徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

「ミュシャと日本」@岡山県立美術館&岡山フィルニューイヤーコンサート

 先日は西宮でフィルハーモニア管のコンサートに出かけたが、今日は岡山で展覧会とコンサートのハシゴをすることにする。午前中に家を出るとJRで岡山に向かう。

 

姫路-岡山の交通についての愚考

 姫路-岡山間は路線が大きく迂回している上に普通列車しかないことから、距離の割に時間のかかる「難所」として青春18切符ユーザーの間などでは有名である(新幹線で10分程度の区間に在来線は1時間以上かかる)。地元では「岡山まで新快速を」という運動もあるようだが、有力な競争相手となる私鉄がある阪神間と違い、JRに競争相手の全くないこの区間に新快速を走らせる経営的メリットは全くなく、JRの真意は「急ぐなら金を払って新幹線を使え」ということで一貫している。JR東などは首都圏の異様で不快なラッシュを解決するよりも、普通車に指定席を設けることでラッシュに拍車をかけながら儲ける方策を打ち出している。またJR西も現在新快速に試験的に指定席を導入しており、将来的な全面有料化を水面下で検討している。残念ながらこれが資本主義の論理でもあり、民間企業としての当然の対応ということになる。だからこそ「競争のない資本主義は社会主義以下の状態になる」と私が以前から言っているところである。

 河本敏夫健在の頃なら「政治力で無理矢理に」ということも可能であったろうが、それも今となって不可能である。それでも実現を目指すなら、JRに陳情しても経済的メリットがない以上無意味(沿線自治体が補助金を出すとでも言えば別だが)。それよりも神姫バスや両備バスに働きかけて、この区間に高速バスを走らせるようにする方が現実的だろう。もしこれが実現すれば、JRは対抗上速達性のアピールとして新快速の運行をする可能性がある。これらが姫路の京阪神一辺倒と岡山モンロー主義を打破して、両地域の交流を盛んして両地域の共存共栄関係が確立すればめでたしめでたしである。実のところ、私が日本再生と地域振興の方策として打ち立てている「日本中核都市構想」はこのような地方共栄都市圏の確立が不可欠である。

 いきなり話が横道にそれてしまったが、一応私は「日本の地域振興と交通について考える市民の会代表」を自称している人間である(笑)。何かかにかの度にこういう与太話を考えてしまうのだが、残念ながら構想を実現に近づけるための権力も財力もコネも何も持っていない。もし皆様の支持がいただけるなら、いずれは国政選挙にでも打って出て・・・などとまた与太話になってしまう(笑)。

 

 岡山までの長時間の乗車の車内では例によって最近購入した中華パッド(これの詳細については後日別の記事で記載予定)で持ち出し番組(NHKドキュメントや今朝の「健康カプセル」に深夜アニメなど)を見ながら時間をつぶす。そしてかなり疲れ切った頃にようやくターミナル駅の岡山に到着する。

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岡山ターミナルに控える四国方面行きマリンライナー

 

岡山のイオンモール内のレストランで昼食

 岡山に到着すると昼食を摂る店の物色だが、地下街の「はしや」は大行列。そこで南のイオンモールまで足を伸ばしてそこの飲食店街を散策することにする。それにしても私も各地のイオンモールをいろいろと訪ねている(笑)が、ここのイオンモールは特に巨大である。

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ここのイオンモールは特に巨大だ

 7階のレストラン街に上がると視察。ここと思った和食の店は行列が出来ているようなので、隣のあなご飯の店「めじろ屋本店」に入店する。

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めじろ屋本店

 焼きあなご飯と茶そばのセットに穴子の刺身を付ける。ただ出てきた料理を前にして失敗を痛感。私の体調はまだ完全回復とは遠いが食欲はそれ以上に戻ってきていない。出てきた料理の量は一見して現在の私の許容量を超えてしまっている。

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穴子の刺身

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茶そばと焼き穴子丼のセット

 刺身はなかなかにうまい。てっさのような透き通った身とメニューには記してあったが、確かに身は透き通っているが、味としてはてっさとは大分違ってもっと強い。そばはまあ普通。ただ焼き穴子は残念ながらやや固めで今ひとつ。このあなご飯はだし汁を入れてアナ茶で頂く方法があるらしいが、タレの味がやや濃すぎるぐらいなので明らかにそっちの方があっさりして美味い。

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アナ茶

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デザートに抹茶豆乳プリン

 

 昼食を終えると美術館に移動するようにする。この間は岡山名物の路面電車で。これを運営する両備グループはタマ駅長で有名な和歌山電鐵も経営していることで知られている。やはり路面電車というのは便利な交通機関である。拠点都市間輸送の高速鉄道と都市内輸送の路面電車の併用というのも、私の中核都市構想の肝である。

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路面電車で移動する

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車内風景

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運転席

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岡山県立美術館

 

ミュシャと日本 日本とオルリク 岡山県立美術館で2/11まで

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 チェコ出身のミュシャとエミール・オルリクを中心にチェコと日本の美術界における交流を示す。

 19世紀末。ジャポニズムがヨーロッパを席巻するが、チェコも例外ではなくその洗礼を受けている。チェコを巡る芸術潮流としては、アール・ヌーヴォーを始め、象徴派その他諸々存在したのであるが、その全流派がいずれもジャポニズムの影響は受けているというのであるから、その影響の大きさが分かるというものである。ジャポニズムの中で特に影響の大きかったのは北斎と尾形光琳とのこと。本展冒頭はそのジャポニズムの象徴である北斎や琳派の酒井抱一などの作品などが登場する。

 次の第1章に登場するのはジャポニズムの影響を受けたチェコの作品。チェコでは日本関連の商品を扱う専門店まで登場して大盛り上がりだったらしい。その宣伝のポスターや明確に日本の浮世絵版画の影響を受けた作品などが登場する。これらを見ると、彼らがジャポニズムを取り込みながら、自らの文化の中で巧みに消化していることも分かる。

 第2章はミュシャが登場である。ミュシャはジャポニズムも取り込みながら、ミュシャ様式と言われるアール・ヌーヴォーを代表する装飾的スタイルを確立する。なおこのミュシャスタイルは明治の日本に大きな影響を与え、明星など当時の雑誌のほとんどはミュシャスタイルのイラストが溢れていた。そのような日本の作品も併せて展示してある。

 そして第3部でオルリクが登場する。オルリクは日本の浮世絵に魅せられ、木版画の技術を学ぶために来日までした画家である。彼は日本を題材にした木版画を制作しているが、西洋的なリアリティを含みながら西洋の伝統的な銅版画などとは違う木版画独自の表現を使用した、詩情の溢れる作品となっている。彼の作品は逆に日本の版画界にも影響を与えたという。

 第4章はオルリクの後継者としてヴァルター・クレムやカール・ティーマンの作品を紹介している。彼らはオルリクの影響を受けて木版画に取り組んだという。やはりそれまでの西洋の版画とは違う独特の詩情があることが感じられる。

 チェコと日本の芸術的交流を示す興味深い展覧会。影響が一方的でなく相互作用を及ぼし合っているところが興味深いところである。異文化の接触の幸福なケースを感じさせる展覧会である。


 確か本展の当初のタイトルは「チェコとジャポニズム」だったはずだから、後で無理矢理にミュシャをねじ込んだ感がある。確かに人気を考えるとミュシャが入るのと入らないのとでは動員が変わってくるから、この判断は営業的には間違ってはいない。実際にショップなどではミュシャグッズが花盛りになっていた。もっとも展示の方はミュシャに関してはいかにも後で付け足した感が強く、ミュシャに関する展示内容もありふれたものであったのは否定できない。

 

ホール向かいの喫茶店で一服

 展覧会を終えるとホールに向かうことにするが、まだ開演までにかなり時間がある。そこで喫茶店で時間をつぶすことにする。Google先生にお伺いを立てたところ、ホールの向かいに喫茶店があるようなのでそこに立ち寄る。

 立ち寄ったのは「CoMA COFFEE STORE」というコーヒーショップ。正面には入口がなく、裏手に回って階段を上った奥というアクセスの悪いところにあるのが特徴の店。店内は窓に向かったカウンター席が8席というこじんまりした店である。雰囲気的には隠れ家的な印象。

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ビルの2階にある店だが

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入口は裏手の階段を登ることに

 アイスの水出しコーヒー(550円)を注文。窓からボンヤリと路面電車を眺めながら待つ。落ち着くと言えば落ち着く雰囲気なんだろうか。

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表をたま列車が通りかかる

 やがて運ばれたコーヒーはサッパリとしてクセのないもの。これが水出したる所以か。コーヒーがあまり得意でない私が、シロップなしで飲めるのだからそのサッパリ具合が分かるだろうというもの。私的にはこういうのはありだが、コーヒーマニアなどはどうなんだろうか? ところできび団子が1つ付いてくるのはさすがに岡山。

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サッパリとした水出しコーヒー

 アイスコーヒーでくつろいだ後、向かいに見えるホールに入場する。8~9割ぐらいは入っており、意外に観客が来ているという印象。

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岡山シンフォニーホール

 

岡山フィルハーモニック管弦楽団 ニューイヤーコンサート

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指揮/ハンスイェルク・シェレンベルガー
ヴァイオリン/福田廉之介
アルマヴィーヴァ伯爵/松本敏雄、バルトロ/柴山昌宣
ロジーナ/柳くるみ、フィガロ/山岸玲音、
ドン・バジリオ/片桐直樹、ベルタ/畑山かおり
構成・司会/柾木和敬

ロッシーニ/歌劇「絹のはしご」序曲
パガニーニ/ヴァイオリン協奏曲 第1番
ロッシーニ/歌劇「セヴィリアの理髪師」ハイライト

 一曲目はアンサンブルの今一歩の甘さなどはあったりするが、まずまずの演奏であると言える。

 二曲目の協奏曲は福田の独奏が見事である。ただ後ろを気にして若干表現に抑制を描けていた節が見られる。シェレンベルガーは福田がテンポ変動などを仕掛けそうなカ所ではアイコンタクトを取ってかなり慎重な指揮をしていた印象を受ける。福田の演奏自体はまだまだ余裕が感じられ、彼自身もまだまだ伸びしろを秘めていそうである。

 後半はセヴィリアの理髪師のダイジェスト。出演歌手にちらほらと弱さが感じられる者がいないではないが、ソリストもオケも演奏自体はまずまずだったと感じられる。

 ただ致命的な問題は、設備の関係か予算の関係か、はたまた最初から不要と考えていたのか字幕を用意していなかったこと。そのために事前にあらすじを紹介されても、今どういう台詞を歌っているのかがほとんどの観客には不明(それが分かる者が館内に1人でもいるかどうかが怪しい)では、どうしても盛り上がりに欠けるというものである。また場面のセレクトも、音楽的にはともかくとして芝居として見た場合「どうしてそこ?」というチョイスが多く、舞台としての一連の流れがないブツ切れの感が非常に強くなる。結果としてダラダラと歌が続くという印象になってしまった。これがせめてヴェルディの作品なら、アリアだけでも単品で聴かせる力があったかもしれないが、残念ながらロッシーニではそこまでの力がない。つまりはイベントとしての企画に問題があったと言わざるを得ない。

 2時間半を越える長時間コンサートになったが、帰りの時刻が気になったのか後半になると途中でバラバラと席を立つ観客も現れだしたのが気になったが、残念ながら観客を最後まで引きつける魅力に欠けたのは厳然たる事実である。演奏自体に致命的な難があったわけではないので残念なところだ。


 コンサートを終えると足早にホールを後にする。路面電車に多数の乗客が飛び乗るが、終演時刻が予想よりも遅かったためか、電車が終点に到着すると駆け足で駅に向かう客が多い。かくいう私も急ぎ足で岡山駅に舞い戻ると、帰宅の列車に飛び乗ったのである。

 

西宮でエサ=ペッカ・サロネン指揮 フィルハーモニア管弦楽団を聴く

 どうもここのところ体調が良くない。つい3,4日前に謎の激しい嘔吐と腹痛で2日間寝込んだ直後だ。もしノロウイルスだったら家族に感染とかしたら大変だと思っていたが、幸いにしてその様子はないようだ。しかしそうだとしたら、一体原因は何だったんだろうか?

 こんな週末は本来なら家で静かにしておくべきなのだが、こんな時に限ってどうしても外せないコンサートがあったりするのである。この土曜日はサロネン指揮のフィルハーモニア管弦楽団の演奏会のために西宮に出向くこととなった。どうも仕事は勤勉ではないのに、遊びになると異様に勤勉だと言われてしまう所以である。ただ体調があまり良くないので家を昼頃に出てホールに直行することにする(元々の予定では立ち寄り先も考えていた)。列車の中では持ち出した深夜アニメを見ながら時間をつぶす。

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兵庫県立芸術文化センター

 ホールに到着したのは開場直前だった。もう既に入口前に行列が出来ている(全席指定なのでわざわざ待つ必要もないのだが、これこそが日本人の習性)。それに続いてゾロゾロと入場。私の席はホール中央付近のかなり良い席。今はそのシートでこの原稿を入力している(笑)。会場の入りは8~9割というところか、ポツポツと空席が見える。

 

エサ=ペッカ・サロネン指揮 フィルハーモニア管弦楽団

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ヴァイオリン:庄司紗矢香

シベリウス:交響詩「大洋の女神」op.73
ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番op.77
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」

 一曲目はいかにもシベリウスらしい幽玄とした曲である。これを安定感抜群のフィルハーモニア管弦楽団の弦楽陣がドッシリと描くところに、雰囲気抜群で管が響く。さすがに上手いオケだなとつくづく感心しながらうっとりしている内に終わってしまった。

 二曲目はもう庄司のヴァイオリンが圧巻と言うしかない。消え入るように終わった第一楽章に続く乱痴気騒ぎの第二楽章を経て、哀愁漂う雰囲気の第三楽章なのだが、ここで先の楽章と一転してしっとりと雰囲気タップリの庄司の演奏には完全に魅了されてしまう。そして第三楽章終盤の長大なカデンツァ。抜群の技倆で圧倒的な表現力を示しながら徐々にテンションを上げて怒濤の第四楽章である。とてつもない技倆が必要であることは素人にも分かるのだが、それを難なくこなしてしまう庄司のテクニックの凄さ。しかも単に技術に走るだけでなく、情感タップリに歌えるのだからこれは最強である。

 この曲が終わった時点で場内は興奮の坩堝と化した。庄司のアンコールの後も拍車が鳴り止まず、強引に照明をつけると共に団員が引っ込んで無理矢理切り上げざるを得なくなってしまっていたが、それも当然の名演。正直なところこの曲は得意とは言いがたい私でも、最後まで興味深く聞き入ってしまった。庄司紗矢香、ただ者ではないというのが本音。

 前半だけでもお腹いっぱいになりそうだが、メインの春の祭典がこれまた凄かった。サロネンの熱のこもった指揮に応えて、フィルハーモニアの管楽器が唸る、吠える、まさに野生の雄叫びである。しかしそれでも決して雑にはならず、漲る緊張感の中で寸分の狂いもなく統率が取れるのがこのオケの凄さ。さらに管楽器がこれだけ吠えまくったら並の弦楽陣だと完全に力負けしてしまうところなのだが、弦楽陣も管楽器と対等に渡り合えるというパワーにこれまたこんな凄まじい曲でも全く乱れない技術。迫力のあるサウンドに圧倒されながら、オケの技倆に唸らずにはいられなかったのである。

 まさに聞いている方も翻弄されているうちに怒濤のごとくに曲が終わってしまった。サロネンのペースは決して早いものではない(むしろ速度は抑えめに感じた)にもかかわらず、聴いた印象としては疾風怒濤というイメージが焼き付く。それだけのサウンドスペクタクルが次々と押し寄せたと言うことである。

 終演後の場内は爆発的な熱狂に満たされた。思わずボルテージが上がってしまうようなとんでもない演奏であった。その熱狂は楽団員引き上げ後も収まらず、サロネンの一般参賀あり。


 いきなり新年からとんでもない名演が飛び出してしまった。これは今年も春から幸先が良さそうだ。そう言えば体調が悪いのを忘れてしまっていた。こういうのを音楽療法というのか(笑)。

 

「竹工芸名品展」@東洋陶磁美術館&京都市交響楽団 第641回定期演奏会

 翌朝は7時頃になると近くの部屋が活動を開始するのと外が明るくなってくるのとで目が覚める。目が覚めるととりあえず、昨日全く書けなかった原稿をまとめるとアップ。

 ウダウダと朝の支度をしてからホテルを出たのは10時前。今日は京都での京都市響の定期演奏会に行くのが目的だが、その前に大阪でもう一カ所だけ美術館に立ち寄るつもり。

 だがその前にとりあえず朝食だ。ホテルを出ると新世界方面にブラブラ。立ち寄ったのは「喫茶通天閣」。その名の通り通天閣の近くにある喫茶店。モーニングは380円と例によってCPは良い。

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通天閣近くの喫茶店だ

 場所柄、店内喫煙可であるのが少々ツラいところだが、珈琲の味は私好み。モーニングはトーストとゆで卵かついてくる。とりあえずゆったりとくつろぐことにする。

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380円のモーニング

 朝食を終えると恵美須町から北浜まで地下鉄で移動する。目的の美術館はここから橋を渡った先。

 

「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション-メトロポリタン美術館所蔵」大阪市立東洋陶磁美術館で4/12まで

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 メトロポリタン美術館に収蔵されている竹細工品を展示した展覧会。竹細工品まで収蔵しているとは、さすがメトロポリタン美術館だと驚いた次第。

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館内の様子

 竹という自然素材は、その柔軟性が生み出す優美な曲線などがもっと魅力的なところであると考えられる。さらには観念的に自然との調和を謳うことも出来る。実際に展示作もこの竹特有の曲線を活かした作品がほとんどである。

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いかにも竹らしい曲線

 竹と藤を組み合わせて実用性のあるような籠を組んだ作品から、実用性から離れて完全なアート作品としたものまで展示されていた。作品によって陶器作品と組み合わせて展示されていたが、こうして並べると不思議なほどにコンセプトとしては相性が良いということも感じられた。土から生えた竹による細工品と土そのものからの細工品ということで理念としては近いものがあるのだろうか? 不思議と、造形としても近いものも存在したようである。

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竹細工と陶芸のコラボ

 一般に工芸というジャンル内でしか見ることのなかった竹細工品に、アートという視点を与えてくれたことは興味深い。実際に本展の展示品は実用品である工芸と実用性を省いたアートがシームレスでつながっていた印象を受けた。

 

 展覧会の見学を終えるとなにわ橋駅から京阪で京都に向かうことにする。この路線は比較的最近に開通したものであるが、どこに通じているというわけでもない路線のせいか客はまばらである。この後、どこかに接続する予定があるのだろうか?

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京橋で乗り換え

 京橋からは特急に乗り換える。しかしこの特急、2列シートが狭すぎて、女性はともかく男性2人は窮屈で無理だろう。京橋を出るとしばし高架の複々線の中央を走るが、線形が悪い(とにかくカーブが多い)せいで、いくら線路にバンクを付けたところでそう速度は出せない。その上、枚方が近づいてくると複線のかなり狭苦しいところを走ることになる。

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車内の二人駆けシートはやや窮屈

 中書島辺りからは川の右岸左岸とかなり目まぐるしく移動、中書島で宇治方面と別れ、丹波橋は近鉄乗り換え駅、ここを過ぎるといよいよ京都市街の狭いところを走ることになる。そして七条から先は地下鉄となって三条に到着。

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三条駅に到着する

 

 私は三条で降りるとここで地下鉄に乗り換えることになるが、その前に途中で昼食を摂ることにする。立ち寄ったのは地下鉄駅の手前の「みや古」

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地下鉄三条京阪近くのみや古

 まあ普通の町のうどん屋といった味付け。特別なところは何もないが、これも選択肢の一つとしてはありだろう。

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カツ丼のセット

 昼食を終えると地下鉄で北山に移動、京都コンサートホールへ向かう。ホールに到着すると当日券売り場の前にはいつも見ないほどの大行列。今回の公演は急に話題にでもなったのだろうか。

 

京都市交響楽団 第641回定期演奏会

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[指揮]ジョン・アクセルロッド
[フルート]アンドレアス・ブラウ

ベートーヴェン:「アテネの廃墟」op.113から序曲
バーンスタイン:「ハリル」独奏フルートと弦楽オーケストラ、打楽器のためのノクターン
ショスタコーヴィチ:交響曲第7番ハ長調「レニングラード」op.60

 最初のベートーヴェンは「廃墟」という割には明るくて生命感に満ちた曲。後で解説を見ると新興都市を讃える曲だったようでさもありなん。

 二曲目はバーンスタインによる鎮魂曲。ブラウのフルートの音色が非常に深い。正直なところバーンスタインの曲は私の守備範囲外であまり好ましいものではないが、それでも独特の深い音色が心に染み渡る感覚。いわゆる生と死について語っているのだろうという雰囲気だけは分かる。

 メインのレニングラードはとにかく京都市響の上手さが光る。バンダも加えての派手な金管の鮮やかさはともかくとして、それを下支えする弦楽陣の密度と美しさがすごい。おかげで金管や打楽器がいくらブンチャカやっても軽薄な音楽にならない。第1楽章の中盤以降などバンダも加わっての乱痴気騒ぎなんだが、これが強烈なサウンドシャワー。なおこの部分はナチスの攻撃で町が破壊される場面という話があるのだが、あまりに力強くて豪快に鳴っているので、私の頭にはナチスの軍勢を正面から撃破するソ連軍というイメージに聞こえた。

 次の楽章は一転して静かになるのだが、こういう緩徐楽章で弦楽陣の密度の高さが非常にものをいう。弛緩することなく音楽を歌い上げる。京都市響のアンサンブルが完璧な上に、アクセルロッドの指揮が抜群のコントロールを見せている。

 この曲自体は私はよく知らない曲なのだが、聞いているとメロディラインや曲の構成に有名な5番の影がちらつく場面があった。これがいわゆるショスタコ節とでも言うべきものだろうか。

 最後は再びバンダも加わっての大盛り上がりで終了。かなりの名演に場内もいつにない盛り上がり。それも当然というものであろう。さすがに京都市響というところだが、アクセルロッドもただ者ではない。

 もっともソ連軍がナチス軍を快刀乱麻でやっつける曲に聞こえてしまったように、全体的に派手で美しい演奏であるが、あまりに屈託のないところがある。その辺りがショスタコの解釈としてどうかというところは無きにしも非ず。まあこの長丁場を最後まで退屈することなく聴かせたのはかなりのものであると私は思うが。


 これでこの週末の予定は完全終了。帰途につくのである。

 

関西フィルハーモニー管弦楽団 Meet the Classic Vol.40

 今日予定していた展覧会はすべて回ったので、関西フィルのコンサートのためにいずみホールに向かうが、その前にまだ摂っていなかった昼食を摂りたいと考える。と言っても、この周辺にはあまりめぼしい店はない。しばし駅に向かって歩いていると「Cafe CALEN」なる喫茶店を見つける。どうやらランチメニューもあるようなのでここに入店する。

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国立国際美術館近くの喫茶店である

 店内はカウンター席だけで無理やり十数人を詰め込んでいる印象。店内禁煙というのはコーヒーにこだわる店なら当たり前だろう。ランチメニューの中からヒレカツミートパスタを注文する。

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結構ボリュームがある

 結構ボリュームのあるパスタが登場。珍しいものは全くないが味はまあ普通に美味いか。この近辺は昼食の選択肢が極端に少ないことを考えるとこれもあり。

 

 いずみホールへは地下鉄で大阪ビジネスパークを目指す。地図で見たらこの駅の方が大阪城公園駅よりも近く見えたが、実際には出口から距離があるし、しかも地下鉄長堀鶴見緑地線はやたらに深くて上下移動が大変ということで、この駅を利用するメリットは皆無と判断した。

 ホールに到着したのはちょうど開場直後。入口には入場の行列が出来ていた。結構観客が入っている模様。

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いずみホール

 

関西フィルハーモニー管弦楽団 Meet the Classic Vol.40

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客席とステージの段差が小さいのがここの特徴

指揮&お話:藤岡 幸夫
箏:遠藤 千晶
尺八:藤原 道山

【第1部】
アンダーソン:舞踏会の美女
千住 明:月光―尺八、十三弦とオーケストラの為の―
大島 ミチル:箏と尺八のための協奏曲―無限の扉―【遠藤千晶委嘱作品 関西初演】

【第2部】
新春を彩るシュトラウス・ファミリー名曲選
ヨハン・シュトラウス2世:喜歌劇「ジプシー男爵」より“入場行進曲”
ヨハン・シュトラウス2世:アンネン・ポルカ 作品117
ヨゼフ・シュトラウス:ワルツ「天体の音楽」作品235
ヨハン・シュトラウス2世:ポルカ・シュネル「ハンガリー万歳!」作品332
ヨハン・シュトラウス2世&ヨゼフ・シュトラウス:ピツィカート・ポルカ
ヨハン・シュトラウス2世:ワルツ「美しく青きドナウ」作品314

 第1部は尺八と箏が加わっての独特の曲。千住明の曲は華々しくて煌びやかな綺麗な曲。殊更に和風というわけでもなく、尺八や箏を普通の楽器として扱っている。

 藤原の尺八の音色が深くてそれには驚かされる。考えてみると私は尺八の音を生で聞くのは初めてである。思いの外、優れた管楽器であると言う印象を受ける。

 尺八と箏による協奏曲が大島ミチルの曲。和洋折衷のような奇妙なテイストのある曲であるが、予想よりも遙かに普通の協奏曲であった。尺八と箏の妙技がなかなかに冴え、関西フィルとの絡みも安定感があった。

 後半は関西フィルによるいかにもニューイヤーコンサートらしいワルツ集。ワルツと言えば結構淡々と指揮する指揮者も多いが、藤岡の指揮はなかなかに思い入れの入った感情のこもったもの。関西フィルもそれに合わせてシットリとした演奏をしていたので聴き応えのあるものであった。

 新年にふさわしい楽しいコンサートであったと言える。

 

 コンサートを終えるとホテルに戻るが、その前に夕食を摂っておきたい。通常なら新世界に夕食に繰り出すところだが、今日の気分は妙に和食が食べたい。そこで大阪城公園駅の手前の野外飲食店街で見かけた「さち福や」に立ち寄って「あじフライの定食」に卵焼きをつける。

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大阪城公園東の野外レストラン街

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さち福や

 出汁巻き玉子がなかなかに美味い。今の気分はこういうものをご飯で食べたいというものであったようだ。アジフライも美味いが、今の気分的には魚の煮つけでもあればさらにベストだったようである。

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和食がホッとする今日この頃

 夕食を終えると新今宮のホテルに戻って大浴場で入浴。風呂でゆったりとしてから部屋に戻ると、かなり激しい疲労が襲ってくる。テレビはろくな番組がないし、PCに向かっても全く身が入らないしということで、この日はいつもよりもかなり早めに寝てしまう。

 

大阪フィルハーモニー交響楽団 第534回定期演奏会

 先週末は京都に出向いたが、この週末は大阪でコンサート三昧と洒落込むことにする。とりあえず金曜日の仕事を終えると大阪に直行する。

 

大阪駅前で健康夕食

 大阪に到着すると立ち寄ったのは大阪駅前第1ビル1階の「玄三庵」。健康食品の店とのことである。この時間のメニューは「39品目の健康定食」のみとのことなのでそれを注文。実はこの店、昨年のクリスマスイブに訪れたのだが、その時は休みで立ち寄れなかっので今回がリターンマッチである。今の私は脂っこいものは胃がもたれるし、食欲自身も今ひとつパッとしないなど体の調子がガタガタなので、せめてもの健康食という考え。

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駅前第1ビルの玄三庵

 出てきた定食を見ると、確かに野菜がメインである。外食でこれだけ野菜が摂れるということはあまりないので、これは貴重。ご飯は玄米食だが、食べてみると意外に抵抗はない。腹に重くないので結構すっと入る。味付けも良いので基本的に野菜が嫌いな私でも実に美味しくいただける。これで600kcalちょっとというのだから、これは女性が好みそうである。男性の場合はご飯をお代わりしないとちょっと少ないかも。私はこれでも良いぐらいだが、問題は夜まで保つか。

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39品目の健康定食

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こちらが内容

 定食の後にはデザートを付けた。豆乳プリンとごまのパウンドケーキだが、この豆乳プリンが実に美味い。多すぎない量でこれもちょうど良い。

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デザートを付けた

 健康食と言えば味は二の次というイメージがあるが、ここのは味も十二分に楽しめて、健康がオプションでついてくると言う印象。こんな店がもっと近くにあれば、私の体も今ほどガタガタにはならなかったかもしれないのに・・・。日本の食卓もかなりジャンクでチープな食材に支配されてしまった。たまに地産地消の食品などを摂ると、その味の豊かさに驚かされることがある。日本は昔よりも豊かになったなどと言うが、本当の豊かさとは一体何だろうと考えることが増えてきた今日この頃である。

 

 夕食を終えるとフェスティバルホールへ移動する。今日は新年最初の大阪フィルのコンサートになる。

 

大阪フィルハーモニー交響楽団 第534回定期演奏会

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フェスティバルホールの赤じゅうたんは華やか

指揮/尾高忠明
チェロ/スティーヴン・イッサーリス

曲目/エルガー:チェロ協奏曲 ホ短調 作品85
   ブルックナー:交響曲 第3番 ニ短調「ワーグナー」(第3稿)

 イッサーリスのチェロが実に深い良い音色を出す。チェロ協奏曲についてはこのイッサーリスの音色に魅了された。

 ただ曲の方はエルガーの作品はどうもターナーの絵画のようで捉えどころのないところがある。ターナーの絵画同様に曲全体をロンドンの深い霧が覆っている印象である。どうも曲自体が茫洋としていて旋律をつかめなくて戸惑っている間に曲が終わってしまったというのが本音。

 もっとも演奏の方はイッサーリスのチェロに加えて、バックの大フィルの演奏もしっかりしていて見事なもの。正直、私としてはエルガーでなくて別の曲を聞きたかった。

 後半はブルックナー。第3稿は最終稿で一番簡潔で音色が派手な版であるとのこと。ようするに素人でも最も聞きやすい版ということか。実際にかなり金管が華々しくて、曲全体が結構格好良い。

 冒頭から大フィルの金管がかなり煌びやかで華々しい演奏を繰り広げる。尾高の指揮は終始生命力に満ちていて力強い。それに答える大フィルのサウンドは、さらにもう一段の緻密さが欲しくないわけでもないが、生き生きとして躍動感がある。こういう曲になるととかく大フィルの金管は途中で腰砕けになりがちだったのであるが、今回に関して概ね問題なく演奏し通した。弦楽陣も金管をしっかりと下支えしていたし、なかなかに迫力ある演奏となった。

 

新今宮の高級?ホテルで宿泊

 今回の大フィルの演奏は冴えのあるなかなかの好演だった。場内も大盛り上がりで観客も満足していたようである。私も満足してホールを後にする。

 コンサートを終えると新今宮へ移動する。今日は明日に備えてここで宿泊の予定。今回宿泊するのはホテル中央オアシス。この界隈では高級ホテルである。ここを選択したのはこの時間に戻ってきたら共同風呂のホテルは風呂に入れないから。

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新今宮界隈の高級ホテル、ホテル中央オアシス

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風呂はトイレから独立している

 ホテルにチェックインするとすぐに部屋風呂に湯を張る。ここは大浴場はないが風呂トイレセパレートの構造になっているので、ゆったりと入浴できる。これで今日の疲れをしっかり癒す。ゆったりとくつろいだ後はこの原稿を仕上げて、アップしたら就寝することにする。

 

ロイヤルオペラ・シネマシーズン ドニゼッティ「ドン・パスクワーレ」

 コンサートを終えると大至急の移動。地下鉄とJRを乗り継いでイオン桂川へ。ここのイオンシネマで上映されるロイヤルオペラハウスの「ドン・パスクワーレ」を見に行くつもり。桂川は意外に近く、30分強で到着。駅とイオンは接続しているのだが、ここから奥にやたらに深いのが巨大ショッピングモールの常。シネマは一番奥である。内部に入ると見たことがあるような気がするのだが、内部構造が西宮ガーデンズと恐ろしいほど類似点が多い。おかげで初めてでも迷わなくて助かる(笑)。

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イオンモール桂川はJR桂川駅から接続している

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イオンシネマ桂川

 

 

 ロイヤルオペラハウスシネマは特別上映と言うことで料金は3700円(べらぼうに高い!)。とりあえず18時過ぎの上映のチケットを押さえると、館内のフードコートへ夕食のために出向く。面倒くさいので「海鮮寿司 北海素材」「上海鮮丼」を注文するが、さすがに場所柄、CPの悪さには閉口。

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フードコートの寿司屋

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CPは良くない(具が少ない)

 とりあえず夕食を終えると映画館にとんぼ返りである。ここの劇場はなぜか上映直前でないと入場させないので、いささかバタバタした入場となる。なお上映は小型の劇場だったが、入場者数も10名ほどだったのでガラガラ。しかしこの劇場、音が良くない上に屋上駐車場を通る車の音か、ズズズという低周波が時折聞こえてくるのはかなり不快。

 

 

ロイヤルオペラ・シネマシーズン ドニゼッティ「ドン・パスクワーレ」

【演出】ダミアーノ・ミキエレット
【指揮】エヴェリーノ・ピド
【出演】ドン・パスクワーレ:ブリン・ターフェル
    ノリーナ:オルガ・ペレチャッコ
    エルネスト:イオアン・ホテア
    マラテスタ:マルクス・ヴェルバ

 資産家のドン・パスクワーレは、自身の資産を甥のエルネストに贈与する遺言を作成していたが、彼の進める縁談を断ってノリーナに入れ込むエルネストに腹を立て、自分が結婚してエルネストを家から追い出すと言い始める。そこでエルネストの友人であり、ドン・パスクワーレの主治医でもあるマラテスタが、ノリーナと共に一計を案じる。マラテスタの妹と偽って清楚で大人しい女性に扮して現れるノリーナ。ドン・パスクワーレは気に入って直ちに婚姻するが、婚姻が済んだ途端に彼女は急に気の強い浪費家の女性に変貌し、ドン・パスクワーレの金で家の中のものを一新してしまう。振り回されて困り果てるドン・パスクワーレは・・・というコメディ。

 ノリーナ役のオルガ・ペレチャッコはロイヤルオペラ初登場とのことだが、力強い超音波ボイスでまさにはまり役という印象。一方エルネストのイオアン・ホテアはいかにも気弱な青年という印象の美しいテナー。曲者マラテスタを演じるマルクス・ヴェルバはなかなかの実力者だが、やはり一番印象が強いのはドン・パスクワーレのブリン・ターフェルの怪演だろう。いずれも歌唱のレベルの高さは当然としても、なかなかの芸達者なのには驚かされる。本演出はかなり複雑な仕掛けも多いので、演じるには大変さがあるだろうが、難しい歌唱をこなしつつコミカルで激しい演技も行うのには驚かされる。

 演出は最近流行りの現代置き換え型のものだが、本作についてはそう違和感も無理もない。時代を現代に置いたことで、昔懐かしいアメリカンホームコメディ(「奥様は魔女」とか)の空気がある。なおドン・パスクワーレをややマザコン的に描いていたのは今風か。ただおかげで、母親との思い出の家を滅茶苦茶にされてしまったドン・パスクワーレがいささか哀れに過ぎて、正直「いくらなんでもやりすぎでは」という気もしてしまう。なお作品の時代背景の違いで仕方ないのだが、さすがに最後にノリーナが「この事件の教訓は、年老いてからの結婚なんて愚かなことはしないこと」と歌った時には場内が一瞬ざわめく場面も。これは「おいおい」というような反応だった。確かに今日の社会でこれを大っぴらに言ったら老人虐待になるだろう。

 まあ総じて言うと、新年向きの楽しいドタバタ劇であった。どうしてもドタバタばかりに気が取られがちになってしまうが、ドニゼッティの軽妙で洒落た音楽も実によくできている。


 上映を終える洛西口から阪急で烏丸に移動、ホテルに戻るのである。いささかハードな一日だったので疲れた。大浴場でしっかりと疲れを取るのであった。明日はやや早めに行動を開始することになる。

 

「ニーノ・カルーソ」展見学後、京都市響のニューイヤーコンサートを聴きに行く

 翌朝は目覚めると8時になっていた。この部屋の難点は窓がない(一応窓はあるのだが、数センチのところに隣のビルの壁があるのでないのと同じ)ので外の明かりで目覚めるということができないこと。朝の時間が決まっている場合には目覚ましは必須である。

 目覚めるとレストランでバイキング朝食。今日のおばんさい朝食というやつである。とりあえず今日の活動に備えてガッツリ燃料補給。

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京のおばんさいバイキング

 さて今日の予定だが、美術館に一か所立ち寄ってから京都市響の新年コンサートに出向く予定。特に出かけるのを急ぐ状況でないので、部屋でしばしこの原稿を入力したり、朝風呂を浴びたりしてくつろぐ。

 昼前にはホテルを出る。今日のスケジュールは京都市響のニューイヤーコンサートだが、その前に美術館に一か所立ち寄りたいので東山に移動。ずっと工事中だった京都市美術館は外観工事は一段落した模様であり、その姿が見えてきていた。再開館も近そうである。

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京都市美術館も改装工事がほぼ終わった模様

 

 

「記憶と空間の造形 イタリア現代陶芸の巨匠 ニーノ・カルーソ」京都国立近代美術館で2/16まで

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 イタリアの現代陶芸家であるニーノ・カルーソの作品を展示。

 初期の作品は人体を思わせるフォルムの樂焼など、いかにも陶芸家というような作品であったのだが、どうも彼の本領はそこではないようである。だんだんと陶器はあらゆる材料の一つの選択肢という位置づけになってくる。実際に鉄くずなどを加工した作品や、合板で作成した作品なども登場する。

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柱の作品

 彼の一つの転機となったのは、発泡スチロールを発熱カッターで切断し、それを型にして成型した陶器のブロックを使用した作品が登場したあたり。この辺りから造形の自由度がさらに増し、ブロックを積み上げる形で塔や門などの巨大造形に挑み始める。この辺りになると彼の出身地であるイタリアを反映してか、ローマ神殿などを連想させるような造形がメインとなってくる。

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後ろの丸は別人の作品だが、やけにマッチする

 なお所蔵品展のところで、彼以外のイタリア現代陶芸作家の作品も展示されていたが、そちらも彼の作品とどことなく相通じる雰囲気があったことから、この方向が現代イタリア陶芸のトレンドなのかもしれないなどと感じた次第。

 

 

 所蔵品展のほうも一回りしたが、今回は大作の展示が多い。その中で印象に残ったのは川端龍子の「曲水図」小松均の「雪の最上川」。共に独特の質感表現が興味深いところ。

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曲水図その1

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曲水図その2

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雪の最上川その1

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雪の最上川その2

 

 

昼食に東山でそばを頂く

 美術展を一回りしたら、コンサートに出向く前に昼食を摂ることにする。と言っても朝食がやや遅めなので腹はあまり減っていない。そこでそばにすることにする。立ち寄ったのは東山の「三味洪庵」。「鴨なんばそば」と「牡蠣の天ぷら」を注文。

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三味洪庵

 そばは美味いがさすがに京都だけあって薄味。そば自体もかなりあっさりと上品な味。個人的にはもっとそばそばしい下品なそばのほうが好みか。なお牡蠣の天ぷらについては残念ながらやはり牡蠣の鮮度がやや劣ることを感じずにはいられない。そもそも内陸の京都で牡蠣を選択したのが間違いか。しかもフライでなくて天ぷらは素材がシビアに出てしまう。

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鴨なんばそばと牡蠣の天ぷら

 昼食を終えると地下鉄でホールへ移動する。ホール内はまずまずの入り。ステージ上に花が飾ってあったりなど新年らしい演出。また今回は女性陣は色とりどりのドレスで登場で華やかである。

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ステージはいつもよりも華やか

 

 

京都市交響楽団 特別演奏会「ニューイヤーコンサート」

[指揮]クレメンス・シュルト
[ピアノ]岡田 奏

シューマン:歌劇「ゲノヴェーヴァ」op.81から序曲
シューマン:ピアノ協奏曲イ短調 op.54
シューマン:交響曲第3番変ホ長調「ライン」op.97

 シュルトの指揮は、その指揮スタイルからも覗えるようにかなりロマンチックで流麗・・・というか粘っこい。かなりネットリネットリとした指揮である。おかげで相当に甘々のシューマンとなった。

 二曲目はウルトラセブン。岡田のピアノはかなりロマンチック・・・というよりもアクの強いクセのある演奏。テンポの揺らし、過剰な強弱、変拍子とありとあらゆる仕掛けをしてくる。方向性としては指揮者のシュルトと合致はしているのだが、シュルトに輪をかけての粘っこい演奏。さすがにシュルトも合わせるのに苦労しているように感じられた場面があった。なおこのような演奏に合わせてもボロボロにならないのは流石に京都市響と言えるかもしれない。なお岡田が一切の制約を外されたカデンツァとアンコールはもっと凄まじかったので、まだこれでも抑えているのだろう。

 ラインは予想通り、いきなり旋律を謳わせるし膨らませる。表現意欲に満ちた非常にロマンチックな演奏。時々ハッとするような美しさを感じさせる一方で、シューマン特有の構成の緩さのようなものも出てしまって、冗長で緩慢に感じさせる部分もある。良い意味でも悪い意味でも甘々の演奏で、やはり良くも悪くも若さが溢れている。

 総じて二人とも若さがやや暴走気味に感じられる部分があった。今後さらに経験を積んで良い意味でのしたたかさが出てきたら大化けする可能性は高そうだ。それに期待したい。

 

 

びわ湖ホールに新年オペレッタ「こうもり」を見に行く

 さて新年が始まったものの、やはり正月休み明け5日間フル勤務は結構キツい。今週は私の予想よりも思いの外、心身が疲労してしまった。精神的な疲労は週末活動で癒やすことも出来るかもしれないが、肉体的疲労は気をつけないとさらに溜まってしまうことになりかねない。その辺りは私もそろそろ「年齢」を考える必要がありそうである。

 さて私の週末活動もいよいよ本格的に始動となるこの週末は、京都方面にコンサートに出かけることにした。まずは土曜日にはびわ湖ホールで開催される喜歌劇「こうもり」を見に行く。

 午前中に家を出るとJRで京都に向かう。京都駅を降り立った時に感じるのは寒さ。今年の冬は概ね暖冬であるが、京都は大阪などよりは寒いようである。さすがに夏は暑くて冬は寒い地獄都市(笑)。そのせいか、いつもに比べると観光客は少ない模様。それが顕著に反映されているのはコインロッカーの空き。駅南のコインロッカーにかなり多くの空きがあったので、とりあえずでかいキャリーはそこに入れておくことにする。

 

 

東洋亭を断念して昼食は京都駅で中華

 さてまずは昼食を摂る必要がある。最初は「東洋亭」に行くつもりだったのだが、店の前には大行列で相当待たされそう。今日はそんな時間的余裕はないので、別の店を探すことにする。近くの中華料理屋「洛楽」がスムーズに入店できそうだったので入店、青椒肉絲の定食(1380円)を注文する。

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東洋亭はこの大混雑

 青椒肉絲の味はまずまず合格点。ただ麻婆豆腐は辛いのはいいのだが、何やら特殊な中華スパイスが加えられている模様で味にややクセがある。この辺りは私の好みとは若干ズレるところ。ただ味自体は悪くないので、一品で取っていけばなかなか良いかも。とにかく京都駅周辺は昼食の選択肢が意外に少ないので、選択肢が増えるのは良いことだ。

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近くの「洛楽」で青椒肉絲を注文した

 昼食を終えるとホールに移動することにする。今日の公演はびわ湖中ホールで。大ホールの方ではウィンナワルツオーケストラといういかにもの新年企画があるようで、ロビーは結構混雑している。

 

 

「びわ湖ホール オペラへの招待 J.シュトラウスⅡ世作曲 オペレッタ『こうもり』」

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びわ湖中ホール

指揮:秋山和慶
演出・お話:中村敬一

アイゼンシュタイン:谷口耕平
ロザリンデ:船越亜弥
フランク:美代開太
オルロフスキー公爵:八木寿子
アルフレード:清水徹太郎
ファルケ博士:黒田 博
アデーレ:熊谷綾乃
ブリント博士:坂東達也
イーダ:山田知加
フロッシュ:林 隆史

 びわ湖ホール声楽アンサンブルによるヨハン・シュトラウスの喜歌劇。お笑いでおふざけな軽い一品であるが、そこはさすがにヨハン・シュトラウス、音楽にはワルツの要素が満載である。モーツァルトのフィガロなどを連想させるところがあるが、それよりもさらに軽妙でお洒落さが強いという印象。

 声楽陣は概ね過不足のないところであったが、圧倒されるというほどのものではない。ファルケ博士の黒田博はなかなかの存在感であった。ロザリンデの船越亜弥は残念ながら少々弱い。本来は歌唱が全くないはずのフロッシュの林隆史が、それでは見せ場がないとばかりにカンツォーネをガンガン謳いまくってコメディリリーフとなっていたが、「一樽、二樽、三樽チア」は爆笑もの。こういうおふざけ作品ならではの遊びである。

 なお日本語公演であったために、歌詞の当てはめが不自然で、歌いにくそうな場面が何度か見受けられた。また日本語での台詞については、残念ながら私の耳には聞き取りにくい場面が多々。軽妙なコントを含めたやりとりがあったのだが、場内の今ひとつの盛り上がりを見ていると、やはり後ろの方の席では台詞が良く聞き取れなかった観客も少なくないのではと思われた(観客に高齢者も多いようであったし)。

 管弦楽は秋山和慶指揮の日本センチュリー選抜。小編成ながらも結構ガンガン鳴らしていた印象。ただところどころ少々雑ではと感じる部分がないでもなかった。

 新年を飾るにふさわしいチョイスと言うところか。場内の観客も満足しているようではあった。


 コンサートを終えると臨時バスで大津まで移動。とにかく交通アクセスの悪いホールなのでこのバスは貴重である。

 

 

2019年度クラシックライブベスト5

 2019年度が終了するに当たって、恒例(?)の私の本年度のベストライブとワーストライブを選定しておくことにした。例によって異論・反論等はあるだろうが、これはあくまで私の趣味と偏見に基づいての私選ということですのでお許し願いたい。また当然のことながら私もすべてのライブを聴いているわけではないので、多分に漏れなどもある。異論・反論などがある方はご自身のベストライブなどをコメントで記載頂ければありがたい。

 

 

ベストライブ

 まずはベストライブだが、今年は名演目白押しの中から以下のベスト5を選ぶことにした。

第5位
ズービン・メータ指揮 ベルリンフィルハーモニー管弦楽団

 なんでベルリンフィルがこんなに下なんだという苦情が出そうだが、私としては「ベルリンフィルならこのぐらいの演奏はして当然」という意識があるから。私の選定は「思いがけない名演」といった類いの方が高評価になる。なお当然のことながらベルリンフィルの演奏は極めてレベルが高く、その技倆には圧倒された。またメータも晩年になって明らかに一段高い境地に至ったようであることを感じさせられる。実際に昨年のバイエルンとの名演なども未だに記憶に新しいところである。

第4位
エリアフ・インバル指揮 ベルリンコンツェルトハウス管弦楽団

 緊張感漲り、圧倒されるようなマーラーの5番が圧巻であった。情感溢れる第一楽章には思わず涙が出そうになったのが記憶に残っている。また難病が報じられて心配されていたアリス=沙羅・オットが、未だに健在であるのが分かったことはうれしいこと。

第3位
ジョナサン・ノット指揮 スイスロマンド管弦楽団

 いささか荒っぽさのようなものもあったが、力強くて躍動感に満ちていたマーラーの6番が極めて印象的。ノットもオケもノリノリなのが客席にまで伝わってきた。この曲ってこんなにすごかったのかと改めて再認識した。

第2位
シャルル・デュトワ指揮 大阪フィルハーモニー管弦楽団

 セクハラ問題で干されていたデュトワの復帰公演だが、大フィルがいつもの大フィルとは全く違う音を出していたのに驚かされた。弦は引き締まり、金管は鮮やかにと極めて色彩的に描き出した幻想交響曲は強く印象に残る。さらに急遽尾高の代演として臨んだ「サロメ」もこれまた凄かった。何よりも、これ以降大フィルの演奏が一変してしまったことがデュトワがただ者ではないことを示している。

第1位
セミヨン・ビシュコフ指揮 チェコフィルハーモニー管弦楽団

 ポリャンスキーとはまた異なった方向での悲愴の名演が登場した。抜群の集中力の中で極めて劇的で美しく描き出した悲愴には深く心を揺さぶられた。楽章が進むにつれて音楽がクライマックスを迎える全体構成は見事の一言。演奏終了後の出し切ったというよなグッタリしたビシュコフの姿が記憶に焼き付いている。

 

 次点
ヴァレリー・ポリャンスキー指揮 九州交響楽団

 ポリャンスキーが手兵以外のオケでどのような演奏を披露するかと思っていたが、九響を最大限に鳴らしてきたのには驚いた。やはりポリャンスキーはただ者ではないと実感させるに十二分であった。また緊張感溢れる演奏のみでなく、くるみ割り人形で見せた茶目っ気や、アンコールでのメロドラマなど、この指揮者の表現の幅広さをも感じさせる内容であった。

 

 

ワーストライブ

 名演目白押しの中でも首をかしげるような迷演も登場するもの。そのようなコンサートをリストアップします。

第3位
トーマス・ダウスゴー指揮 BBCスコティッシュ交響楽団

 後半のマーラーの5番は良かったのであるが、問題は前半。特に遥か沖合をモーターボートで突っ走るかのようなフィンガルの洞窟は情緒もクソもない演奏で、思わず途中で帰ろうかと思ったぐらい。

第2位
チョン・ミン指揮 イタリア交響楽団

 これは純粋にオケが下手。アンサンブルはガタガタ、音色も濁りまくりだった。笑ったのはアンコールのロッシーニとメンデルスゾーンの「イタリア」はやけにイキイキとした良い演奏だったこと。なぜこちらを正規プログラムのメインにしなかったかと疑問噴出。

第1位
テオドール・クルレンツィス指揮 ムジカエテルナ

 ある意味で今年最大の話題の演奏。異常に集中力が高く、曲芸のようにアクロバチックで個性の強すぎる演奏は、好悪が真っ二つに分かれそう。かなり「変則的」な演奏であるために、この演奏に関してはベスト1かワースト1かのいずれかしかあり得ないというところ。私としては、多用しすぎる変拍子や突然の劇的な強弱変化の多くに必然性を感じず、悪趣味に過ぎるという印象。

総評

 今年も多くのコンサートに出かけたが、今年のトピックは二週間ほどの間にウィーンフィル、ベルリンフィル、ロイヤルコンセルトヘボウを梯子した「大散財ウィーク」だろう。いずれの演奏もそれなりに満足度の高いものではあったが、鮮烈な印象を残すという意味ではさらにこれらを越えているコンサートは多数あった。

 それらを考慮した上で、今年はあえてチェコフィルをベスト1に挙げた。ビエロフラーヴェクの没後、どうなるかが注目されたチェコフィルであるが、後任のビシュコフはチェコフィルにまた新たな風を吹き込みそうであることが期待できる。ベスト2はやはり大フィルの演奏を一変させたデュトワを挙げる。この演奏は私も心底驚いたのだが、コンサートに参加した聴衆の中に帰り道で「これが本当に大フィル?」という声があちこちで上がっていたのが記憶に残る。やはりデュトワはただのスケベ親父ではなかったと言うことだろう。この好評のおかげか2020年にもデュトワの客演が決まったようでうれしい限り。ベスト3のノットは荒っぽいが異常なまでのノリの良さに巻き込まれたし、ベスト4のインバルは流石に深い演奏であり、心底感動させられたし、場内もかなり盛り上がっていた。そしてベルリンフィルは5位に登場。技術的レベルの高さは当然としても、メータの指揮も見事であった。

 なお年末にあえて九州まで出向いたポリャンスキー/九州交響楽団などは予想を超える鮮烈な演奏であった。ベスト5に割って入るにはどうかと言うところがあるが、やはり特記せざるを得ない名演ではあったと言うことで次点に加えた。ポリャンスキーは2021年度に新日フィルにも登場する予定だそうなので、是非行ってみたいものである。私としては関西のオケとの組み合わせなども聴いてみたい。

 さてワーストの方だが、ワースト3のBBCは「なんでこんな演奏になるの?」としか言い様のなかった「フィンガルの洞窟」が悪い意味で印象に残ってしまった。メインのマーラーの5番は一転して良かっただけに、指揮者もオケも駄目なわけではないはずなのだが・・・。ワースト2のイタリア交響楽団は文字通り絵に描いたようなダメダメ(笑)。イタリア人にベートーヴェンは無理なのかとまで思ってしまった。そして大問題がワースト1のムジカエテルナ。正直なところ私としては評価に困ったというのが本音。ある意味で異常なまでにレベルの高い演奏とも言えるのだが、一方で異常なまでに悪趣味な演奏とも感じた(笑)。とにかく評価に困った挙げ句、私はあえてワースト1に挙げた。これは異論のある方も多いだろうとは思う。

 ちなみに今回ワースト1に上げたムジカエテルナは、2020年にも再来日して、今度はベートーベンの第九を演奏するらしい。どんな演奏が飛び出すか興味深いところだ。本来ならワースト1のオケに再度行くということは考えにくいが、このオケの場合は事情が少し通常と異なるので聴いてみたいとは思っている。

 

 

2020年度ベストライブはこちら

www.ksagi.work

2018年度ベストライブはこちら

www.ksagi.work

イブの夜は読響の第九公演で・・・

 いつも誰も来ないひとりきりのクリスマス・イブ  Silent night, lonely night ・・・

 

 今日はクリスマスイブとのこと。やはりクリスマスイブの夜となればロマンチックに・・・私は一人で第九のコンサートへ。これでも私の隣に美しい女性でもいればロマンチックナイトなのだが、残念ながら今年も私はサイレントナイト、ロンリーナイトである。

 それにしてもいつの間にクリスマスがイエス・キリストの誕生日から、恋人たちの式典に変わったのやら。立川にバカンスで滞在中のイエスは、クリスマスの主役を乗っ取られたことでサンタクーロスに嫉妬しているようであったが(笑)。

 

 とりあえず今日の仕事を終えると大阪に移動する。今日はフェスティバルホールで読響の第九である。

 私が夕食を摂ろうと目星をつけていた店は、クリスマス営業で予約でもしているのか店が閉まっている。仕方ないので他の店を探すが、時間もないし面倒なこともあって、久しぶりに大阪駅前ビル地下の「紋次郎」「特製つけ麺(980円)」を頂くことに。

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駅前ビル地下の紋次郎

 もっちりした太麺がなかなかにうまい。鰹節がよく効いているのがここのラーメンの特徴。ただいささか味が濃いめではある。

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特製つけ麺

 夕食を終えるとフェスティバルホールへ。フェスティバルホールもクリスマスデコレーションである。こういうのを見ているとロンリークリスマスが身に染みて切ない。

 

読売日本交響楽団 第24回 大阪定期演奏会

指揮/アイヴァー・ボルトン
ソプラノ/シルヴィア・シュヴァルツ 
メゾ・ソプラノ/池田香織
テノール/小堀勇介
バリトン/トーマス・オリーマンス
合唱/新国立劇場合唱団

曲目/ベートーヴェン:交響曲 第9番「合唱付き」

 ボルトンの第九はノンビブの古典的演奏。ノンビブのせいで音色はかなり硬質な印象を受ける。全体的にドライ気味でメリハリが強く、やや速めのテンポでグイグイと進めていく前進力の強い演奏である。もっとも表情自体はやや淡泊めの印象を受ける。

 合唱に新国立劇場合唱団を起用しているだけあって、合唱が抜群にうまい。年末の第九となると素人合唱団を起用するオケが多い中で、これは明らかにアドバンテージ。それだけに精細な表現が可能となっている。実に鮮やかで明快な第九という印象を受けた。

 終演後は結構な盛り上がりとなっていたが、それもさりなん。満足度は十分に高い内容であった。読響は2年前もクリヴィヌが室内楽的な第九を意図していたようであるが(実演はクリヴィヌの急病で急遽ゲッツェルの代演となって、いささかちぐはぐな内容となってしまったのだが)、どうやら普通の第九はやらないつもりであるのか?


 まずまずの内容に満足して家路に就くのであった。第九の時は1時間半ほどで終わるので今日は早めに家に帰れる。それにしても外は寒い。寒さが懐と心に染みる・・・。

 

NHK交響楽団演奏会大阪公演

 翌朝は6時半頃に目が覚める。昨日はかなり早めに就寝したのでかなり寝たという感覚がある。そのせいか体自体は若干軽くなった。とは言うものの、足腰など随所にガタが来ている。

 8時頃に朝食のために一旦外出する。立ち寄ったのは喫茶「ドレミ」。通天閣の足下にある喫茶店だ。「モーニングのB(450円)」を注文する。

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横に見えているのが通天閣の足

 ボリュームはやや少なめに感じる。またやや酸味の強い珈琲は残念ながら私の好みとはズレる。

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モーニングBセット

 

 

 朝食を終えて戻ってくるとテレビを見ながら荷物をまとめ、ホテルをチェックアウトしたのは10時前。さて今日の予定だが、16時からNHK大阪ホールで開催されるN響大阪公演を聴きに行くのだが、それまでの予定が全くない。

 と言ってもここのところの毎週のような大阪通いで既に大阪周辺に立ち寄るべき場所はないし、キャリーに長崎土産まで増えた荷物は重いし、あちこち歩き回る気はしない。そこで梅田近辺のネカフェに籠もってしまうことにする。結局はネカフェに4時間ほどお籠もりして原稿作成。何かこういうことをやっていると、本当に遊んでるんだか仕事だか分からなくなってくる。それでなくても私は「遊ぶように仕事をし、仕事のように遊ぶ」と言われている人間である。旅行でどこかに向かう時も無意識のうちに「さて、お仕事、お仕事」という言葉が出てしまうぐらい。

 ネカフェで執筆に励むとコンサート会場に向かう途中で「蕎麦居酒屋弦」に立ち寄って軽く昼食。まあ可もなく不可もなく。

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人通りがかなり多い

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ヘレカツ丼と蕎麦のセット

 昼食を終えるとNHK大阪ホールへ移動。ところで今日のプログラムはチャイコフスキーの交響曲第1番。つい先日(というかこの遠征の最初だ)にポリャンスキー指揮の九州交響楽団で同曲を聴いたばかり。かなりマイナー曲にもかかわらずこんなこともあるとは驚き。楽団にも指揮者にも何の関連もないことから、偶然とは恐ろしい。

 今回はチケットの確保が遅れたせいもあって、S席にもかかわらず1階の一番奥の屋根被り席というひどい席。それにしても毎度N響の地方公演は全く情報が入ってこないのだが、やはり何かの会員とかの内輪ルートでないと情報が来ないのだろうか? とにかくNHKとは採用から何からすべてが「コネ」で動く会社である

 

 

NHK交響楽団演奏会大阪公演

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【指揮】パブロ・エラス・カサド
【ピアノ】ダニエル・ハリトーノフ

◆リムスキー・コルサコフ/スペイン奇想曲 作品34
◆リスト/ピアノ協奏曲 第1番 変ホ長調
◆チャイコフスキー/交響曲 第1番 ト短調 作品13「冬の日の幻想」

 一曲目のスペイン奇想曲はいきなり派手派手ギラギラの演奏である。この曲自体はあくまでロシア人がスペインをモチーフにして作曲した曲なのであるが、そのロシアの要素はどこかにすっ飛んで、あくまでスペイン人によるスペインの曲という印象。ラテン色が全開となっている。

 二曲目のリストは若きイケメンピアニスト・ハリトーノフが、その甘いマスクに似合わぬ色気のないガツンガツンとした極めて硬質な演奏。これとガンガン鳴らすバックのカサドが相まって、第一楽章からかなりけたたましい演奏となった。この曲はピアノの色男・リストらしくところどころに口説きのモチーフがあるのだが、ハリトーノフはそういう部分も肩を怒らしてガンガンと演奏してしまうので、これでは女は落ちない(笑)。もう少しマスク通りの甘さが欲しいところ。第三楽章なんかも茶目っ気がないので、やたらに忙しいだけの演奏。

 全体的に「若いな」という印象を強烈に受けた。アンコールで露骨に出たが、彼はタッチが硬質なだけでなく、早弾きの傾向もあるようである。もう少しキャリアを重ねての円熟味が欲しいところだ。

 最後のチャィコフスキーの交響曲第1番は、スペイン奇想曲で予測できたとおりの明朗快活で明るい演奏。カサドはN響からかなり明るくて力強い音色を引き出している。また彼の演奏は音量が上がるとテンポも上がるという大時代的な傾向がある。印象としてはかなり派手で堂々たる演奏である。終わってみると曲の粗が感じられない見事な大交響曲となっていた。これはこれで面白いし、N響からこのような音色を引き出したカサドはただ者ではないと感じる。だが、これがチャイコかと言えば少々疑問。「冬の日の幻想」というよりも「夏の日の喧噪」という感じを受ける。

 さてどうしても先週の九響の演奏との比較を行わないわけにも行かないのだが、演奏技術では残念ながら勝負にならない。アンサンブルの精度、ソロ楽器の技倆、すべての点で残念ながら九響はN響には遠く及ばない。ただ演奏から受けた感銘という観点から考えると、曲の粗も含めてチャイコフスキーの人間像をまざまざと描き出したポリャンスキーと、その意図に答える精一杯の演奏を行った九響に軍配が上がる。N響の演奏は「綺麗な、上手いな」で終わってしまった感がある。


 コンサートを終えると帰宅の途につく。帰りの新快速が大混雑で困ったが、神戸でルミナリエがあるせいとのこと。そう言えばそんなイベントもあったっけ。個人的に全く興味がないものだから知らなかった。

 

 

九州から舞い戻って関西フィルの第九コンサートに出向く

 翌朝は6時半に起床したが、正直なところ体がズッシリと重い。疲労回復の慰安旅行のつもりが逆に疲れてしまったか。今回はかなり予定は減らしていたつもりなのだが、それでも体力の衰えの方が想定以上だった模様。いよいよもって徐々に鍛え直す必要がありそう。

 目が覚めて体が動くようになると朝食に出向く。朝食はバイキングだが、そこはやはり旅館の朝食。ルートインなどよりは品数も多くて豪華である。とりあえずしっかりと腹に入れておくことにする。

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さすがに温泉旅館の朝食はビジホよりは豪華

 

 

 今日は11時のスカイマークで神戸空港に戻るつもり。その後は大阪で関西フィルの第九である。朝食後に朝風呂を浴びると、9時頃にはチェックアウト、長崎空港まで突っ走る。

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長崎空港に到着

 長崎空港には30分ちょっとで到着。キャリーは手荷物で預けると空港内で土産物を物色。やはり福砂屋のカステラは外せないところ。

 飛行機の中では疲れてひたすら爆睡。気がついたら神戸空港の上空に到着していた。降り立った神戸空港はやや冷やっとしている。

 神戸空港からザ・シンフォニーホールへ直行するが、開演時間まであまり余裕がない。結局は途中で昼食を摂る暇もなく、ホールに着いてから喫茶で摂ったサンドイッチがこの日の昼食。全然足らん。

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この日の昼食はこれになってしまった

 ホール内は補助席まで出る盛況だが、逆に会員席にはポツポツと空席があると言う状況。年末の第九ぐらいは聴きたいと当日券を購入して入場する客が少なくない一方で、今更年末の第九なんてどうでも良いとスルーする会員が多数という構造か。実際のところ私も、この週末に特に出かける予定がなかったら、わざわざこれだけのために大阪まで出てくるかと言えばそれは疑問だ。前から思っていたのだが、年間会員の公演からそろそろ第九演奏会を外すべき時期に来ているのでは。それでなくても毎年、第九については指揮者が変わる程度という印象だし。

 

 

関西フィルハーモニー管弦楽団「第九」特別演奏会

[指揮]村上寿昭
[ソプラノ]並河寿美
[アルト]成田伊美
[テノール]糸賀修平
[バリトン]西尾岳史
[合唱]田辺第九合唱団

ベートーヴェン:「命名祝日」序曲 op.115
ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 op.125「合唱付」

 一曲目は初めて聴く曲であるが、あからさまにセレモニー用の曲であり、それ以上でもそれ以下でもない。曲としては大したことがないという印象。

 第九は村上の演奏は勢いと元気でゴリゴリと進むタイプ。関西フィルの演奏もガンガンと力強い。ただ関西フィルのキャラクターからすると、もう少し精緻な演奏を期待したいところ。元気が正面に出た結果、いささか雑な印象の演奏となっている。

 声楽陣はバリトンの西尾はやや表現過剰の傾向あり、もう少しドッシリと落ち着いたバリトンを聴かせて欲しい。また合唱陣が男声にかなり高齢化が見られており、圧倒的な人数差にプラスしての影響で、どうも男声が女性に埋もれてしまう傾向があるのが気になった。

 

 

 コンサートを終えると今晩の宿泊のために新今宮へ。泊まるはいつもの定宿。とりあえず荷物を部屋に置くとすぐに夕食のために新世界に繰り出す。

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新世界は今日も賑わっている

 夕食を摂る店を探しながらプラプラしている時にたこ焼きが目に入る。何やら久しぶりに食べたい気分。そこで「かんかん」でたこ焼きを一皿購入。そのまま店頭で頂く。これが大阪の醍醐味という奴でもある。

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たこ焼きのかんかん

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その場で頂く

 夕食はいろいろ考えた結果、久しぶりに「グリル梵」に立ち寄ることにする。いつもビフカツばかりでは芸がないので、今回は「タンシチュー」にライスをつける。

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久しぶりのグリル梵

 箸で切れるタンが柔らかい。その柔らかいタンをデミグラスソースで煮込んであるわけだが、やはりこのソースが絶妙に美味い。これはなかなかに上質な味である。

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タンシチュー

 夕食をゆったりと堪能すると、帰りにダイソーに立ち寄って麦茶を仕入れてからホテルに戻る。入浴する気力もないので簡単にシャワーを浴びて早めに就寝してしまう。本当は原稿執筆をするつもりだったんだが、今日はグッタリとしてしまってその気力が全く湧かない。こういう時は無理をするよりもさっさと寝てしまう方が人生効率的である(笑)。

 

 

山城と展覧会を回ってからポリャンスキー指揮・九州交響楽団のコンサートを聴きに行く

 翌朝は7時に起床。とりあえずレストランに朝食へ。朝食バイキングはまずまず。

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朝食バイキングはなかなか

 朝食を追えると朝風呂へ。武雄温泉の湯でゆったりと体を温める。

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運び湯用の給水車が表に止まっていた

 朝風呂を済ませると荷物をまとめてチェックアウト。送迎バスで博多駅まで送ってもらう。今日の予定は19時から九州交響楽団の演奏会。しかしそれまでに博物館や城郭に立ち寄る予定。

 博多駅に到着するとタイムズレンタカーでノートを借りる。まず最初に立ち寄るの福岡市立博物館。微妙に交通の便が悪い位置にあるので公共交通機関ではアクセスしにくい場所にある。

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福岡市博物館

 

 

「挑む浮世絵 国芳から芳年へ」福岡市立博物館で12/22まで

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 幕末に登場した奇想の浮世絵師・歌川国芳の作品を紹介すると共に、彼の弟子に当たる「芳」の字を名に持つ一門、特に明治にかけて活躍した月岡芳年を中心に紹介するという展覧会。

 いきなり目を惹くのは国芳の大胆かつ力強い武者絵。その過剰なまでの力強さ。時には大画面を活かした大スペクタクルは、今日の劇画を連想させると共に、場合によっては特撮的にさえ見える。

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この力強さ

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大スペクタクル

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ほとんど特撮怪獣もの

 一方で貪欲に新しい手法を求めた国芳が洋画を取り入れたと思われる作品も展示されていた。この辺りの画業に対する貪欲さは弟子の芳年などにも引き継がれているようである。芳年の作品には国芳の影響だけでなく、明確に洋画の影響が覗える。このような洋画の表現がリアルで力強い肉体表現に反映しているようだ。

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明らかに洋画表現を取り入りれている

 また一部のコーナーでは残酷絵も展示。国芳の首が飛んでいる絵などは、残酷を通り越してむしろ滑稽に見えたりもするが、これは誇張も取り入れた巧みな漫画的表現とも言える。またここでは芳年や落合芳幾による「血みどろ絵」とも呼ばれた作品も展示されている。

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残酷を通り越してユーモラスにさえ見える

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これは有名な妖怪絵

 

 

 その後は国芳の風刺画などを経て、「芳」の一門の作品などを展示。中でも芳年の精緻な作品が光る。彼が国芳の弟子として学んだ期間は決して長くはないらしいが、明らかに国芳のDNAを引き継ぐと共に、彼自身の境地をさらに開いているのが覗える。

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芳年の初期の作品

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彼もやはり洋画の研究をしている

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リアルでち密な表現が目を惹く

 非常に見応えがあり、実のところこれのためだけでも九州くんだりまで来た価値を感じさせる内容であった。やはり国芳、芳年の作品は面白い。館内には当時の絵双紙屋を復元している展示もあったが、当時はこのようにブロマイド的にこれらの絵を販売していたということを考えると、確かに一般庶民の受けを狙った表現という意味では今日のコミックにつながってくるのも理解できる。

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当時の絵草子屋

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国芳のこの表現はほとんど漫画

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そして「進撃の巨人」(笑)

 

 

続100名城の基肄城を見学する

 博物館の見学を終えると次の目的地へと移動する。そもそもわざわざレンタカーを借りたのはここに立ち寄るため。次の目的地は基肄城。百済救援のための白村江の戦で唐・新羅連合軍に大敗した大和政権が、来るべき唐の侵攻に備えて大宰府を守るために水城、大野城と共に整備した古代山城である。今回水城と共に続100名城に選定されている(大野城は100名城に選ばれている)。以前に訪問したことがあるのだが、その際には山上まで車で登ったものの、灼熱地獄の上に水を持参するのを忘れるという決定的ミスをしたために途中撤退している。そこで今回リターンマッチということ。

 山上はそもそもスキー場になっているのであまり広い道とはいえない(その上に路盤の状態も良くない)までも、山上まで車道が通っている。山上に駐車スペースがあるので、そこから山上に上ることにする。

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車を置くと山を登っていく

 スキー場になっている斜面を直登になるが、傾斜がきつくなる辺りで散策路が右手に見えてきているので、そちらを経由して上ることにする。

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スキー場の斜面を直登する

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途中で散策路の表示あり

 とは言うものの、既にこの時点で足はガタガタ。それどころか吐き気までしてくる状態。この一年ほどまともに運動らしい運動をしていないもので、どうしようもないほどに体力が低下している模様。実に情けない次第。脚力が弱ってしまって老人のようなヨタヨタした歩きになっているのを感じてしまう。

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ところどころ休憩所などもあり

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眺めも抜群なんだが・・・

 ヘロヘロになりながらようやく山頂に到着。ここには巨大な石碑が建っている。また周囲には巨石がゴロゴロしている。そして何よりも見晴らしが抜群。確かに地形的に要衝である。

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巨石がゴロゴロしたゲートのようなところを抜ける

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巨大な石碑が立っている

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南方の眺めは抜群

 

 

 ここから北に向かって尾根筋に沿って山頂までの広大な領域がかつての城域の模様。山頂手前では三重の堀切の跡も見られる。これが本丸というべき場所か。ここには城跡碑及び説明看板も立ててある。

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三重の堀切の先に北へ城域は広がる

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堀切を超えて本丸らしい場所へ

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城跡碑

 ここからさらに北側の別の峯に向かってグルリと城域はつながるようだが、そちらに進むと道が鬱蒼としてきた上に、かなり下らないといけない(ということは帰りはキツい登りが待っているということだ)ようであることから、途中で引き返してくることにする。残念ながら現在の状況では古代山城を一回りするだけの体力はない。

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さらに北に道は伸びるが

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やがてこの状況になるので撤退する

 スキー場の急斜面を足下に気をつけながら降りてくると、ここから車で一旦下山して、麓にある水門を見学に行くことにする。水門に至るには途中で民家の間の路地を庭先をかすめながら走るような箇所があるので、ノートで道幅ギリギリ、大きな車だったら進退窮まるだろう。また元々あった登山道は土砂崩れとかで通行止めになっているので、その手前に車を置く。

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道路は通行止め

 水門はかなり巨大な石組み。予想外の規模の大きさに驚く。古代山城はとにかく技術はなかったはずなのだが、それを人力で補っている印象。当時の大和政権にそれだけの動員力があったということか。だとすると、九州地域での支配力がそれなりにあったということになる。

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そのすぐ横にこの水門

 

 

博多に戻ってきて喫茶で一服

 久しぶりの山歩きでかなり疲れた。それにもうとっくに昼食時をかなり過ぎているので腹が減っている。しかしこの周辺には飲食店どころか店自体が何もない(と言うか、民家自体も多くはない)。そこで移動することにする。九州国立博物館に立ち寄ることも考えたが、現在の出し物は「三国志展」ということで、これは東京で既に見学済み。また太宰府に参拝する気もないし(今更受験する気はない(笑))、結局は福岡城でも見学しようと博多まで戻ってくることにする。

 護国神社の近くの駐車場に車を置いて、どこかで昼食をと思ったのだが困ったことにこの周辺には意外なほどに飲食店がない。しかも既に3時になっていて、大抵の店は昼休みかランチメニューは終了している。そこで最悪ガス欠の事態を防ぐためにせめて糖分だけでも補給しようかと見つけた喫茶店「BIOTOP」で季節のパフェを注文。

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BIOTOP

 芋のパフェということだが、味はなかなかに良い。その上に洒落ているので女子にはインスタ映えで喜ばれそう。ただこれで1500円(+税)というのは明らかに価格が高すぎ。

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芋のパフェ自体は美味いが・・・

 

 

久しぶりに福岡城を見学

 とりあえずの臨時のエネルギー補給は済ませたので福岡城に登ることにする。実はここはかなり以前に一度訪れたきりであり、その後は何度か近くを通って見事な石垣に心惹かれたものの、なかなか立ち寄る時間がなかったのである。以前の見学はかなり駆け足だったため、いつかもう一度見学したいと思っていたところである。

 南口から巨大な堀を横手に見ながら登っていくと、最初に多門櫓が出迎えてくれる。これは数少ないこの城の現存建築物らしい。

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いきなり多門櫓が迎えてくれる

 この多門櫓に沿って進んで回り込んでいくと二の丸に上ることになる。多門櫓がある廓は二の丸南郭らしい。この曲輪だけでもかなり広い。

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多門櫓に沿って回り込む

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二の丸への虎口を抜けて

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ここを抜けると

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多門櫓の裏手(二の丸南郭)に出る

 二の丸を進んでいくと本丸裏手に登る通路があり、そこを上ると天守台の裏側に出る。

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二の丸を進んでいくと

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本丸方向へ登る道があり

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天守台の裏手に出る

 

 

 そこから埋門の跡を抜けると天守台の枡形入口に出る。

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埋門跡を抜けると

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枡形虎口

 そこから登った先が天守台。かなり規模の大きな天守台であり、礎石跡などから推測したところでは五層の巨大天守があったのではないかと推測されるとのことだが、そもそも天守は存在しなかったという説も有力である。ただ天守がなかったとしても既に十二分な高さがあるので、高層建築のなかった当時だと十二分な視界は有しているので機能的には問題ない。もし天守を立てなかったのなら、江戸幕府を憚ってということになるだろうか。

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天守台の礎石跡

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見晴らしは抜群

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こんな天守があったという

 ここから枡形虎口を降りてくると広大な本丸。本丸には何やら怪しい物体が多数並べてあるが、どうやらチームラボによるライトアップイベントが行われている模様。入場ゲートで作られていた。ただ入場料1200円というのは少々高くないか?

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広大な本丸には怪しい物体多数

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入場ゲートが出来ていた

 下の二の丸もかなり広い。北東隅には門の跡らしい枡形が見られる。

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下の二の丸もかなり広い

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二の丸北東の虎口らしき構造

 とにかく黒田の居城らしくやたらに規模の大きな城郭であり、随所に高石垣もあって「見せる」ことも意識した構造になっていたように思われる。今日でも見ごたえ十分で、さすがに100名城に選定されていることはあるということか。昔に見学した時は速足で一回りしただけだったので、ほとんど何も覚えていなかったということが今回よく分かった(笑)。

 

 

ようやくかなり遅めの昼食

 福岡城の見学を済ませると、予定よりもかなり早めだがレンタカーを返却してホテルに入ることにする。かなり疲れているし、大分遅くなったがやはり昼食は摂っておきたい。結局この日の昼食は博多駅地下の「八仙閣」「セットメニュー(1500円)」を注文する。

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駅地下の八仙閣

 「チャーシュー麺(ハーフ)」「エビ炒飯(ハーフ)」「エビチリ(ハーフ)」の組み合わせ。チャーシュー麺はいかにも中華料理屋のラーメンと感じるシンプルでホッとする味。正直なところもう少し量が欲しかった。一方の炒飯は思ったよりも量が多い。飯にパラッと感があまりないが、味はマズマズ。ただエビチリについてはどうも一味か二味ぐらい足りない。使用しているエビはバナメイだと思われるが、エビ自体の味の薄さがそのまま料理の味の薄さにつながっている印象。

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チャーシュー麺とエビチリ

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エビチャーハン

 

 

宿泊は駅前のルートインホテルで

 昼食を終えたところでホテルにチェックインすることにする。今日のの宿泊ホテルは交通の便も考えて駅近くのルートイン博多駅前。ただこのホテルは立地の良さのせいか、平日にも関わらずルートインとしては宿泊料が結構高い。今まで何度か利用しているが、正直なところ宿泊料がジリジリと上がっていて、最近はそれを負担に感じるようになっている。

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ルートイン博多駅前

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シンプルなシングルルーム

 ホテルにチェックインすると、とりあえずシャワーで汗を流す。今日はかなり歩いた上にやや暑めだったので汗でぐっしょりである。汗を流してから着替えると再び外出。コンサートはアクロス福岡で開催なので地下鉄で天神まで移動する。

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アクロス福岡コンサートホール

 アクロスに到着した時には既に開場となっていた。ゾロゾロと入場。アクロスはシューズボックス型の構成のホールで、東京のオペラシティと構造が類似していると言えるだろう。音響はまずまずのようである。

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シューズボックス型のホールだ

 そのうちにロビーコンサートが始まる。そう言えば、東京でも新日フィルなどはロビーコンサートをするし、シティフィルもやっていた。また地方では札響、名フィルなどはロビーコンサートをしていた(アンサンブル金沢も大阪公演でやった)。しかし関西ではこれをやるオケはない。この辺りは文化の違いだろうか。

 

 

九州交響楽団第380回定期演奏会

指揮 ヴァレリー・ポリャンスキー

チャイコフスキー/交響曲 第1番 ト短調 作品13「冬の日の幻想」
チャイコフスキー/バレエ音楽「くるみ割り人形」第2幕

 チャイコフスキーの一番については、ポリャンスキーがかなり細かい指示を飛ばしているのが分かる。やはり手兵のロシア国立交響楽団などと違い、ツーカーの関係というわけには行かないからだろう。ポリャンスキーの演奏は、爆演指揮者という巷の評判とは異なり、かなり細かいところのバランスまで細心に注意を払った精密なものである。

 そのポリャンスキーの指示に従って九州交響楽団もなかなかに切れのある演奏をしていた。ロシア国立交響楽団のような緊張感漲る演奏というよりは、もっとおおらかさが感じられるのは九州交響楽団のカラーだろう。どうもピアニッシモに関してはポリャンスキーが求めているレベルの静謐さ緻密さに至っていない感はあったものの、破綻のない充実した演奏であった。

 曲自体にまだ作曲家の未熟さが散見される交響曲第1番と違い、さすがに2曲目の「くるみ割り人形」はよく計算されている曲である。その曲をポリャンスキーはさらに細かい計算で盛り上げてくる。今まで私はポリャンスキーのテンション漲る演奏は何度か聞いたが、ここで初めてポリャンスキーのユーモア溢れる茶目っ気のある演奏を聴くことになった。正直なところ「このオッサン、思っていたよりもずっと幅が広いな」という印象。九州交響楽団の演奏もノリノリといったところでなかなかの熱演。

 場内の大盛り上がりにアンコールがチャイコフスキーの「四季」から「秋」。これがまたメロメロのメロドラマで甘いというか酸っぱいというか、あまりの美しさに魅了されてしまう。あの厳ついオッサンがこんなロマンティックな演奏もするのかと再度驚き。

 今回はとにかくポリャンスキーの表現の幅の広さに圧倒された。さすがにポリャンスキー。初顔合わせの九州交響楽団をここまでドライブするのには驚いた。これは今後も他のオケとの共演に期待できる。とりあえず目下のところは来年度に新日フィルとの共演がある模様である。

 

 

 満足してコンサートを終えるとホテルに戻る。ホテルに戻ると地下の居酒屋でかなり遅めの夕食を摂ることにする。

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ブリの刺身

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牛タンスモーク

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ネギトロ巻きに酢ガキ

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そしてデザート

 遅めの夕食にしては明らかに食べ過ぎてしまった。同じ階の大浴場に入浴して汗を流すと、昨日の原稿だけアップしてこの日は就寝することにする。

 

 

堺にゲルギエフ/マリインスキー歌劇場管弦楽団のコンサートを聴きに行く

 この日曜はフェニーチェ堺で開催されるマリインスキー歌劇場管弦楽団のコンサートを聴きに行くことにした。

 しかし実は私の現在の体調は極めて悪い。と言うのは先週の月曜日に抜歯して、それが完全に回復はしていない状態だから。今週は公私共に出張で歯科に通えないので、先週の内にと抜歯したのだが、思いの外回復に時間がかかっている。どうやら年齢や持病のせいで回復が悪いようだ。今のところ幸いにして常に痛みがある状態ではないが、硬い路面を歩くなど何かの刺激で痛みが走る場合がある。しかも抜歯直後などは全身の疲労でまともに動くのがキツいぐらいのダメージがあった。おかげで先週は公私共にPCに向かい合う集中力がまるでなく、作業効率が大幅にダウンしていたという状況。

 今朝歯科に行ったところ、とりあえず傷跡に薄く歯肉が復活し始めているとのことで抜糸となったのだが、未だに思い出したように痛みが来ることがあるのでとにかく油断は出来ない。一応お守り代わりのロキソニンはもらっているが。

 

 

 とりあえず午前中に通院を済ませてから大阪へと移動する。堺へは新今宮で乗り換えの必要があるのでアクセスはあまり良くはない。堺東駅に到着したのは開演の1時間ちょっと前なので、昼食を摂るための店を探すが今ひとつピンとこない。面倒くさくなったので回転寿司の「元禄寿司」で寿司を少々つまむ。1皿125円均一とのことなので明朗会計だが、寿司自体はそれなり。

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回転すしの元禄寿司

 一応の昼食を終えるとフェニーチェに移動。今回私が購入したのはC席なので4階。またフェニーチェの天井桟敷である。なおもう開場時刻は過ぎていたのだが、リハーサルが長引いているとのことでロビーで足止めを食らう。結局入場できるようになったのは開演の10分前ぐらい。

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フェニーチェ堺4階の天井桟敷

 

 

マリインスキー歌劇場管弦楽団

〈指揮〉ワレリー・ゲルギエフ
〈ヴァイオリン〉五嶋龍

シチェドリン:管弦楽のための協奏曲 第1番「お茶目なチャストゥーシュカ」
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 ニ短調 op.47

 1曲目のシチェドリンは初めて聴く曲だが、ジャズのような軽妙さのある曲。マリインスキーは金管を中心に非常に華やかさのある音色で、ゲルギフエもそれを思いっきり鳴らさせている様子。コンサートの開幕にふさわしい明るい演奏。

 2曲目がチャイコフスキーのヴァイリオン協奏曲だが、五嶋の演奏は相変わらずやや線が細い。ただ以前のように完全に埋没するところまでは行っていなかった。ただやや表情に乏しい感があるのが気になったところ。ゲルギエフの方は結構曲に表情付けをするので、その辺りで五嶋の演奏が余計に淡々として聞こえる部分もある。

 最後はショスタコの5番だが、これはゲルギエフ節と言うべきか、全く屈託のない豪放磊落な印象の演奏。ショスタコはもう少し曲に屈折が感じられるものと思うのだが、ゲルギエフの演奏にはそういう影は全くない。テンポ変化や強弱変化などの表情付けは多いが、その表情が曇るということは一貫してなく、極めて明るくて元気なショスタコという印象を受けた。その辺りがどうだろうかというところ。私としては第1楽章はもっと魂から振り絞るような切実さが欲しいし、第4楽章はヤケクソになっての狂乱のような雰囲気もあっても良いように思うのだが。

 アンコールに「火の鳥」を演奏したが、私としては今日のコンサートでこの曲が一番の名演と感じた。やはりゲルギエフは陰影のある曲よりも、こういうとにかく派手派手の曲の方がまとまるということが思われた。

 そう言えば以前にゲルギエフの演奏を聴いた時も、曲目が「悲愴」で「ぬるい」という印象を受けた記憶がある。やはりゲルギエフには屈折した情念のような負のエネルギーの表現は似合わないということか。

 

 

 コンサートが終わったが、クロークが大混雑の大混乱でここでかなり時間をロスする。どうもこのホールはクロークを常設しておらず、仮設のクロークで凌いでいるようなので、内部で預かり品が整理しきれていないようだ。見ているととにかく動線が複雑な上にかなり混乱している。こういうところを見ていても、このホールは本来はクラシック用ではないのではないかという印象を受ける。

 ようやく会場を後にすると新今宮に戻って夕食を摂ることにする。串カツという気分でもないので「更科」「鴨なんばそば」を頂くことにする。

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新今宮の更科

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鴨なんばそば

 毎度のことだが、ここは特にそばの出汁が美味い。そばも悪くないのだが、個人的には更科よりも黒いそばの方が好み。

 

 

 そばを腹に入れたが、昼食が軽めであったこともあり、やはりこれだけだと腹が不十分な感じがかなりする。そこで久しぶりに「千成屋珈琲」に立ち寄って、「オムライス」「ミックスジュース」を頂く。

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ミックスジュースとオムライス

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千成屋珈琲

 オムライスは昔ながらの卵焼きで包んだタイプだが、それでいて卵焼き自体はトロトロであって実に美味い。私的にはこれこそが正しいオムライスであり、最近の半熟卵焼きをライスの上に載せただけのものは調理を簡単にするためだけの手抜きとしか思えない。そして相変わらずの元祖ミックスジュースの心地よさ。久しぶりに喫茶店飯を堪能したのである。

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これこそが正しいオムライス

 さあ、とりあえず明日は出張で仕事。その後は私的な出張(一般的には遠征という)となる。どうも年末は意味もなくバタバタしてしまう。

 

 

METライブビューイング マスネ「マノン」

 マイクロソフトの陰謀で昨晩の就寝が遅かったせいがあり、翌朝は8時に目覚ましで叩き起こされる。本当は後2時間ぐらいは寝ていたいところ。しかし今日はMETのライブビューイングを見に行く予定なので、いつまでもゴロゴロしてもいられない。

 手早く着替えると朝食のために外出する。今日立ち寄ったのは「味里」モーニングのBセットを注文する。

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喫茶「味里」

 400円という価格を考えると悪くはないのだろう。珈琲は私の好みのタイプ。ただボリューム的にも内容的にももう一工夫欲しいというのが本音。

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モーニングBセット

 

 

 朝食を終えて戻ってくるとしばし部屋でグダグダしなから荷物をまとめ、チェックアウト時刻の10時頃にホテルを出ると、そのまま大阪ステーションシティシネマに直行する。

 入場までにまだ時間があるから、ロビーで近日公開映画の予告などを見ていたのだが、今更寅さんの映画をするというのには驚いた。たださらに驚いたのはゴクミの老けっぷり。どうしてもデビュー当時の美少女イメージが頭に残っているので、なかなか衝撃的。もっとも彼女の今の年齢を考えると仕方ないところか。さらに見ていると今度はルパン三世の3D映画の宣伝。時代も変わったものである。それにしてもゲストヒロインが壮絶に棒読みだと驚いていたら、キャストは広瀬すずらしい。彼女は先の朝ドラでもその演技力に疑問符が付いていたが、こうやって声だけの演技となると誤魔化しが全く効かないせいで悲惨な状況。それにしてもまだ顔出しするドラマなら、演技力には目をつぶって人気の美少女をキャスティングする意味は分かるが、顔出ししないアニメにあんな棒演技を起用するとは何のつもりだ?

 ようやく上映時間になったのでゾロゾロ入場。客の入りは3割と言うところか。まずまず入っている方だろう。私は朝が軽すぎたせいで腹がやや軽いので、500円の高級ホットドックとさらに高級コカコーラを買い込んでから入場する。かつては売店のこういう割高商品は買わなかったのだが、段々と私も堕落している。

 

 

METライブビューイング マスネ「マノン」

指揮:マウリツィオ・ベニーニ
演出:ロラン・ペリー
出演:リセット・オロペーサ、マイケル・ファビアーノ、アルトゥール・ルチンスキー、ブレット・ポレガート、クワン チュル・ユン

 ヒロインのマノンと彼女を愛した若者デ・グリューの悲劇を描く作品・・・と言ってもヒロインのマノン自身は「遊んで贅沢に暮らしたい」という天然魔性とも言うべき尻軽で貪欲で享楽的な女性であり、彼女自身の運命については自業自得という言葉しか出てこない。本当に悲劇なのは巻き込まれたデ・グリューだろう。彼の父親が二人の間を妨害する障壁として登場するのだが、どう考えても父親のやっていることの方が正しい(笑)。もし私がデ・グリューの友人だったとしても「やめとけ、その女は地雷だ。」と言ったろう(笑)。

 ヒロインを演じたオロペーサについては、やや地味目の声質であるが、非常に説得力のある歌唱をする。おかげでマノンは確かに尻軽な悪女だが、デ・グリューに対する愛情自体は本当だったんだろうなという説得力を持つ。また第四幕のカジノでの狂乱ぶりなどは圧巻であった。一方誠実な馬鹿男デ・グリューのファビアーノは熱演。第三幕でマノンに迫られながら散々葛藤した挙げ句についには誘惑に負けるといったシーンはなかなかの見せ場。またマノンの従兄弟でお調子者のレスコーを演じたルチンスキーも存在感のある軽薄者を演じきっている。

 人間ドラマ中心の劇なので、セットなどは比較的シンプルであり、オーソドックスであるが無理のない演出は地味な印象はあるが好感が持てる。

 マスネの音楽については終始明るめで軽めという印象を受けた。その辺りはお洒落なパリの雰囲気を伝える内容なのだろうか。クライマックスなどは例えばプッチーニとかならもっと劇的に盛り上げるところだろうが、そういったところは結構あっさりとしていた印象。

 

 

 上映終了が15時過ぎ。11時からなので4時間以上という意外と大作である。とにかく腹が減った。そこでかなり遅めの昼食のために一階下のフロアをうろつくが、この時間になっても混雑している店が多い上に、やはりCPの悪い店が多い(「だるま」まで出店しているのには驚いたが、あそこはいつから高級店になったんだ?)。結局は「美々卯」に入店して「鳥なんばうどんのセット」を注文する。なおシネマ鑑賞者の特典としてドリンクが付いてくるとのこと。

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うどんの美々卯

 まあさすがに美々卯のうどんだけあって美味い。ただし量は少なめ価格は高めというのは毎度のことである。

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後ろにあるのがシネマ特典のワンドリンク

 昼食を終えたところでJRで帰宅するのである。帰りはJR京都線内でトラブルがあったらしく、その影響で新快速のダイヤがかなり乱れていた。