれしだから満更でないようなんだが、さすがにこれは水戸のバーサーカー連中は耐えられなかったか。我慢出来なくなって離脱する者が数人。まあ栄一達も「うるさい奴らがいなくなって助かる」ってな感じで、喜んで送り出してましたね。まあそもそも髷を落としただけだと、そのままだとカッパになってしまってあまり頭がまとまりませんからね。武士の体面が云々以前にとにかく格好が悪い。

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一方で日本では慶喜が追い込まれつつあった

 一方の日本では、慶喜がそれでなくても少ない側近をまた暗殺されていると。しかも犯行は直参の連中のようだから、そりゃ「なんでそんなことするんだよ」と文句も言いたくもなるわな。そのおかげで慶喜は全部自分で考えないといけない羽目に。よくまあ過労死しなかったもんだ。

 倒幕に動いている薩摩は、あの下品な岩倉具視の元に集まって、倒幕だ、錦の御旗だ、倒幕の綸旨だと騒いでおりましたが、薩摩がその方向に動くことが分かっている慶喜が先手を打って繰り出したのが「大政奉還」。確かにこれって、薩摩が倒幕するための大義名分を奪ってしまう手なんです。実際のところ朝廷は、いきなり「じゃあ明日から政治よろしく」と言われても官僚もなにもいないわけで、しかも奈良時代にみたいに天皇と数人の側近ですべて差配出来るほど政治が単純でない。慶喜にしたら「出来るもんならやってみろ」とケツをまくったわけで、恐らく早晩頓挫して「やっぱり幕府で頼む」と言ってくるだろうことを見越している。

 しかも王政復古のクーデターを行って慶喜を外した政権を組もうとしたら、薩摩にしたらこっち側だと思っていた土佐の山内容堂や越前の松平春嶽、尾張の徳川慶勝辺りが口を揃えて「なんで慶喜を外すんだ」とぶち切れてまとまらず。山内容堂がかなり吠えてましたが、元々彼は雄藩連合で天皇を補佐するという路線なので、政権構想の中に幕府も含んでいるわけで、完全に幕府を滅ぼして取って代わろうと考えている薩摩とは思想が全く異なる。松平春嶽なども基本的にその路線だから、結局は各人の思惑がバラバラ。

 あくまで幕府をつぶすことにこだわる薩摩は、こうなりゃ何が何でも戦争に持ち込むだけとバーサーカー西郷が幕府側が暴発するように陰謀を駆使した模様。慶喜はそんな手で来るのは読んでいるので、薩摩には手を出すなと言っていたのに、江戸の家臣連中は暴発、挙げ句に大坂城の連中まで薩摩打つべしで大盛り上がり。「何でみんなでよってたかって俺の足を引っ張るんだ」という慶喜の最初は怒り、次に絶望、そして最後には諦めのような感情がみなぎる様子を草薙剛がまずまず表現出来ていたのは良し。にしても今まで「何を考えているか分からない」慶喜が、最後の最後になってきてようやく感情を示すようになった。

 

ようやく話が盛り上がってきたのに・・・

 と言うわけで主人公の栄一は全く歴史に関与してません。結局彼は「パリから戻ってきたら明治になっていた」状態になります。もっとも彼自身は外国で銀行とかいろいろ見て、「やっぱり俺は商売人だ」ということを自覚してきたようですが。政治家も軍人も商売人もみんな一緒というのが多分キーワードになるんだろう。商売によって国に貢献するという発想が多分次回辺りに登場するはず。

 ようやく渋沢栄一が渋沢栄一らしくなってきたんだが、次回は8/15まで飛ぶらしい。オリンピックの影響だろう。いっそのこと栄一に「オリンピックは商売なんだ」と叫ばせたらどうだ。

 

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青天を衝け 第22話「篤大夫、パリへ」

「予習」の通りのストーリーが展開します

 今回のストーリーは以前に「歴史探偵」で紹介していた内容そのまんまですね。やっぱりああいう歴史番組は見事なまでに大河の予習を兼ねてるな。しかしここまでまんまだと、こりゃ大河見なくても良いってことになりかねん。

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 いきなり船上で胸がムラムラ・・・じゃなくて、胸がムカムカすると言っている栄一(これって今までのパロか?)。そこに現れる爽やか好青年なイケメン外人がシーボルト。例のオランダ商館にいたシーボルトの息子です。しかし予習していたら分かっているように、こいつがもろにイギリスのスパイ。そんなことは露とも知らずに、シーボルトのことを信用してしまう幕府使節団一行のあまりの脇の甘さ。この時点で先の展開は予測出来る。

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 パリに到着する栄一達一行であるが、しっかりとスパイのシーボルトがついています。何やら裏で画策していたのはあの番組でも紹介していた通り。それに比べると栄一の脳天気なこと。攘夷だったことなんて完全に忘れてパリを満喫してます。もっともあれだけの技術力を見せつけられて、それで攘夷なんてことが実現可能だと考えるのなら、それは相当アホというもの。

 

炸裂する薩摩の陰謀に対して、全く使えない同僚達

 とは言うものの、徳川昭武はなかなか名君の風がありますが、やっぱりそれを取り巻く水戸藩士は確かに懸念していた通りの狂犬並の連中。あの連中の監視も栄一の任務とされてますが、最初から盛大に衝突しているようです。パリの進んだ事物を目にした栄一は完全に商売人モードになっているので、武士というものの融通の利かなさやダメさが散々と身に染みているようです。まあ商売人の常識として、プライドが邪魔をして値切りさえ出来ないよう奴らは役にもたたんわな。

 そして薩摩の陰謀が炸裂。幕府一行はモンブランに丸め込まれてまんまと出し抜かれます。栄一は「モンブランには注意しろ」と最初に吹き込まれてましたが、権限は何もないのでどうしようもないところ。にしても幕臣連中って融通が利かないだけでなく、この手の謀略も全く駄目ですね。本来は戦国時代の武士なんかだったら、謀略は必須だったのですが。どうも泰平の時代の間に武士はとことん役立たずになっていた模様。

 結局はここで幕府が中心権力ではないという認識を持たれたことで、最終的に借款の件は流れてしまいます。モンブランを使って謀略を仕掛けた五代にしたら「してやったり」でしょう。この五代友厚は明治になると実業界で大活躍することになる人物ですので、いずれ栄一の前に現れることになるでしょう。

 

 パリで垣間見える栄一の正体とその頃の慶喜は

 パリでどうも浮かれている感のある栄一達は舞踏会でさらに浮かれている模様。何やら鼻の下を伸ばしいる栄一の様子には、後の「二桁の愛人に子供が50人ぐらいいる」と言われている女狂い外道の片鱗がすでに現れているようです。まあこの作品で描かれている「嫁さんを大事にする栄一」なんての嘘っぱちもいいところですから。ところでこの舞踏会、なんで音楽が選りに選ってベルリオーズの幻想交響曲なの? 確かにあの第2楽章は舞踏会のシーンではありますが、この曲自体はとてもではないが舞踏会には合わないおどろおどろしい曲なんですが。ここは普通にヨハン・シュトラウス辺りで良かったのでは?

 一方の慶喜はと言えば、島津久光の思惑を相変わらずのすっとぼけた様子でサラッとかわしてしまいました。切れ者と言うよりは意外とタヌキという姿を見せています。うーん、タヌキ。そうかこれこそ神君家康公の再来だな(笑)。で、次週はこの「出来る人」があっさりと大政奉還をしてしまうようです。

 一方の血洗島では平九郎が栄一の養子になっているようです。しかし結局はこのことが平九郎を幕末の動乱に巻き込むことになり、彼の命を奪うことになってしまいます。これは来週以降の話でしょうが。

 

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青天を衝け 第21話「篤大夫、遠き道へ」

あっさりとパリ行きを承諾する栄一

 さて、前話の最後で慶喜が栄一のことを思い出したようですが、栄一はいきなりパリ行きを命じられたようです。徳川昭武が派遣されることになったが、それに同行する水戸藩士共(攘夷派の総本山だった)が、外国人見たら何するか分からない狂犬みたいな連中だから監視しろとの仰せ。「よく考えて返答しろ」との話に「参ります」と即答する栄一。こりゃ栄一に話を持ってきた原が「おいおい、待て待て、お前元々攘夷だろうが。なぜそんなに簡単に決められる。」と混乱するのは当たり前。栄一は例によって「胸がムラムラする」・・・じゃなかった「胸がグルグルする」とか例によって意味不明のことを言っているが、実際に節操のない奴である(笑)。国内でくすぶっていたから、渡りに船だ僥倖だという世界。ちなみに番組ではわざわざ「僥倖」って文字を出しているが、そんなに示さないといけないぐらい難しい言葉か?(字は馴染みはないけど) まあこれが民放のドラマだったら「これはチャンスだ」とか言いそうだが(笑)。

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 で、パリ行きを決めた栄一は会計係を命じられた模様。また渡航する前に見立て養子を決めるようにと言われる(この「見立て養子」も文字登場)。渡航は危険があるのでもし死んだ時に家が絶えたら困るから後継ぎがいない場合は誰かを養子にしろということらしい。それだけ当時の渡航はヤバいということで、そりゃ原が慌てたはずだ。とりあえずこの時に栄一は成一郞の弟の平九郎を養子にすることを考えたようだが、実は後にこのことが平九郎の運命を決めてしまうことになる。

 

回りで状況は動き始めている

 一方、故郷に帰った成一郞は「もう攘夷はやめて幕臣として幕府を支えることにした」と兄貴に報告。それに対してあっさりと「それでいいんじゃない」と答えてしまう信念も何もない馬鹿兄貴。ついでに成一郞はこいつまで幕臣に誘って「軍師が必要」なんて言っているが、いやいやこんな馬鹿兄貴が軍師したら幕府軍惨敗だろ。何しろあんな雑な攘夷計画立てるようなマヌケだぞ・・・。

 そうこうしている内に、慶喜と比較的良好な関係を保っていた孝明天皇が病をおして無理やりに神事を執り行った挙げ句に体調を悪化させて寝込んでしまう。どうやら天然痘の模様。病床に見舞いに来た睦仁親王(後の明治天皇)を「来るなと申しただろう」と追い払おうとするが、「ワシは既に種痘を受けております」と答える睦仁親王。「種痘か」と苦笑いのようなものを浮かべる孝明天皇。外国嫌いの孝明天皇にとって、西洋の医療である種痘を次期天皇までが受けているという状況はどのように感じられたか。とりあえずこの番組的にはこれが孝明天皇の最後の台詞になってしまう。次期天皇となる睦仁親王の周辺の公家は反幕府の強硬派ばかり、これで慶喜はさらにやりにくいことになってしまう。そして例のド下品な岩倉具視は「よっしゃ、幼帝を立てて王政復古だ!!」と張り切り始める。

 

慶喜や小栗と盛り上がる栄一

 そして栄一はコスプレ慶喜と歓談。なんか慶喜の腹心って栄一しかいない雰囲気になっているが、これは典型的な大河特有の主人公アゲ。先の「麒麟がくる」でも、斎藤道三の腹心はまだガキの明智光秀しかいないようになっていたが、それと同じ。その挙げ句に何やら家康の遺訓の唱和を始める。何となく「流派東方不敗は王者の風よ」と言い出しそうな雰囲気だったが・・・ってすみません、これは「白鷺館アニメ棟」の方のネタですね(笑)。ここの読者さんには何のことやら分からんだろうからやめます。もし何のことか気になる人がいたら「東方不敗」でググってくれたら分かります(笑)。

 そして小栗上野介と面談して、銭に通じた同士で何となく意気投合する二人。ここでこの前の「歴史探偵」にも登場していた600万ドルの借款の話も出ます。栄一は幕府は大丈夫だろうかという懸念を持っているが、小栗も実際に幕府はもう持たないのではないかと感じている一人。幕府がある限りは金は送るが、そうでなくなった場合は分からんという話。いずれ再会することを誓う二人だが、結局はこれも再会はないはず。小栗は幕府がコケた後は田舎に籠もっていたんだが、血に飢えた薩長政権の手によって処刑されたはず。幕閣の時に薩長に対して主戦論を唱えていたことに対する嫌がらせです。こういうことを根に持って必ず陰険な処分をするのが薩長政権の特徴。とにかくあの幕末のドタバタでは、有為の人材が無駄に多く亡くなっており、小栗もその一人です。

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成一郞に後のことを託す嫁思い(嘘つけ!)の栄一

 ずっと成一郞とすれ違いになっていた栄一だが、長七郎の面会に行った牢でしばらくぶりの再会。パリ行きになったことを成一郞に説明して、平九郎の見立て養子の件と嫁のことを頼む嫁を大事にしている栄一・・・ってのは完全に嘘八百ですね。この作品の栄一は家庭を大事にして嫁にべた惚れという家庭人として描写してますが、実際の栄一は愛人は二桁で子供は50人はいるんではないかと言われている外道です。既に嫁のことを放りっぱなしですが、実は嫁はこの後も散々な目に遭います。まあこの辺りはさすがにそんなこと描けないから、主人公アゲのための歴史捏造。この辺りの話は「渋沢栄一 愛人」とググったらいくらでも出て来ますので。

 栄一は成一郞と二人で久しぶりに長七郎に面会して昔のことを語り合いますが、もう長七郎が盛大にフラグを立てまくってます。実際には明治になるまで牢にいたようですが、次に話が出てくる時にはもう死んでいるという雰囲気がプンプン。

 

 というわけで、栄一は慶喜も嫁も放ったらかしてパリに渡ります。これからしばらくは万博での薩摩とのドタバタになるのでしょう。もうその辺りのシナリオも既に「歴史探偵」で紹介済み。本当にNHKの歴史番組を見ていたら、大河の話は見なくても分かるって言われてるんだが、今回ももろにそうだわ。

 ようやく渋沢栄一らしくなってきましたと言うところ。それにしてもここまでが無駄に長かった。本当にドラマとしての構成が悪すぎるわ。ところで未だに徳川家康が出てくるんだが、まさか明治になってまで解説の家康さんが出てくるの? せめて孝明天皇辺りにバトンタッチしたら?

 

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青天を衝け 第20話「篤大夫、青天の霹靂」

家茂の突然の死で、将軍位を押し付けられる慶喜

 前回、「長州を倒すぞ」と大阪まで出張ってきた将軍・家茂ですが、そもそも病弱だったらしいこともあり、突然に倒れてしまいます。慶喜が駆けつけるが「後はお願いします」の類いの事を言い残してあっさりと死んでしまう家茂。慶喜にしたら「今更押し付けられてもどうすりゃいいねん」状態ですが、他に誰も人材がいないというのが現状、天璋院辺りは慶喜を嫌っているのか、別の将軍を立てようとしたようですが、まだ幼すぎると言うことでこの難局には荷が重すぎる。挙げ句に和宮などは「上様は将軍になったことによって不幸になった。次は慶喜が不幸になればよい。」と完全に将軍位は呪いのアイテムになってしまっている。まあどう考えても火中の栗を拾うことになるのは間違いない。

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 当然ながら栄一も猛反対で「今、将軍になったらもう限界の幕府のすべての責任を負わされることになる」と慶喜に反対を奏上するが、慶喜にしてみたら「そんなことは分かっているが、俺が受けないと誰が将軍になるの?」状態。そもそも慶喜の本音も「俺が将軍になっても絶対に回りの奴が付いてこないから、幕府は家茂に任せて、自分は朝廷対策に専念したかったのに。」というところ。貧乏くじを引かされたのは慶喜自身が一番痛感していそう。

 

栄一も不本意ながら幕臣になってしまう

 結局は慶喜は将軍になることになり、栄一は一橋家の家臣から幕臣になることに。単純に「出世だ、出世だ」と浮かれる回りの連中の中で、幕府はもう限界だから慶喜を中心に新しい政権を立てて欲しいと考えていた栄一にとっては極めて不本意な状況に。

 しかも「将軍になる以上は長州征伐をしないといけない」と栄一もいきなり軍に割り振られることになり、「やっとソロバンの方に生きがいを感じていたのに・・・」と不満タラタラの栄一だが、結局は小倉の幕府軍が惨敗したことで「今更長州征伐なんて無理」と慶喜が出兵を取りやめることに。何か慶喜はどうもこの辺りの見切りが早い。この見切りの早さも優秀なのかやる気が無いのかの評価が分かれるところ。実際に「長州征伐なんて実は誰も望んでいない」なんてこぼしているし。

 

イケメン土方歳三と語り合う

 結局は不完全燃焼の日々を送る栄一は、成一郞と喧嘩したりなど完全に空回り状態。そこにいきなり京都奉行の名代として不審者の捕縛に向かわさせられることになり、新撰組を護衛につけて乗り込むが、「まずは正式に話して進めるのが筋」と妙なところにこだわって、単身乗り込んだ挙げ句に囲まれてあわやという羽目に。昔から、意味のないところに妙に頑固な性分の扱いにくい男である。

 ここは乱入してきたイケメン土方歳三によって助けられ、その後は土方と語り合うことに。佐幕派バリバリの土方に「幕府はもう限界」と言い切ってしまう幕臣・栄一。相変わらず口が軽すぎる男である。土方は一瞬気色ばむんだが、栄一が自分と同じ武州の百姓上がりと言うことを聞いて態度を軟化させる。さすがに瞬間湯沸かし器の土方でもあそこでいきなり栄一を斬りつけないだけの分別はあったか(笑)。結局はそれぞれ考えに違いはあれども日本を良くしたいという意識は同じということで、再会を誓って土方と別れる栄一だが、この二人が再会することは絶対無い。というか、そもそも本当に会ったことがあるかどうかも怪しいところ。

 

そして薩摩の暗躍にいよいよパリ万博の話が

 一方の朝廷側では、中央から追われていた下品な岩倉具視の元に薩摩が接触、薩摩が倒幕の意志を示したことで「王政復古だ」と浮かれる軽薄な岩倉具視。今後、この軽薄男が朝廷を支配していくことになるのであるが、その頃は栄一はパリだよな・・・。

 話の最後にパリ万博のことが出て来ました。パリ万博の話を小栗から聞いた慶喜の頭に浮かぶのが栄一のこと。どうも「あいつは結構優秀だが、使いにくいし、最近はやる気なくしているようだから、いっそのことパリに飛ばすか。」と思いついた模様。恐らく再来週には栄一はパリでしょう。

 と言うわけで話は怒濤のように動き出しました。全く話が動かなかった序盤と比べてまあ動きの激しいこと。このドラマのペース配分はどうなってるんだ? なんかその辺りの設計にまずさを感じるな。やっぱり一橋の家臣になるのが第14話って、どう考えても序盤が無駄に長すぎた。渋沢栄一のドラマはむしろパリから帰ってきてからが本番になるのに、そこを十分に描けるのか? やっぱり私なら、遅くとも第6話ぐらいでは渋沢を一橋の家臣にしてたな。もしかして1年まるまるのスケジュールで序盤を撮り始めたのに、コロナで麒麟がズレたせいで全体の尺が変わって、序盤が無意味に長くなって後は詰める羽目になったか? にしても、1年単位で考えたとしても、あの序盤は3ヶ月もかけるような内容ではなかったよな・・・。実際にあの間に「つまらなすぎて落ちた」という話をよく聞いている。多分私もこのブログのことがなかったら落ちてた(笑)。

 

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青天を衝け 第19話「勘定組頭 渋沢篤大夫」

栄一が商売人としての才覚を出すが

 栄一がようやく栄一らしい活躍を開始しました。一橋の懐を豊かにするべく、米の入札制での売却による販売価格上昇、さらには火薬の製造、そして木綿を特産のブランド化して付加価値を上げる。さらに経済を円滑にするために藩札の発行と矢継ぎ早の手を打ってくる。相変わらずスラスラと調子の良い話しっぷりは、明らかに栄一の本質が武士よりも商売人にあることを示している。攘夷の熱に取り憑かれた厨二病を脱して、渋沢栄一がようやく渋沢栄一らしい活躍を始めました。

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 結局はこの功績が認められ、栄一はついに勘定組頭にまで出世。慶喜を初めとして上役連中は栄一の目論んでいることを完全に理解しているわけではなさそうだが、とにかく栄一が実績を上げているということだけは買った模様。栄一はこのまま経済畑を突っ走ることになります。

 一方の成一郞は元より武断派。結局は自分は武士になったということにこだわっており、あくまで武力によって一橋に貢献するという考えで、多分に当時の武士の共通認識として金勘定のことを軽蔑している節がある。成一郞の目にはひたすら財務畑に突っ走る栄一の姿は堕落にも映る模様。栄一は「懐も大事だ」と言っていたが、実際にいくら戦力を整えたところで補給が尽きたらそこまで。水戸の天狗党も結局はそこのところで破綻したんだが、武力バカになってしまっている成一郞にはその辺りは映らないのだろう。

 

慶喜を取り巻く状況は動乱含み

 ただ一橋を取り巻く状況は波乱の度を極めている。幕府はハリスが要求した条約のための勅許を得るのにドタバタ。挙げ句の果てに「何も出来ずに横槍だけ入れてくる朝廷なんか無視してしまえ」という声まで幕閣から出てくる始末。将軍家茂は「さすがにそれはマズいだろう」と抑えに回るが、収拾が付かず。挙げ句の果てが「自分は力不足だから将軍位を慶喜に譲る」と言い出す羽目に。慶喜は慌てて飛んでいって、勅許は自分が何とかするから将軍やめるなんて無茶はいわないでくれと説得することに。慶喜にすると、今の状況の中で将軍になったところで幕閣が自分の考え通りに動きそうにもないことは分かっているから、「こんなところで押し付けられても・・・」ってのが本音だろう。

 結局は貿易の条約の勅許を得るのは、慶喜が「勅許を得られないなら切腹するしかないが、そうなった時には家臣達がお前達をどうにかしても責任は取れん」と天皇の側近連中に露骨に脅しをかけて無理矢理強行突破。天皇の側近連中は未だに尊皇攘夷とか言った現実味のないことを唱えているような使えない連中と、薩摩に通じているような連中だから、慶喜にとっては邪魔なだけ。救いは孝明天皇自身は慶喜のことを高く信頼していること。結局は慶喜は勅許を得ることに成功する。

 と言うのが今回のドラマの内容になっているが、実際のところはこんなに単純なものではなかったようです。孝明天皇は基本的には攘夷派であったためにかなり揺れていたとか。この時も諸外国がかなり強硬な方法に出て来たせいで勅許を出すこともやむなしという状況に追い込まれた模様。この後は孝明天皇も段々と影響力を失っていき、その挙げ句に突然に病死してしまいます。孝明天皇との関係は決して悪くはなかった慶喜にとってはこれも痛手になる模様。

 で、挙げ句の果てに長州征伐で苦戦中に家茂が倒れる。これで必然的に慶喜が将軍を押し付けられることになるんだが、完全に火中の栗を押し付けられる羽目に。本当に不運な人だわ、この人は。

 

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青天を衝け 第18話「一橋の懐」

天狗党との正面衝突は回避できたが・・・

 栄一達は天狗党を一戦を構えるべく出陣。成一郞は先行してリーダーの武田耕雲斎に密書を届けに。しかし天狗党の面々は既に追討軍との戦いでボロボロの状態。慶喜なら自分達を助けてくれるだろうと京に迫っていた一行にとって、慶喜からの「解散しないと討伐することになる」という手紙は事実上の最後通牒これはキツい。藤田東湖の馬鹿息子は慶喜が日和ったと激怒していたが、さすがに耕雲斎は「我々が一橋様をここまで追い詰めてしまった」と一応状況は分かっている模様。そしてこれが日本での嵐のような尊皇攘夷運動の最後となります。

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 栄一はとりあえずかつての同志と戦闘することにならなくてヤレヤレですが、天狗党の面々は慶喜と合流させたくないという幕府の思惑で全員打ち首(切腹でさえない)。これには慶喜も本音では「すまん」というところだろう。成一郞は「一橋家が武力が無いから幕府に侮られた」と激怒。これで栄一は西国の領土から兵を集めてくると慶喜に申し出ることに。

 

兵を集めに行った栄一の邪魔をする小役人に恫喝一発

 栄一は今の時代だったら自分の檄に乗ってくる若者はいくらでもいるだろうと考えていたのだが、案に反してあまりに冷ややかに迎えられる。そもそも百姓にいきなり戦えと言っても生活もあるし無理かと長期戦に切り替え、近くの塾などに出入りしていたが、そこには自分と同様の暑苦しい奴らが存在している。これは絶対おかしいと感じた栄一は名主達をとっちめたら、代官が栄一に協力するなと言っていたという真相が判明という次第か。

 代官の考えが今ひとつ読めんが、農家の若い連中が駆り出されて収穫量が落ちることを嫌がったのか、単に成り上がりの栄一に手柄をあげさすのが癪だったか。まあその両方という雰囲気だが、栄一が「このまま役目を果たせなかったら自分は死ぬことになるけど、その時はお前も道連れだからな」の脅し一発で強引に協力させてます。栄一も恫喝というスキルを獲得した模様。成り上がりだろうが何だろうが、今の立場は栄一の方が上だからどうとでも脅せるわな。「代官というのはいずこもタチが悪い」ていうのは自分の故郷のことを思い出しているのは間違いない。まあ確かにいつの世も、実は小役人というのが一番タチが悪かったりする。権力を笠に着て保身に走りやすいから。

 無事に200人ほどの兵を集めて帰還した栄一は、慶喜から褒賞をもらうことになるが、その席で慶喜に藩の経済力を強化する必要性を訴える。栄一は無駄に領国でプラプラしていたわけでなく、そういう金策も考えていた模様。やっぱり栄一は本質的に武士よりは商人。ここで商人としての才覚が現れてきた。ようやく栄一が栄一らしいスキルを活用して活躍する展開が登場・・・ということで、やっとここから「大河ドラマ渋沢栄一」開幕である。うん、ここまでの前置きが長すぎた。

 

ここまでが無駄に長すぎて構成が悪すぎる

 本当に前置きが長すぎ。特に一橋家に仕官するまでのエピソードなんてまるっきり無駄。そもそもどうせ史実に存在しない創作ばかりなんだし。本当にこのドラマは、カイコが踊るなんて気色悪い映像作っている暇があるんなら、なんでその辺りのことをしっかり考えてなかったのやら。10話ぐらいまでの話を私なら全3話程度でまとめたな。絶対に描いておく必要があるのは、岡部のクソ代官に対して栄一が反感を抱いたというシーンぐらいで、後は栄一が逃げ出すことになったあの雑なテロ計画ぐらいだけで良い。とにかく一番不要なのがあのグダグダした恋愛物語。渋沢栄一って決して家庭を大事にした人ではないんだから、ああいう話は無用の極地。第1話で栄一の生まれ育った血洗島での栄一の暮らしを描き、あの岡部のクソ代官との話で栄一が幕府はもう限界であることを感じるところまで、後はそれを原動力に尊皇攘夷思想に突っ走る辺りが第2話で、あの雑なテロ計画を立案するがそれが頓挫して逃げ出すところを第3話にしたら、始まって1月で物語が動き出すことになる。結婚なんて途中でナレ婚で十分。

 この作品、序盤にグダグダしすぎたせいで、そこでかなりの視聴者を逃がしていると思う。実際に私もあまりにつまらなくて1ヶ月ぐらいで落ちようかと本気で思ったから。このブログのコンテンツにしているという使命感(笑)がなかったら、間違いなく落ちてたと思う。いくらNHKは視聴率が低くてもスポンサーに打ち切り食らうことがないといっても、この構成はあまりに下手すぎる。実際のところ渋沢栄一の話はここからいくらでもエピソードを盛り込む余地があるので、これからのペース配分考えても、序盤のグダグダは無意味。そのせいで終盤が駆け足にでもなったら何やってるの分からないお馬鹿ぶり。

 

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青天を衝け 第17話「篤大夫、涙の帰京」

禁門の変が発生し、いよいよ攘夷はオワコンに

 関東に出向いて仲間を集めた栄一は意気揚々と一橋家の江戸屋敷に。しかしそこは何やらドタバタと取り込み中。ここで栄一は初めて円四郎が殺害されたことを聞く。恩人の突然の最後にしばし放心の栄一。

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 一方の京では長州兵が大挙して攻め寄せてきていたところ。あくまで尊皇攘夷を実行するために天皇を力尽くで奪還しよういう構え。薩摩はこの機に影響力の拡大を目指すべく西郷が「何なら薩摩も協力するけど、禁裏御守衛総督様はどうするつもり?」と慶喜の元に当て付け兼探り入れに。ここで慶喜は断固として天皇を守る宣言。

 こうしていわゆる禁門の変が発生するのだが、実際に慶喜は軍勢を率いて陣頭に立って戦ったらしい。戦い自体は途中で薩摩が参戦して、その火力で長州軍を圧倒してしまうのだが、思いの外の慶喜の毅然とした戦いぶりに西郷は「こりゃ円四郎が言っていたように慶喜は意外と武力もあるぞ」と慶喜侮り難しの感を強めたようである。もしかしたらこれが後の江戸城無血開城の伏線になるかも。

 禁門の変で破れた長州は、今度は4カ国連合艦隊にボコボコにされて砲台を占拠される事態に。長州でも留学経験のある井上馨や伊藤博文なんかは「攘夷なんて出来るわけがない」と分かっていたが、その意見はまだ長州藩では主流ではなかった。しかしこれで長州は攘夷が不可能ということをあからさまに見せつけられ、薩摩に続いて攘夷を断念することになる。これで世間的にも「攘夷はオワコン」というのがハッキリしてしまう。

 

栄一はしばし妻子と密会するが

 一方の江戸の方は円四郎ロスで悲しむ人々。奥方は例の鳥の絵の掛け軸に円四郎の置き手紙を見つける(やっぱり隠してあったか)。そこには仕えるべき主君である慶喜に出会った円四郎の喜びが記されており、これから来る時代への期待を綴っている。そこからは円四郎が自身が殺されることなど微塵も考えていないことが覗える。この辺りが先週の円四郎の「まだ死にたくない」につながって涙を誘うシーンである。

 軍勢を率いて京に引き上げる栄一達は途中で、何とか釈放された馬鹿兄貴の手配で密かに妻子と密会。まだまだ一緒に暮らすのは無理だが、いずれ事態が落ち着いたら必ず一緒に暮らすと約束する栄一だが、実際にはこの後も勝手にパリに飛んでしまったりとか、正直なところ家庭人としては最低な男が彼なのですが、まあそのあたりは健全なる大河ドラマでは触れません(笑)。結局はしばしの密会は、無粋な仲間たちに水を差されることになってしまう。

 妻子を残して再び京に向かう栄一一行だが、その前に現れるのが例の岡部の陰険無能代官。この無能、栄一達に対してよほど恨みでもあるのか、栄一達を引き渡せと要求。しかしこの要求に一橋家の上役が「彼らは一橋家の家臣なので拒否する」と言い放つ。こう言い切られると陰険代官も手も足も出ない。自分達の立場が変わったことを実感し、それが円四郎のおかげだったことを噛みしめる栄一達。円四郎のためにも一橋家に尽くすことをさらに決意したであろう。それにしてもこの無能代官、何かの度にやたらに出てくるが、もう完全にダメになってしまっている幕府の象徴の役割を果たしている。

 

勝手に期待されては厄介ごとに巻き込まれる慶喜の不幸

 京に到着して慶喜と謁見した栄一達に、「円四郎は自分の代わりに殺された」と語る慶喜。確かに慶喜はジョーイの鬼である斉昭の息子であることから、勝手に攘夷派に期待されたのだが、本心では攘夷なんて不可能と分かっていた慶喜はその方向には動かず、結局それは「君側の奸たる平岡円四郎が慶喜の意を勝手に歪めているんだ」になってしまったのは事実。慶喜にしたら、回りが勝手に自分に期待して、勝手に自分の意向を忖度した気になるという迷惑千万な状態。慶喜の苦々しさが滲む。結局、最後の最後まで慶喜は斉昭の息子であると言うのが最大の足枷になってしまったような気がする。死んでからまでも祟るな、竹中直人(笑)。何か回りが総掛かりで慶喜の足を引っ張っているように見えて、流石に可哀想になってくる。

 しかしその慶喜の苦々しさがさらに募る事件が。尊皇攘夷を唱えて決起していた天狗党が、長州も敗北してもう攘夷はオワコンという空気の中、このままだとジリ貧とばかりに京を目指す。慶喜だったら自分達の心が分かってくれるだろうとこれまた勝手な期待を抱いて。慶喜としては彼らを京に入れてしまったら禁裏御守衛総督としての立場がないし、また周囲からも疑いの目で見られること必然。恐らく慶喜は心の中で「何でこうなるんだ!!」と叫んでいたろう。

 結局は栄一達が引き連れてきた軍勢らで天狗党を迎え撃たざるを得ない状況に。これは栄一達にとってもかつての同志(実際に真田範之助なんかもいるのでは?)と戦うという苦しい事態に。それにしても本当に攘夷派って脳筋ばかりだわ。

 

ところでこの番組、顔優先で配役を選んだんだろうか?

 やたらに目をむきまくる博多大吉が意外と西郷の雰囲気が出ているのが印象的。それにしても西郷どんの時にも感じたが、薩摩の連中が「長州が」と言えば、それがイントネーションの加減でどうしても「チャーシューが」に聞こえて中華料理屋の物語になってしまう。西郷は先々週も栄一に薩摩黒豚のセールスをしていたし。

 ところで慶喜の写真見てると確かに草薙剛に似た雰囲気があるんだな。面長で。もしかしてこのドラマ、顔が似ているのを優先で起用してる? 今後気になるとしたら、勝海舟辺りに誰が出てくるかだな。もっとも勝と西郷が江戸城明け渡しの会談やってる頃は栄一はパリに行ってるので、出て来てもちょい役のような気はするが。

この学習漫画なんて明らかに渋沢栄一本人よりも吉沢亮がモデルだな

 

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青天を衝け 第16話「恩人暗殺」

リクルートに関東に出向く栄一だが、水戸での大混乱の煽りが

 関東に人材リクルートに向かう栄一と成一郞。しかしなぜか円四郎が見送りに現れる。そしてそこで円四郎は栄一に「お前はお前のままで生き抜け」と一言。完全に自ら死亡フラグを立てる遺言となっています。もう今回は円四郎が死ぬのはバレバレなので、もろに段取りを踏んでそこまで持っていきます。歴史ドラマはどうしても事前にネタバレしているツラさはある。

 で、慶喜の方はというと水戸藩に人材派遣を依頼するつもりだったのが、水戸藩は尊王攘夷派が暴走した天狗党の反乱でてんやわんやで慶喜の元に兵を送るどころではない。結局は歴史的には水戸藩はここで内部分裂が祟って、幕末の中心から外れてしまってその後は全く歴史に関与出来ないことになります。それにしても尊王攘夷派って短絡的な奴ばかり。まあ「夷狄を武力で討伐しろ!」ってのはいかにも脳筋で頭悪い考え方ですから、馬鹿ほど染まるんだろうな。面従腹背で力をつけてから寝首を狩ってやれという、したたかな発想になれないもんなんだろうか。まあ井の中の蛙だったんだろうな。

 この反乱の煽りはリクルート活動中の栄一達にも影響が。栄一達がスカウトしようとしていた真田範之助は既に天狗党に合流準備中。一橋に仕官した栄一達を裏切り者扱いする始末。結局、真田範之助とはこれが生涯の別れになるでしょう。とにかく頭に血が上って無駄に命を捨てたがる奴が多すぎ。

 その煽りで栄一の故郷は例の陰険代官のがさ入れを受ける羽目に。で、あの馬鹿兄貴は天狗党の誘いを断ったにもかかわらず、一味の可能性があると牢に放り込まれている模様。弟の平九郎は手鎖にされたようだが、なんか栄一の妹と良い雰囲気に。しかし歴史的には手鎖の刑罰にはあったがこういう展開はなかったはず。なおこの事件のおかげで栄一は故郷に帰れずで、例によって嫁さんは放ったらかしです。

 

一方の京では円四郎がカウントダウン状態に・・・

 京では池田屋事件が起こって、これの黒幕が慶喜だという話に水戸藩士が「佞臣平岡円四郎の仕業に違いない」と勝手に円四郎殺害計画を進めている模様。段々と秒読み段階へ。

 そして慶喜は円四郎に「自分はなぜかいつも回りから勝手に期待されるが、実際のところはそれだけの器ではない」という類いのボヤキ節を。慶喜がこんなことを言ったという記録は当然ないのですが、実際に慶喜の本音はこうだったのではという気は私もしますね。「こんなオワコン状態の幕府託されてもどうすりゃいいねん」ってのが本音だったのではという気がしてなりません。とにかく結果として慶喜は異様に諦めが良かったような気がしますから。

 この慶喜のぶっちゃけのボヤキに対して円四郎は「殿は家康様に似ていると思う」という超ヨイショをした挙げ句に「最後まで付いていきます」という完全にとどめの死亡フラグを自ら立てている。さらば円四郎・・・。

 そして円四郎は門前で護衛が離れた一瞬の隙を突かれて斬殺。まだまだ見届けたいことがたくさんあるだけに「まだ死にたくない」と呟く円四郎の最後の姿がなかなかに胸を打ちます。そして円四郎の死の知らせに冷静さを失う慶喜。ドタドタと円四郎の死体に駆け寄ると号泣。異常に感情が薄かった慶喜が初めて見せる激しい感情でしょうか。実際に腹心の少ない慶喜にとっては円四郎を失うのは痛恨事でした。それにしても水戸藩士って、結果として慶喜の足を引っ張ることしかしてないな・・・。どうもジョーイの鬼だった親父の悪しき遺訓が残ってしまっているようです。なんか慶喜って、結局は親父の亡霊につぶされたのではという気がしてならない。

 この頃、栄一は寄せ集め軍勢を率いて意気揚々と帰還中。栄一達が円四郎の訃報を知るのは半月後になるという話。相変わらず天下の動乱についてはことごとく避けていく栄一である。

 

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青天を衝け 第15話「篤大夫、薩摩潜入」

名前をもらった栄一に隠密任務が

 初給料をもらってうきうきの栄一と喜作ですが、円四郎から「武士らしい名前をつけてやろう」と栄一に与えられた名前が「篤大夫」。何か視聴者も今ひとつピンとこない名前ですが、栄一自身も「何か年寄り臭い」とイマイチの模様。まあ後に「渋沢栄一」で名が残っているところを見ると、結局はしっくりこなかったんでしょうね。一方の栄一が名前をもらったことで喜作も円四郎に名前をねだり、円四郎が苦し紛れに「成一郞」という名前を考えつきます。栄一はどちらかと言えばこの名前の方が良さそう。また喜作も喜んだようで、その後はこの名を名乗ります。実際に歴史でも渋沢成一郞で残っているので、生涯使ったんでしょう。確かに喜作はいかにも百姓臭い名前なので、成一郞の方が格好が良いでしょう。「篤大夫」は「顔の割に派手な名前」と西郷に言われていたところを見ると、やっぱり爺臭い名前なんでしょう。

 

だけど結局は真っ正面から乗り込んでいる

 で、名前をもらった栄一(私も「篤大夫」って名は使う気にならん)は円四郎から隠密を命じられる。任務は折田要蔵の人となりを見極めてくること。折田は薩摩藩士であるが、砲術士と言うことで摂海防禦御台場築造御用掛として、大阪湾に砲台の建設を命じられている。とにかく人材リクルートが必要な一橋家としては、使えそうな人材だったら引き抜こうという腹もあって、栄一に「なんとか潜り込んで見極めてこい」との命。もっとも回りには血の気の多い薩摩藩士もウロウロしてるので、下手したら斬られるかもって話でもある。

 さてここに栄一がどうやって潜り込むのかと思えば、堂々と「一橋藩士・渋沢篤大夫」と名乗って乗り込んでいるのには肩が落ちた。おかげで最初からいかにもヤバゲな薩摩藩士共には「あれは密偵に違いない」と目をつけられている始末。

 で、件の折田要蔵だが、やたらに「摂海防禦御台場築造御用掛」という役職名を「勉強しまっせ、引っ越しのサカイ」の調子で繰り返すだけのわけの分からんオッサン。栄一が瞬時に「こりゃ使えんわ」と判断しているのが覗える。にしてもこの作品、主人公に関わらない人物に関しては大概な描き方をするが、この折田も散々な描き方だな。これ子孫とかから苦情でないのか? 一応この方、後に湊川神社の初代宮司になってるんですが。

 

慶喜は役職を巡って島津久光とバトル

 栄一が折田の調査をやっている間に、禁裏御守衛総督の座を巡っての島津久光と慶喜との対決が。久光はこれに就任することで天皇を抱き込んで政治的発言力を増すことを考えていたのだが、どうやら久光のことをとことん嫌っているらしい慶喜は、それを阻止すべく動く。結果としては裏で平岡円四郎が動き回って、慶喜が禁裏御守衛総督の座に就くことに。怒り心頭の久光は、どことなく陰険な雰囲気のある大久保利通と共に一旦薩摩に退くことになるが、この時に「慶喜の元で動いている平岡円四郎が要注意」という類いの事を言ってるので、裏から手を回すことを考えているのではと匂わせている。

 一方の栄一は結局折田からは得るものは無かったが、栄一にとっての収穫はここで西郷吉之助(西郷隆盛)に会ったことだろう。ちなみに西郷は博多華丸が演じているのだが、やたらに目をむく演技がわざとらしくてギャグっぽいが、元々の派手な顔立ちが幸いして意外に西郷っぽくはある。

 

西郷に見込まれたっぽい栄一ですが、一方で円四郎には死亡フラグが

 折田についての調査を済ませて、一橋家に帰ろうとした栄一だが、どうも薩摩藩士の連中は「どうせ密偵だから、このまま帰さずにぶった切ろう」という雰囲気がプンプンだが、ここで西郷が栄一を酒に誘う。西郷は栄一の人となりを見定めようとしたのだろう。そこで豚鍋を挟んで天下談義になるが、そこで栄一は「幕府は倒れる」と言い切る。そしてその後は力のある諸侯が取り仕切ることになり、それは慶喜になるだろうと。西郷は薩摩ではダメかと話を振るが、栄一は薩摩の殿様にそれだけの徳があるならそれでも良いがと西郷にとっての痛いところをついている。実際のところ西郷は自分を散々冷遇した(どころか島流しにまでした)久光の器量は斉彬とは比較にならないぐらい劣ると考えているのだから、西郷の苦々しい胸中が見えるような気がする。

 結局は西郷は栄一を助けて薩摩の黒豚の売り込みをした(笑)という結果になっている。ちなみに慶喜も豚肉が大好きで、薩摩にしょっちゅう豚肉の献上を命じたから、これが原因で薩摩が倒幕に走ったという噂まであるぐらいなんだが・・・。

 で、ここで西郷から「平岡円四郎のように先が見える者は往々にして非業の死を遂げる」との話が出て、円四郎に死亡フラグが立ちます。実際に栄一が屋敷に戻ると周辺に怪しげな連中がウロウロしており、円四郎の死亡フラグがビンビン・・・と言っていたら、来週死んじゃうようですね。とにかく慶喜には腹心と呼べるような家臣が少なかったので、ここで円四郎を失ったことがその後の運命まで左右することになるようです。

 

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青天を衝け 第14話「栄一と運命の主君」

一橋家に仕えることになった厨二栄一

 栄一がとうとう一橋家に仕えることになりました。一旦は「我々は志があるから考えさせて欲しい」と引き下がったものの、選択肢なんてもうあるはずもない。おマヌケな喜作は名を残すために犬死にしそうな雰囲気でしたが、栄一の方はさすがにもう少し計算高い(笑)。平四郎はその辺りを読んでいたので、まあ多分仕官するだろうと踏んでいたのだが、その通りに進行・・・と思っていたら、栄一は「仕官の前に殿に自分達の建白を聞いてもらいたい」なんて無茶なことを言い始めて、平四郎は「はぁ?」。こいつら一体どこまで増長するんだってのが本音でしょうね。当時の慶喜は幕府と朝廷の間で板挟みの状態で田舎農民の与太話なんて聞いている暇はない状態。平四郎は「無理」と言うのだが、とにかく無意味に頑固なのが栄一。というわけで、とにかく何とかするという話に。

 さて板挟みの慶喜は解説の家康さんが言うところの「ピンチ」な状態。それにしても北大路欣也の無駄遣い、とうとう家康という設定まで必要がなくなってきた。栄一と喜作がやりとりしていた時に、喜作が「お前、まさかチャンスだと考えてるんじゃないだろうな」と言いそうな雰囲気でしたが、さすがに「胸がゾワゾワする」とかいうような表現をとってました。まあその程度は気を使うかと思っていた矢先に、家康が「ピンチ」ですから、本当にこの作品って何をしたいのか分からない。

 

そしてようやく第1話に戻る

 で、平四郎が練った策が、「いきなり会ってくれなんて到底無理だから、とにかくどんな方法でも良いから名前を知ってもらえ」ということで、慶喜が乗馬で走るコースを教える・・・ということで、ここでようやく作品第1話冒頭に登場したシーンにつながるということになったようです。長かったな・・・。とりあえず慶喜が興味を持ってくれたことで面会が実現、栄一はそこで「幕府はもう限界」とか「一橋家が強くなって天下を取る」とか厨二丸出しの自説を開陳することに。黙って聞いていた慶喜であるが、後で平四郎に「特に目新しいものはなかった」という評価。つまりは栄一の厨二構想なんて、慶喜にとっては改めて言われるまでもなく、あっちこっちから突き上げ食らっている内容ってこと。この辺りで視聴者には「厨二栄一の限界」をハッキリと見せつけます。まあ栄一自身もその後に平四郎から現在の状況を教えられて「攘夷はもうオワコン」ってことを言われて(さすがにオワコンとは言ってませんが)、田舎者の天下知らずだったことを思い知ることに。

 

「慶喜、キレる」

 しかし番組ではこの栄一の厨二っぷりが慶喜に影響を与えてしまったのではって展開にしてます。やっぱり主人公アゲは大河には不可欠ってことでしょうか。島津久光と対立を深めていた慶喜、それまで何だかんだと久光の嫌みをかわしていたのですが、久光から賄賂受け取っていた中川宮に対してもろに脅しをかけた上に、久光のことを「天下の大悪党」と名指しするという完全に宣戦布告をぶちかましてしまう。結局はこれで薩摩藩との対立が不可避に。参与会議がこれで完全に崩壊してしまって薩摩は長州に接近することになるので、この時の慶喜の行為は「ストレス溜まりすぎた挙げ句に、酒の勢いでご乱心」ってのが一般的な歴史的評価なのであるが、どうやらこの番組では栄一の厨二っぷりに触発された慶喜が「ついにやってやった」という快挙の扱い。うーん、この辺り、この番組の歴史解釈は大丈夫か? 松平春嶽が「こんなのどうしてくれるねん?」って感じで間でオロオロしてましたが、プッツンした慶喜に振り回される損な役回りになってしまってます。親父の斉昭は阿部正弘を過労死させたが、息子は春嶽を病気にしちまいそう。それに慶喜が草薙剛だけに、酔っ払って裸になって走り回らないか心配になった(笑)。

 というわけでは今回のタイトルは「慶喜、キレる」の方が妥当でしょうね。それにしてもこの作品、先に井伊直弼の描き方が大概ひどかったですが、今回も島津久光の描き方が大概ですね。あれだと単に腹黒くて嫌らしい野心だけがある小者。紛いなりにも薩摩の名君の一人と言われている人物なのですが・・・。まあ西郷を島流しにしたりと西郷とは相性が悪かったので、西郷ファンからは「無能、田舎者、陰険、兄と違って不肖の弟」とボロクソの評価されていたりはしますが。客観的に見ると、確かに斉彬には遠く及ばないが、幕末の動乱期を乗り切った人物としては十二分に有能と見て良い人物だと思いますが。なんかこの作品、井伊の彦根に次いで、次は鹿児島と、何やら無駄にあちこちにケンカを売っているような気も。まさかこの後は逆に、安倍に忖度して長州テロリスト軍団を過剰に美化するようなことをしないだろうな?

 

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青天を衝け 第13話「栄一、京の都へ」

京に上ったものの特に何が出来たわけでもない栄一

 喜作と共に浮かれて京を目指す栄一ですが、身元が怪しいこともあってとりあえず平岡円四郎を頼ることに。実際は一橋家に仕官する気なんて微塵もないのに、京に行くための身分保障として円四郎の名を借りることに。

 で、無事に京に上った二人であるが、円四郎は忙しくて会えず(本当に円四郎の元を訪ねたのか怪しい気がするが)、浮かれた二人は攘夷派と情報交換と言いつつ、実際は宴会に明け暮れていたと(確かに攘夷派の志士たちは京では連夜のように派手に遊んでいたという話がある)。そりゃ路銀もなくなるわな。

 路銀がなくなってどうしようもなくなったことで、突然「そう言えば俺たちは、ここには国家のために事を起こすべくやって来たんじゃないか」といきなり長七郎に対して厨二丸出しの手紙を送って呼び寄せる。しかしこの頃には既に様々な出来事からの後ろめたさなどで完全にメンタルが崩壊してしまっていた長七郎は、旅の途上で錯乱して人を殺めるという事件を起こして捕まってしまう。しかも悪いことにこの長七郎が持っていた厨二丸出しの手紙もお上に渡ることに。無難に「また顔を見たいから京に来ないか」とでも書いていれば良かったものを、幕府を倒すべきとか、横濱焼き討ち計画云々とか不穏当な内容を書いていたものだから、当然のように栄一達にもお上の手が・・・。

 

実に都合良く助け船が来る悪運だけは強い口だけ番長

 元々お上から逃げるつもりで京に来ていていた栄一達は進退窮まったところに、円四郎から助け船が。「お前達、バカなことをしたんじゃなかろうな」と探りを入れられてとぼけるが、嘘はバレバレ、結局は洗いざらいすべて喋って、円四郎に半分呆れられながら「それならお前ら一橋家の家臣になれ」ってのが今回の展開。

 円四郎が「お前達は悪運が強い」と言ってましたが、まさにその通りです。こんなマヌケな行き当たりばったりで行動しながら、この時代に命を落とさなかったのは確かに強運の持ち主だと言える。これと対称的なのが長七郎。真面目な性格が祟ってドンドンと自滅コースを歩んでいる。口だけ番長の栄一よりはよほど真剣に動いていた人なんですが・・・。栄一がどうこうと言うよりも、円四郎の度量の大きさの方が目立ちます。

 結局は半ば物見遊山で無計画に京に上った二人ですが、口では攘夷を唱えながらも全く行動が伴っていません。その挙げ句の結果が一橋家に就職。しかし慶喜は「攘夷なんて出来るわけないでしょ」って人ですからね・・・。口だけで舞い上がっているあの二人、一体どうやって折り合いをつけるのやら。

 どうもここまでの栄一って、口だけで行き当たりばったりの無計画さが目立ちます。このお調子者はどう考えても大きいことなんて出来そうにない雰囲気なんですが・・・どこで脱皮するんだろう。

 

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