徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

3日目は大野和士指揮の都響でマーラーの交響曲第7番

今日は都響のコンサート

 翌朝は8時に起床。体にかなりのだるさがある。睡眠時間は十二分のはずだが、老化による睡眠力の低下で睡眠の質の方があまり良くない。また正直なところ、大津から大阪まで突っ走り、その後は美術館を2軒回って挙げ句にホールで4時間座り詰めというのは、運動量としては話にならないのだが体へのダメージとしてはかなりある。これも若い頃なら一晩寝たらある程度回復したんだろうが、最早半分以上ジジイになっている私の体には、確実にダメージの蓄積がある。

 とりあえず今のままでは活動不能なので、まずは風呂に湯を張ると体を温める。ようやく体が温まって動けるようになったところで、昨日買い込んでいたおにぎりで軽い朝食。そのままチェックアウト時刻の10時まで、適当にテレビを見ながら一昨日の原稿を仕上げてアップ。ここのホテルはネットの回線があまり早くないので、記事のアップに時間がかかるのが難点。

 チェックアウトすると今日の予定を復習するが、実のところは14時開演のフェスティバルホールでの都響のコンサート以外何もない。仕方ないので、ホールに近くにAkippaで予約した駐車場に車を入れると梅田方面に向けてブラブラと散歩。

朝のフェスティバルホール

 

 

 堂島地下街は休業なのか完全にすべてがシャッターが下りていて単なる地下通路になってしまっている。そこを抜けたら西梅田を経由して大阪駅南に到着。ふと思い立って「ミンガス」に立ち寄ることにする。ミンガスはかつては阪神梅田の東改札の前にあったが、梅田駅の改装で西側に移転した模様。移転後は初訪問だが、店は綺麗になってやや広くなったのと、そばなどの新メニューが増えてカレー屋というよりも普通の駅前食堂になっている。そしてカレーメニューを見ると、若干価格が上がっているような・・・。モーニングカレー(530円)なるものがあったのでこれを注文する。

ミンガスは阪神梅田の西口の方に移転していた

 要するに朝食用の具なし廉価カレーである。さすがに一切の固形分が存在しないのはただの汁ご飯であっていささか悲しい。ただ確かに懐かしいミンガスのルーの味である。高級とかグルメとかとはほど遠い味なのだが、なぜか初めて食べた時から私にとっては妙に懐かしい味である。

モーニングカレーという名の具なしカレー

 

 

 ミンガスで少し執筆作業を行ってから、店が混雑を始める前に出る。プラプラとホール方向へ歩いて行くが、いささかデザートが欲しいのとしばしどこかで時間をつぶしたい。そういうわけで「つる家茶房」に立ち寄って久しぶりにわらび餅を頂く。

つる家茶房で一息つく

わらび餅が美味い(若干高いが)

 金欠の私には久々の贅沢な時間である。こういうここの潤いまでも排除しないといけないのが金欠の嫌なところである。人間、金に不自由し出すとギスギスとし始めるというが、理解できるところである。金がある奴が人格が良いということは全くないが、金がなくなると人格が歪みやすいのは事実。

 

 

 しばしマッタリとしてからホール方向に再びプラプラと歩く。当初目論見ではホール近くで昼食を考えていたが、ミンガスの具なしカレーが思いの外腹にズッシリきていて食欲が出ないので、昼食は結局抜きになる。

フェスティバルホールの赤絨毯

 することもないので開場時刻になるともうホールに入ってしまう。ホールはかなりの大入りで、昨日に続いて本日もほぼ満席。都響といい、読響といい、やはり在京オケは人気ということだろうか。なお都響は曲目もあって16型大型編成である。

16型編成なので椅子が多い

 

 

東京都交響楽団 大阪特別公演

指揮/大野和士
管弦楽/東京都交響楽団
曲目/マーラー:交響曲 第7番 ホ短調

 マーラーの交響曲の中では比較的演奏機会の少ない7番を取り上げている。7番の演奏機会が少ないのは内容的に不可解な部分が多い曲なので、人気が今ひとつ劣るからとか。確かに一筋縄ではいかない曲である。

 大野の演奏はその一筋縄でいかないこの曲を、かなり整理して明快に表現しているように感じられる。またとにかく金管が重要な役割を果たす曲なのであるが、さすがに都響の金管陣は安定感があって良い音を出す。さすがにこの辺りはまだ大フィルなどももう一歩及ばない感がある。

 グイグイと進む第一楽章に、静けさを感じさせる第二楽章、そして悪魔的なスケルツォである第三楽章。マーラーの曲はメロディが交錯する場合があるが、特にこの曲はそれが顕著。下手すれば放って行かれそうになる可能性がある曲であるが、そこは大野が適度に交通整理をしているように感じられ、とにかく聴衆を取りこぼさない演奏になっている。

 かなり甘美な第四楽章を経て、ドンチャン騒ぎの最終楽章に突入。しかしこの楽章はあまりに脈絡のないドンチャン騒ぎなので、何の考えもなく演奏してしまうとわけが分からなくなる事が多い。その点、大野はしっかりとメリハリやアクセントをつけて、音楽の本筋がズレてしまわないように配慮していたのが覗えた。また都響の演奏の方も十二分な安定感があって精度が高い。おかげで旋律の奔流に振り回されることなく最後まで音楽を堪能することが出来たのである。

 これは久々に名演ではと思ったのだが、演奏終了後のホール内の盛り上がりはやはりすごかった。昨日の尾高に続いての連日の大盛り上がりとなったのである。流石に都響、やる時はやるというところか。

 本公演はマーラーの7番の1曲のみということで、比較的早めに終了となったので、それが幸いしてか帰りの阪神高速はいつになくスムーズで、想定よりも早く自宅に帰り着いたのである。いつもこの程度の混み具合なら助かるのだが・・・。

 

 

この遠征の前日の記事

www.ksagi.work

 

 

関西4オケ祭でブラームスの交響曲全曲演奏を堪能する(4時間の長丁場)

4オケ祭の前に美術館に立ち寄ることにする

 翌朝は7時半に起床。昨日の就寝が遅めだったのでやや睡眠不足気味。ここのホテルはとなり入浴施設が営業開始するのがチェックアウト時刻以降なので、朝風呂がないというのが難点である。無理矢理に体を起こすと朝食に出向く。

バイキング朝食を頂く

 朝食はとなりの施設の一階の喫茶になっている部分でバイキング。メニューは多くはないが、内容的にはまずまず。ご飯をシッカリと頂いてから、パンを2つほどつまむ。

 朝食を終えると荷物をまとめて10時にはチェックアウトする。今日は14時からフェスティバルホールで4オケだが、その前に大阪の美術館を回る予定。

大阪に到着したが、生憎の雨

 大阪まで突っ走るとホール近くにAkippaで確保した駐車場に車を置き、近場の美術館を回る予定だが、どうも生憎の雨でやや天候は鬱陶しい。

 この後は美術館の見学だが、その前に近くの中の島食堂(まいどおおきに食堂)で日替わり定食を昼食に摂る。今日の日替わりはハンバーグとのこと。まあ極めて普通の内容である。

昼食は日替わりのハンバーグ定食

 昼食を終えると最初に立ち寄るのは中之島キューブ(と私は呼んでいるがこれは正式名称ではない)こと中之島美術館である。

 

 

「佐伯祐三 自画像としての風景」大阪中之島美術館で6/25まで

展示は5階展示室で

 パリの画家として知られる佐伯祐三の生涯にわたっての作品を紹介する。元々大阪中之島美術館は最大級の佐伯祐三コレクションで知られているが、今回はそれを中心に各美術館から集めた作品を展示している。

 まず最初に登場するのはデスマスク・・・と思ったらこれはライフマスクらしい。どうやらノリで作ったものらしい。なお画家による自画像も展示されている。

佐伯祐三のライフマスク

そしてこれが自画像

 最初に登場するのは渡仏前に描いた作品。まだシンプルな作品である。

目白自宅付近を描いた作品

 

 

 次に第一回の渡仏後の日本で描いた作品が登場する。下落合の風景を描いたり、また滞船をモチーフにするなど、日本の風景と自身の画風の折り合いをつける努力をしていることが覗える。

下落合風景

滞船

 また彼が描いた人物画も展示。彼は身近な人々の肖像画を残しているが、これは娘を描いたものである。なお彼女は佐伯の死後にすぐに6才で亡くなったらしい。

娘の彌智子の肖像

 

 

 次のコーナーはまずは第一回渡仏の際の作品。初期の作品はセザンヌやヴラマンクなどの影響が顕著である。

この作品などはセザンヌの影響が見える

こちらはもろにヴラマンク

 その後、ヴラマンクと面会して絵を見せたところ「アカデミック」と酷評されたことを機に自身の画風を模索する時期がある。そしてパリの町並みを描き続けて、最終的にはパリの壁に自身の画風を確立する。

バリの街角を描きまくった

最終的にはこのような重厚な壁を描くように

 

 

 そして一旦帰国した時の絵画が先の下落合の風景なのだが、パリの町並みに適合しすぎていた佐伯は、様々な模索をするものの結局は日本の風景に描くべきものを見いだせず、再び渡仏してパリの風景を描き続ける。この時期の絵画は日本滞在中に滞船を描いた作品などで見られていた線へのこだわりから、結局は壁のポスターの文字をビッシリと描き込んだ独得の雰囲気が特徴となっている。

街角のポスターなどを描くようになる

細かい線の錯綜は滞船辺りからの流れ

 またパリを離れて地方の村で絵を描くなどもしたらしいが、この頃に体調を崩して寝込んでしまうことになる。

田舎の風景を描く

ほぼ最終形態

 

 

 結局はパリに戻ってきて郵便配達夫やロシア娘を描いた有名な作品が最終的に遺作となってしまう。享年30才。まさに駆け抜けるような人生で燃え尽きてしまった生涯だった。

遺作になった郵便配達夫

ロシアの少女

 正直なところ佐伯の作品はあまり好みというわけではないのだが、それでもこれだけ生涯にわたっての作品を並べられると圧倒される。自身の命を削りながら描いていた空気がヒシヒシと伝わってくるような印象を受ける。

 

 中之島美術館の次は中之島香雪美術館に立ち寄る。

 

 

「修理のあとにエトセトラ」中之島香雪美術館で5/21まで

中之島香雪美術館

 今回はやや趣向が変わっており、収蔵品を見せるというよりも、収蔵品の修理事業の家庭について紹介するといった内容。美術品も経年劣化により、汚損、虫食い、風化などさまざまな劣化が起こるが、それらの劣化を修復してなるべく良い状態で後世に残すための技術などについて紹介している。絵画などは以前の修復で裏から紙が当てられていたりすることもあるので、修復するとなるとそういうものを全て外してからの作業になるとか、極度に神経を使う細かい作業であることが良く分かる。

 掛け軸などの場合は軸装から外しての作業になるという。

作業内容が説明されている

修復なった作品

掛け軸の場合は軸装をやり直すそうな

 

 

 絵巻の場合は紙の接合部が劣化したり、巻じわに沿って傷んでいる場合などがあるので、その場合には裏から補強することもあるとか。

絵巻も細かい作業が必要

修復なった絵巻

絵巻の場合は補強作業などもあるとか

 また修復された絵画は日本画の掛け軸や絵巻だけでなく、洋画にも及んでいる。

洋画作品も修復される

修復された柘榴

 

 

 木像などの場合は虫食い部を樹脂で補強するとか、剥離している彩色の剥離止めを行うなどの細かい作業が必要となる。

木像は樹脂補強などが施される

そしてようやく展示に耐える状態に

 絹に書かれている絵の場合には、裏あてを剥がしてのかなり細心の作業になる模様。

絹の場合はさらに細かい作業が

鮮やかに甦った

 

 

 また刀剣の類いなどは錆が発生していたりするので、錆びた部分を最小限の研ぎ直しをするなどの細工が必要なようである。

刀剣の類いも修復作業が必要

鮮やかな光沢を放つ刀身

拵えなども作り直すらしい

 各美術品の修復の詳細について記されているので、修復とはいかなる作業であるのかということを実感できるなかなかに面白い試みであった。もっとも一回りしての一番正直な感想は「短気な私には到底不可能な仕事である」ということである。


 美術館2軒を回り終えたところで既に開場時刻を過ぎている。フェスティバルホールに向かうことにする。ホール内は大入り満員でほぼ満席に近い入り。私は3階の安席を確保している。なお本公演では演奏終了後の指揮者インタビュー時に撮影が可能とのこと。関西のコンサートでは珍しいが、SNSでの宣伝効果を期待してのものだろうか。もっとも現時点で宣伝しても今年の公演には間に合わないが、来年以降への宣伝効果を期待というところのようだ。

 

 

4オケの4大シンフォニー2023

◆山下一史指揮 大阪交響楽団
 曲目/ブラームス:交響曲 第3番

◆飯森範親指揮 日本センチュリー交響楽団
 曲目/ブラームス:交響曲 第4番

◆飯守泰次郎指揮 関西フィルハーモニー管弦楽団
 曲目/ブラームス:交響曲 第2番

◆尾高忠明指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団
 曲目/ブラームス:交響曲 第1番

 

 在阪4オケでブラームスの交響曲を全曲演奏しようという力業コンサートの先頭を切って登場するのは大阪交響楽団である。大阪交響楽団といえば、ベートーベンチクルスの時にどうにも締まりのない7番を演奏したことで、今ひとつ良い印象を持っていないのが本音。今回山下一史の指揮でいかなるブラームスの3番を聞かせるか。

 冒頭からアンサンブルに今ひとつの精緻さがないのは、相変わらずのこのオケの弱点である。それでも山下の奮闘もあって「頑張っている」というのが正直なところ。山下の工夫により表現の中にはところどころ「おっ、やるな」と思わせるところが散見され、以前の緩みきった大響の演奏からはかなり進化が見られる。とは言うものの、まだ聴かせるというにはやや弛緩した部分も多いのは事実。一言で言えば「今後に期待」というところだろうか。

山下一史指揮の大阪交響楽団

 

 

 2番手に登場したのは飯森範親率いる日本センチュリー。以前のベトチクの時は小編成オケで室内オケ的田園を演奏という変化球を繰り出してきた飯森だが、やはり今回でも一番仕掛けが多いのは彼である。まずオケの配置がコントラバスを背後にズラッと並べた背面低音型配置。カーチュンなどが時折見せるが、最低音が中央から突き抜けてくるという仕掛けである。これで4番の重低音をブイブイと行かせようという狙いのようだ。

 オケの構成の方もこれに合わせて、ベトチクの小編成とは対極のトラを動員しての12-12-10-8-6という低音寄りの変則的大編成になっている。これで大迫力でブイブイという狙いも覗える。もっともこれは諸刃の剣でもあり、実際に冒頭では急造大編成の弱点も出て、アンサンブルの精度が通常のセンチュリーよりはやや落ちるという局面の覗えた。

 ただノリノリの飯森の元で、力強い演奏を繰り広げるセンチュリーは最近の演奏とはやや違った一面も見せた部分がある。まあ飯森自身も随所に彼特有の仕掛けを用意しており、演奏意図はそれなりに噛み合ったまずまずの演奏であった。

飯森範親指揮の日本センチュリー交響楽団

 

 

 休憩後の後半はベテラン飯守泰次郎率いる関西フィルによるブラームスの2番である。そもそもブラームスの2番はネットリシットリした弦楽陣を特徴とする関西フィルとは相性の良い曲である。ベテラン飯守もその関西フィルの持ち味を十二分に活かしつつ、彼特有のピリリとしたアクセントをそこに挿入していく。大病後にめっきりと衰えが見られ、特に足下が覚束なくなったことが懸念される飯守だが、その指揮にはまだ衰えを感じさせないメリハリが見られる。その挙げ句、自身も興が乗ったのか、第2楽章でいきなり立ち上がったのには驚いた。ここが聴かせどころとでもいうところか。確かに関西フィルも感情のこもった演奏を繰り広げる。

 シットリとした弦楽陣を中心に、甘くはあるが緩くはない音楽が展開された。今回の関西フィルは14型に拡大された編成となっていたが、トラを含んでの拡大にも関わらず、弦楽陣に乱れがなかったのは見事。また編成の拡大を単なる音量増加でなく、音楽としての密度を上げるのに利用していたという感がある。またオケの飯守に対するリスペクトのようなものも感じられ、ピンと1本線が通った演奏となっている。なかなかに冴えた演奏を展開したのである。

飯守泰次郎指揮の関西フィルは14型編成

飯守はまだ健在

 

 

 大トリは16型巨大編成の大フィルによるブラームスの1番。率いるは最近に進境著しい尾高忠明。

 冒頭からズッシリとしながらも重苦しくなく躍動感のある音楽が繰り広げられる。この躍動感が最近の尾高には非常に強く感じられるところであり、尾高と大フィルの意図するところがうまく噛み合っていることが感じられる。重厚であっても決してその重さに動きが阻害されることがなく、エネルギーを秘めて音楽が繰り広げられるのが、最近の尾高と大フィルの組み合わせの妙であり、それがもっとも効果的に発揮されやすい曲を得て見事に発現している。

 もう一楽章からかなりハイテンションで盛り上がったのであるが、その盛り上がりは曲が進むにつれてさらに深化する。そして最終楽章、強烈な緊張感の中で尾高の指揮の下で一糸乱れずに驀進する大フィルサウンドが実に圧巻。「大フィルってこんなに上手かったんだ」と思わせる圧倒的な音楽である。そのまま圧倒的なクライマックスを迎えて曲は終了。場内が爆発的な熱気に包まれたのも当然。私も時節柄「ブラボー」との絶叫は控えたが、思わず「これはすごい」という声が出てしまったのである。

尾高忠明指揮の大フィルは16型の大型編成

見事な演奏を聞かせた尾高忠明

 

 

新今宮の定宿で宿泊する

 大盛り上がりの会場を後にすると、車を回収してから今日の宿泊ホテルを目指すことにする。今日宿泊するのは私の定宿の一つ「ホテル中央オアシス」。毎度のようにセパレート部屋を予約しているので、ゆったりと入浴してくつろぐつもり。ただ丸4時間の長丁場コンサート終了後にホテルに到着した時は既に7時頃。部屋に荷物を置いたところでとりあえず夕食を摂りに出かけることにする。

ホテルに到着した時にはもう7時頃

 夕食といっても金のかかる新世界界隈に行くつもりはない。立ち寄ったのは近くの「らいらいけん」。ここでトンカツ定食(800円)を頂く。例によってCP最強。トンカツも専門店のような特別に凝ったものではないが普通に美味い。安くて美味い飯をしっかりと腹に入れるのである。

らいらいけん

小鉢のマカロニサラダを頂く

これで800円のトンカツ定食

 満足して夕食を終えてホテルに戻ってきてテレビをつけると、何やら「シン・仮面ライダー」の製作のドキュメントが放送されている。アクションシーン撮影の経緯についてかなり丹念に紹介しているのだが、現場のスタッフと庵野の意図するところが噛み合わずに四苦八苦しているのが伝えられている。庵野がもろに自身のこだわりを前に出しているのだが、それがあまりに漠然としすぎていて現場スタッフが理解できずに右往左往。「ややこしいオッサンだな」という現場の本音が滲んでいるのが笑えた。何やら庵野のこういう「とにかくややこしいクリエイター気質」ってのは、もろに師匠の宮崎駿から引き継いでいるようである。ただそこまでこだわった割には、今回の映画は巷では当のアクションシーンが極めて評判が悪い(何をやっているか分からないという声が多い)というのはいかなることだろうか。まあ私は以前から、庵野がオタ的なこだわりを出せば出すほど、一般が求めるエンターティーメントとはかけ離れてくるという傾向は感じてはいるんだが。

 この番組は家で録画しているはずなので、途中で風呂に入ることにする。タップリと湯を張った浴槽に体を沈めるとホッとする。そもそもそのために選んだホテル中央オアシスである。この週末の遠征は疲れ切った精神を癒やすという意味も込めている(の割には、体の方にはやけにハードなんだが)。

 入浴を終えるとしばしPC作業だが、やはり肉体的疲労は頭を鈍らせる。あまり作業がはかどらないので適当なところでベッドにゴロンと横になるが、こうなるとすぐに眠気が押し寄せる。結局この日はやや早めに就寝することになる。

 

 

この遠征の翌日の記事

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この遠征の前日の記事

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京都市響のフライデーナイトスペシャルで沖澤のどかの指揮を初体験

そうだ、京響に行こう

 この週末は京阪方面に繰り出すことにした。最初の目的地は京都。京都コンサートホールで開催される京都市響のコンサートである。京都市響は長年常任指揮者を務めた広上淳一が退任する当たり、後任には広上推薦の沖澤のどかが就任したのだが、私は今までスケジュールの関係で彼女の演奏を聞いたことがなかった。その彼女がこの4月の定期演奏会で指揮をするとのことなので、これは一度聞いておきたいと思った次第。しかし定期公演本番の明日は4オケとスケジュールが衝突してしまっていることから不可。そこで今晩のフライデーナイトを聴きに行こうと考えた次第。

 フライデーナイトは昨年から京都市響が行った試みだが、1時間のショートコンサートを安めの価格で金曜日の夜に行おうという試み。昨年は土曜の定期に対し、日曜定期が半分、フライデーナイトが半分というような分配だったのだが、今年度からは日曜定期が完全に廃止されてフライデーナイトオンリーになってしまった次第。

 京都まではとにかく遠いので、いくら開演が19時半とやや遅めといっても仕事が終わってから駆けつけていたのでは到底間に合わない。この日の仕事は午前中で終えて、昼から京都に向かって走ることにする。

途中の新名神宝塚SAはなぜかエヴァコラボ中

牛乳ソフトを摂って一息つく

 途中で休憩も取りながら長駆ドライブすること2時間程度だが、思いの他の疲労がやって来るところに老いを感じずにはいられない。昔はヘロヘロになりながらも半日運転し通しなんて無茶もしたものだ。今の私には昔のように関西から新潟まで一気に走り通すなどという体力も精神力も到底なくなっている。

 京都に到着するとまずは立ち寄り先に。最近結構頻繁に行っている美術館であり、青銅器のコレクションで有名。今日はここにち立ち寄る予定があったから早めに出たのである。

 

 

「光陰礼賛ー近代日本最初の洋画コレクション」泉屋博古館で5/21まで

 住友家の当主・住友吉左衞門友純(春翠)が集めたという洋画コレクションを紹介する。なお購入作品の選定には春翠の支援でヨーロッパに留学していた画家の鹿子木孟郎が関与しているという。大原コレクションにおける児島虎次郎と同じ役割を果たしたようである。

 目玉はモネの2点であるが、1点はまだ印象派としての画風を確立する前で、後の画風を思わせるところはあるが、まだバルビゾン派的作品である。これに対してもう1点は印象派を立ち上げて2年後の作品。両作品を比べると明らかに色彩の鮮やかさが異なっており、モネが印象派に至った境地が理解できることになる。

 コレクションは印象派作品もアカデミズム作品も両方含んでおり、どうやら収集に当たって区別はしなかったようだ。またアカデミズム作品に所属する作品でも、明らかに色彩表現に印象派の影響がみられるような作品もあり、本来この区別はさして厳密なものではないことも感じさせられる。

 後半は日本人洋画家の作品で、多くは黒田清輝に学んで官展で活躍した画家たちである。あまり尖っていない写実系の画家中心であり、概ね好ましい印象を受ける作品が多い。なお私の好きな岡田三郎助の作品も一点(「五葉蔦」)あり、かなり楽しめた。

 

 

早めの夕食を東洋亭で

 美術館の見学を終えるとまだ早めであるがホールの方に向かうことにする。Akippaで確保しておいた駐車場に車を入れると、まずは早めの夕食を摂っておくことにする。まだ「東洋亭」のランチタイムがギリギリで間に合うので駆け込むことにする。

久しぶりの東洋亭

 注文したのはハンバーグのAランチ。ビフカツとかが食いたい気持ちもあったのだが、ハンバーグを選んだ理由は端的に言って金欠。諸般の事情で現在の私は著しい金欠状態にあり、贅沢している余裕は皆無である。と言うわけで定番のエコノミーメニューを選んだ次第。

 まずは東洋亭名物謎のトマトサラダから。サラダという名の丸ごとトマトなんだが、なぜかこれが不思議と美味いんだよな。毎回これが最大の謎。ちなみに今日は熊本の八代産のトマトだそうな。

相変わらず美味い謎トマト

 ホイルを切り開いて出てくるハンバーグは久しぶりである。グツグツといっていて美味そう。もっとも私は猫舌なので少し冷まさないと食えないが。相変わらずのかなり肉肉しいハンバーグである。なかなか美味い。実はここのところ洋食から少々遠ざかっていたのだが、やはりたまには洋食も良いなと感じる。ちなみに付け合わせの北海道のジャガイモもほっこりして美味。

ホイル入りのハンバーグが登場

アルミホイルを開くと熱々のハンバーグ登場

食後のアイスティー

 早めの夕食を堪能したが、まだ開演までには随分時間がある。かといってどこかに立ち寄る宛てもなし。仕方ないのでさっさとホールに入ってしまってグダグダと時間をつぶすことに。やはりこのホールは周辺に時間つぶしに良い場所がないのが一番の難点。しかも今のように重度の金欠だと、なおのこと時間のつぶしようがない。

 ホール下のスペースで椅子に座ってこの原稿打ったりスマホをチェックしたりしている内に開場時刻となる。7割程度の観客が入っており、なかなかの入りである。

ホールへ

 

 

京都市交響楽団フライデーナイトスペシャル

3階の正面席が確保できた

指揮:沖澤のどか

モーツァル 歌劇「魔笛」序曲
メンデルスゾーン 序曲「ルイ・ブラス」
メンデルスゾーン 交響曲第4番「イタリア」

 最初は「魔笛」の序曲。沖澤はプレトークでオペラを振りたかったからドイツに行ったという類のことを言っていたが、確かに実にオペラらしい序曲になっている。流麗でなめらかというのが一番の印象であるが、オペラの情景を描き出そうとしている姿勢が見える。

 二曲目はメンデルスゾーンの「ルイ・ブラス」序曲もかなりドラマチックな表現である。全体的に鳴らし方にやや上品なところが見られるが、感傷的な劇的表現も十分に含まれてはいる。

 最後はメンデルスゾーンの超有名な爽快な交響曲。それをまさに爽快そのものな演奏を行った。オケはなかなかに色彩的でシャープな印象。ただし下品な極彩色になることはなく、上品でスマートな演奏である。

 沖澤の指揮は初めて聞いだが、今回を聞いた限りでは当たりが柔らかくて上品でスマートという印象を受けた。フランス系の洒落た曲なんかが良く似合いそうであるが、むしろ私が興味があるのは、同じフランスでも幻想交響曲のような情念渦巻くおどろおどろしい曲をどういう演奏をするかというところ。今後、彼女の表現の幅についても知りたいところである。

 

 

大津の温泉ホテルで宿泊する

 コンサートを終えると今日の宿泊ホテルへ移動である。大阪に戻る手もあったのだが、コンサート終了後に大阪まで長駆移動もしんどいと思い、京都方面で宿泊することにしている。とは言うものの、京都市内のホテルは相場が高すぎて無理。というわけで少し足を延ばして大津で宿泊することにした。宿泊するのは「おふろcafé ニューびわこホテル」。大津の宿泊もできるスーパー銭湯である。また大衆演劇を見ることができるというのも特徴の一つとなっている(私は興味皆無だが)。最近リニューアルしたとのことで、私はリニューアル以前には数回宿泊したことがあるが、リニューアル後は初めてになる。

風呂なし、トイレなしのシンプルビジネスルーム

 チェックインを済ませて部屋に荷物を置くと、取るものとりあえず風呂へ。リニューアルされて1階は何やら綺麗な休憩所になっているうえに、かつては3階にあった男子更衣室が2階に変わっている。間取りが少し変更になった模様。入浴して汗を流したいところだが、その前に食事処がラストーオーダーになる前に軽く夜食を摂ることにする。

 まずはドリンクとして冷やし飴を頂く。やっぱりへばった時のドリンクとしてはこれが一番である。

冷やし飴でくつろぐ

 で、夜食は醤油ラーメン。まあ最初から期待はしてないのでこんなものというところか。内容的にはドーミー夜鳴きそばの量を増やして具を入れたという雰囲気。こういうものを食べると、つくづくドーミー夜鳴きそばはよくできたサービスだと再認識。しかし貧困化が進む現状、インバウンド目当てで高級化が進むドーミーに今後と宿泊出来ることがあるのだろうか・・・。

夜食ラーメン

 夜食を終えると入浴。どうやら以前には3階の更衣室から降りていく螺旋階段があった場所に更衣室を移した模様。まあ空間としては完全に無駄な空間になっていたから、効率的レイアウトというところか。風呂自体は以前と変わっておらず、ラドン泉の湯も以前と変わらない。ややネッチョリと体にまとわりつく湯の中でゆったりとくつろいで、今日の疲れをいやす。ここのところ精神的にかなり限界に近い日常を送っているので、こういう癒しは大事である。

 入浴してくつろぐと、部屋に戻ってPCのセッティングなどをするが、それだけで力尽きて原稿が頭に浮かぶ状態じゃない。仕方ないのでタブレットを自宅のレコーダーにリモート接続してみると、Wi-Fiの速度が速いのが幸いして問題なくつながるので、録画していた昨晩のアニメを数本見ている内に眠気が押し寄せてくるので、さっさと就寝する。

 

 

この遠征の翌日の記事

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京都の美術館で東山魁夷、甲斐庄楠音らの絵画を見てから、京都市響のアクセルロッドファイナルへ

京都日帰り遠征実施

 この週末は京都まで遠征することとなった。目的は京都市交響楽団。今回はアクセルロッドの首席客演指揮者としてのラストとなる。今まで数々の名演を残してくれたアクセルロッドのラストとなればやはり聞いておきたいということで、京都まで足を伸ばすことにした。ただ京都まで遠征するとなると、やはりついでの行事を盛り込んでおきたい。当然のようにそれは美術館訪問。現在福田美術館で「日本画革命」が開催中、さらに京都国立近代美術館で「甲斐庄楠音の全貌展」が開催中であるので、この2つぐらいは押さえておきたい。なお伊勢丹でミュシャ展が開催されているが、京都駅はアクセスが悪い(車で行く場合)ことから、まあこれは諦めることにする。

 コンサートが14時半からとやや早めに始まることから、福田美術館に開館の10時直後に到着することを目指す。そのために家を出たのは午前の早い内、途中で朝食を摂ると高速を嵐山目指して突っ走る。嵐山手前で渋滞に出くわして、若干の遅れが出るが、それでも嵐山には10時少し過ぎぐらいで到着する。目をつけていた駐車場には空きがなかったので周辺の駐車場を探す。美術館から結構離れたところに安い駐車場を発見、まあ運動不足だし少し運動することにするか。

桂川べりをプラプラと歩く

 美術館へは徒歩で10分程度。面倒な距離ではある。美術館周辺は相変わらず観光客がゾロゾロ。なんかこんなのでコロナは本当に大丈夫なのか?

10分ほどで福田美術館に到着

 

 

「日本画革命 ~魁夷・又造ら近代日本画の旗手」福田美術館で4/9まで

 近代日本画壇に革命を起こした画家たちを紹介とのことである。まず第1展示室の方はお約束とも言える横山大観と菱田春草が展示されている。

横山大観「東山烟雨」

菱田春草「蓬莱山図」

菱田春草「群鷺之図」

大観と春草の競作による「飛泉」

 

 

 さらに小林古径、さらにこれも絶対外せない川合玉堂など。

小林古径「鴨」

川合玉堂「瀑布」

川合玉堂「三保・富士」

 京都画壇からは山口華楊、徳岡神泉などが展示されている。

山口華楊「待春」

徳岡神泉「池」

 

 

 第2展示室では「魁夷・又造、2人の山」と銘打って東山魁夷と加山又造の作品を展示。国民画家とまで言われた魁夷の美しい作品とインパクの強い又造の作品を堪能できる。

東山魁夷「緑岡」

東山魁夷「秋深」

東山魁夷「月映」

東山魁夷「山峡朝霧」

東山魁夷「緑の朝」

 

 

加山又造「日輪」

加山又造「紅白梅」

加山又造「鶉」

加山又造「雪ノ朝」

 最後の第3展示室では、青の魁夷に対して赤の元宋の奥田元宋や小野竹喬といった辺りが登場する。

小野竹喬「四季屏風」

 全体的に私の好きなところが多い展覧会であり、なかなかに見応えがあって堪能できた。わざわざ出張ってきた価値ありである。

次回展は橋本関雪らしい

 展覧会の鑑賞を終えるとプラプラと駐車場まで戻ってくる。時間は昼前。やはり次の美術館でギリギリだろう。車を急がせるが、京都の西の端から東の端まで走るような形になるから、距離もあるし混雑もしていて予想よりも時間を要する。ようやく昼頃に美術館に到着すると駐車場に車を放り込む。

 先ほどの福田美術館もなかなか良かったのだが、そもそも展覧会の主目的としてはこちらの方がメインである。1度見たら脳裏に焼き付くような強烈なインパクトのある甲斐庄楠音の展覧会となる。

 

 

「甲斐荘楠音の全貌―絵画、演劇、映画を越境する個性」京都国立近代美術館で4/9まで

京都市現代美術館

 甲斐庄楠音はまさに大正デカダンスを象徴する画家として話題となる。なおこの時に同時に話題になったのが、これまたデロリとした独得の画風の岡本神草だったという辺りが何となくこの時代の空気を伝える。

看板になっている作品は彼の作品では「綺麗」な方の絵

 彼の作品の特徴は美醜を越えたかのようなその強烈な画風。官能的と表現されることもあるが、肉感的というか何やらモデルの体臭まで感じさせるような濃厚なところがあり、グロテスクという表現さえピッタリくるようなところがある。土田麦僊が「穢い絵」と酷評したという話も残っているが、そういう解釈も理解できる。

Amazonでの画集、ここまで来ると半分以上グロい

 なお彼自身は演劇などの方にも関心が深かったようで、優男である彼自身が女形に扮した写真なども残っている。

甲斐庄楠音、明らかに優男である

 その作品のインパクトの割には今日あまり名前が残っていないのは、その後に彼自身が活動の場を映画の風俗考証に移したことによるという。展示の後半は彼の手がけた映画衣装などの展示となっているが、代表作は市川右太衛門の「旗本退屈男」シリーズの豪華で派手な衣装である。これに対して「丹下左膳」となると地味だがインパクトの強い衣装など、作品に合わせてデザインしているのが良く分かる。

 このコーナーでは往年の市川右太衛門や片岡千恵蔵などといった辺りから若き大川橋蔵、さらには若き中村錦之助(後の萬屋錦之介)、北大路欣也といった大スター揃い踏みで、別の意味で感慨深かったりする。

 甲斐庄楠音についてはその強烈なインパクトから記憶に焼き付いている(岡本神草とペアになっているが)が、その割にはどういう画家だったかということは私はよく知らなかった。そういう意味では彼の人となりやその生涯を知れたことはなかなかに興味深かった。

 

 

 大体これで美術館の方の目的は終わったが、既に1時前になっていて時間に余裕がない。とりあえずホールの方へ急ぐことにする。akippaで確保した駐車場はここからそう遠くはないので直ちに移動して車を置くと、とりあえず急いで昼食。気分的には「東洋亭」に行きたかったのだが、回転の遅い店で順番を待っている時間的余裕がないので、比較的すぐに入れそうだった「そば料理よしむら北山楼」に入店する。正直なところそばの気分ではなかったのだが、贅沢を言っている場合ではなかったのでそばのセットを頼んでこれが今日の昼食となる。

そば料理よしむら北山楼

そばのセットを頂く

 昼食を終えるともう既に開場時刻になっているのでホールへ急ぐ。客は結構来ていて場内は8割~9割の入りというところだろうか。

ホールへ

 

 

京都市交響楽団第676回定期演奏会

大編成用のセッティング

ジョン・アクセルロッド (首席客演指揮者)
三浦 文彰(ヴァイオリン)

ガーシュウィン:パリのアメリカ人
コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」

 メインである「春の祭典」に合わせてか、今回の京都市響は金管大幅増量の上に16型という大型編成となっている。

 最初のパリのアメリカ人はガーシュウィンによるユーモラスでウィットに富む曲なのであるが、大型オケの威力でユーモラスと言うよりはバリバリといったという印象のかなり派手目の演奏でもある。それでも随所にガーシュウィンらしい茶目っ気と官能性は一応こめられている。

 二曲目はオケの編成を一回り減らしてのコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲。この曲はやや甘めの曲調なのであるが、三浦の演奏は以前よりややソリッド感が強いところがあるので、その辺りがこの曲調とはどうだろうというところがなきにしもあらず。極端に甘々にならないバランスとも言えるのではあるが。

 最後は大編成のパワーを活かしての「春の祭典」。ただアクセルロッドは単純にパワーを活かしてブイブイといった単純な演奏はしない。メリハリはかなりハッキリとつけてあるのだが、パワーでぶっ飛ばす一辺倒ではない強弱の変化に配慮した意外に細かいところに気をつけた演奏でもある。その辺りはさすが。

 もっともここ一番になると大編成オケのパワーをこれでもかとばかりに発揮してきたのは事実。特にドンガンと激しい唸りを上げる大太鼓に、つんざくような金管の咆哮はかなりの大迫力であり、そういう点でもかなり堪能できる演奏となったのは事実である。

 アクセルロッド首席客演指揮者としての最後を飾るまずまずの演奏になったという感がある。まあ今後もアクセルロッドは完全に切れるというわけではないだろうから、時折は客演で名演奏を聴かせて欲しいところである。


 これで今回の遠征は終了、夕方の渋滞の京都を帰路につくのであるが、毎度のことながらこれはかなり疲れる行程なのに、今回は京都日帰りという力技になってしまったので、自宅にたどり着いた頃には疲労困憊して何をする気力もないままに早めにバタンキューとなってしまったのである。さすがに若い頃と違って京都日帰りはキツいか。

 

 

国立博物館の「加耶」展を見学してから、アクロスでポリャンスキー/九響の名演を堪能する

今朝は早朝出発

 その晩はかなりグッタリと寝てしまっていて、朝の6時半に目覚ましで起床する。さて今日の予定だが、今日の九州交響楽団のコンサートは午後2時からアクロス福岡で。だから当初の予定では昼頃までここでグダグダするつもりだったんだが、さすがに福岡くんだりまで遠征してそれだとあまりに情けなさすぎるということで、その後の調査で九州国立博物館で「加耶」展が開催されているとのことから、それを見学することにする。九州国立博物館が開館するのが9時半、大体その頃には向こうに到着したいと考えたら、こちらを8時15分のバスで天神に向かった方が良さそう。というわけで今朝は6時半という最近の遠征ではあまりやらない早朝起床にした次第(最近は8時近くまで寝ていることが多い)

 時間に余裕がないのでさっさと行動する必要がある。まだ眠気がある上にあちこちに痛みも残っている身体にむち打って、まずは朝食へ。朝食はバイキング形式だが、正直なところ品数もいまひとつだし、内容も出来合感が強い。ホテルとして考えた時のここの難点は、このイマイチの朝食と部屋に冷蔵庫がないこと。さすがに万葉倶楽部は風呂は整っているのだが、料金とその他を照らし合わせると選択が難しいところ。長時間待機するつもりだったらアドバンテージがあるのだが、今回のように夜にやってきて翌朝早朝出発だったらメリットは薄くなる。

残念ながら朝食はイマイチである

 朝食で腹を満たすと朝風呂に出向く。とりあえず鈍りきっている体にこれで活を入れておく。体が温まってきたことでようやく少し動けるようになってきた。そうなったところで荷物をまとめると8時頃にはチェックアウト手続きを済ませる。

 シャトルバスで天神までは20分ほど。天神のバス停は市役所の前で、ちょうと斜め向かいアクロス福岡が見える。

バス停からはアクロス福岡が見える

 

 

西鉄で太宰府に移動

 まずは邪魔なキャリーは帰りの動線を考えて地下鉄天神駅近くのコインロッカーに入れ、身軽になって西鉄福岡駅を目指す。西鉄に乗るのは何年ぶりだろうか。以前に全国鉄道乗りつぶしをやっていた頃にここに来たことはあるが、ボンヤリとした印象しかもう残っていない。西鉄福岡駅はいかにもターミナルという印象で、線路数は少ないが阪急梅田駅を連想させる構造である。

西鉄福岡駅は2階にある

関西人の私としては阪急梅田を連想する

 ここから大牟田行き特急に乗り込んで西鉄二日市を目指す。クロスシートの特急車はやはりイメージとしては阪急に近い。

特急列車が到着

何となく阪急京都線特急を連想させる車内

 特急は高架をぶっ飛ばし、途中で地上に降りたりなどしながら二日市に到着、ここで太宰府線に乗り換え、到着した太宰府駅はいかにも観光路線の終着ターミナル駅ということで、構造といい雰囲気といい阪急嵐山駅を連想させるもの。何となく非常に馴染みがあるような印象を受ける。

二日市で乗り換えると二駅で太宰府到着

太宰府駅

 

 

太宰府参道筋をプラプラする

 まだ比較的朝早い時間帯にもかかわらず観光客が多いのに驚く。途中でやはり太宰府といえば名物の梅ヶ枝餅を買い求め、それを頂きながら太宰府の参道筋をプラプラする。甘い焼きあん餅が実に心地よい。

太宰府名物梅ヶ枝餅を頂く

参道筋は早朝から観光客が多い

 太宰府には大勢の観光客が押しかけている。耳を澄ませるとどうやら観光客のかなりの部分が中国人である印象。そのせいか自撮り棒を振り回している輩も。鳥居をくぐって参道の太鼓橋を越えると正面が太宰府の本殿だが、私が目指すのは博物館なのでそこを右折。

参道の太鼓橋を越える

梅が咲いている

正面が本殿だが私はここで右折

 

 

 博物館は太宰府南の丘の上にあるので、ここから虹のトンネルを抜けることになる。ここを通るのは初めてではないのだが、こんなに高いエスカレーターを登るということは完全に忘れており、ひたすら長い動く歩道を抜けたというように記憶が書き換わっていた。実際は2段構成の高いエスカレーターを登ってから動く歩道だった。

これが虹のトンネル

いきなりかなり高いエスカレーターを登る

登り切った先が長い動く歩道

 歩道を抜けると目の前に巨大なガラス張りの建物が見えてくるが、これが九州国立博物館。国立博物館といえば、東京、京都、奈良にあるが、ここは一番新しいだけに建物も一番近代的である。

実に巨大な博物館の建物

内部は巨大な吹き抜け

 

 

特別展「加耶」 九州国立博物館で3/19まで

「加耶」展会場

 加耶とは3世紀から6世紀頃に朝鮮半島南部に存在した金官加耶、阿羅加耶、小加耶、大加耶などの国々の総称である。加耶は鉄を産することと倭国との交易などで栄えたが、やがて新羅と百済による圧迫を受け、532年に金官加耶が新羅に服属すると、562年に分裂して力の弱まった大加耶が新羅に服属することになり、ここで加耶は消滅する。その加耶の最近の発掘の成果に基づく出土品などを展示した展覧会である。

加耶の地図

 最初は鉄の産地であった加耶らしい鉄製の武具や鎧などが展示されている。

出土した鉄器類

鉄製の鎧

 鉄器だけでなく須恵器などの陶器も出土しているようで、文化のレベルは高かったことが覗える。

土器や鏡なども出土している

 剣の類いも多く出土していて、出雲などで大量に出土している銅剣と類似しているものも出土している。

見たことのあるような銅剣も出土

これは装飾品のようである

 装飾を施した鉄の矛なども発見されていることから、実用はやはり鉄剣だと思われることを考えると、これらの銅剣は儀式用か何かだろうか。確かに無粋な鉄剣よりは、金ピカに輝く銅剣の方がいかにも儀式的には派手で見栄えが良いが。

鉄製の大刀

柄頭には龍と鳳凰が刻まれている

 

 

 倭を始めとする東南アジア広域との交易で栄えた加耶には、倭人も移住していたと考えられるという。また倭国に渡来人の形で訪れている加耶の人々もいて、その姿も伝えられている。

渡来人埴輪

埋葬されていた女性の飾り物

船をかたどった埴輪

 また当時の倭国に牛馬はいなかったと記録にあり、それらを持ち込んだのも渡来人だったという。馬は軍事用に重宝され、権力者は名馬を豪華に飾ったようである。

埴輪牧場

名馬はこのように飾った

 日本と朝鮮半島の深い関わりを示す発掘品が多いのだが、この辺りの歴史は未だに諸説あり(あのアホな戦争の悪影響がまだ残っている)、未だに不明な点も多々あるようであるが、今後さらなる発掘調査で歴史的事実が明らかになることを願うのみである。

 

 

 特別展の鑑賞後は上の階の常設展の方も覗くが、とにかく会場が広い上に足の方が既に終わりかかっていて集中力も続かないということでザッと一回りするだけで終わり。丹念に見学していったら実に見応えのある逸品ぞろいだが、残念ながら時間よりも集中力が完全に底を突いている。

「縄文は爆発だ」の火焔型土器

国宝「三角縁神獣鏡」

伊万里焼きの名品

 

 

太宰府に立ち寄ってから戻る

 博物館の見学を終えると11時頃だった。とりあえず引き返す途中で太宰府天満宮に立ち寄って宝物殿を覗く。

太宰府の宝物殿

 宝物庫では太宰府ゆかりの名品の展示に合わせて、神戸智行展を開催中で大判の自然を描いた作品を数点展示。琳派的な装飾性を持ちながら、それでいて画面に独得の奥行き感があるという独得の静謐な絵画。しーんという音が聞こえるような静けさはかなり独自性の高い風情である。

宝物殿では太宰府ゆかりの名品を展示

 宝物殿の見学後は本殿に立ち寄ろうとするが、ご本殿が改修中で仮殿を建設するとかの工事中の模様で、今は本殿の写真の前で拝むしか仕方ないよう。手早く参拝だけを済ませておく。今更私は受験はないが、この年になって新たな技術を学習して習得することを迫られているので、その習得が上手く行くように祈っておく。どうも一生いわゆる学問と離れることはなさそうである。ついでにおみくじを引いたみたら、見事に大吉で満願成就とのことだが、本当だろうか?

 太宰府の見学を終えると観光客でごった返している参道筋を太宰府駅まで。当初予定ではここらのどこかで昼食を摂ることも考えていたが、とても店に立ち寄るという気にならないので天神まで引き返してから昼食を摂ることにする。

帰りの参道筋はとんでもないことに

 

 

昼食は天神地下で

 30分ほどで天神まで引き返してくると、昼食を摂る店を探して地下をウロウロ。飲食店街の地下2階をうろついたがどこも行列、そんな時に「かつ心」が入店できそうだったので飛び込む。

地下の「かつ心」

 注文したのは「カツ丼(1100円)」。いかにもとんかつ屋のカツ丼らしく、分厚いロースカツの入ったカツ丼。まあ特に可もなく不可もなくといったところで普通に美味い。場所柄やや価格は高めに感じるが、まあ悪くはない。

カツ丼はまずまず

 昼食を終えると何だかんだで1時前ぐらいになっていた。地下伝いでアクロス福岡に向かうことにする。ホールに到着したのはちょうど開場の数分前。1時を2分ほど過ぎたところで開場になり、ゾロゾロと入場する。

アクロスは開場直前

 昨年改装なったホールは綺麗である。自分の席に着いてしばしボンヤリとしていたら疲れがドッと押し寄せて眠くなる。そこで開演までしばし意識を失う。次に気がついたのは隣の席が来てゴソゴソ始めた時で、開演10分前になっていた。まだ完全に頭がスッキリしたわけではないが、目を覚ましてコンサートに挑む。

ポリャンスキー&小山実稚恵

 

 

第32回名曲・午後のオーケストラ 巨匠ポリャンスキー 魅惑のシェエラザード

改装なったアクロス福岡は綺麗

指揮 ヴァレリー・ポリャンスキー
ピアノ 小山 実稚恵

ベートーヴェン/ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 作品73「皇帝」
リムスキー=コルサコフ/交響組曲「シェエラザード」 作品35

 小山実稚恵のピアノソロは相変わらずかなりタッチの強い硬質な演奏である。これがベートーヴェンの4番であればここまで強い演奏では違和感が出るのであるが、こと5番となればこの小山の荒々しいタッチでも問題なくマッチする。まさに堂々たる皇帝という雰囲気になる。

 これに対してバックのポリャンスキーは、小山の硬質の音色を受け止めるかのように、やや柔らかめの音を出してくる。この辺りが単にパワー全開にバリバリだけでないポリャンスキーの柔軟性である。結果としてオケとピアノが絡み合っての見事な皇帝と相成ったのである。

 満場の喝采を受けての小山のアンコールは定番の「エリーゼのために」。さすがに小山も硬質一辺倒ではないですよとばかりに女性らしい軟らかいタッチを披露するのだが、それで随所に妙な力強さがあるのが彼女らしいとも言える。

 後半はいよいよポリャンスキーが本領発揮となるのだが、もう冒頭の金管の咆哮を聴いただけでも「おっ、来た!!」と言いたくなるような演奏。まさにポリャンスキー節である。ただ残念ながら九響の技倆の限界があり、腰砕けになりかねないギリギリの危うさを感じさせる。

 ポリャンスキーの演奏の真骨頂はそのピンと張りつめた緊張感なのであるが、それを醸し出しているのが実に徹底したピアニッシモの表現である。ただ残念ながらポリャンスキーの手勢のロシア国立交響楽団と違って、九響の場合はどうしてもその部分が若干甘めになる。そのせいで緊張感が張りつめるというところまではいかない。もう少し緩めであるが陽性な演奏となる。まあこの辺りは九響のカラーでもあるんだろう。まさにフォルテッシモはガンガンと行くという印象。

 リムスキー=コルサコフの極彩色のオーケストレーションが冴え渡るのがこの曲なのであるが、それをまさに原色でぶちまけてくる演奏であり、華やかでありながら決して虚仮威しの底の浅いものではなく、心の底にまでグイグイと迫ってくる演奏。この辺りはさすがにポリャンスキー、なかなかに巧みである。九響の限界ギリギリの表現力を引き出していることが感じられる。

 壮絶にして美麗というシェエラザードに場内は大盛り上がり。それに応えてのアンコールはチャイコフスキーの「四季」より「秋」。これは以前の公演でも演奏した記憶があるが、とにかくメロメロのメロドラマで甘美の極み。厳ついオッサンから飛び出す予想外の超ロマンティック演奏である。これで場内は再度盛り上がり。


 ここまで聴いたところで、カーテンコールもそこそこにホールを飛び出す。実は帰りの新幹線の切符を既に確保してあり、その時刻がギリギリである。私と似たような状況なのかやはり飛び出している客が数名。慌てて地下2階まで駆け下りると、地下伝いで地下鉄天神駅へ。途中でキャリーをロッカーから回収すると博多駅に移動する。博多駅では完全に方角を見失って迷ったりしたが、何とか帰りの新幹線に間に合ったのである。

 結局は博多とんぼ返りという強行軍になってしまったが、さすがにポリャンスキーは博多にまで出張った甲斐を感じさせる見事な演奏を聴かせてくれた。なお2023年度にもポリャンスキー指揮の九響のコンサートが11/9に開催され、プログラムはラフマニノフのパガニーニの主題による狂詩曲と交響曲第2番ということで興味津々なんだが、開催が木曜日と平日であることから当日午後から翌日まで1日半の休暇を取る必要がありそうだし、この日はちょうど大阪フィルのメンデルスゾーンチクルス(それも私の大好きなスコッチの回)とブッキングすることから、残念ながら次回はパスするしかなさそうである。正直なところ、ポリャンスキーがまたロシア国立交響楽団を率いてやって来てくれないかと思うが、このご時世下ではそれは無理か。私としてはせめて大阪フィル辺りで客演してくれないかと思うところ。フェドセーエフが指揮したら見事にロシアサウンドになった大フィルが、ポリャンスキーの指揮でどのような音を出すのかに興味がある。

 

 

この遠征の前日の記事

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最終日はPACオケの定期演奏会、スダーンのグレイトは実にグレイトだった

遠征も最終日

 翌朝は8時半に起床。朝から体はやや重い。昨日に買い込んでいたパンとおにぎりを腹に入れるととりあえずシャワーで汗を流す。後は部屋でゴロゴロしながらチェックアウトの11時前まで過ごす。原稿執筆も考えたが、疲労が結構来ていて頭が回らない状態なので諦める。

 さて今日の予定だが、15時から兵庫芸文で開催されるPACオケのコンサートに行く以外には何の目的もない。それだとあまりに時間が余る。そう言うわけで西宮市立大谷記念美術館を訪ねることにする。

 駐車場に車を入れようとするといつになく車が多い。何があったんだと思っていたら、どうやら本日は無料開館日だったらしい。今時は美術館の入場料も安くはないのでラッキーである。

 

 

「新収蔵品展」西宮市大谷記念美術館で3/19まで

大谷美術館は無料観覧日だった

 新収蔵品を中心に展示した展覧会。内容は4部構成になっていて、それぞれ全く異なる内容。

 第1部は屏風絵。新収蔵品は18世紀末の西宮出身の絵師・勝部如春斎の「四季草花図・芦雁図」。大作であってかなり勢いの感じる作品だが、個人的には特に強い印象は残らず。

 第2部は今竹七郎のデザイン類。以前からこの美術館のコレクションの中心の1つだが、今回はそこに同時代の竹久夢二などの作品が加わったようだ。今竹七郎のパッケージデザインなどは特徴的で面白く時代を感じるものであるが、面白いで終わるもので特に感心するというほどではない。

 第3部は川村悦子の草木を描いた大作。近くで見ると結構大胆な筆使いに感じられるのだが、遠くから眺めると圧倒されるほどリアルであり、空気感まで感じられるのが驚き。美術館で森林浴と銘打っていたが、確かに何となく湿っぽくてひんやりした空気を感じた。

 第4部は版画類だが、これに関しては残念ながら私の印象に残る作品はなかった。まあこれは元々私が版画にはあまり興味がないことも影響しているが、そもそも現代絵画自体があれなので。

 

 

 美術館をブラリと一周したらそれなりに疲れる。まだ時間にかなり余裕があることだし、少し一服していこうと考える。館内のカフェに立ち寄って「ワッフルセット(1000円-100円)」を注文する。

ワッフルセットを頂く

 温かくてサクサクのワッフルにアイスクリームが合わさると非常に心地よい。コーヒーはやや苦めだが、これと合わせるとバランスが取れる。大谷美術館の庭園を眺めながらしばしマッタリと落ち着いた時を過ごす。

大谷美術館は庭園も売り

 

 

昼食を摂ってからホールへ

 しばしの休息の後に美術館を後にするともう既に昼時を回っている。ホールに行く前にどこかで昼食を摂りたい。以前にも行ったことのある「キッチンキノシタ」を目当てに車で移動するが、店に到着した時には店前の駐車スペースは皆無。やはりこの人気店は週末の昼時の入店は困難か。仕方ないので通過すると他の店を物色。「そば辰」の前を通りかかった時に、ちょうど正面の駐車場が1台分空いているのを見てそこに車を入れる。

そば辰

 ここは結構有名なそば屋とのことで、既に待ち客がいる。名簿を見ると私で3番目のようなのでしばし待つことにする。待ったのは20分弱だが、その間にも続々と客が押し寄せている。なかなかの人気店のようだ。

玄関までのアプローチは風情あり

 ようやく入店するとメニューに目を通すが、セットや定食の類いが名前を書いてあるだけで中身の記述がないのでよく分からない。そこで店員に聞いてみたが、どうも私的にピンとくるものがない。そう言うわけで注文したのは「鴨そば(1980円)」

鴨そば1980円也

 しばし待った後にそばが到着。うん、普通に美味い。しかしあくまで「普通に」である。感動するとか、今まで食べた中で一番とかそういうレベルではない。正直なところこのレベルのそばなら他にもいくらでもある。私の頭の中に浮かんだ妥当な価格はmax1500円というところで、1980円はないわというのが正直な感想。これが1200円以下なら通うだろう。

 

 

 昼食を終えるとホールへ移動する。ホールに到着したのはまだ開場時刻よりも大分前。駐車場に車を入れると開場時刻まで館内の喫茶に立ち寄ることにする。さっき美術館の喫茶でコーヒーを飲んでおり、これ以上のコーヒーは胃をつぶす可能性が高いので、アイスティーを注文してこの原稿入力で時間をつぶす。アイスティーはアールグレイを用いているようでややクセがある。これなら私の場合はオーソドックスにダージリンの方が良い(ダージリンも決して私の好きな茶葉ではないのだが)。

カフェでアイスティーを頂きながら時間をつぶす

 ようやく時間が来たのでホールに入場する。客の入りは8~9割というところか。

大ホール

 

 

PACオケ第139回定期演奏会

最初はハイドン用の小編成配置

指揮:ユベール・スダーン
ピアノ:児玉 麻里

ハイドン:交響曲 第6番「朝」
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第3番
シューベルト:交響曲 第8(9)番「ザ・グレイト」

 最初はハイドンの曲、6型という小編成のPACオケが室内楽的なサウンドを奏でる。スダーンは古典曲をロマンティックに表現する指揮者である。その特徴は最初のハイドンから現れていて、古典的に整然とというよりは、明らかに情緒が加わっている。ハイドンについてはそういう演奏をすればロマン派の曲のように聞こえる場面があるということを最近になって気付いていたが、そのことを改めて再確認させられる。

 二曲目はいきなりオケの演奏はかなりロマンティックに始まるのだが、それに対して児玉のピアノは甘さをあまり感じさせない強いタッチによるもの。14型という通常の協奏曲よりは大編成のPACオケに音量の点でも全く遜色がない。非常に明快で毅然とした演奏という印象。決して硬質一辺倒というわけではないのだが、基本的に鋭角的で力強い演奏。これはこれで全体のバランスは取れている。

 ソリストアンコールは「エリーゼのために」。ここで児玉は甘いタッチを披露するのだが、それでもやはり基本的には強い演奏をするピアニストだということを感じさせる。堂々として安定感は抜群。

 休憩後の後半はザ・グレイト。スダーンのアプローチはやはりかなりロマンティックな方向。生命力溢れる非常に躍動感のある演奏である。この辺りがPACオケの若さと相まって活き活きした音楽になっている。とにかく一貫しているのは演奏が陽性であること。この曲がこんなに明るい曲だったのかと言うことは今回初めて認識した。第二楽章などは演奏によっては哀愁を帯びて聞こえることもあるのだが、スダーンの演奏にはそういう影の部分は微塵もなく、ひたすら美しくて明るい天上の音楽という趣。

 この曲はやや長いので、演奏によっては冗長になってしまってまさに眠気を誘う場合さえあるのであるが、今回の演奏に関してはそういう余地は全くなかった。最初から最後まで夢見心地で心地よいままにクライマックスというところ。改めてこの曲をシューマンが絶賛したという意味が分かったような気も。


 前半部分で1時間を大きく越えた上に、後半が長大なザ・グレイトだったためにコンサート終了まで2時間半近くを要することに。コンサートを終えると慌てて帰宅の途についたのである。

 

 

この遠征の前日の記事

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二日目はピカソ展を見てから大フィルのコンサート、夕食は新今宮の町の洋食屋

今日は大フィルのコンサート

 昨日はホテルに戻ると疲れ切って風呂に入る余裕もないまま寝てしまった。今日は大きな予定はないのでとにかく寝るぞと意を決して、5時頃に中途覚醒しても、7時頃に回りの部屋がガソゴソとうるさくなって起こされても、一切を無視して9時頃まで爆睡。

 ようやく起き出すと昨日の帰りに買い込んでいたサンドイッチを腹に入れ、体がいささかべたつくのでシャワーで汗を流すと、昨日ほとんど何も出来なかった原稿の作成に取りかかる。

 11時を回った頃に部屋を出る。今日はフェスティバルホールで開催される大阪フィルのコンサートだが、その前に国立国際美術館で開催のピカソ展に立ち寄りたい。コインパーキングから車を出すと混雑する大阪の町を北上する。駐車場はホールの近くにアキッパで確保してある。

 車を置くと美術館に向かってプラプラと歩きながら昼食を摂る店を探す。目についたのは「牛煮炊きとおばんざい ちいやん」。どうやら大分料理がメインの居酒屋のようであるが、定食メニューもあってランチなどもあるので飯屋として利用できるようだ。

飯屋としても使える居酒屋という趣

 焼魚定食を注文。今日の焼き魚はさんまだそうな。そう言えば昨年は価格高騰の煽りを受けて、さんまを食べることがなかったような気がする。かなり久方ぶりのさんまはいささか塩っぱい。

今日の焼き魚定食はさんま

 定食メニューは野菜が豊富で美味い。特に具だくさんの味噌汁が美味。自然に野菜も摂れるようになっているなかなかに健康に良さそうなメニューである。これは良い店に当たった。

 昼食を終えると美術館に向かう。考えてみると隣の中之島美術館に来ることは多くなっているが、こちらに来るのはかなり久しぶりのように思う。元々この美術館は現代美術系の美術館なので私とあまり相性が良くないと言うこともあるが。

最近は奥の中之島美術館の方ばかりだった

 

 

「ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展」国立国際美術館で5/21まで

 ベルリン国立ベルクグリューン美術館は、美術商ハインツ・ベルクグリューンのコレクションを基にした美術館であるとのこと。特にピカソの初期から晩年までの作品を所蔵しており、同時代に活躍した、クレー、マティス、ジャコメッティらの作品も収蔵しているとのこと。

 ピカソについては「青の時代」から始まる。

ジャウメ・サバルテスの肖像(1904年)

 次に色彩が明るくなった「薔薇色の時代」となる。

座るアルルカン(1905年)

 そこからいわゆるキュビズムの時代に突入する。ちなみに同時代の作家としてブラックの作品が併せて展示されていたが、そちらは撮影不可。なお作品自体はピカソとかなり類似。

グラス、花束、ギター、瓶のある静物(1919年)

 両大戦間の時代となると新古典主義の時代となり、ピカソの作品はまた変貌する。古典的なカッチリした描き方の作品が多くなってきて、一時期の強烈なキュビズムはやや収まってくる。

座って足を拭く裸婦(1921年)

 

 

 さらに同時代のパウル・クレーの作品も展示されているが、これは私はあまり得意ではないところ。ちなみに一昔前のカメラならピント合わせが混乱しそうな作品がある。

パウル・クレー「夢の都市」

パウル・クレー「植物と窓のある静物」

 さらにここでマティスも登場。一目で誰の作品か分かるぐらい個性があるが、立体作品の場合は意外に普通なのが逆に驚き。

アンリ・マティス「青いポートフォリオ」

彫刻は意外に普通

 さらにいかにもマティスらしい切り紙の作品も登場。鮮やかな色彩を極めたら、油彩よりも最終的にはこっちの方が正解なのかもしれない。カラリストであるマティスの神髄とも言える。

雑誌「ヴェルヴ」の表紙図案

 

 

 さらにジャコメッティの彫刻も登場、いわゆる「針金人間」という奴だが、これもあまり私の好みではない。

ジャコメッティ「広場II」

ジャコメッティ「ヤナイハラI」

 そしてピカソの最晩年のかなりカラフルな作品が登場して終わりである。

ピカソ「闘牛士と裸婦」

ピカソ「男と女」

 個人コレクションを元にした美術館とのことだが、収蔵品のメインが本展出展作品なのか、膨大なコレクションの中から特定の画家の作品だけチョイスしたのかは定かではないのだが、前者だとしたらかなり明確なポリシーを持ったコレクションであると言える。

 ピカソと言えば、その長い生涯の中でとにかく変化の激しい画家であるのだが、その変化の様を一望することができてなかなかに興味深いところである。晩年辺りになるとかなり芸術が爆発しており、激しい色彩には先に訪問した岡本太郎を連想した次第。


 美術館の見学を終えるとフェスティバルホールへ向かう。まだ開演時間まで余裕があるので、実のところは喫茶店にでも立ち寄りたいのだが、この周辺にはとにかくあまり良い店がない(あってもやたらに価格の高い店ばかり)。そもそもこの界隈はオフィス街なので、週末になると閉めている店が多いし。結局は開場直後ぐらいに入場して、ホール内でぼんやりと開演待ちをすることに。なお客の入りは1階を見る限りでは9割方というところ。

 

 

大阪フィルハーモニー交響楽団 第565回定期演奏会

ステージ上は管楽器用のセッティング

指揮/デイヴィッド・レイランド

曲目/ストラヴィンスキー:管楽器のための交響曲
   モーツァルト:交響曲 第40番 ト短調 K.550
   リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」作品35

 最初はステージ上には管楽器だけが並んでいる状態で、そこにレイランドが入場してきて開始である。いわゆるブラスバンド曲というイメージとは少々異なり、現代寄り音楽を管楽器だけで演奏しているという印象。なかなかに取り留めがなく、ストラヴィンスキーのもっと後の曲のようなシンプルさがない。正直なところ私にはつかみ所がない。

 一曲目が終えるとゾロゾロと弦楽陣が入ってきて10型編成になる。レイランドのアプローチはピリオドでやや早めのテンポ。ところどころアクセントを付けたエッジの効いている演奏ではあるが、全体としてはいかにも古典派モーツァルトという趣の淡々としてあっさりした印象の演奏である。モーツァルトであまり大仰に感情を込めるのは賛否のあるところだが、私的にはいささか物足りなさを感じさせるところがある。

 休憩後の後半になると、16型にオケを拡大してのシェエラザードになる。しかしこの演奏は先のモーツァルトと全く印象が一変する。エッジの立った演奏であるのは相変わらずだが、溜なども加えた非常に濃厚でコッテリした演奏である。さらにコンマスの崔氏のヴァイオリンソロが甘美極まりなく、なかなかに魅惑的なシェエラザードの表現となっている。

 金管を中心に管楽陣がバリバリと来るんだが、それが荒々しくも色っぽい。リムスキー=コルサコフによる名人芸的なオーケストレーションが、さらにより明快な色彩を帯びて一大絵巻として繰り広げられるという印象。アラビアンナイトの物語が眼前で展開するような錯覚をも抱いた。それもハリウッドの最先端SFXを駆使した大冒険活劇(の一方でメロメロのドラマも展開される)である。

 ピリオドを使用したあっさり風味のモーツァルトと対照的なコッテリ演奏には驚かされた次第。なかなかに興味深い指揮者である。それにしても大阪フィルの音色も多彩さを持ち始めたな。

 

 

夕食は町の洋食店で

 コンサートを終えるとホテルに戻ってくる。駐車場は幸いにしてホテルの近くで簡単に見つかる。車を置くとホテルに入る前に夕食を摂ることにする。新世界まで出向くのもしんどいし、串カツを食いたい気分でないしということで新今宮界隈をウロウロ、「南自由軒」なる洋食店を見つけたので入店する。「町の洋食店」と看板にあるが、典型的な「箸で食べる洋食屋」である。概して古い町のこういうタイプの店は侮れないというのが経験則。

南自由軒

 注文したのは「ビーフシチュー(1020円)」。ここの店は牛肉を使用したオムライスが有名なようだが、今日は気分的にこっちを選択。ただ出てきた料理自体はシチューというよりは、薄切り肉のソース煮込みという趣で予測と違った。しかし肉は柔らかくてなかなかに美味い。総じて味付けが巧み。ちなみに付け合わせのサラダにスープ(というにはとろろ昆布入りの奇妙なものだが)もなかなかに美味い。さすがに生活者の町、新今宮。飲食店も侮りがたいところが多い。

ビーフシチュー

 夕食を終えるとホテルに戻ると、またもグッタリ。しかし昨日は風呂に入ることもなく寝てしまったので、今日は入浴だけはとにかく済ませることにする。大浴場でゆったりと体を温めると少し体調が良くなってくるので、今朝に書きかけていた昨日の原稿を仕上げてアップする。それが終わった頃には眠気が押し寄せてきたので就寝する。

 

 

この遠征の翌日の記事

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この遠征の前日の記事

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久石譲指揮の日本センチュリー交響楽団定期演奏会with九州交響楽団

この週末はコンサート三連荘だ

 この週末には大阪方面にコンサートに出かけることにした。まず初日はザ・シンフォニーホールで開催される久石譲指揮による日本センチュリーのコンサート。

 金曜日の仕事を早めに終えてから職場を出る。今日はいつもより早めに出発することにする。というのも今回も新今宮で宿泊の予定だが、今回はホテルの駐車場が満車で確保できなかったから。周辺のコイン駐車場を確保するしかないが、いざ夜更けに到着してから駐車場が空いてなかったら悲惨なので、先に駐車場を確保して車を置いてからホールにJRで向かうつもり。

 それにしても毎度のことながら阪神高速の渋滞は慢性的である。昼であろうが夜であろうが常識的な時間帯にこの道路がスムーズに流れることはない。途中で何度も渋滞に引っかかって予定していたよりも時間を要して新今宮に到着する。

 今回宿泊するのはホテルみかど。最近はホテル中央オアシスの方が利用頻度が多かったが、今回はオアシスが満室だったのでこちらを使用。風呂トイレ共同の代わりに宿泊料がさらに安いホテルである。幸いにして駐車場は近くにすぐ見つかる。

新今宮のホテルみかど

 部屋はいつものシンプルなもの。例によって過不足のないところである。部屋に到着するとまずは仕事環境を構築。このホテルの難点は「高速Wi-Fi装備」と謳いながら、実際のところはネットが極めて遅いこと。元回線はそこそこのものにしていても、利用者が多いんだろうか。

例によって部屋はシンプルそのもの

まずは仕事環境構築

 部屋で一息ついたところでホールに向かうことにする。この時間帯の環状線は結構混雑している。どうやら既に日本ではコロナはなかったことにされているようである。

 

 

いざホールへと

 福島に到着したのは6時半ごろ。時間に余裕がないのだが何か腹に入れておきたいところである。途中で「やまがそば」を覗いたら客がほとんどいなかったので駆け込む。注文したのはいつものそばセットでなくて、時短メニューで「そば定食(750円)」

今回は速度重視でそば定食

 そばは6分で到着、それを6分でかき込む。長年のサラリーマン生活で培われてしまった早食いスキルの発動である(体にはめちゃ悪い)。15分もかけずに店を飛び出すとホールに向かって小走りで移動。もうすぐ開演だが、それでもホールに向かう人影は結構多い。

ホールに向かう人もまだ多い

 久石譲人気か、ホール内は満員御礼で補助席まで出ている状況。今回は九州交響楽団との合同演奏会ということで、ステージには大量の椅子が並んでいる。今回は16型の5~6管編成という超巨大編成となっている。

ステージ上は椅子で一杯

 

 

日本センチュリー交響楽団 第270回定期演奏会

[指揮]久石 譲
[管弦楽]日本センチュリー交響楽団
[合同演奏]九州交響楽団

久石譲:Metaphysica(交響曲 第3番)
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」
マルケス:Danzon 第2番

 一曲目は久石譲の交響曲。現代音楽的な不可解さは持っていてメロディラインが不明確なので、ややゴチャゴチャした感じはあるが、比較的聞きやすいタイプの音楽である。なお元々巨大編成用の曲のようで、久石によると「マーラーの巨人と同じ」ということらしい。曲自体も30分ちょっとなので、巨人と二本立てでというのを意識したという。

 演奏はとにかく16型という巨大編成のパワーを生かしてブイブイと盛大に演奏するという印象。ただどうしても急増巨大編成ということもあってか、アンサンブルに関しては完全に一糸乱れぬとまではいかないところもある。とは言うものの、崩れてガチャガチャということではない。これより小さい編成の単独オケでもアンサンブルがもっと悲惨なところはいくらでもある。第二楽章などは久石らしい抒情性を感じさせる音楽もあり、そういうところは美しさも感じさせる。

 休憩をはさんでの後半は巨人ならぬ「春の祭典」。この曲になると超巨大編成の増量管楽陣が牙をむいてくるという感じ。もっとも久石の指揮はそこのところは野生むき出しという印象ではなくてやや丸めている感じはある。個人的好みとしてはもっと野生むき出しの野蛮な緊迫感のある音楽でも良かったのではという気がする。

 ここから気分を変えて、次の曲はメキシコの現代音楽家のマルケスによるダンス曲。現代音楽と言われるとどうしても肩に力が入ってしまうが、そういう構える曲ではなく、普通にラテン情緒に満ちたダンス音楽である。エキゾチックでウィットに満ちており、久石指揮のセンチュリーにとってはこういう曲が一番相性が良いように感じられる。非常に魅力的な演奏であった。

 この曲で場内は結構な盛り上がりとなった。やっぱり久石とセンチュリーの組み合わせはバリバリクラシックよりも、ポップスオケとしての性格の方が強くなるようである。満場の歓呼に応えてのアンコールは、まあジブリ系が来るのは予想通りだが、これは私にも一発で分かる「トトロ」。茶目っ気に満ちた魅力的な演奏で、誤解を恐れずに言えば、今回のコンサートではこの曲が一番良い演奏だったのではという気がする。

 

 

この遠征の翌日の記事

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イオン明石まで映画を見に行く

1000円で映画を見よう

 この週末は映画を見に行くことにした。向かうはイオン明石店。以前にも言ったように、イオンのミニオンズカードを作成しているので映画を1000円で見ることが出来る。実のところこの効果は大きい。1800円と言われるとわざわざ出かけて見に行くことを躊躇うが、1000円だったら「まあとりあえず見てみようか」という気になる。どうせ劇場ガラガラで上映しても経費はさして変わらないのだから、イオンもなかなか上手いビジネスをしている。

映画が1000円で見られる魔法のカードである

 私の見る映画は「金の国水の国」。以前に見に行った「かがみの孤城」と同様に映画館で予告を見て気になっていた映画だ。封切りは先週だったが、概ね好評な模様なので見に行くことにした。ただ上映開始2週目ということで、一番行きやすい昼時間帯上映はなく、早朝か夕方以降になっているので、夕方の上映に駆けつけることにする。

 

 

昼食はレストラン街のラーメン屋で

 駐車場に車を置くとまずはかなり遅めの昼食を摂ることにする。シネマの隣の棟のレストラン街をウロウロ。最近は食欲がかなり落ち気味のこともあってラーメンでも食べることにする。入店したのは「熟成醬油ラーメン十二分屋」。注文したのは「特製貝出汁ラーメンコハク+炒飯」

ラーメン十二分屋

 最初に炒飯が出てくるが、パッサリと火の通った炒飯で味はややこげ目。味付けとしては悪くないが、やや私には脂が合わない気がする。それになりよりも、思っていたよりもかなり量が多い。今の私の体調から考えると完食はまず無理である。

意外と量のある炒飯

 次にラーメンが到着。特製とあるのは肉と煮卵の全部乗せの意味。煮卵はまあ出来合だが、肉は柔らかくてなかなか美味い。とは言うものの、今の私の体調では正直なところ少々もたれる。スープは確かに貝の出汁は感じるが、「而今」のあさりそばほど濃厚な感じではなく、醤油系ラーメンのコク付けという印象。思いの外、あっさり系のラーメンであるが悪くない。

貝出汁ラーメン

麺は普通か

 ラーメンはまずまず、炒飯は悪くはないのだが今は体調に合わずである。もし次にまた来る時があれば、貝出汁ラーメンの麺増量という辺りが妥当なところだろうか。

 

 

 とりあえず遅めの昼食を終えるとシネマ棟に移動すると6階の劇場へ。劇場は人でごった返しているが、どうやら大半の客の目当ては「鬼滅の刃」の模様。私が見に行った「金の国水の国」は観客は10人ちょっとといういささか寂しいもの。まあコロナ蔓延下での映画鑑賞としては安全条件である。

イオンシネマ明石は結構混雑

 映画は2時間ほど。細かい解説はここでなくて他のブログの方に掲載することとする。

  映画についての解説はこちら↓に記載しました

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 ザッとした感想を言えば、久しぶりに良い映画を見たというところか。何か心が温まるというか、救われる映画でもある。正直なところ途中で感動で涙が出た(ガン泣きではなく、スッと涙が一筋流れた)。どうも年を取ると涙もろくなっていけない。

 映画の鑑賞を終えると真っ暗になった中を家路へとついたのである。

 

 

遠征最終日は京都市響の定期演奏会で鈴木優人のロシアもの

昼食は久しぶりに東山の「東洋亭」で

 翌朝は7時半まで爆睡。やはり体にだるさは残っている。そこで眠気覚ましに熱めの風呂に入浴すると、タブレットをリモート接続で昨夜のアニメのチェック。

 チェックアウトは10時前。さて今日の予定であるが京都コンサートホールでの京都市交響楽団の定期演奏会。昨日朝食を買い込むのを忘れたせいで朝食抜きになってしまっているから、空腹を抱えたまま京都まで直行することになる。

 京都に到着したのは11時過ぎ。アキッパで確保した駐車場に車を入れると、まずは朝食兼の昼食を摂りたい。近くに「東洋亭」があるので覗いてみると、時間が昼食よりもやや早いためかいつもの大行列がないので、早速整理券を発行、5分ほどの待ち時間で入店できる。

東洋亭、12時に店を出る時には行列が

 さて何を注文するかだが、毎度毎度ビフカツばかりも芸がないので、今回は変化球で有頭海老フライのランチセットを注文することにする。

 コースメニューなのでまずはトマトサラダという名の「まるごとトマト」から。しかし毎度の事ながら、このトマトがなぜか美味い謎トマトで、トマト嫌いの私が丸ごと食えるんだよな・・・。

謎の美味さがある丸ごとトマト

 次のマッシュルームのスープだそうだが、食べた感じでは何のスープがイマイチ分からんと言うのが本音。まずまずのスープである。

マッシュルームのスープらしい

 

 

 そしてメインなんだが・・・腹が減りすぎていたせいで、海老フライ見た途端にテンションが上がってしまって写真を撮るのを忘れた(笑)。というわけで写真は表の食品サンプル。しかしこのサンプルでほとんど誇張なし。大きな有頭海老フライが2本ついてくる。これらは頭の中までシッカリと頂く。

料理はほぼこのサンプル通りです

 最後はデザートのプリンとコーヒー。このシッカリとした懐かしい印象のプリンは実に私好みである。

デザートはやはりプリンを

 以上でかなり贅沢なランチを堪能。どうも昨日から連荘でランチに贅沢しすぎ。どうもストレスが臨界水位近くまで溜まってしまっている模様。もっともその分、夕食は間に合わせばかりだったが。

 この時点で12時過ぎ。開演の14時半まで2時間以上あるが、やるべきことがなくなってしまった。このホールに来る時にいつも思うが、近くに時間つぶすのに良い場所がないんだよな・・・。冬の植物園に行っても仕方ないし。結局はホールでボンヤリとする羽目に。しばらく後に入場となったが、やっぱりこちらも体温チェックがなくなっている。

ホールに早めに着いてしまうがすることはなし・・・

 

 

京都市交響楽団第674回定期演奏会

客の入りは6割程度だった

指揮:鈴木優人

プロコフィエフ:古典交響曲 作品25
ストラヴィンスキー:弦楽のための協奏曲 二調
ラフマニノフ:交響曲 第2番 ホ短調 作品27

 ロシア系近代作曲家(内2人は亡命した)の作品という演奏会。

 一曲目はプロコフィエフによる古典音楽へのオマージュを込めた曲。なお鈴木のプレトークによると、この曲は演奏家にしか分からない細かい洒落のような仕掛けが多々あるらしい。そういう軽いおふざけも含んで、なかなか軽い曲調である。

 鈴木の指揮もその曲調に合わせて、軽快でウイットに富んだものである。京都市響の演奏もアンサンブルが美しいカッチリした演奏でなかなかに魅力的。

 二曲目のストラヴィンスキーは中編成の弦楽合奏による曲で、「春の祭典」などで有名な原始主義時代を経て、段々と小編成の新古典主義時代に向かっていた頃の曲である。それだけに構成はかなりシンプルになっている。とは言うものの、その和声はやはり現代的であっていささか複雑な部分も存在する。もっともそんな難しいことは抜きにして単純に美しい曲であり、鈴木は京響アンサンブルを思いっきり歌わせている。

 ラフマニノフについては鈴木がプレトークで「好きな曲で非常に美しい曲」と言っていたんだが、確かにそのようなことを感じさせる演奏。艶があって美しく歌わせる演奏をしている。第一楽章なんかはロシア情緒を湛えた見事な音楽であるし、第二楽章は怒濤のエネルギーの合間の弦楽のメロディが非常に美しい。また第三楽章はいかもにラフマニノフらしい実に甘美な楽章となっており、京都市響の演奏も実に鮮やかである。

 とは言うものの、やはり私の耳にはこの曲はやや冗長に過ぎると感じさせる部分があり、鈴木の指揮をしてもその曲の構造だけはどうにも出来ないところ。もっとも美しさが弛緩につながるギリギリの線で持ちこたえてはいたが。

 最近活躍著しい鈴木優人であるが、昨年末に読響で実に巧みな第9を聞かせてくれたが、新年早々も京都市響を駆って鮮やかなロシアものを堪能させてくれた。


 これで今週末の遠征は終了、渋滞で走りにくい京都市街を抜けると、新名神を突っ走って帰途についたのである。

 

 

この遠征の前日の記事

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2日目は映画「かがみの孤城」を見てから中之島の美術館をはしごする

コンサートのない今日は、映画と美術館巡り

 翌朝は目覚ましで7時に起床。今日はコンサートの予定を入れていないんだが、9時から映画を見に行く予定。イオンのミニオンカードを作ったので、イオンシネマで映画を1000円で鑑賞できる。そこで一番近くのイオンシネマシアタス心斎橋を訪問する。

地下鉄心斎橋の改札外にはなぜかゴジラがいる

 イオンシネマシアタス心斎橋は心斎橋パルコの12階にある。ただし朝の9時はパルコはまだ開館していないので閑散とした中を地下鉄の改札の真ん前の入り口からエレベータで直通という形になる。

シアタス心斎橋

 シアタス心斎橋はやや小さめの劇場を複数配置した今どきのシネコン形式だが、座席はやや広めでゆったりしている。なお私の鑑賞時はガラガラだったのでかなりゆっくりと見れた。

 今回視聴する映画は「かがみの孤城」。人気小説をアニメ化したとのことであるが、私は原作小説は全く知らない。ただ以前に「転スラ」を見に行った時に映画予告を見て、何となく興味を感じたものの、なかなか機会がなくてそのままになっていた作品である。

 

映画評についてはこちらに記載しました

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昼食はやや贅沢目にうなぎ丼を

 映画の鑑賞を終えると1階上のレストランフロアで昼食を摂ることにする。イオンシネマではお約束の映画鑑賞者に対する特典なんかもあるようなので、悪くない話であるとも思える。結局は「江戸川」に立ち寄って大阪の風景を眺めながらランチの「並うな丼(1900円)」を頂くことにする。なお映画特典はワンドリンクと支払いの10%引きである。

13階レストランフロアの「江戸川」

窓の外には大阪の市街

 外でウナギを食べるのは久しぶりの気がする。この店のウナギは江戸前なので蒸した柔らかいタイプである。なお私はパリッとした関西タイプでも、フワッとした関東タイプでも、どちらのウナギでも好む人間。まあこの価格ではうなぎはボリュームを求められるレベルではないが、ランチとしてはなかなかに贅沢。

うなぎ丼を頂く

 昼食を終えるとプラプラと地下街経由で四ツ橋駅に移動するとそこから肥後橋まで移動。この後はこの地域の美術館を2つほど見学していきたい。

 

 

「館蔵刀装具コレクション 武家の嗜好品」中之島香雪美術館で2/26まで

中之島香雪美術館

 香雪美術館の所蔵品には刀剣類のコレクションも多く、さらには刀剣の外装である拵である鍔なども収集されているという。今回はそれらの中から展示する。

 刀は武士の魂などとも言われたが、その一方で実用本位だけでなく、芸術品的な装飾などもなされ、拵は時には凝ったものになったようである。本展の展示品は小柄が非常に多く、更には目貫などの小物類。極めて細かい細工を施した凝ったものが多い。

 とは言うものの、とにかく物が小さすぎて、残念ながら老眼も進行してきて細かいものを見ることがツライ私には詳細がよく分からない。本来なら手に取って間近でじっくりと観察したいところだが、当然のことながらそれは叶わないことである。そういうわけで何となく漠としか眺めることが出来ず、それでいて異様に目が疲れてしまう展覧会となってしまったのである。細工物好きの者ならかなり楽しめそうであるが。

刀剣類の展示もあり(ここだけ撮影可)

銘不明の短刀なれど、この刀にかなり力を感じた

 一つ目の美術館の見学後はもう一カ所、また名前もここと紛らわしい大阪中之島美術館へ。相変わらず威圧感のあるブラックボックスな建物である。なおコロナの影響もあってとことんまで体力が落ちている私にはこの距離でさえかなり嫌な距離になってしまっている。

妙に威圧感のある建物だ

 

 

「大阪の日本画」大阪中之島美術館で4/2まで

4階展示室で開催

 日本の画壇と言えば東京画壇と京都画壇が有名だが、商工業都市として古くから栄えた大阪にも独自の大阪画壇が存在する。その特色は町人中心であるために、江戸や京のような権威主義的なところがない自由さにある。そのような大阪画壇の明治以降の日本画作品について紹介している。

 最初は大阪画壇を語る上で外すことのできない大物である北野常富の作品から始まる。江戸時代の浮世絵の流れを汲む独自の色気を持つ美人画が有名であるが、大正期には時代の影響を受けたややオドロオドロシ気な黒常富が登場したりなど、なかなか一言では語れない興味深い画家である。

展覧会の表題作は北野恒富の「宝恵籠」

 これに続いては彼の弟子筋に当たる画家たちの作品が登場。その中の代表が島成園であるが、圧倒的な存在感を感じさせ、ある意味で師匠のスピリッツを最も濃厚に引いている画家でもある。後は百家争鳴的に多数の画家が登場する。

島成園「祭のよそおい」

 次に登場するのが大阪風俗画の大家・菅楯彦。彼が描いた様々な風景は、当時の大阪の町の様子を伝える資料でもあり得る。

菅楯彦の「浪華三大橋緞帳」

 これ以外では南画や文人画などまさに様々な作品が綺羅星のように登場するが、正直なところ特別に強く印象に残るほど個性の強い作品は残念ながら存在せず。

生田花朝「天神祭」

 というわけで、やっぱり私の場合は本展は北野常富に島成園に尽きてしまうわけである・・・。

 

 

ホテルに戻ると疲れてゴロゴロ

 正直なところ、映画に続いての先ほどの展覧会でかなり消耗して集中力が落ちてきていることが否定できない。まだまだ昼過ぎぐらいだが、無理はせずにホテルに戻って休養することにする。

 ホテルに戻ると風呂で汗を流して、原稿の執筆などを始めるがやはり疲労が強くて考えがまとまらない。一休みとベッドの上にゴロンと横になるとそのまましばし意識を失ってしまう。

 次に気が付くと夕方になっていた。これは夕食を摂りに行ったほうが良い。と言っても疲労はあるし、恐らく中国人がウロウロしていると思われる新世界界隈をうろつく気にもなれず、夕食は近場の「らいらいけん」で済ませることにする。刺身定食700円。相変わらずCP最強である。

ホテル近くの「らいらいけん」

刺身定食を頂いた

 ホテルに戻ると再度の入浴。サッパリしたところで、タブレットを家のHDレコーダーとリモートで接続して、しばし原稿入力。眠気が湧き上がってきたところで就寝する。

 

 

この遠征の翌日の騎士

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この遠征の前日の記事

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新年最初の大阪フィル定期は尾高によるブルックナー

週末のコンサートに出向く

 さて本年度のコンサート始めだが、この週末には大阪に繰り出すことにした。目的はフェスティバルホールで開催される大フィルの定期演奏会。

 コロナがいささか気になるところだが、どうやら政府は感染防止を完全放棄して感染拡大策に切り替え、これに乗じて年金受給者大量虐殺を目指して浮いた分を軍事費(大半は自分たちが中抜きする)などという良からぬことを考えている模様。

 そういうわけなのでこちらとしても万全の警戒の元で向かわざるをえず、移動は例によって車を利用することにする(どう考えても満員の新快速でコロナウイルスが忖度するはずがない)。

 出発したのは金曜の午後、仕事を早めに切り上げて家を出る。しかし阪神高速は途中で渋滞に数回引っかかるのみという「想定外に順調」だったことから、現地には予想よりもかなり早く到着したのでしばし車内で時間つぶしを行ってから駐車場へ。

 さて開演までに時間はそんなにないが、急いで腹ごしらえをしておくことにする。いつものように「而今」に入店してあさりそばの麺大盛りを掻き込んでおくことにする。

いつもの「而今」に

いつものあさりそば

 夕食をドタバタと終えるとホールへ。かなり大勢が押しかけている。相変わらずマスクは着用しているものの、体温チェックがなくなったのが引っかかるところ。先程の而今もアクリル板を撤去してあったし、政府が推進する「現実逃避してコロナはなかったことに」政策が浸透しつつあることに不安を感じる。コロナ自身は人間側の都合なんてお構いなしに何も変わっていないにも関わらずである。

 

 

大阪フィルハーモニー交響楽団 第564回定期演奏会

指揮/尾高忠明
曲目/池辺晉一郎:交響曲第10番「次の時代のために」
   ブルックナー:交響曲 第7番 ホ長調(ハース版)

 一曲目の池辺晉一郎の曲はかなりガチャガチャした喧しい曲という印象。かなり派手で切れ味の良い演奏であり、大フィルの演奏自体はかなりまとまっているように感じられる。尾高体制の下でジワジワと実力を増してきた大フィルの真価が発揮されているとは感じる。

 後半はブルックナーの交響曲であるが、一曲目の演奏と同様にかなりバリバリと鳴らしてくる印象である。尾高は急がずゆったり目のテンポで壮大な音楽を繰り広げる。また大フィルの音色もなかなか綺麗ではある。ただし私の好みから言えばもう少し緊張感が欲しいところ。ブルックナーの私の言うところの「魔のアダージョ」などはやはりやや弛緩する感があるためにいささか眠気を誘うこともあった。

 とは言うものの、総じてまずまずの演奏であったと感じる。その辺りは尾高の力でもあるし、大フィルのブルックナーというのも伊達ではないようである。

 

 

新今宮の定宿に移動してから夜の買い出し

 コンサートを終えると今日のホテルへと車を飛ばす。今回は例によって私の大阪での定宿ホテル中央オアシスを利用。ホテルへは30分程度で到着するが結構混雑している。

いつものシンプルな部屋である

 ホテルに荷物を置くと一旦買い物のために外出することにする。明日の朝食の調達が目的だが、それ以外にも急遽マウスを調達する必要に迫られたことがある。昨今のコロナの蔓延の影響で、私も在宅勤務をすることになったのだが、会社から支給されたリモートワーク用のPCにマウスが搭載されていなかったことから、遠征時用のワイヤレスマウスを流用したのだが、そのせいでマウスを持ってくることを忘れてしまったのに後で気づいた次第。

 マウスの調達の関係もあって、新今宮のメガドンキを覗くことにする。既に22時近くなのだが、メガドンキ内は大勢の客でごった返してさながら不夜城の様相。なんか強引に諸々を通常モードに戻していることが感じられる。

 買い物を終えるとホテルに戻って仕事環境を構築してから入浴。とにかく疲労が溜まっている体をよく温めておく。結局この日は疲れも溜まっているので早めに(と言ってもそんなに早くもないが)就寝することにする。

独立風呂がここの売り

いつもの仕事環境(手前は夜食の恵方巻)

 

 

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METの「メデア」を堪能してから、スラットキン指揮のN響の名演をはしごする

大阪まで移動する

 翌朝は真っ暗な中、朝の気配に自然に目が覚めると7時前だった。目覚ましが死んでいる状態でも大体決まった時間に目が覚めるようになってきているのは、長年のサラリーマンとしての習慣恐るべしである。

 とりあえず朝風呂で体を温めると、朝食までの間にしばし原稿入力。朝食は和食のバイキングと言いつつ、実質は定食である。味はまずまずだが、これもややボリューム不足。

朝食はややボリューム不足気味

 今日はとりあえずMETライブビューイングとN響大阪公演のハシゴ。まずは11時に大阪ステーションシティシネマで上映されるMETのライブビューイングである。駐車場は既に大阪駅周辺のものをアキッパで確保済みなので、後は時間に間に合うように出かけるだけ。Google先生にお伺いを立てたところ、3~40分程度とのことなので、余裕を見て9時半頃にチェックアウトする。

ひょうご共済会館を後にする

 朝の阪神高速は特にトラブルもなく順調に大阪まで到着する。それにしても大阪駅周辺の道路が複雑すぎ。こんなものカーナビがないと絶対に到着できない。

 車を確保していた駐車場に入れると後は劇場へ。劇場は大混雑だが、例によって体温検査はご自分でというスタンス。感染拡大中の時にこれで大丈夫なのかの不安は少々ある。

 

 

METライブビューイング ケルビーニ「メデア」

劇場は大混雑である

指揮:カルロ・リッツィ
演出:デイヴィッド・マクヴィカー
出演:ソンドラ・ラドヴァノフスキー、マシュー・ポレンザーニ、ミケーレ・ペルトゥージ、ジャナイ・ブルーガー、エカテリーナ・グバノヴァ

 本作はケルビーニによって18世紀末に作曲されたオペラであり、ケルビーニ自身は古典派からロマン派へのつなぎの位置にいる作曲家であるという。本作でも確かに古典的な節回しと、ロマンティックな音楽の仕掛けの両方が共存している。

 そのように非常に優れた作品であるのだが、同時に主役に対して求められる要求水準が高く、それをこなせる歌手が存在しないがために演じられることがないという演目でもあったという。本作の主演歌手は、かなり高度な歌唱技術のみならず、優れた演技力にさらにほぼ出ずっぱりで演じ続けるだけの体力を要求される。

 本作は「ノルマ」の祖先とも言われているとのことだが、METの「ノルマ」で名演を披露したS.ラドヴァノフスキーが自ら演じたいと言ったのが本作とのことであり、S.ラドヴァノフスキーという演じ手を得てようやくMETで初上演の運びとなったのだという。

 さてその内容であるが、やはり主演のS.ラドヴァノフスキーの怪演とも言える見事な演技及び歌唱に尽きるであろう。愛する夫に裏切られて壮絶なる復讐に取り憑かれる王女メデアを凄まじい迫力と圧倒される歌唱で見事に演じきっている。

 そして悲劇の元となる薄情者のジャゾーネを演じるのは、優男が得意と言われるM.ポレンザーニ。薄情でありながら、甘さがあって冷酷にも徹しきれないせいで結果として悲劇を呼び込んでしまったダメ男を見事に表現している。

 そしてこの壮絶なる復讐劇を盛り上げるのは古典派とロマン派が共存するケルビーニの音楽。リッツィの指揮は非常に音楽のツボを押さえていて劇的効果を増しているし、マクヴィカーの演出の妙もあって、最後まで息をもつかせないドラマが展開された。

 今までMETライブビューイングは多く見てきたが、正直なところここまでスゴい作品は初めて見たというのが偽らざる感想。METの方でも場内総立ちの大盛り上がりとなっていたようであるが、それも当然というところ。恐らくその場にいたなら、私も同様に立ち上がってブラボーを絶叫していたろう。

 

 

NHK大阪ホールに向かう前に東梅田で昼食

 いや、本当にスゴいのを見たという感じである。あまりの凄さに頭が少々ボーッとしているが、また今日は次の予定がある。次はNHK大阪ホールでのN響の大阪公演である。とりあえず残り時間は1時間半強。とりあえず移動がてらに昼食を摂っていきたい。

 とは言うものの、どうも昨晩のラーメンが重すぎた反動か、腹が減っていないわけではないが何が食いたいというのがピンとこない。そこで目についた「旬の台所 膳や」に入店して「トンカツの卵とじの定食(931円税込み)」を注文する。どうも年のせいか最近は困った時の和食になっている。

かなり人通りは多い

 まあ可もなく不可もなくの内容。トンカツについては特別に美味くもないが不味くもないというところ。豚汁の方も普通に美味いといったところ。

可もなく不可もなくといったところ

 

 

久しぶりのNHK大阪ホール

 とりあえず腹を満たすと東梅田から地下鉄谷町線で移動する。NHK大阪ホールは歴史博物館と隣接している。ここは何かと来ることがあるが、駅から嫌な距離があるところ。

NHK大阪の隣は歴史博物館

 私の到着時には既にゾロゾロと行列で入場中であった。ホールはここからエレベータを延々と上がった先にある。

既に入場中

長いエスカレータを登った先がホール入口

 ここのホールは座席の指定がかなり変則的になっているので、とにかく自分の席が分かりにくいという問題点がある。現地でウロウロとしている高齢者も多数。ちなみに私はいざホールに到着してみると、思いの外前方の席だったので驚いた。もっと後を取ったつもりだったんだが、前の席が舞台拡張のためになくなっていたようだ。

ここのホールの座席配置はかなり変則的

 今回は指揮はスラットキンでソリストはレイ・チェン。ところでレイ・チェンって聞くと、往年のセラムンファンである私はどうしても「レイちぇん、って呼んでください」という台詞が頭に浮かぶんだよな。富沢美智恵のベッタリした声で。

 

 

NHK交響楽団演奏会 大阪公演

指揮:レナード・スラットキン
ヴァイオリン:レイ・チェン

ヴォーン・ウィリアムズ/「富める人とラザロ」の5つのヴァリアント
メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64
ヴォーン・ウィリアムズ/交響曲 第5番 ニ長調

 一曲目は唐突なタイトルの気がするが、どうやらこれは聖書の一節の模様。なお音楽自体は民謡を元にした変奏曲とのことだが、別に説教臭い曲というわけではなく、普通に非常に美しい弦楽合奏曲。意外に分厚くて美しいN響の弦楽陣がなかなかに聞かせてくれる。渋い一辺倒でなくて、そこから煌びやかさを引き出すのはスラットキンの真骨頂か。

 二曲目は最早通俗曲扱いされることもあるいわゆるメンコン。レイ・チェンの演奏はどんな複雑なメロディも堂々とサラッと弾いてしまうという非常に安定したもの。またテクニックオンリーの無表情演奏とは違って、音色自体にもなかなかに表情がある。表現と技術のバランスが良い円熟した演奏になってきたことを感じた。

 ところで本公演では三楽章でレイ・チェンが困難なパッセージをバリバリと弾きこなしている最中に、彼のヴァイオリンにトラブルが発生した模様で、いきなりコンマスのものと取り替えて演奏を続けるというハプニングが。サブコンマスが彼のヴァイオリンを調整して三楽章終了までに引き渡すという技を披露することに。レイ・チェンは演奏後に「very exciting」と語っていたが、とんだハプニングを最小ダメージで乗り切ったというところ。ちなみにアンコールは「ウォルシングマチルダ」の変奏曲。第一曲からの民謡つながりというところだろうか。

 ラストはヴォーン・ウィリアムズの田園的情緒の強い交響曲。第一曲目と同様にN響アンサンブルがなかなかに聞かせる。全くといって良いほど知らない曲なのだが、こうして聴かされると「ヴォーン・ウィリアムズって結構良いじゃん」って思わさせる。まあ私的にはどうも曖昧模糊としたエルガーよりは、ヴォーン・ウィリアムズの方が相性が良いのを感じる。重厚なアンサンブルの中から、キラキラとした雰囲気を引き出すのがスラットキンの上手いところ。スラットキンといえばアメリカものが得意レパートリーであるが、それと同じスタンスでヴォーン・ウィリアムズも扱っていたように感じられた。

スラットキンも満足げである

楽団員と共に

 なかなかの名演で、N響の真価が発揮されていたように感じられた。スラットキンも満足げな表情であった。ちなみに本公演はカーテンコール時の撮影が許可されており、今回掲載したのはその際に撮影したものである。

 

 

軽く腹に入れてから帰宅

 これで今回の遠征のスケジュールは終了。後は大阪駅に戻って車を回収して変えるだけだが、その前に一服したくなった。東梅田の「心斎橋ミツヤ」に入店してマロンパフェで一服する。なかなかに美味。

地下街の喫茶店へ

マロンパフェは美味

 甘物が腹に入ったら若干の空腹を感じた。これから長駆ドライブして帰宅するので少し燃料補給しておくことにする。ミックスサンドを頂くことに。普通のオーソドックスなサンドイッチでマズマズ。

サンドイッチを腹に入れておく

 軽く腹を満たすと帰宅の途についたのである。今回はコンサート的にはなかなか充実した内容であった。もっとも阪神高速を突っ走っての帰宅はかなり疲れるものである。

 

 

この遠征の前日の記事

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N響公演のために神戸で前泊する

N響公演とMETライブビューイングのために遠征

 さてこの週末であるが、N響の大阪公演とMETのライブビューイングをはしごすることにした。ただMETライブビューイングの方が上映スケジュールが直前まで判明しないことから計画はてんやわんやすることになった。当初の読みは神戸のキノシネマでの上映が午前中だろうから、それを見てからN響にハシゴと考えていた。そのために金曜の夜に神戸にホテルを確保していたのだが、いざ上映スケジュールが出てくると、キノシネマでの上映は昼過ぎからなので上映終了後だとN響公演に間に合わないことが判明、その代わりに大阪ステーションシティシネマでの上映が11時からなので、これだと上映時間3時間ちょっとで、16時からのNHK大阪ホールでの公演には間に合うということになった。結局はなんだかんだで、大阪に行くのになぜか前泊が神戸という変なことになってしまったのである。

 金曜日の仕事を終えると神戸へ直行する。しかしながら毎度のように阪神高速は大渋滞。その上に三宮近くで道を間違え(神戸の道は私が住んでいた頃と全く変わっているので土地勘がない)、グルっと遠回りになって無駄な時間を費やすことになってしまった。しかもホテル周辺は路地地獄の一通地獄、これはカーナビがなかったらたどり着かないところ。しかも駐車場の入り口が狭くて分かりにくく、危うく見逃すところだった。もし見逃して通り過ぎたら一通地獄の中をまた大回りする必要がある。ようやくホテルに到着したころにはもうとっぷりと日が暮れていた。

 さて今日の宿泊ホテルだが、ひょうご共済会館。公務員共済の宿だが、無関係の者でも宿泊できる。選択の理由は三宮近辺で駐車場付きでまずまずリーズナブルな宿泊料という点。

ようやくたどり着いたひょうご共済会館

 

 

宿泊は共済会館

 6時前にチェックインする。研修施設っぽいのを想像していたが、部屋は普通の旅館部屋だ。部屋の真ん中にデンと布団が敷いて合ってテーブルがないなと思ったら、障子を開けた窓際に放り出されていた。風呂・トイレは共同というタイプ。

和室のど真ん中に布団だけ敷いてある

テーブルは障子を開けた先にあった

 今回は夕食付プランを予約しているので、夕食を予約した6時半までの間に近くのコンビニに買い出しに出る・・・と言ってもこれが結構嫌な距離がある。帰ってきたころには夕食時間直前。どうやら最寄りには生協があるのでそちらに立ち寄った方が正解だったか。

 

 

夕食は中華のコース

 夕食は館内のレストランで中華のコース。デザートの杏仁豆腐を含めて全7品。味はマズマズなんだが、いささかボリュームが不足気味。私のような下品な人間にはやっぱりチャーハン定食か中華ランチ辺りでガッツリ食べる方が向いているようである。

オードブルから始まり

明太子のスープは結構あっさりしている

イカの揚げ物

これはいわゆる鶏唐

点心に

中華ちまき

ちまき内部

最後は杏仁豆腐

 

 

夕食を終えてマッタリ過ごすが・・・

 夕食を終えると大浴場で入浴する。風呂は定員5名程度。まあルートイン大浴場クラスというところか。手足を伸ばせる風呂でゆったりと体を温める。

大浴場

カランは4つ

 入浴を終えると部屋に戻って仕事環境を構築すると、早速原稿入力。しかし時間が経っていくうちにやはり腹がだんだんと切なくなってくる。そこで意を決して再び外出、Google先生を頼りに近くのラーメン屋に立ち寄ることにする。

仕事環境は構築したが・・・

 

 

近くのラーメン屋へ繰り出す

 立ち寄ったのは「三七十家」。人気があるのか表にまで待ち客がいる。しばらくすると店内の客が捌けて席が空く。注文したのは「三七十盛ラーメン」

人気のある店のようだ

 スープの濃さに麺の堅さに油の量などを選べるようだが、私は初めてなのですべて普通で。濃厚なスープに平打ちの太麺が特徴。かなり腹にズッシリ来るラーメンである。

太麺で自己主張の強いラーメン

 キャラクターの強いラーメンなので好みの分かれるところか。私の好みとしてはこの平打ち太麺は重すぎだし、スープが濃いというよりも私の好みよりはいささかしょっぱい。特に焼き豚がしょっぱめだったので口の中がかなりしょっぱくなってしまた。どうやら私はもう少し軽快なラーメンの方が好みのようだ。

 腹が膨れるとホテルに戻ってきて原稿入力。しかし途中から起きているのが困難なほどのめまいを伴う倦怠感が出てきて、もうこれ以上作業をすることは断念してさっさと就寝することにする。

 

 

この遠征の翌日の記事

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最終日はフェニーチェ堺でのNDR北ドイツ放送フィルハーモニー交響楽団演奏会

昼食は美術館で摂ることに

 翌朝は8時過ぎに起床。この頃になると回りの部屋が騒がしくなってくるから自然に目が覚める。とりあえず昨日買い込んだサンドイッチを朝食代わりに腹に入れると原稿執筆。

 さて今日の予定だが、15時から堺のフェニーチェで開催されるNDR北ドイツ放送フィルハーモニー交響楽団のコンサートに行くだけ。それまで大分時間に余裕があることになる。このホテルは以前はチェックアウト時刻が13時だったのでちょうど良いから選んだのだが、何とその後に11時に変更されてしまった。というわけでかなり中途半端な時間がフリータイムで生じることになってしまったのである。

 とりあえずこれではあまりに仕方ないのでとにかく一カ所立ち寄り先を作ることにする。立ち寄ることにしたのは小林美術館。堺南部の高石市にある、以前に数回訪れたことのある小規模美術館である。

小林美術館

 美術館には車で30分程度で到着。入館したが、絵を見るよりもとにかく腹が減った。昼食の方を先に摂ることにしたい。ここの喫茶に立ち寄る。

 

 

 注文したのはオムライスとミルクティー。懐かしいタイプの卵焼きで包んだオムライスである。最近はスフレと称した卵焼きを載せるだけのオムライスが増えている(この方がバイトでも作りやすいということもあるようだ)が、やはり正しいオムライスとはかくあるものである。特別に美味しいわけではないがまず満足。

懐かしいタイプのオムライス

 ミルクティーはやや味にクセがある。アールグレイでも使用しているのだろうか。私はアールグレイは苦手である。オーソドックスなアッサムやセイロンが好き(実はダージリンもあまり好きではないので、これはという好みの紅茶に出会ったことはほとんどない)。

 ティーブレイクでホッとしたところでデザートも頂くことにする。この地域の名物であるくるみ餅を注文する。白玉団子にくるみ餡をかけた極甘スイーツである。数年前に一度食べた記憶があるが、こうやって改めて食べてみると記憶にあったよりもさらに甘い。美味しく頂けるギリギリラインの甘さで、これ以上甘くなると気分が悪くなるところ。そうなると極甘という表現でなく、ゲロ甘になるところだ。

極甘のくるみ餅

 昼食と喫茶を終えると支払いついでに美術館の入場券を購入。そもそも本来の目的はこっちである。

 

 

「秋季特別展 自然を描く 実りと恵みの情景」小林美術館で12/11まで

 この美術館は文化勲章受章日本画家の作品を中心に所蔵しているが、その作品の中から自然を描いたものなどを展示。

 印象に残った作品は梶原緋沙子の美人画。彼女は菊池契月の弟子だったらしいが、まさに契月の血脈を受け継ぐ上品な美人画である。また私の好きな伊藤小坡の美人画も2点。一作の「紅葉狩り」は人物と紅葉の風景を描いた佳品。これ以外で印象に残ったのは山中の眼鏡橋を緻密に描いた岩澤重夫の「故郷の橋」など。メジャーどころでは橋本関雪は相変わらず馬が登場する絵でいかにもだった。最後の平子真理はやや絵本チック。

 二階展示室は洋画も展示。小磯良平や東郷青児といった個性の強いところもあるが、目立つのは「ルノワールが輪郭線に戻らずにあのまま印象派を突き進んだらこうなったろう」と思わせる伊藤清永の「秋粧」。

 ここには新星画家の作品も展示してあり、女性を描いた阪口芳の「ある日」はなかなか印象深い作品。また奥田元宋を思わせる藤本静宏の作品や、幻想的な杉山洋子の「秋空へ」なども印象に残る。

 点数は決して多くもないが、意外に面白い作品があったという印象。定番どころの有名画家の定番的作品よりも、私的に名前をよく知らない画家の作品に意外と心惹かれる作品があったりした。

 

 

 美術館を一回りするとホールへ移動することにする。まだ時間が早めだが、どうせ近くの駐車場は二時間ほどで一日上限まで価格が振り切れてしまうので同じである。ここからホールまではすぐ。近くのタイムズ駐車場に車を置くと、まだ開演までに2時間ほどあるので堺方面をプラプラする。

 オムライスだけだとやや腹が半端なので、軽く回転寿司屋に入店して数皿つまむ。と言うものの、この店はあからさまに寿司が美味くない。これはしくじった。

この寿司はイマイチだった

 結局はあまり時間をつぶせずにホールに戻ってくる。やむなくホール内でしばし時間をつぶすことに。

フェニーチェ堺へ

 開場開始後までしばし粘ってから入場。今回の私の席は前から2列目というクソ席。コンサートを見に行っている者なら特等席かもしれないが、私のように聴きに行っている者には音が頭の上を抜けていくクソ席である。フェニーチェは久しぶりで、今まで数回来ているが価格の関係で4階の桟敷席が多いが、1階を確保した時でもクソ席しか当たったことがない。一度などはわざわざそのために会員になって優先予約をしたにもかかわらず、1階前方端というかなりのクソ席を割り振られた。フェニーチェはよそ者にはクソ席を割り振るというルールでもあるんだろうか? 馬鹿らしくなったから、その後に会員は辞めている。ホールの入りは5割程度で後方には空席も多いのに、こんなクソ席ばかり割り振られるのは明らかに意図的なものを感じる。

なんせ舞台のもろに下

 

 

NDR北ドイツ放送フィルハーモニー交響楽団演奏会

会場の入り自体は5割程度

指揮:アンドリュー・マンゼ
ピアノ:ゲルハルト・オピッツ

ベートーヴェン:劇音楽「エグモント」序曲  ヘ短調 作品84
       :ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調「皇帝」作品73
       :交響曲 第3番 変ホ長調「英雄」作品55

 NDR北ドイツ放送フィルは12型の小型オケ。楽団員の平均年齢は比較的若そうだが、なかなかにまとまりの良い演奏を聞かせる。良い意味でのドイツのオケらしいドッシリした感じの音色も出すが、それよりも漲るような元気さを持っているオケである。12型という編成の小ささを感じさせないパワーを秘めている。

 指揮のマンゼは長身のハゲ親父だが、どうしてどうして、なかなかに躍動的で熱い指揮ぶりである。その熱さで一曲目のエグモントはブイブイと盛り上げる印象。オケも良く統率の取れた密度の高い演奏となっていて聴き応え十分。意外なほどに迫力のあるエグモントとなった。

 「皇帝」はまさにオピッツのピアノ演奏が「皇帝」そのもののゴージャスさ。音色が分厚くて堂々として華麗でありまさにこれこそが「皇帝」であるといわんばかり。このゴージャスなピアノを中心にオケも軽やかでありながらも落ち着いた響きを出していて見事に調和。実に充実した演奏となった。

 後半は「英雄」。さあマンゼが演奏を開始しようとした途端に客席からアラーム音のようなものがなって、それが切れるまで演奏開始が保留というトラブルが発生したが、それでもオケもマンゼも緊張感を切ることなく、仕切り直しで冒頭からぶちかます。第一楽章はとにかく力強くて活き活きとしており、これもまさしく「英雄」の姿そのもの。もっとも力強すぎて葬送行進曲は棺桶蹴飛ばしそうなところがないでもなかったが、それもご愛敬というところ。最後までズッシリとしながらも若々しい活き活きした気持ちの良い演奏で、なかなかに良いものを聴かせてもらったというのが正直な感想。

 満足した客が多かったのか、演奏終了後も拍手が止まずにマンゼの一般参賀あり。観客も一様に満足の様子であった。


 実のところ私はこのオケに最初から期待していたわけでなく、コロナが一区切り付いて来日した外来オケで、価格もまあ妥当なところだからとチケットを取ったのであるが、これはなかなかに掘り出し物というか、予想外に見事であった。演奏の絶対レベルで行けばパリ管やロンドン交響楽団に及ぶものではないが、CPという見方をしたら凌いでいるかもしれない。今年も最後近くになって思わぬ名演に当たったものである。

 これで今週末のコンサート三連荘は終了。今回はコンサートの満足度が高く、意気揚々と引き揚げたのである。

 

 

この遠征の前日の記事

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