徒然草枕

クラシックのコンサートや展覧会の感想など、さらには山城から鉄道など脈絡のない趣味の網羅

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アニメ関係の記事は新設した「白鷺館アニメ棟」に移行します。

白鷺館アニメ棟

二日目は「少女たち」展の後に京都市響の記念コンサートへ

翌朝は気持ちよく目覚める

 翌朝は目覚ましをセットした7時半の前に自動的に目が覚める。起床するとまずはシャワーで体を温める。

 一息つくとすぐに朝食へ。朝食はバイキングだが品数もそれなりにあってまずまずの内容。とりあえず朝から食欲があるということは今日は体調は良い。

ビュッフェ朝食は品数が結構多い

 朝食後はしばし原稿入力。昨日の原稿をアップしてから10時にドタバタとチェックアウトする。さて今日の予定だが、京都コンサートホールで開催される京都市交響楽団のコンサートである。京都の秋音楽祭の開会コンサートとのことで、市民の招待客なども招いてのコンサートになる。

 駐車場はホールから若干離れた位置にアキッパで確保している。そこに車を置くと14時開演のコンサートまでしばし自由時間である。この間に京都の美術展を見学しておきたい。地下鉄で烏丸御池を目指す。目的は京都文化博物館。車では極めてアクセスしにくい(周辺の駐車場は超ボッタクリばかり)ということで、ここのところ足が遠のいていた美術館である。実は前回の京都訪問の際に立ち寄ることが予定に入っていたのだが、真夏の京都の灼熱地獄でヘロヘロになって断念した経緯がある。その結果、会期最終日に滑り込むということになってしまった。

京都文化博物館はかなり久しぶりだ

 

 

「発掘された珠玉の名品 少女たち-夢と希望・そのはざまで」京都文化博物館で9/10まで

 星野画廊が収集した明治~昭和期の少女を描いた作品の展示。特徴は無名の画家というか、そもそも描いた画家自身が不明という作品まで含んでいるところ。

 展覧会はいきなり岡本神草が舞妓を描いた有名なデロリとした奇妙な絵から始まる。

岡本神草「拳の舞妓」

 最初は笠木治郎吉の水彩画による精密な少女の絵。当時の風俗を伝えるような感じがあるが、どことなく教科書的な堅さも感じさせる絵である。

笠木治郎吉「花を摘む少女」

 その後はまさに玉石混淆の世界に突入する。浮世絵の流れを汲む作品あり、油絵もありなど百家争鳴状態。その中で一つ目を惹かれる作品があったと思ったら、それは島成園の作品だった。やっぱり他と格が違うのを感じる。

島成園「きぬた」

 

 

 時代が進み大正となるといわゆるデカダンスの奇っ怪な印象の作品などが登場する。先の岡本神草などがまさにこの時代となる。なお甲斐性楠音のこの時期の濃厚な作品と後のもっとおとなしくなった時代の作品の比較などもあって興味深い。

 時代はさらに進むと昭和。ここに来るとキュビズムやフォーヴなど西洋の最新の潮流なども流れ込んできて、まさに種々様々。作家の個性が炸裂する時代となる。この中で目を惹いたのは島崎藤村の息子という島崎鶏二の作品「朝」。技法的に目を見張るというものがとくにあるわけではないが。作品にドラマ性を感じるのはやはり藤村の血か。

島崎鶏二「朝」

 なお渡欧して向こうの影響を受けた画家の作品もまとめられているが、当時の渡欧画家の典型パターンとしてもろに印象派の影響を受けた作品もある。もっとも典型的なのが太田喜二郎の「花摘図」。またキスリングに対するリスペクトというか、オマージュというか、もろに「まんまじゃん」という絵まであったのは笑った。

太田喜二郎「花摘図」

 百家争鳴玉石混淆という魑魅魍魎な展覧会であったが、これはこれでなかなか面白かったのである。

 

 

昼食はカレーラーメン

 美術館を後にするとホールに向かう前に昼食を摂っておきたい。美術館近くのビルの2階にあるラーメン屋「ひゃくてんまんてん」に入店する。注文したのはここの人気メニューと銘打っている「カレーラーメン(950円)」

店は階段を登った2階

 かなり濃厚なシッカリと辛みのあるカレーにラーメンが入っている。スープは実に濃厚なので麺に良くからむ。ラーメンとして悪くないが、どちらかと言えばうどんの方がしっくりくる味ではある。しかしラーメンもこれはこれでなかなか美味い。この暑い最中にサッパリするには良いか。

かなりドロリとしたカレーだ

ストレート麺にもよく絡む

 

 

 昼食を終えると地下鉄でホールに移動する。ホールに入場するとまだ口に若干の辛さが残っていることから、喫茶でペプシを頂いてマッタリする。

 私の席は正面の三階席。まあまあの席である。場内は3階席のサイドに一部空席があるが、それ以外はほぼ満席に近い。一応完売御礼の案内が出ている。

京都コンサートホール

 

 

第27回 京都の秋 音楽祭 開会記念コンサート

3階正面席より

[指揮]広上淳一
[ピアノ]津田裕也
[管弦楽]京都市交響楽団 

モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番 イ長調 K.488
マーラー:交響曲第5番 嬰ハ短調

 一曲目のモーツァルトは冒頭からかなり明るい演奏。オケが冒頭から快活で陽性な演奏を繰り広げる。それを受けての津田のピアノもかなり陽性な印象。津田のその陽性さは第二楽章にも及ぶ。場合によっては葬送曲のような陰鬱な演奏になることもあるこの楽章でも、津田の演奏は叙情性を帯びて美しくはあるが、悲痛な影に支配されることはない。オケの方も同様である。

 そして快活で軽妙なフィナーレはまさに津田の大活躍。自在のピアノが縦横に駆け巡る印象である。そして爽やかに一曲終了である。

 休憩後のメインはマーラーの5番。16型フル編成の京都市響が豪快なパワーで音楽を奏でるが、広上の指揮も初っ端からキレッキレである。かなりドッシリと構えたスケールの大きな演奏で、広上は全身を使ってオケを煽りまくるが、決してテンポの方は煽らない。どちらかと言えばゆったりとした演奏である。例によっての広上流タコ踊りが全開である。

 ドラマチックな第1楽章から、悪魔的に始まる第2楽章、そして一風変わった舞踏のような長大な第3楽章へとゆったりとした調子で音楽は流れるが、京都市響の演奏は終始弛緩することなく緊張感を保ったものである。そして有名な第4楽章。ハープの音に乗せて幻想的で叙情的な音楽が繰り広げられるが、実に胸に迫ってくるものがある。その後、どことなく牧歌的な感覚のある最終楽章。そして堂々のフィナーレである。

 全曲を通じて京都市響の密度の高い弦は濃密な音楽を描き出し、さらに金管陣は冴えまくりであった。広上は京都市響から実に鮮烈な音色を引き出している。場内が爆発的な盛り上がりになったのは言うまでもない。私も久々に広上-京都市響の見事な演奏を堪能したのである。相変わらず、広上はその風貌は全く冴えないし、指揮姿も格好良さからはほど遠いのであるが、そこから繰り出される音楽は時折とんでもなく格好良い。このギャップこそが広上の広上たる所以か。


 コンサートの終了は16時半。2時間半に及ぶ長大なコンサートであった。ホールを出る頃には空模様がやや怪しさを帯びつつあったので、車まで急ぐことにする。幸いにして車に到着するまで雨に降られることはなかったが、高速に乗ってから随所で断続的に豪雨と遭遇。一番ひどい時にはワイパーをハイにしても前が全く見えないという状況になり、速度を落とし目にして前車のテールランプを追いかけるしかないという状況に何度も追い込まれたのである。今回は比較的体調が良くて頭がしっかりしていたから対応出来たが、これが疲労で朦朧運転になっているような状況だったら大事故必至だったろう。結局は帰宅するまで非常に神経を磨り減らす運転を余儀なくされたのである。

 

 

この遠征の前日の記事

www.ksagi.work

 

 

月岡芳年展と大阪交響楽団のコンサートに行ってから、京都の本願寺のホテルで宿泊

この週末は大阪・京都方面

 この週末は大阪・京都方面へとコンサートに出向く。土曜日は大阪交響楽団の名曲コンサートである。本来ならこれのためにわざわざ大阪まで出向くという選択肢はないが(私は以前から大阪交響楽団に対する評価は低い)、明日は京都に出向くついでというのと、今回はベートーヴェンのピアノ協奏曲チクルスということで立ち寄ることにした。なお山下一史が就任以降、大阪交響楽団も上り調子にあることを感じていたので、それを確認しようという意味もある。

 名曲コンサートはホール代を節約するためか、以前より同日のダブルヘッダーで昼の部が13時半からというやや早めの時間帯で、夜の部が17時から開催される。私はその午前の部に参加することにした。なお出発は午前中にして、ホール前に一軒、美術館に立ち寄る予定である。

 

 

「月岡芳年」芦屋市立美術博物館で10/9まで

芦屋市立美術博物館

 奇想の画家・歌川国芳の弟子にして、江戸時代末期から明治にかけて活躍して「最後の浮世絵師」との評もある月岡芳年の展覧会である。なお月岡芳年は私が河鍋暁斎と共に注目している画家でもある(河鍋暁斎も「最後の浮世絵師」と言われていたりするのだが)。

最後の浮世絵師と呼ばれている

 芳年と言えば豪快な武者絵や芝居絵、さらには血みどろ絵と呼ばれる残酷で壮絶な絵画などで特に知られているが、本展では芳年のそのような作品よりも、もっとおとなしくて正統派な美人画の類いなどを含んだジャンルの作品を中心に展示している。

芳年の絵画と言えばこの手の作品のイメージが強いが

 芳年の作品は明らかに浮世絵の伝統を踏まえているのであるが、そこにはやはり幕末から明治にかけての時代の流れも反映している。いかにも定型的な浮世絵表現にとどまらず、あからさまに西洋画の技法の影響を受けた作品なども多く見受けられ、芳年独自の伝統を踏まえた上でのリアリティー表現というものが随所に見られる作品群となっている。また画題の方も日本髪に洋装の女性の像があったりなど、明治という時代の雰囲気も現れている。

 代表作とも言われる「月百姿」などは、伝統的な浮世絵的な作品から、山水画的な作品、さらには西洋的な写実がメインである作品などが入り混じり、芳年独自の落ち着いて美しい世界を形成している。

 一般的な芳年像とはやや異なる芳年の世界を堪能できることで、この画家のことをさらに深く知ることができる展覧会となっていた。実に興味深い。


 展覧会の見学を終えると既に12時近くになっていたのでホールに向かって急ぐ。流石に渋滞などはなくスムーズにホール近くまでやってきたのだが、大変なのはそれからだった。駐車場がことごとく塞がっていて車を置く場所がない。結局は空いている駐車場を求めてウロウロ。空いていると思えば20分200円で上限なしとかいう超ぼったくり駐車場だったりで、妥当な価格の駐車場を探して辺りをグルグルと20分近く回る羽目になってしまう。

 

 

昼食は久しぶりに寿司にする

 ようやく許容範囲の駐車場を見つけて車を置くと開演までにまずは昼食である。何を食べるかだが、今日は気分として寿司でも食いたい。というわけで「元祖ぶっちぎり寿司魚心」に出向いてランチメニューの「ぶっちぎりセット」を注文する。

高架下の「魚心」に寿司を食べに

 まあ寿司は美味いんだが・・・若干ネタのボリュームが低下した気がする。ここにもアベノミクスの悪影響か? 店内も大入りからは程遠い雰囲気だし、どうもこの店の今後が危ぶまれる。そう言えば前を通りかかってメニューを覗いていた子連れ夫婦が「やっぱり少し高いな」と呟いて入店せずに帰っていくのを見た。やはりバラマキメガネこと岸田内閣の悪政のせいで、日本人の貧困化が加速度的に進んでいるようである。このままいけばカルトの目論見通りに日本は滅びそうだ。

何となくネタのボリュームが減った気がする

 昼食を終えるとホールに向かう。もう開演までに30分ぐらいしかない。ホール内には結構の人影がある。私の席は2階の正面席だが、ここから見た感じでは5~6割程度の入りか。ダブルヘッダーであることを考えるとまずまずの入りのようである。

ホール入りする

 

 

大阪交響楽団 第128回名曲コンサート ◇昼公演◇

[指揮]山下一史
[ピアノ]菊池洋子
[管弦楽]大阪交響楽団

ベートーヴェン:「プロメテウスの創造物」op.43 序曲
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 op.37 
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第4番 ト長調 op.58

今回は2階正面席

 一曲目はベートーヴェンの序曲。相変わらず大阪交響楽団の弦楽陣には斉奏時に若干の音色の濁りがあるが、以前に比べるとずい分良くなった。いささかゴチャゴチャした感のあるが、元気のある演奏である。演奏に活力があり、そういうところは数年前よりもかなりの進歩である。

 さてピアノ協奏曲の3番であるが、菊池のピアノは細かい揺らしなどはあるが、あまり極端ではなく、比較的オーソドックスに聞こえる演奏である。それに対する大阪交響楽団の演奏もかなりオーソドックスに徹している。トータルで言えば特に不可はないのであるが、かと言って強烈なアピールもない演奏で終わってしまった感がある。

 休憩後の4番も基本的に同じ路線。菊池のソロピアノで始まる協奏曲はなかなかに美しくはある。そしてバックのオケもそれなりにまとまっているとは感じる。ただ残念ながらそこまでで終わってしまって、もう一歩ぐっと掴まれるものがないというのが本音である。

 大阪交響楽団も、一昔前のあからさまに下手という状態からは脱したことを感じる。あからさまに音程が狂ったり、音色が濁ったりということはなくなったように思われた。ただ何というか残念ながらまだ音楽にもう一段の深みを感じさせる域には達していないという感がある。無難に演奏を完成させるという領域にまでは達したが、そこからの音楽性である。その辺りは山下一史もそうキャラが濃い指揮者ではないということもあるのであろうか。

 

 

京都の本願寺のホテルで宿泊

 コンサートを終えると明日に備えて京都に移動することにする。明日は京都コンサートホールでのコンサートなので、今日は久しぶりに京都に宿泊することにしている。選んだホテルは聞法会館。西本願寺に隣接している宿坊というか、あからさまにホテルである。一応私は信仰心皆無の浄土真宗門徒であるので宿泊の資格があるというか、そもそも別に門徒でなくても普通に宿泊できる。とりあえず京都で駐車場があって高すぎないホテルという条件で探したらヒットしたのがここだったというだけの話である。

聞法会館

 聞法会館は西本願寺の北に隣接している。駐車場に車を置くとチェックイン。部屋はトリプルルームのシングル使用ということなので無駄に広い。

トリプルルームなので無駄に広い

 設備的には空調が集中管理ということで、細かい温度設定が効かない辺りは設備の古さを感じるが、別に部屋自体や水回りなどに汚さはない。まあまあのホテルというところか。

 

 

本願寺を駆け足で散策

 荷物を置いたとこで周囲の散策に出るが、このホテルの一番の難点は周囲に飲食店やコンビニの類が非常に少ないことである。その代わりにあるのは、本願寺の参道筋に多数の仏具屋。まあ数珠などの調達には困らないが、調達の予定はない。

 本願寺の参道筋の先にあるのが伝道館だが、これはレンガ造りの洋館という意表を突かれる建築。元々は明治28年に設立された真宗信徒生命保険株式会社の社屋だったとか。洋風材料による建築だが、日本建築の様式を取り入れるというコンセプトで建設されているという(と言っても赤煉瓦のインパクトが強すぎて、よくよく見ないと日本建築の伝統とやらは見えてこないが)。

伝道館は赤煉瓦建築

 ここから総門があって、国道をまたぐ形で先にあるのが御影堂門。ここからが本願寺の境内となる。

手前の総門から、国道をまたいで奥の御影堂門

御影堂門

 

 

 本願寺を覗くがもう閉門の5分前になっていたので、参拝などというものではなくてグルっと視察するだけ。正面が御影堂で、その右隣につながっているのが阿弥陀堂である。左手には最近修理が終わったという飛雲閣が見えているが、ここは通常非公開。なかなか面白そうな建物であるのだが。

左手に見えるのが飛雲閣

正面が御影堂

隣が阿弥陀堂

両伽藍はこういう位置関係

 

 

 非常に巨大な伽藍であることに感心しつつ、阿弥陀堂門から出てくる。この阿弥陀堂門は彫刻などが施された凝った門である。

阿弥陀堂門

かなり派手だ

扉にまで細かい彫刻

外側から

 周囲が完全に堀になっていることに関心。確かにちょっとした要塞だが、それでも明智の軍勢に包囲されたらひとたまりもなかろうなんてことが頭を過る。

周囲は堀で囲まれてちょっとした要塞

 本願寺の鬼門の方向にあるのが太鼓楼。まさに櫓のような建物だが、幕末には新選組の屯所になったこともあるとか。

隅櫓のような太鼓楼

 

 

夕食は地下のがんこ

 本願寺を5分で見学すると本願寺前のローソンに立ち寄って夜のおやつを少々調達して戻ってくる。さて夕食だが、ホテルの地下に和食がんこがあるようなので、面倒くさいのでそこで済ませることにする。HPで調べた時には3000円以上のコースしかないような雰囲気だったのだが、実際に覗いてみると1000円台のそば定食などもあるようなので普通に使えそうである。ただ夕食オープンの17時を少し回った頃に訪問したのだが、満席と言われる。18時から台湾からのツアー客団体の予約が入っており、一般客用の席は3席ほどしか残っていないのだとか。しばらく待ったがすぐに空く様子もないことから、空いたら部屋に電話してくれるように頼んで一旦部屋に戻る。

地下の「がんこ」

 部屋に戻ってしばしこの原稿を書いていたら電話がかかってきたので夕食に出向く。注文したのはまあ京都だからにしんそばの定食。

にしんそばの定食

 まあ特に美味いというほどではないが、かと言ってまずくもない。典型的な可もなく不可もなくという内容。まあ最初から特別に期待はしていなかったのでこれで良しだろう。京都は調べて選んだら美味しい店もあるんだろうが、とにかく調べるのが面倒な上に、美味しい店は概して支払いが高めであるから、結局は私の京都飯はいつも極めて適当になってしまうのである。

 

 

大浴場で入浴してから休む

 夕食を終えると大浴場に入浴に行く。このホテルのポイントの一つは大浴場があること。入浴は夜の22時までとのこと。朝風呂がないのが難点だが、まあその日の汗を手足を伸ばして流せるだけでもかなりありがたい。今日は確保した駐車場がホールよりもやや遠かったうえに、寿司屋がホールの真反対側だったことなどからなんだかんだで意外に歩いている(本日9000歩)ので足腰にダメージが結構ある。

大浴場

 汗を流してさっぱりしたら原稿執筆の続き。しかし入浴してホッとしたら眠気がこみ上げてくるのでなかなか進まない。結局は適当なところで見切りをつけることになる。

 

 

この遠征の翌日の記事

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岡山フィルの定期演奏会と県立美術館の「皇室と岡山」展

岡山へ

 昨日は大阪だったが、今日は岡山に向かうことにする。目的は岡山フィルのコンサート。もう少し早朝に出るつもりだったのだが、昨日の疲労か完全に寝過ごして慌てて家を飛び出すことに。

 山陽自動車道は概ねスムーズに流れていたが、例によって岡山ICを降りた後の岡山ダンジョンが走りにくい。岡山ドライバーの運転の下手さはともかくとして、岡山の道路案内はなぜこうも分かりにくい表示になっているのか。右折のために車線変更するべきタイミングが分かりにくい。よそ者を徹底排除する構造になっている。

 とりあえず目的地周辺に到着したが、今度は駐車場を探すのに四苦八苦。どうしたわけか今日は駐車場が満車ばかりである。ウロウロした挙げ句にようやく駐車場を見つけて車を置くが、この駐車場も私が車を置いた途端に満車表示が出る状態。

 さて車を置いて灼熱地獄の中に繰り出した時にはもう既に昼時。何はともあれ昼食を摂る必要がありそうである。ホール裏手の中華料理屋「広東料理 海華楼」に入店。中華ランチの類いでもあればと思ったのだが、メニューは比較的高価な一品料理ばかり。仕方ないので五目炒飯(990円)を注文することにする。

ホール裏手にある「海華楼」

 炒飯はなかなかに美味い。ただCPを考えると、やはり炒飯というメニューだけに大衆中華に対して価格ほどの圧倒的アドバンテージがあるかとなると微妙なところである。

五目炒飯はまずまず美味い

 昼食を終えたところで開演時間までに1時間半以上ある。どうするか迷ったが、最初に予定していた美術館に立ち寄ることにする。

 

 

「美をたどる 皇室と岡山~三の丸尚蔵館収蔵品より」岡山県立美術館で8/27まで

岡山県立美術館

 皇室所蔵の美術品を展示する三の丸尚蔵館の収蔵品から、代表的な作品を展示。現在三の丸尚蔵館が新館建築工事中であることから、各地で行っている巡回展のようである。

 展示されているのは古代の品から近代絵画、さらには工芸品など多彩。古代の品では国宝の「春日権現験記絵」が展示。時代を感じさせない鮮やかな色彩に驚かされる。さすがに収蔵状態は最良なようである。

 また近代絵画では山本春挙の大作屏風のような日本画が目を惹くが、意外なのは近代洋画コレクションが実に多彩であること。松岡壽、高橋由一、原田直次郎などの日本洋画黎明期の作品なども見られるが意外な画家の作品なども含まれていたりする。いずれも献上かお買い上げなどの作品なので、かなり気合いを入れて描かれていることが良く分かるのだが、その分画風などはやや保守的になっている感がある。満谷国四郎の作品なんかも含まれているのだが「おいおい、あんたの画風はこんなのじゃないだろう」と言いたくなるような作品も(その後に画風が変わったようで、その時期の作品もあり)。児島虎次郎の出世作などもあるが、もっと彼らしい作品は、併せて開催されている「岡山の美術展」の方で見ることが出来る。

 また工芸品は溜息の出そうな逸品の数々である。なかには最早現在では制作不可能な作品もあるのではなどと思われ、日本の工芸技術の深さを感じさせられる次第。

 

 

オリエント美術館の喫茶店で一服

 美術館を一回り見学するとホールに向かうが、まだ開演まで余裕があるので喫茶に立ち寄ることにする。立ち寄ったのはオリエント美術館内の喫茶室「イブリク」。ここで出されるというアラビックコーヒーなるものが以前から興味を惹いていたのである。なお喫茶室には美術館に入館しなくても手前から上がることが出来る。

 アラビックコーヒーとは、細かくひいた-コーヒー豆に香辛料のカルダモンを加え、水と砂糖を加えてイブリークと呼ばれる手鍋で煮立てるのだそうな。カップに注ぐとしばし待って粉が沈んでから上澄みを飲むという代物である。私はこれに人気というチーズケーキを合わせる。

イブリクはオリエント美術館の2階

喫茶内からは美術館の入口が見える

 私は通常はミルクコーヒーしか飲まない人間なのだが、このコーヒーは非常に爽やかな感覚を受ける。カルダモンの風味が絶妙に効いている。正直なところ香辛料やハーブの類いはあまり得意ではないのだが、バランスが絶妙で違和感を持たない。私はコーヒーの強烈な苦味は苦手なのだが、それが適度にマスクされている印象。またチーズケーキの甘味がコーヒーと非常に良く合う。

アラビックコーヒーとチーズケーキ

 

 

 しばし喫茶でマッタリとしてからホールへと移動することにする。なお確保しているのは最安席であるので3階である。ちなみにこのホールは登りは階段しかない上に、ホール内も段差が多々という、今時のバリアフリーに真っ向からケンカを売っている斬新なホールであるのでなかなか足に厳しい。残念ながら今の私はこれを一気に駆け上がるということが出来ない状態(息が上がるのが先か、ひざが壊れるのが先か)。

岡山シンフォニーホール

 三階席でステージまでは遠いが、ステージ全体が見渡せるまずまずの席。ザ・シンフォニーホールの三階サイド後列のような見切れ席でないのがありがたいところ。なお入りは8割ぐらいとのことだが、三階後部には高校生が大量に入っており、招待客だろうか?

3階席はかなり高い

 

 

岡山フィルハーモニック管弦楽団 第77回定期演奏会

岡フィルは12型

指揮/デリック・イノウエ
ピアノ/松本和将

リムスキー=コルサコフ/スペイン奇想曲
ラフマニノフ/パガニーニの主題による狂詩曲
チャイコフスキー/交響曲 第4番 ヘ短調

 デリック・イノウエは初めての指揮者であるが、とにかく岡フィルをガンガンと煽りまくるという印象の強い指揮者である。やたらにフォルテッシモでガンガン鳴らしたがる傾向があり、12型でややパワー不足気味の感がある岡フィルが、かなり無理矢理に近い大音量でガンガンと演奏をしているので、いささかうるさい感のある演奏。ただ強弱がピアノとフォルテッシモしかない感があるので、喧しい割には結構一本調子に聞こえる。

 ラフマニノフは、バックのオケがその調子であるからか、ソリストの松本もかなりガツンガツンと弾いてくる印象。力強くてテクニックも華麗なのだが、ガツンガツンしすぎていささか色気に欠ける印象。アンコールでのヴォカリーズでは結構シットリと聞かせていたところを見ると、やはりバックのオケとの絡みの関係でか。

 ラストのチャイコの4番もその調子。最初っから前回フォルテッシモでガンガンと突っ走るイノウエ。岡フィルの方も大変だろうと思うが、金管の崩壊や弦楽陣の息切れなどもなかったようであり、「おっ、岡フィルも技倆が上がったかな」というのが正直な感想である。なお演奏自体はとにかく力強くて熱演と言っても良いものなのであるが、冒頭に言ったようにギアが二段しかない印象なので、やはり一本調子なのは否定できない。イノウエにはもう少し細かく歌わせたりニュアンスを加えるという小技が欲しいところ。結局は最後までドンチャン騒ぎのお祭りで終わってしまったように感じられて、今ひとつの深みが音楽から表現できていなかったように思われる。もっとも岡フィルの実力を引き出すのには効果的だったかもしれないが。

 

 

下野指揮大フィルの定期演奏会の前に、美術館を3軒ハシゴする

土曜日は大フィルと美術館

 今日は大阪フィルの定期演奏会である。ただそれだけに大阪まで繰り出すのはしんどいので、合わせ技を用意している。とりあえずこの日は午前中に家を出て大阪に向かう。例によって阪神高速の渋滞はあるが、夕方ほどひどいものではない。むしろ対向車線の方が渋滞はひどそう。

 予定よりも若干早いペースで大阪に到着すると、アキッパで予約しておいた駐車場に車を入れる。まずは近くの美術館からである。それにしても暑い。表を10分以上歩くのは命に関わりそうである。

目的地は中之島キューブ(私はこの建物をこう呼んでいる)

 

 

「民藝」大阪中之島美術館で9/18まで

会場入口までシンプルだ

 柳宗悦が説いた「民藝」思想とは、生活に密着した手仕事の品々に美を見いだすという考えである。そのような民藝思想に基づいて「衣食住」の観点から民藝の品々に注目するという展覧会。

 最初は柳宗光が提案したというテーブルコーディネートを展示。まさに「民藝のある生活」という趣である。肩肘張ってえらそぶった芸術作品でなく、日用の中に潜む用の美というものである。

民藝のある食卓

こういうのは結構好きだな

いかにもの陶器類

 次が衣食住のコーナーとなり、衣はいわゆる着物の類い。日用的な衣類にさりげなく施されている装飾などに注目する。アイヌの衣なども展示されおり、文化の反映でもある。

 食は食器類。いわゆるいかにも格好付けた茶道具などの類いと違って、もっと日常に溶け込んだ普通の器でありながら、何らかの装飾的要素も持った品々である。住についても似たようなもので、日常生活に使われる品々の中の美に注目する。

 

 

 後半になると世界各地の民藝的な品々(いわゆるプリミティブアートにもなる)や、現在も続く工芸の産地などを紹介している。もっともこの中でも小鹿田焼のように無形文化財に指定されたものもあれば、鳥越竹細工などは原料の調達が困難になってきて危機に瀕しているものもあるとか。

 最後にまさに「現代にマッチした民藝コーディネイト」的な展示があるが、正直なところ少々ゴテゴテしすぎのような気もしないでもない。

少々ゴテゴテしすぎのような印象を受ける

床がいささかうるさすぎる

 展示品はシンプルで素朴な品々が多いが、そこから柳宗悦らの「日常の中に美を見いだす」という精神を感じようという展覧会である。確かにじっくりと見ていたら味のある品々が多い。もっとも現代の我々の日常生活は、無味乾燥な大量機械生産品ばかりになってしまっているが・・・。

 

 4階の展示室の見学を終えると、5階の展示室の方も見学する。

 

 

「Parallel Lives 平行人生 — 新宮 晋+レンゾ・ピアノ展」大阪中之島美術館で9/14まで

会場は5階

 共に1937年生まれの芸術家、新宮晋とレンゾ・ピアノの作品を併せて展示する。

 新宮晋と言えば、一連の風で動く彫刻が有名である。それらを展示してある。風を受けて刻々と形態が変化するそれらの彫刻はメカニカルに興味深いところ。

新宮晋「自由の翼」

新宮晋「模型」

展示室の天井には新宮の作品が

手前「月の船」奥「雲の日記」最奥「星空」

新宮晋「平和」

 

 

 一方のレンゾ・ピアノは大胆な建築デザインで知られる。彼は関空のターミナルビルなど様々な建築で新宮晋とコラボした作品を発表している。やたらに空間を感じさせるデザインは新宮作品との相性が良さそうであることは想像が付く。

レンゾ・ピアノ「アトランティス島」

レンゾ・ピアノ「ジェノヴァ港再開発全体模型」

レンゾ・ピアノ「565ブルーム・ソーホー全体模型」

 最後は新宮の地球アトリエプロジェクト関連の作品と、レンゾ・ピアノの東京海上ビルディング。

レンゾ・ピアノの東京海上ビルディング最終スケッチ

東京海上ビルディング模型

新宮晋「地球アトリエプロジェクト関連」

 どちらも芸術としてどうかは微妙なところではあるのだが、センスの良さのようなものを感じるのは明らかである。やはりなかなかに興味深かったりする。


 それにしても展覧会も高くなったものだ、「民藝展」1700円、「新宮展」2400円。私の感覚では1200円と1500円辺りが妥当な相場。アホノミクスがいろいろな点で価格破壊をして、社会のタガをガタガタにしたのを感じる。

 

 

昼食は鳥取飯

 両展覧会の見学を終えた頃にはちょうど昼時、昼食を摂る店探しと次の目的地移動を兼ねてホールの方向に移動。結局昼食はフェスティバルゲート地下の「麒麟のまち」で摂ることにする。鳥取の産直品ショップを兼ねて、鳥取の地場ものを食べられるという食堂である。「きりん御膳(1000円)」を注文する。

鳥取アンテナショップの「麒麟のまち」

 ハタハタ不漁のためにニギスに変更との注意書きがあるが、私は両者の違いが明確に分かるほど魚類には強くない。添えられているミズタコのフライは歯ごたえがあるを通り越して私の歯とあごの力ではかみ切れない。何てことのない内容だが、この年になるとこういう内容が一番ホッとするのも事実。

鳥取メニュー満載の「きりん御膳」

 昼食を終えるとこの上の美術館に立ち寄ることにする。

 

 

「唐ものがたり 画あり遠方より来たる-香雪美術館の中国絵画-」中之島香雪美術館で7/30まで

中之島香雪美術館

 香雪美術館が所蔵する、中国から日本に渡った絵画を展示。最初は布袋や観音図などの人物が、さらに花鳥画に山水画などが展示されている。

吉祥天像

松下布袋図

寒山拾得図

 

 

 なおこれらの渡来の作品は後の日本の画家に大きく影響を与え、模写から贋作まで様々に登場したようである。本展の出展作品の中にも、中国からの渡来品とされているが、画風などから考えるとかなり怪しいという注釈付きの作品も多々出展されている。

魚蟹図

白鷺図

 とりあえずこのような作品に目を通すと、やはり日本の絵画が中国から受けた影響というのは絶大なものであったと言うことを感じさせられる。その辺りの日本文化と中国との関わりなどに思いを致すと興味深いものがある。

四季山水図屏風 左隻 狩野永徳

四季山水図屏風 右隻 狩野元信

 さてこれで今日の展覧会の予定は終了。後は大フィルの定期演奏会だけである。そろそろ開場時刻近いことなのでホールに向かうことにする。

下野竜也登場

 

 

大阪フィル第570回定期演奏会

大フィルは16型大編成

指揮:下野竜也
ピアノ:ヴァルヴァラ

フィンジ/前奏曲 ヘ短調 作品25
モーツァルト/ピアノ協奏曲 第27番 変ロ長調 K.595
フランク/交響曲 ニ短調

 ブレトークによると下野の大阪フィル定期演奏会への出演は9年ぶりとのこと。最近進境著しい下野が、縁の強いという大フィルを指揮していかなる演奏を披露するか。

 大フィルは16型の大型編成で望むが、第一曲目は弦楽陣のみが登場で、いかにも珍曲マニア下野らしい全く聞いたことのない曲。しかしなかなかに美しい曲である。大フィル弦楽陣もブイブイとなかなかの盛り上がり。贅沢を言うともう少し色気の欲しいところであるが、その辺りはまたデュトワにでも鍛えてもらうか。

 二曲目はオケを10型まで縮小してのモーツァルト。ピアノのヴァルヴァラはかなりエレガントで上品な演奏という印象である。音色はなかなかに美しく、下品な誇張のないストレートな演奏。もっともそれでいて無機質にはなっていない。

 彼女はアンコールでブラームスの3つの間奏曲より第1曲を披露したが、これもなかなかにして美麗な演奏である。ただ個性を強烈に主張しない分、印象の弱さのような者もあるのは事実。

 さて終盤は下野が好きだというフランクの交響曲。これがまた格好良い。下野は例によって低い身長をそれ以上に使ってかなりブイブイとオケを煽るのだが、それに対して大フィルはかなり迫力のある音色で答える。第1楽章などは緊迫感を保ちつつもグングンと前進していくパワーが圧倒的でなかなかに引き込まれる。

 そして美しい第2楽章を経て、主題が錯綜する最終楽章へ。メリハリの効いた演奏で大盛り上がりである。下野はかなりオケを煽りまくっていた印象があるが、それに答えて大フィルもかなりパワー溢れるサウンドを出していた。このコンビニは是非とも今後も公演願いたいところだ。


 これで今回の予定は終了。帰途につくこととなった。なかなかに充実していたが暑さのせいもあって流石に疲れた。

 

 

最終日は京都でルーヴル展の後にハンブルク交響楽団の公演

最終日は灼熱の京都へ

 翌朝は目覚ましで8時に起床。昨日購入していた朝食(いなり寿司)を手早く腹に入れると、まずは朝シャワー。体が温まったところで手早くチェックアウト準備をする。

 今日の予定は京都で開催されるハンブルク響のコンサート。その前に京セラ美術館でのルーヴル展を覗いていくつもりである。ただこの時期の京都には注意ポイントが2つある。まず一つは異様な暑さ。とにかく夏の京都は表に出たら殺意を感じるような暑さで、その暑さ(よりも「熱さ」と書くべきか)は大阪の比ではない。気をつけないと熱中症で命を落としかねない。

 もう一つの注意ポイントは祇園祭。疫病封じの祭りが今年も大コロナ感染祭りになるのではと懸念されており、とにかく近づかないことが肝要。さらに困るのは京都中心が大規模な交通規制がかかるので、一つ間違うと身動き取れなくなること。これらも考え合わせると柔軟な行動が要求されることになる。

 とりあえずまずは京セラ美術館を目指すが、安全策を取ってかなり早めにホテルをチェックアウト。京都南出口で名神を降りるコースでなく、京都東出口で降りて東側から回り込むルートを選択する。途中で渋滞もあったが、非常にタイミング良く展覧会開場直前の京セラ美術館に到着する。駐車場に車を置いて美術館に入館すると、既に券売所には長蛇の行列が出来ている。やはりルーヴルのネームバリューは強い。

10時前に京セラ美術館に到着

券売所には行列が

 

 

「ルーヴル美術館展 愛を描く」京都市京セラ美術館で9/24まで

テーマは「愛」

 ルーヴルの収蔵作品から「愛の風景」を描いた作品を展示。まずはいわゆる神話を題材にした作品から。神話で愛となるとやはりヴィーナスなどが定番となる。もっともヴィーナスとなると浮気の話も多い。

 これが第2コーナーになると、キリスト教の愛ということで、神の愛の象徴たるマリア像などの話になってくる。そして昔から人気のあるのはマグダラのマリア。娼婦から改悛したということで宗教題材にかこつけて妖艶な絵も描けるからだろうか。

 第3コーナーの人の愛となると、市井の人々の日常を描いたオランダ絵画等が中心。中には下世話なものもあり「家政婦は見ていた」という趣のものも。

 最終コーナーが撮影可能エリアで、作品は結構ごった煮である。それにしても画家の名前や作品の名前がやたらに長いのばかりはなぜだ?

最後の展示室のみが撮影可

アンヌ=ルイ・ジロデ・ド・ルシー=トリオゾン「エンデュミオンの眠り」

クロード=マリー・デュビュッフ「アポロンとキュパリッソス」

アリ・シェフェール「ダンテとウェルギリウスの前に現れたフランチェスカ・ダ・リミニとパオロ・マラテスタの亡霊」

 

 

 辛うじて名前を聞いたことがあるのはドラクロワとシャセリオーぐらいか。

テオドール・シャセリオー「ロミオとジュリエット」

ウジェーヌ・ドラクロワ「アビドスの花嫁」

フランソワ・ジェラール「アモルとプシュケ、またはアモルの最初のキスを受けるプシュケ」

 テーマがあるようなないようなで今ひとつテーマ性は薄い。またそのテーマから美麗な絵は多いが、ティントレットなどの有名どころがなく、美麗であるが印象に残らない作品が大半というところ。夏の一服の清涼剤には良いが、芸術作品を堪能すると言うのとは少し違うか。

 

 

昼食は東洋亭で

 1時間弱で展覧会の鑑賞を終えると車を回収してホール方向を目指す。幸いにしてこの辺りは渋滞もなく、予定通りにアキッパで確保しておいた駐車場に到着する。ちょうど時間が11時直前だったことから、11時にオープンする「東洋亭」に立ち寄って、まずは昼食を摂っておくことにする。

東洋亭は営業開始直後

 東洋亭は既に待ち客が行列を作っているが、幸いにして第一陣で着席できそうである。ただそれでもこの店は客あしらいが非常に上品であるために、着席まで15分ほど待たされることになる。ようやく席に着くと注文したのは「ビフカツのランチ」。暑さのせいで疲れてグダグダなので、この際は少し奮発する。

 まずいつもなぜか無性に美味い謎トマトのサラダ。今回は北海道のトマトとのことだが、発汗でミネラルが失われているのかひときわ美味い。

謎のトマトサラダ、謎の美味さ

 次にメインのビフカツが到着。ここのはレアカツで柔らかさが売りのタイプ。朝食が軽すぎて既にガス欠気味だったこともあってやはり美味い。

メインのビフカツ・・・生き返る

 メイン終了後はデザートとドリンク。デザートはお約束の百年プリン。このシッカリとした舌触りのプリンが実に私好みである。今時流行のクリームプリンと対極にある。ドリンクの方はこの暑さであるから、アイスミルクティーを注文。ただアイスティーはやはりアールグレイ系のようで、私の好みにピッタリと合致するものではない。そう言えば今まで「これは」というアイスティーに出会った経験がない。

百年プリンとアイスミルクティー

 

 

 昼食が終わった頃には13時をやや回るかというところ。さてこれからの予定だが、当初は地下鉄で烏丸御池に戻って京都文化博物館に立ち寄るということも考えていた。しかし昼食をややゆっくりと取ったことと、何よりも実際に京都に来て殺人的な暑さを痛感したことで、これからどこかに出向くという意思は木っ端微塵に粉砕された。結局は早めに冷房の効いたホールに入って、グダグダと自堕落に過ごすことに。

痛いような暑さの中をさっさとホールに逃げ込む

 しばし原稿入力などでウダウダした後、ようやく入場時刻が来たのでゾロゾロ入場。入りは2階席、3階席に空席が結構あり、7~8割というところか。やはり高い席の悪い席が売れ残るというよくあるパターンである。

 

 

ハンブルク交響楽団

12型編成の中規模オケ

[指揮]シルヴァン・カンブルラン  
[ピアノ] マルティン・ガルシア・ガルシア 

ベートーヴェン:序曲、「エグモント」作品84 より
ショパン:ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 作品21
ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 作品92 

 ハンブルク交響楽団は12型の中型クラス編成。シットリとした弦楽陣はなかなか良い音を出す。また管楽陣は名手揃いとは思わないが、全体として非常にまとまりの良いオケ。日本では関西フィルのイメージと被る。

 さてカンブルランの指揮だが、ベートーヴェンを演奏する時は「ベートーヴェンが聞いたであろう音を再現する」というピリオドアプローチと、性能もアップした現代楽器をフルに駆使するというモダンアプローチの両者があるが、カンブルランはもろに後者の方である。それも「ベートーヴェンが聞いた音と言ったって、そもそもその頃にはベートーヴェンはほとんど聞こえてないでしょ」と言わんばかりに、抑揚強調気味のかなりドラマチックな表現で、超モダンアプローチとでも言うべきもの。そもそも最初からベートーヴェンの曲の中ではドラマチックな部類のエグモントは、まさに映画音楽並のドラマチックさである。カンブルランは躍動感に満ちた指揮でオケを煽りまくる。

 二曲目はショパンであるからなおのこと、初っ端からオケがブイブイとかなりロマンチックな音色を立てる。これは受けるピアノの方も大変だなと思っていたら、どうしてどうしてガルシアはなかなか色男ピアノである(ピアニストが色男なのでなく、あくまでピアノの音色が色男)。しかもこの色男、単なる優男でなく、ここというところではパシッと野性味も見せる濃い系の色男。背後のオケと丁々発止で掛け合う演奏はなかなかにスリリングにしてロマンチック。これはまたとんでもないのが登場したなと驚く次第。

 ガルシアの名演に場内は大盛り上がりで、結局彼はアンコールを2曲演奏してほぼ強引に引き揚げた。アクロバチックにしてロマンチック、なかなかに優れた演奏であった。

 後半のベートーヴェンの7番は、もうエグモントから予想できるとおりの演奏。とにかく超ロマンチックである。よく聞いているとテンポから音色までカンブルランは様々な仕掛けを駆使して表現してくるのだが、それに対して的確に反応するハンブルク響の演奏は見事の一言。なかなか最後まで「魂の熱くなるようなベートーヴェン」であった。

 アンコールはスラヴ舞曲だったのだが、アンコールということでかカンブルラン節がさらに露骨に発揮され、引っ張ったり急にテンポを上げたりとかなり激しい演奏。おかげでオケが崩れそうになる局面もあったのはご愛敬。舞曲と言いながら、合わせて踊っていたら蹴躓いてコケそうな感じの曲である(笑)。

 カンブルランの指揮については今回が初めてではないはずなのだが、ここまで極端にロマンティックな指揮者という認識はなかった。以前に京響に客演した時の記事を改めて目を通すと「現代アプローチのハイドン」との記述があるので、やはり今回の演奏と同じような印象を受けていたようではある。なおハンブルク響に関西フィルに通じる雰囲気を感じていたことから、カンブルランに1度関西フィルでの客演を願いたいなどと感じた次第。デュメイが鍛えたネットリシットリした関西フィルを「躍動するカンブルラン」が振ったら、どういう音楽が登場するかを考えると興味深い。


 これでこの週末の三連休遠征も終了となった。それにしても特に京都の殺人的な暑さ(熱さ)にはまいった。おかげで予定の半分ぐらいはこなすことが出来なくなってしまった。京都は暑いことが分かっているから、事前に大阪でライフライン(ミネラル麦茶)の凍結ボトルを買い込んで乗り込んだのだが、それが帰りには見事にヌル茶になっていたのには呆れる次第。こんな中での野外活動は命取りである。

 

 

この遠征の前日の記事

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週末三連休初日は関西フィル定期演奏会と金山平三展

週末大阪遠征

 この三連休はコンサートに繰り出すことにした。まず初日の土曜日は関西フィルの定期演奏会である。土曜の朝に目覚めると、午前中に家を出る。コンサートは14時からだから焦る必要はないのだが、コンサートの前に途中の神戸で一カ所立ち寄るつもりでいる。実はここは先日、神戸までMETライブビューイングを見に行った帰りに立ち寄るつもりだったんだが、BBプラザ美術館に立ち寄ったところで力尽きてしまって断念したところである。

 いつものように週末渋滞の阪神高速を抜けると摩耶出口で一旦降りる。立ち寄ったのは兵庫県立美術館。ここで開催されている金山平三展を見学しておこうという目論見。ただ正直なところ入館料の1600円は高いなと思っていたのだが、今日は「ひょうごプレミアム芸術デー」とかで、特別展とコレクション展のチケットが手渡される。ここはコレクション展を見るのは別料金であることを考えると、これはかなりのラッキー。

特別展とコレクション展のチケットを無料で入手

 

 

「日本洋画の巨匠 金山平三と同時代の画家たち」兵庫県立美術館で7/23まで

特別展入口

 以前より兵庫県立美術館がコレクションに力を入れている地元ゆかりの金山平三の作品を、今年が生誕140年(やや中途半端な数字だ)とのことで大規模に展示した大展覧会である。

 金山平三は日本を代表する洋画家の一人である。孤高の画家と言われることも多いらしいが、実際に先輩の満谷国四郎と交流があり、また荒井完や柚木久太らと写生旅行に出かけるなどもしていたという。そのような交流関係を示す絵画がまず登場。

金山平三「自画像」

満谷国四郎「戦の話」

金山平三「秋の庭」

 

 

 ヨーロッパにも渡ったようだが、そうすると渡欧した日本人画家の常として、やはり印象派の洗礼を受けたようだ。元々その傾向があった彼の絵がより顕著に印象派寄りになっている。

金山平三「水汲み女」

金山平三「「ヴェトゥイユ」(モネが住んでいたことで有名な地)

柚木久太「モレーの秋」

 ヨーロッパから帰国しても、彼らから刺激を受けて瀬戸内の絵などを描いていたようである。

柚木久太「春潮(玉島港)」

金山平三「春の内海」

 

 

 さらに満谷国四郎と共に中国にも渡った(途中で児島虎次郎が合流)らしい。

金山平三「江南水郷」

満谷国四郎「石橋」

 装飾的な作品なども手掛けているが、画風が合わなかったか途中で頓挫している。

満谷国四郎「木々の秋」

上記に触発されたと思われるが、金山平三の作品は未完成

 

 

 明治神宮聖徳記念絵画館を飾る壁画制作の依頼を受けて取材のために朝鮮に渡って描いた作品もある。

金山平三「蘇州の石炭運び」

金山平三「働く人」

 また芝居に親しんでいた彼は、芝居絵も残しているという。

金山平三「判官切腹」

金山平三「御無用」

 

 

 さらに風景画のイメージが強い金山平三だが、実は静物画も残しているという。

金山平三「菊」

金山平三「静物」

 中にはあからさまにセザンヌを思わせる作品も。

セザンヌの影響があからさまな「とまと」

 

 

 また列車を乗り継いでは各地に出かけて風景画を製作していたという。諏訪から日本海側に抜けて、十和田湖の辺りまで行ったそうな。放浪の風景画家という趣だが、あえて鉄道を使用しているあたり、実は単なる乗り鉄だったという気もしないでもない。

金山平三「冬の諏訪湖」

金山平三「塩尻峠」

金山平三「梨咲く」

金山平三「紫明仙」

金山平三「渓流」

 以上、金山平三の画業を概観する展覧会であった。金山平三についてはここのコレクション展で作品を見て名前は知っているが、どういう画家かについては極めて印象が薄く、全くイメージが残っていなかった。今回、彼の作品を概観して初めて金山平三という画家を把握した気がするが、私に何の印象も残っていなかった理由も分かった。つまり概ね好ましい絵を描くが、これという強烈な個性も感じないというのが本音なのである。良くも悪くももう少し尖ったところがあれば何らかの印象が残ったのだが(最悪の印象になるかもしれないが)、そういうものがないので流れてしまったようである。

 

 

 特別展にはNHKのカメラが入っていた。NHK神戸放送局の模様。「日曜美術館」だったらこんな会期末の開催中のところにやって来るのもおかしい(大抵は開幕前か、開幕後なら閉場後に客のいない状態で撮影する)ので、多分ローカルニュース辺りだろう。「今日は兵庫プレミアム芸術デーで、無料観覧になった兵庫県立美術館には大勢の美術ファンが押しかけ・・・」とやるつもりではと思ったが、場内は残念ながらガラガラ。だからでもないだろうが、作品をいくつか撮影して行っていた模様。ちなみに私は兵庫プレミアム芸術デーなんて、兵庫県民にも関わらず今日になって初めて知った。そもそもあまりにPR不足なんじゃないか。

 

 

 特別展の見学を終えると、せっかくだからコレクション展の方も立ち寄ることにする。考えてみるとここのコレクション展を見学するのは数年ぶりだと思う。コレクション展は2階及び1階で開催されている。2階には金山平三展示室と小磯良平展示室がある。金山平三の方は上でしっかり見てきたところで、展示作品自体は上の方が面白い。小磯良平の方はいかにも彼らしい洒落た絵画が多い。中には小磯記念美術館で見た記憶のある作品も。

小磯良平「斉唱」

小磯良平「スペインの女」

小磯良平「洋裁する女達」

小磯良平「T譲の像」

 

 

 1階では現代アート。特徴的な作品が多々ある。まあ個人的に感心するような作品はないが、とりあえず現代アートを一望できる雰囲気でそれなりには面白い。

展示室はこんな感じ

マグリットの「美しい囚人」

高松次郎のお約束の「影」

西山美なコの特別展示もあり

ジョージ・シーガルの「ラッシュ・アワー」私は個人的には「プロジェクトX」と呼んでいる

 

 

ジム・ダインの「植物が扇風機になる」・・・まんまじゃん!!

これは今さら説明不要のジャコメッティの作品

作業中の脚立を放り出したようにしか見えない大西伸明の「kyatatsu」

しかし実はアクリルに超リアルな塗装をしているという仕掛けが

今村源の「レイゾウコとヤカン」は放置してカビの生えた冷蔵庫にしか見えん

 コレクション展を一回りしたところで美術館を後にする。当初はコレクション展まで回るつもりはなかったことと、朝の阪神高速が予想以上に混雑していたことで予定よりもかなり時間が押している。当初予定では昼食はここから少し歩いたところにある店に立ち寄るつもりだったが、時間がないのでホール方面に移動してから、そちらで昼食を摂ることにする。

 

 

昼食は寿司ランチ

 大阪までは30分ほど。いつも阪神高速海老江出口から降りてから下道の渋滞で苦しめられるのだが、さすがに平日の夕方と違って土曜の昼時はガラガラである。順調にホール近くに到着、何とか駐車場も見つけることが出来る。

 さて車を置いたら昼食である。それにしても暑い。少し歩いただけで目眩がしそうなほどだ。若い頃はこの炎天下をよくキャリーを引きずりながら歩き回ったものだが、今となってはキャリーを引きずっていないにもかかわらず、歩き回る気力はもう私にはない。コロナが落ち着いたらいずれは交通費節約のためにも鉄道利用に戻したいが、果たしてそれに耐える体力があるだろうか。どうもコロナ禍は私の体力をも著しく削いでいる。

 昼食に何を食うかだが頭にいろいろなメニューが回る。ただこの炎天下をあまり長く歩いていたら、頭に浮かぶメニューがすべてかき氷かアイスクリームになってしまいそうだ。結局この日の昼食は寿司にすることにする。立ち寄ったのは最近ちょくちょく行っている「元祖ぶっちぎり寿司 魚心」。例によってのランチメニューの「ぶっちぎりセット(1000円)」を注文する。

高架下の「魚心」

 大ネタの寿司がなかなか美味い。また付属のあら汁も意外に馬鹿に出来ない。CPぶっちぎりとまではいかないが、大阪という場所を考えるとまずまず納得できるレベルのCPである。私としては今後もこの店がご健勝なることを祈るのみ。

寿司はまずまず

 

 

 昼食を終えるとホールへ。途中でコンビニにクールダウンに立ち寄って時間調整、ホール開場直後に到着するようにタイミング調整する。私がホールに到着した時は、ちょうど目の前で入場が始まったタイミングだった。

ザ・シンフォニーホールはちょうど入場開始中

 その後は毎度のように喫茶でマッタリ。現在この原稿を入力している(笑)。しばしここで時間をつぶしてから、藤岡幸夫のプレトークが始まった頃にホールに入場する。今回のプログラムは藤岡が以前からやりたいと思ってはいたが、なかなか金がかかるために出来なかったとか。特にボーイ・ソプラノが国内では見つからず、はるばる本場のイギリスから呼ぶことになったとのこと。

開演まで喫茶でマッタリする

 

 

関西フィルハーモニー管弦楽団 第339回定期演奏会

14型のオケにパイプオルガンもスタンバっている

[指揮]藤岡幸夫
[ボーイ・ソプラノ]マックス・トーマス
[ソプラノ]並河寿美
[テノール]村上敏明
[合唱]関西フィルハーモニー合唱団
[管弦楽]関西フィルハーモニー管弦楽団

エルガー:エニグマ変奏曲 op.36
アンドリュー・ロイド・ウェッバー:レクイエム

 前半はエルガーのエニグマ。14型のオケにパイプオルガンを加えた大きい編成での演奏である。この曲はつい最近に下野/PACで聞いたところであるが、下野のガンガンと行く演奏と違って、藤岡はもっとしっとりゆったりと聞かせる印象。そもそも関西フィルの弦楽陣もそういうタイプのカラーになっている。もっともその分、かなり明快だった下野の演奏と異なり、エルガー特有の曖昧模糊とした感覚は強くなる。

 藤岡は関西フィルでこの曲を演奏するのは初めてとのことだが、ニムロッドだけはデュメイのアンコールで何度か聞いたことがある。同じ曲でもデュメイはこれでもかと弦楽陣にしっとりネットリとした音色を要求するのに対し、藤岡はもっとあっさりした感じがある。

 藤岡は藤岡で結構ノリノリであり、それなりにキレのある演奏ではあったのだが、そもそもエルガーがあまりに得意ではない私の場合、下野の極めて明快でエッジの立った演奏の方が好ましく聞こえたのも本音ではある。

 

 

 前半が終了したらいつもの倍以上の数のスタッフが出て、ステージの大組み替え作業である。何しろ次の曲はシンセサイザーにピアノ、打楽器類に合唱団にパイプオルガンとかなりの大編成の曲。その一方でヴァイオリンだけは本日はお役御免だそうな。楽器の入れ替えからひな壇の組み上げまでてんやわんや。かなり大変な状況である。

大勢のスタッフでステージ組み換え中

 後半のレクイエムはヴァイオリンが全員お休み(その代わりのシンセサイザーらしい)なので、当然ながらコンマスも不在。演奏開始前のチューニングをヴィオラ主席の中島が行ったのがなかなかに珍しい光景。

 作曲したウェッバーは「キャッツ」や「オペラ座の怪人」などを手掛けたミュージカルの大家とのことで、その彼があえてオーケストラに向けて作曲したのがこのレクイエムであるという。もっともそこにはやはり一ひねりあり、ヴァイオリンが不在でその代わりにシンセサイザーを用いるとか、多彩な打楽器にピアノなどと言った非常な音色の多彩さが秘められている。

 曲自体はミュージカル作曲家だけあって、いわゆる現代音楽の奇々怪々なものではない。単純なクラシックのオマージュではなく、かなり音色的に現代的な部分は多いが、基本的にメロディラインは存在するタイプの音楽である。また時には破壊的な音色を出すこともあるが、概ね荘厳さが保たれるという音楽でもあり、間違いなく「レクイエム」であるということは分かる。

 とは言うものの、私には初物の上に分かりにくいところもある音楽であるというのが本音。決して付いていけないものではないが、かと言って好ましいかと言われるとそれも難しい。関西フィル合唱団及び関西フィルの演奏自体は実に良くできていた印象であるが、正直なところこれも比較対象もないので断定的なことは言えない。

 

 

いつものように新今宮で宿泊

 コンサートが終了するとホテルに移動することにするが、もう駐車場に車を取りに行くだけで暑さにやられるような状況。しかもホテルまでの道は大渋滞でやたらに時間がかかる。何だかんだで予定よりは遅れ気味になるし、体力は底をつくしで、当初考えていたこの後の立ち寄り先は断念することにする。どうも老化による体力低下で昔のように思ったとおりには活動できなくなっている。

 予定よりやや遅れてようやくホテルに到着する。ホテルはいつもの定宿「ホテル中央オアシス」。今回はダブルの部屋に振り替えしてくれたとのことで、ベッド幅がいつもより広いが、どうもデスクの幅も広いようである。おかげで仕事環境が余裕を持って構築できる。

ベッドはダブルサイズでデスクもやや広い

おかげで仕事環境もやや余裕あり

 

 

 エアコンを全開にして火照った体を癒やしたら、やや早めであるが夕食に繰り出すことにする。新世界まで繰り出す体力はないし、そもそも串カツを食べる気もない。となると新今宮界隈で店を探すか。「らいらいけん」を覗いたが、日替わりが今ひとつ私の好みでないので、「南自由軒」を訪問することにする。注文したのは「和牛煮込みハンバーグとオムライスのセット(1020円)」

巨大オムライスの看板が目印の「南自由軒」

 牛肉のオムライスがコクがあって非常に美味い。とにかく「オムライスは鶏肉でケチャップ」という思い込みを完全に打破してくれる料理である。人間は往々にして思い込みからの決めつけというのがありがちなので、たまには頭をやわらかくする必要があるということを痛感させるメニューである。さらに和牛煮込みハンバーグが価格柄小ぶりではあるが、なかなかに美味い。これをメインにしてガッツリ白飯を食いたい気分もする。

オムライスと煮込みハンバーグ

 

 

 コンビニに立ち寄って明日の朝食を調達するとホテルに戻る。ホテルに戻って再び冷房で部屋を冷やしてから一息つくと、次にするべきは入浴。そもそもそのためにこの新今宮では高級ランクに入るホテルを予約したのである。このホテルでもユニットバスの部屋ならもう少し宿泊料金が安くなるが、そこはやはりゆったりと風呂に入るためにはセパレートというのは譲れない矜持というものである。

やはり風呂とトイレはセパレートに限る

 風呂でサッパリと汗を流すと原稿入力作業。しかしどうも頭がクラクラする。かなり意識的にライフライン(ミネラル麦茶)を摂取していたにもかかわらず、軽い脱水状態になったような気がする。


 今一つ能率が上がらないが、時々ベッドで横になって一休みしながら人心地ついたら作業再開。結局この日はその調子でグダグダと暮れていくことに。

 

 

この遠征の翌日の記事

www.ksagi.work

 

 

METの「ドン・ジョヴァンニ」を鑑賞してから、BBプラザ美術館の収蔵品を楽しむ

神戸まで出向く

 今日は神戸までMETライブビューイングを見るために出向くことにした。演目はモーツァルトのドン・ジョヴァンニという定番ものである。三宮まで車で突っ走ると、駐車場はakippaで確保済み。

神戸国際会館

 現地到着は11時頃で、上映は11時55分からなのでとりあえずは昼食を摂っておくことにする。入店したのはたまたま見かけた「がんこのトンカツとカレー」。回転寿司で有名ながんこが最近は和食全般のレストラン展開をしているが、その一環の店だろう。「ロースカツカレー」を注文する。

がんこのトンカツ店の模様

 ロースカツはいわゆるトンカツ定食用の厚切りのものであり、食べ応えあり。カレーについては比較的よくあるタイプの無難な味だが悪くない。ただトンカツ及びカレーの単品ごとには問題がないのだが、トンカツが厚切りタイプなのが祟って、カツカレーとしての一体感がない。その辺りが微妙なところである。なお場所柄仕方ないこととはいえ、これで1100円はやはりCPとしては良くはない。

カツカレーはややCPが気になる

 がんこは寿司屋も以前に行ったことがあるが、回転寿司としては決して安い方ではないし、かと言ってそれほど高級な内容ではないという中途半端感があったが、どうもここもそれと同じものを感じる。

 そろそろ時間が迫ってきたので映画館へ。モーツァルトのド定番作品だけに人気があるのか、今日の入場客は20人ぐらいと、まずまずの盛況だったようである。

 

 

METライブビューイング モーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」

www.shochiku.co.jp

指揮:ナタリー・シュトゥッツマン
演出:イヴォ・ヴァン・ホーヴェ
出演:ペーター・マッテイ、アダム・プラヘトカ、フェデリカ・ロンバルディ、アナ・マリア・マルティネス、イン・ファン、ベン・ブリス

 説明するまでもないモーツァルトの超有名作。不埒な女たらし貴族のドン・ジョヴァンニが、自らの悪行が祟って地獄落ちするという作品。放蕩生活を続けていたモーツァルトの自虐作品とも言われている。

 指揮はMET初出演という歌手上がりの新鋭指揮者のナタリー・シュトゥッツマン。歌手の立場も知りつつの演奏ということになる。

 歌手陣はドン・ジョヴァンニのマッティを始めとして実力者揃い。冒頭からレポレッロのプラヘトカのかなり存在感のある歌唱が印象に残る。主演のマッティは見事な美声で最低な色男を演じきっている。

 女性陣で印象に残ったのはドンナ・アンナのロンバルディ。悲劇的な運命に打ちのめされるヒロインの心の乱れを上手く表現していた。優男の婚約者をブイブイ振り回す役どころでもある。

 演出などによって主人公のドン・ジョヴァンニの描き方も変わり、悪党だが愛嬌のあるような人物として描く場合もあるが、本作の場合はかなりの悪党に描いていた印象。結果としては何やら勧善懲悪ものに近いテイストになっていた感もある。特にドン・ジョヴァンニの描き方が単なる女ったらしというよりは、最早性犯罪者という描き方だったのが印象に残るが、この辺りは今日のご時世の反映だろうか。


 上映終了が15時半過ぎ。車を回収すると、帰宅前にもう一箇所立ち寄ることにする。目的地はここから車で10分ほど走った先にあるBBプラザ美術館。

BBプラザ美術館に到着

 

 

「新収蔵品を核に 東西作家のコンチェルト 特集展示-生誕100年 網谷義郎」BBプラザ美術館で7/17まで

 コレクションを展示とのことであるが、予想外にコレクションのレベルが高くて驚いた。西洋絵画についてはルノワールから始まって、シャガール、ローランサン、コロー、ヴラマンク、ユトリロ、パスキンなどなど、蒼々たる画家の作品が並んでいる。中でもルノワールやシャガールなどはなかなか私の好み。

ジュール・デュプレの「池にいる牛と農場の暮らし」

 一方の日本の画家についても日本の洋画家を中心に蒼々たるメンバーの作品がズラリ。高山辰雄に梅原龍三郎、安井曾太郎、佐伯祐三、小磯良平、石本正、岡鹿之助など。小倉遊亀やら加山又造まであるのには驚いた。

佐伯祐三の「オワーズ河周辺風景」はどことなくヴラマンクの影響が

より佐伯らしい「レ・ジュ・ド・ノエル」


 手前のコーナーでは網谷義郎の作品を展示中。この人物の作品はこの館の収蔵品の大きなものでもあるらしいが、具象から端を発して段々と奇っ怪な絵画へと発展していった画家のようであるが、私的にはあまり印象に残らず。

網谷の作品の中ではまだ分かりやすい「白衣の女」

 小さな美術館であるが、思いの外にレベルの高い所蔵品を所有していて驚いた。普段は貸館的な催しが多い印象のところなんだが。

 

 

2日目は福田美術館に立ち寄ってから京都市交響楽団の定期演奏会へ

京都に向かうが・・・

 翌朝は7時半に起床すると、とりあえず朝風呂で体を温めてから活動開始する。昨日帰りに阪急オアシスで購入していたミートスパを朝食にすると出かける準備。今日は京都コンサートホールで京都市交響楽団の定期演奏会があるから、それに立ち寄りつつ美術館なども回るつもり。

 とりあえず9時前に外出すると京都へ移動。最初は福田美術館に10時の開館直後に滑り込むつもり・・・だったんだが、いきなり予定が狂いまくる。まず中国道の吹田付近で渋滞。まだそれはどうにかなったが、京都縦貫道に入ってから事故渋滞で車が動かず、その上に降りるべき出口を通過してしまう(私のナビが古すぎて京都縦貫道に対応してなかったのが原因)というミスも重なり、その挙げ句に毎度のような嵐山周辺の渋滞でダメ押し。結局は嵐山到着が予定よりも1時間以上遅れる羽目に。

京都縦貫道に入った途端に事故渋滞

 ようやく嵐山に到着するとまずは駐車場探し。この近辺は観光客が異常に多いせいで、駐車場もボッタクリばかりである。近くの観光駐車場は1日1000円という辺りが相場だが、この時間になるとどこも満車。もう少し遠い場所の駐車場を探すが、気をつけないと20分300円で上限なしなどというような超ボッタクリ駐車場もある(しかも少なくない)ので要注意である。結局は嵐山から10分以上歩くような場所に上限500円の駐車場を見つけたのでそこに車を置く。

 後は福田美術館で歩くことに。嵐山周辺は観光客が多く、外国人観光客も多いせいかマスク率が異常に低い。もう緩みまくりである。反動が怖い。

嵐山周辺は観光客も多い

 

 

「橋本関雪 生誕140周年 KANSETSU ー入神の技・非凡の画ー」福田美術館で7/3まで

ようやく福田美術館に到着

 日本画家橋本関雪の大規模展覧会。橋本関雪は京都四条派の絵画を学び、そこに独自の学識を加えて画風を確立したとのことであるが、この規模の展覧会を観覧するとさすがにその画風の広さを実感することができる。

 基本は四条派の精密写生にあることは間違いないのだが、中国に関して知識があったとのことで、いわゆる伝統的な山水画の類のような絵画も多数残している。

この「美人観桜図」なんかはいかにも日本画

日本画らしい画題の「雪月花」

「諸葛孔明」右隻、これなんか完全に山水画だ

「諸葛孔明」左隻、劉備一行が描かれている

この「僊女」なんかもまた雰囲気が違う

 定番の「だるま大師」なんかの絵もあるが、以前から私はだるま大師と聞くと少年(江木俊夫)が「だるま大師!」と叫びながらだるま型の笛を吹くと、巨大赤だるまが飛んできてガシンガシンと手足が生えてロボットになるという妄想が浮かんでしまう。

日本画の定番である「達磨大師」

 

 

 さらに私は個人的には「馬の関雪」と言ったりするのだが、とにかく動物画に関しても上手さを感じさせる。本展では猿を描いた作品が多数展示されている。

玄猿図

狐を描いた「夏暁」

「木蘭」の右隻には馬も登場

「木覧」の左隻は本展の表題作

「秋桜老猿」

 

 

 福田美術館の見学を終えると嵯峨嵐山文華館の方にも立ち寄る。もうどうせ他のところに立ち寄っている時間的余裕はないから、今回共催のこちらも見学するべくセット券を購入している。

嵯峨嵐山文化館へ

 福田美術館は主に館蔵品の展示であったが、こちらは橋本関雪記念館の所蔵品の掛け軸や屏風などが中心。人物山水十二題などの新南画と呼ばれた作品が中心となっている。

人物山水十二題

人物山水十二題より「霧林樵父」

人物山水十二題より「松林翠嵐」

 四条派から始まった関雪であるが、元から中国志向があったようであることから、南画方向に向かうのは必然だったように感じられる。こちらに展示されているのはもろに南画である。関雪の境地が覗えて興味深い。

二階は大広間

「東海大観」なんか横山大観みたいだ

「雨意」

 ところで話は全く変わるが、マグマ大使って後で調べてみたら、手塚治虫だったんですね。私はてっきり横山光輝だと思っていた。手塚はとにかく少女漫画からSFまで何でも書いてたが、昔の漫画家は結構いろいろ描いてますから。赤塚不二夫が少女漫画書いてたりとか。

     
私はてっきり横山光輝だと思い込んでいた

 

 

昼食はそばにする

 美術館の見学を終えた時には昼頃である。昼食を摂らないといけないが、嵐山周辺は大混雑の上に一見の観光客相手のボッタクリ店ばかりなので、ホールの方に移動してしまうことにする。このドライブも途中渋滞で普通以上に時間がかかる。やっぱり京都って本来は車で来るところではないようだ。予定よりも時間を浪費しながらようやく北山に到着、アキッパで確保していた駐車場に車を置いた時には1時頃になっている。

 これから昼食を摂る店を探す必要があるが、「東洋亭」は例によって20組以上待ちでいつになるやら不明の状況。他の店もフォルクスにまで行列が出来ている状況。結局店を選ぶ余地がほとんどないままに、たまたま待ち客がいなくなっていたそば屋「そば料理よしむら北山楼」に入店する。

結局は蕎麦屋に入る

 注文したのは北山御膳。内容的には悪くはないのだが、ここはそばはともかくとして丼が以前からあまり美味くないことを忘れていた。天丼のご飯に味がない上にやけに柔らかくてしっくりこない。むしろ付け合わせの大根サラダや豆の方が美味かった。

北山御膳

 朝食を終えるとホールへ。ザクッと8~9割の入りと言うところ。

 

 

京都市交響楽団第679回定期演奏会

久しぶりの京都コンサートホール

エリアス・グランディ(指揮)
金川 真弓(ヴァイオリン)

チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
バルトーク:管弦楽のための協奏曲

 一曲目の協奏曲は金川が非常に良い音色を出すのに驚かされる。深い上に力強い。巨匠の片鱗どころか、もう既に巨匠の域に踏み込みつつあるのを感じさせる。末恐ろしいなどという次元ではない。バックの京都市響も実に安定感があってしっとりとした良い演奏で金川を盛り上げる。

 演奏終了後には爆発的な盛り上がりであったが、それも頷ける名演である。また金川はアンコールのプロコでもしっとりとした旋律を聴かせてくれた。

 後半はバルトークの炸裂する音楽。グランディの指揮は京都市響からなかなかに鮮烈な音色を引き出している。それにしても驚いたのは京都市響の抜群の安定性である。弦楽陣は一体となって全く乱れがないし、管楽陣もかなりの安定度で危なげがなかった。弦楽陣についてはここまでまとまって一丸となった音色を出せるオケは、残念ながら関西には他にない。大阪フィルにしてもここまでのまとまりはないし、デュメイに鍛えられた関西フィルでもまとまりという点に関しては遠く及ばない。後はこれで音色にもう少し艶が加わったら世界レベルと言っても過言ではない。

 グランディの指揮は奇をてらわない正攻法のものに感じられたが、音楽のまとまりが非常に良かったことを考えれば、しっかりとツボを押さえているのだろう。単なるガチャガチャとした空騒ぎでなく、音楽がピンと一本筋の通ったものになっている。グランディが自らの意志の元にオケを統率できていることが伺われる。

 トータルで見て京都市響の技量が光ったコンサートであった。さらに金川といい、グランディといい、次世代の巨匠の登場を思わせる内容であったのである。実りが多く京都まで出張ってきた価値を感じさせる内容であった。

 

 

大阪に戻ると夕食のために久しぶりの新世界へ

 コンサートを終えると大阪に戻ることにする。しかし夕方の京都は大渋滞。いつも京都に来るとこれで神経と体力を消耗してしまう。やっぱり京都は車で来るべきところではない。結局は京都市内を抜けて高速に乗るまで1時間以上を費やすことに。名神はスムーズに流れていたが、阪神高速は渋滞だし、ホテルに戻ってきた時には結構疲れている状況に。

 さて夕食だが、今日の夕食については「らいらいけん」でなく、頭にイメージのあるものがある。そこで部屋に荷物を置くとすぐに出かけることにする。ここで一息ついてしまったら疲れが出て動けなくなりそうである。

 じゃんじゃん横町を抜けると新世界へ。この界隈も外国人客がやたらに多くてごった返しており、またいかにもそれをターゲットにした串カツ屋などがやたらに増えている。「てんぐ」や「八重勝」などの人気店は相変わらずの大行列だが、「大興寿司」なんかにも行列が出来ているし、「串カツだるま」も大行列。

通天閣周辺は外国人らで大混雑

じゃんじゃん横町の「てんぐ」や「八重勝」も大行列

 

 

夕食は久しぶりの洋食店へ

 さて今日の目的の店は裏通りにある。小さな店なので混雑してたら嫌だなと思っていたが、久しぶりに訪れたその店はいつもの様子であった。私が訪れたのは「グリル梵」。久しぶりにどうしてもビフカツが食べたくなったのである。当然注文はビフカツにライスをつけて。

裏通りの「グリル梵」、この日は私が最後の客だった

これぞビフカツ

 以前から何度も言っているが、そもそも関西においてカツと言えば本来はビフカツのことである。最近はそういう昔からのお約束もなかなか通用しにくくなったのか、トンカツ、ビフカツという両表記を関西でも見ることが多くなってきた。それはともかくとして、やはり関西の正しいビフカツとは、最近多いレアカツではなく、ここのようなミディアムカツである。まさに関西の正攻法の洋食である。

このミディアムな火の通り具合が正解

 しっかりと久しぶりのビフカツを堪能したのである。財布に負担をかけないようにとは考えていたのだが、京都往復で散々疲労すると自制心の方が消耗してしまっていた。また明日から節約生活をしないと。

 夕食を終えるとホテルに戻って入浴。後は今日の原稿を・・・と思ったのだが、なんだかんだで今日は1万3千歩以上歩いていたようで疲労が半端でなく、デスクに向かっても意識が飛びそうになる。もう諦めてかなり早めに就寝することにする。明日は最終日だ。

 

 

この遠征の翌日の記事

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この遠征の前日の記事

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PAC定期演奏会は井上道義のファイナル(になるはずだった)バレエ付き「火の鳥」

行くところがないので尼崎歴史博物館に立ち寄る

 翌朝は8時前に起床、昨日買い込んでいた朝食を腹に入れると朝風呂。その後はチェックアウト時刻の11時まで原稿執筆などをしながらゴロゴロ過ごす。

 さて今日の予定だが、15時からのPACのコンサート以外はキチンと定まっていない。ちなみにPACのコンサートは井上道義の公演のはずだったのだが、井上が体調を崩したらしく、急遽若手指揮者に振り替えられた模様で、その時点で「なんだかなあ」である。また開演までやや時間があるのだが、その間のつぶし方もまだキチンと定まっていない。もう半分以上は出たとこ勝負である。

 

 11時にホテルをチェックアウトすると、まずは尼崎を目指す。昨日の夜に調べたところによると、尼崎市立歴史博物館なるものが復元された尼崎城の近くにあるという。

校舎を流用した尼崎市立歴史博物館

教室が展示スペースになっている

 

 

 歴史博物館は明らかに元々学校だった建物を流用したもの。入場料が無料なのは良いが、駐車場は有料。2階の教室が常設展示室となっており、6つの教室に古代から近代までの展示だが、古代から中世をかなりすっ飛ばして近世の尼崎城の時代になっており、中世辺りがあからさまに手薄。どうも収集資料に少々偏りがありそう。

近代の展示室

ここは近世(江戸時代)

隣の展示室にあった尼崎城の模型

古代の展示室

 3階に企画展示室があり、内容は尼崎ゆかりの武将、細川高国、三好長慶、佐々成政にまつわる資料だが、文書中心であってマニアックで地味。そこまでコアな歴史マニアではない私には、あまりにもマニアックすぎるのでザッと流すような感じ。

企画展は文書中心

 歴史博物館の見学を終えると次に向かうのは大谷美術館。何やらボダニカルアートの展覧会をやっているという情報を得ている。ボダニカルアートに特に興味はないが、どこかでボーッと時間をつぶすよりは有用だろうとの判断。

 

 

「英国キュー王立植物園 おいしい ボタニカル・アート 食を彩る植物の物語」西宮市立大谷美術館で7/23まで

大谷美術館に入館する

 英国キュー王立植物園は18世紀に熱帯植物を集めて作られた広大な植物園で、同時にボダニカルアートコレクションも収蔵している。本展ではそのようなボダニカルアートコレクションから、イギリスの食について観察する。

 最初は序章として農村風景を描いた作品から始まる。次は野菜の絵。中には新大陸から伝わって広がったジャガイモ、トウモロコシ、トマトなども含まれている。これらはイギリスの食生活をも大きく変化させたという。そしてイギリスで人気の果物達。イギリス菓子の定番がアップルパイだと言うが、リンゴだけでもかなりの種類が描かれている。

 そしてイギリスに不可欠の茶の習慣について。最初は上流階級の楽しみだったようであり、豪華なティーセットなども展示されている。

貴族のティータイム

 しかしそれはやがては市民レベルにも浸透する。この頃ちょうど民藝運動が起こった時代とのことで、モリスの壁紙を背景にした素朴なティーセットが展示されている。

市民はこんな感じ

 さらには茶だけでなく、コーヒー、カカオ、砂糖、アルコールなども様々登場したとのことで、それに関するボダニカルアートなど。

 最後はハーブにスパイスの図鑑のようなものが登場するが、それを見ると一体何種類のスパイスが存在するのかと呆れるばかり、なおショウガも登場したが、なぜか根がかかれてなかったのが謎。そしてレシピ本の類いなんかも登場するようになったとのことで、一番最後はそこから雰囲気を再現した豪華ディナーの風景で終わり。

豪華な晩餐を再現

 まあ正直なところ、図鑑の絵が並んでいるような感じなので、いわゆる芸術的感慨は皆無ですが、博物的興味と食から透けて見える当時のイギリスの社会なんかが結構興味深かった。

 何だかんだでここで1時間弱をつぶしていた。時間が余っていたのでゆっくりじっくりと見学したのが反映したのだろう。あまり期待はしてなかったのだが、意外に面白かったので良しだろう。

 

 

昼食は洋食店に立ち寄る

 そろそろ一時頃、ホールに車を置いてから西宮ガーデンズ辺りで昼食でも摂ろうかと考えていたのだが、交差点で車線を間違えて右折できず、そのまま直進したら阪急の高架まで来てしまったので、このすぐ近くにある「ダイニングキノシタ」で昼食を摂ることにする。

阪急高架下のダイニングキノシタ

 幸いにして車を停めるスペースも店内の席にも空きがあった。ザッとメニューを見渡して「エビフライとハンバーグの盛り合わせ雷鳥ランチセット(1500円)」を注文する。ちなみに雷鳥なのはここのマスターか誰かが鉄オタだからの模様。これ以外にもトワイライトエクスプレスセットなんかもある。

 しばし待った後にまずはカボチャのポタージュスープ。これが口当たりがまろやかで実に美味である。

カボチャのポタージュスープが美味

 次は野菜サラダ。酸味のあるドレッシングがかなり多めにかかっている。

酸っぱいサラダ

 そしてメイン到着。エビフライが3本も入っているのがなかなかに豪華。また肉の感覚のしっかりしたハンバーグが美味。以前にここでハンバーグを食べた時には、ジューシーなのはともかくとしてそれが脂でベチャベチャする感覚があったが、今回はそういう不快さは感じられなかった。

メイン到着、エビフライは3本

 正直なところ前回のアスパラカツがややハズレだったので、ここはあえて選択肢から外していたんだが、いざこうやって来てみるとなかなかに大正解だった。満足して洋食ランチを堪能したのである。

 

 

いざ、兵庫芸文へ

 昼食を終えるとホールに移動、車を駐車場に置いて上がってきた時には開場間近であった。

ちょうど開場直前

 ホール前には井上道義の体調不良で指揮者交代の案内が出ている。私は事前にtwitterで知ったのだが、会場に来て初めて知った者はドッチラケだろう。なんせコンサートのタイトルが「井上道義 最後の火の鳥」となっているんだから。なお井上自身も今回はかなり気合いを入れていた企画らしく、土壇場でのキャンセルは忸怩たるものがあったようで、プログラムパンフにかなり長々とした井上の説明書き(言い訳である)が付けてある。腎臓から来るかなりの体調不良に苦しめられてどうしようもなかったらしい。

指揮者交代の張り紙が出ている

 ちなみに本日代演をする横山奏なる指揮者は、正直なところ初めて聞く人物である。1984年生まれとのことだから39才か。若手と言うよりはやや中堅にかかってきた辺りの指揮者で、国内オケのあちこちに客演歴はある模様。今回の公演はバレエ付きというかなり変則的なものだし、その内容も井上と森山開次がかなりミッチリと打ち合わせして詰めたものであるようだから、それからはみ出してしまうと破綻するので、指揮者としてはあまりやりやすい条件ではないとは感じられる。

 井上の最後の公演と銘打っていたためか、チケットはほぼ完売とのことで、確かに場内にはかなりの観客が入っていたが、指揮者交代を聞いて来るのもやめた客もチラホラといるような印象は受けた。

 

 

第142回定期演奏会 井上道義 最後の火の鳥

オケはステージ奥に位置して、中央に花道が作ってある

指揮:横山 奏 (※当初発表より変更)
管弦楽:兵庫芸術文化センター管弦楽団
【キャスト】
★バレエ音楽「火の鳥」のみ出演
男 森山 開次 ★
王女の亡霊 本島 美和 ★
火の鳥 碓井 菜央、梶⽥ 留以、南 帆乃佳、浅沼 圭、⽔島 晃太郎、根岸 澄宜 ★

スタッフ
【バレエ音楽「火の鳥」】
総監督:井上 道義
演出・振付・出演:森山 開次
舞台監督:酒井 健
照明:足立 恒
衣装デザイナー:武田 久美子
衣装製作:武田久美子・工房いーち・内田智子・飯高絵莉聖・根岸麻希
金属装飾:森 千尋
美術プラン:森山 開次

プログラム
<オール・ストラヴィンスキー・プログラム>
ディヴェルティメント(バレエ音楽「妖精の口づけ」による)
バレエ音楽「火の鳥」(1910年原典版)

 バレエをする関係で、ステージ奥の音響反射板を外して、オケ自体はかなり奥目に配置してステージ手前を開けた上に、センターに花道を作っているというかなり変則的な配置になっている。また音響反射板を外すことによって反響音がなくなることを補うために、電気的な音響システムを使用して補完しているらしい。もろもろ意欲的に初めての試みがなされている。

 プログラムによると、オケとバレエの両メインという形にするために、あえてオケをピットに入れずにステージ上に配したのだという。井上的にはバレエ公演ではなくてあくまでオケのコンサートであるということにこだわったようである。

 

 

 さて一曲目はストラヴィンスキーのこれもバレエ音楽なのだが、こちらは踊りなし。オマージュとしてチャイコフスキーのメロディを多数組み込んでいるという曲であり、そのせいかストラヴィンスキーの曲にしては非常に馴染みやすい。随所にチャイコ節の断片が入り込んでいるので、普通のストラヴィンスキーのイメージとはやや異なる感じの曲である。

 横山の指揮については可もなく不可もなくというところか。今回は彼としてはあまりに自分の色を出すわけにもいかないから、どうしてもそこは抑制的にならざるを得ないだろう。オケの演奏の方は力強いし安定感もあり、なかなかに鮮烈な音色を出しているのが印象的。PACの若さが良い方向に出ている。

 後半がいよいよメインの火の鳥だが、音楽に森山演出のバレエが加わることになる。シナリオはパンフに書いてあるが、元々のシナリオにかなり矛盾点があるので森山なりの解釈を加えてストーリーをアレンジしたという。

 バレエを見ない私としては、今回初めてバレエの付いた火の鳥を鑑賞したのだが、こうして見てみるとなるほど、この曲はバレエの音楽だと言うことが改めて再確認された。というのも音楽を聴いているだけだとグダグダしていて意味があるように思えないシーンが、そこにバレエの踊りが加わると「ああ、こういう意味のシーンだったのか」とすんなりと納得できるのである。

 全編を通して、このような「腑に落ちる」という箇所が非常に多かった。それは森山の演出が巧みにツボを突いていることも示しているのだろうと思われる。踊りについては何とも分からない(バレエ公演を見たことはなく、せいぜいオペラに付随しているバレエを見たことがあるぐらい)私にはバレエに関して云々できる資格はないが、とにかく音楽に関してはPACオケがなかなかに頑張って気合いの入った演奏をしていたように思われる。また横山もかなりしんどい条件だっただろうと思われるが、どうにか無難に井上の代役を務めきったという感を受けた。少なくても終わってから「金を返せ」になるという最悪の事態からはほど遠い見事な出来であった。

 実際にいつものコンサートとは雰囲気の違ったショーに、場内の盛り上がりもなかなかだった。

 これでこの週末遠征は終了である。今回はコンサートの内容がかなり充実していたというのが印象に残る。こういう「ハズレのない回」というのはありがたいところである。

 

 

この遠征の前日の記事

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大フィル定期で1年ぶりのデュトワマジック炸裂、大盛り上がりの大熱狂に

昼食は牛肉のオムライス

 翌朝は疲労もあるので目覚ましは9時半にセットして寝たところ、目が覚めたのは9時過。その頃になると周囲の部屋がドタバタし始めるので必然的に目が覚める。眠気はないのだが体はダルい。

 とりあえず昨日調達しておいた朝食を腹に入れると、しばし原稿入力などもしながらゴロゴロ。10時から11月のベルリンフィルのチケットの発売があるが、最安席(それでも2万円)は瞬殺でチケット争奪戦は早々に敗北決定。まあ元々入手できるとは思ってなかったが。もう少し高い席なら入手可能だが、今の私は2万円でもかなり無茶という状況なので仕方ない。とりあえずゴロゴロしながら横目で朝ドラをチラチラ見たり。昨日の原稿をアップしたり、教ドキュ用の原稿を1本書いたりなどをしながら午前中を過ごす。

 

 

 昼になったのでそろそろ出かけることにする。昼食を摂るのに立ち寄ったのは新今宮の「南自由軒」。前回にも訪問した町の洋食店である。「オムライスと海老フライのセット(1030円)」を注文する。

オムライスの看板が目立つ「南自由軒」

 牛肉のオムライスは例によってコクがあってなかなか。最近は段々とこっちの方が正しいオムライスに思えてきた。エビフライについてはやや細いが、まあ価格を考えると仕方ないか。一応は有頭エビである。頭までムシャムシャと頂く。

オムライスとエビフライのセット

 

 

博物館を見学する

 昼食を終えると移動。とは言うものの、今日の大フィル公演は15時開演なので今からだとまだ早すぎる。そこで天神橋筋六丁目にあるという「大阪くらしの今昔館」で何やら企画展をやっているとのことなので、この博物館は今まで行ったことがないということもあるので立ち寄っていくことにする。

 天神橋筋六丁目までは地下鉄堺筋線で直通。博物館は3番出口直結のビルの8階にある。

 どうやらこの博物館は江戸時代の大阪の町を再現しているようである。それを最上階から全体を鳥瞰してから降りてくるというコースが順路となっている模様。

再現された江戸大阪の街並みを上から見学

通りがある

 はて、このような展示をつい最近に見たことがあるような・・・と思ったら、それはこの前訪問した大阪歴史博物館だった。あちらは近世大阪の復元に力を入れていたが、こちらはそのひとつ前の時代ということか。確かに復元建物などには力を入れているが、正直なところ規模はそんなに大きくもなく、やや中途半端な印象がある。

先ほどの通りを下から

再現された住宅

裏路地なども雰囲気はあるが・・・

 

 

 しかも一階下には近世大阪を再現した模型なども展示してあり、これはもろに大阪歴史博物館と被る。正直なところわざわざ2つの施設に分けている意味が今一つ不明。というか、あっちは一応近くにある難波の宮から現代に至るまでの大阪の歴史を紹介するというストーリーがあるが、こっちは唐突に江戸時代であり、その辺りの趣旨がピンとこない。

下のフロアの展示

通天閣近辺の様子だとか

 常設展示を抜けると企画展示になる。こちらを見学することにする。

 

 

「五井金水とゆかりの画家たちー船場で愛された絵師の画房からー」大阪くらしの今昔館で6/18まで

企画展

 五井金水とは大阪に生まれて明治から昭和初期まで活躍した四条派の流れを汲む画家とのことである。花鳥や山水画などを描いて瀟洒な画風から船場の商家の床の間に飾る作品として重宝されたとある。本展では金水の家族が所蔵していた美術品に看板、箪笥、画材に下絵なども展示している。

金水の絵画道具

看板と箪笥

 数々の下絵を見ると、かなり熱心に勉強した画家だということは伺える。とは言うものの、正直なところ作品自体にこちらにビビッと来るものはほとんどない。技術は手堅いが定型的で芸術品というよりは装飾品として制作しているのではないかと感じられる。

絵手本を描き写して画法を学ぶ

写生も多数したようである

 

 

 だから床の間の飾りとして最適だったのではという気がする。飾り絵として考えると、変に芸術性が高くてメッセージをアピールしてくる作品よりも、美しくまとまっている絵の方が最適である。どうも最初からそういう方向を志向していたように感じられる。

日の出の図

瀧の絵

釈迦なんだが、なぜか私にはイエスに見える

 ザっと見て回った中で、私が唯一面白いと感じたのは巨大な北廻船を描いた作品。確かに巨大な船ではあるが、いささかデフォルメが入っているのではと感じられた。この作品だけはそのデフォルメがなかなかに面白く感じられた。

この絵はデフォルメが面白い

 結局は今一つ趣旨の分からない博物館だった。ただ最後に売店があって組み立て式ドールハウスや手ぬぐいなどが売ってあり、ああ、もしかしてインバウンド向けだったのかとようやく理解できたような気が・・・。

売店に並ぶドールハウス

 博物館を一周したところでホールに向かうことにする。当初予定ではこの後に中之島香雪美術館に立ち寄ることも考えていたが、思ったよりも博物館で時間を取ったし、地下鉄で間違えて反対方向行きに乗ってしまうし、東梅田から西梅田からの徒歩接続はとにかく遠いしで、肥後橋に着いた時にはもう時間的余裕がなくなっていたのでホールに直行することにする。今回はデュトワが指揮ということでホール内は見渡したところほぼ満席である。

 

 

大阪フィルハーモニー交響楽団 第569回定期演奏会

大阪フィルは14型

指揮/シャルル・デュトワ
チェロ/上野通明

曲目/フォーレ:組曲「ペレアスとメリザンド」作品80
   ショスタコーヴィチ:チェロ協奏曲 第1番 変ホ長調 作品107
   ストラヴィンスキー:交響詩「ナイチンゲールの歌」
   ラヴェル:ラ・ヴァルス

 一曲目はフォーレの美しい曲。デュトワが振ると大阪フィルの音色が艶っぽくて色彩豊かになるのが驚きである。3曲目が有名なシシリエンヌだが、ここなどフルートとハープのあまりに美しい絡みにウットリとしてしまう。全体的に管楽器を中心とした個人技も冴え渡っており、大阪フィルってこんなに上手だったっけ? と驚くこと多々。なんかデュトワの棒にかかるだけで大阪フィルが一段以上グレードアップするデュトワマジック炸裂。

 ショスタコのチェロ協奏曲に関しては、これは上野の演奏に尽きる。この複雑怪奇な曲を悠々と弾きこなす技巧的なものは当然として、とにかく音色が深い、その音色だけで引きずり込んで聞き込ませるものがある。その真髄はアンコールのカザルスの曲でも遺憾なく発揮されていた。デュトワマジックに続いて上野マジックで場内は爆発的な盛り上がりとなった。

 休憩後の後半も当然のようにデュトワマジックが炸裂しまくりである。音色からアンサンブルまで一段階グレードアップした大フィルによるナイチンゲールは「春の祭典」を思わせるような音楽の炸裂があるかと思えば、一転して美しさを感じさせたりなどかなり目まぐるしい曲調。しかしそれが完璧に統率されて一切乱れないのがデュトワのデュトワたる所以。

 最後のラ・ヴァルスに至っては、ところどころで現れるワルツ的な旋律に見られるデュトワらしい色っぽさ。それと一転して各楽器が炸裂する激しさ。しかしそこで荒くならない。しかも大フィルソリストたちがことごとくとんでもない音色を出してくる。今までずっと大フィルを聴いてきた者としては「これが本当に大フィル?」と言いたくなる音色である。

 かなりの名演にほぼ満席のフェスティバルホールは爆発的な拍手に覆われた。何度往復しても止みそうにない拍手に最後はデュトワがコンマスの崔を引っ張って強引に退場することに。とにかく毎度のように今回もデュトワマジックに心底感心することになったのである。

 

 

ホテルに戻る前に喫茶に立ち寄る

 コンサートを終えて地下鉄でホテル近くまで戻ってくるが、暑さもあってどうも一服したい気分。ちょうど目の前にある昭和感のある「喫茶香豆里」に立ち寄ることにする。

昭和レトロ感ある喫茶「香豆里」

 何を注文しようかと考えていたら「支払いはクレジットかキャッシュレスだけですが大丈夫ですか」と聞かれる。店に女性が2人だけなので防犯上のためかなとも思ったが、よくよく考えるとこれはクレジットを作れない層の客を排除できるという意味でもあると気付いた。クレジットを作る際には一応は支払い能力の審査があるので、ある一定以上の収入のある層に客層を限定することができる。まさか店頭に「底辺客お断り」と書いたら差別で問題になる上に、そもそも何をもって底辺と定義するかという問題があるが、この形だったらやんわりと客層を限定できる。これからはこういう形を取った排除も増えていくのかもという気もしたりする。

 とりあえず私は「プリンアラモード」「水出しアイスコーヒー」を頼む。コーヒーが当たり前のようにブラックで登場したのは予想外(テーブルに砂糖等はなし)だったが、苦味が弱いコーヒーなので私でも辛うじてブラックで飲める代物。

あっさりした水出しアイスコーヒー

 プリンアラモードは昔懐かしいという雰囲気。プリンの味自体もまさに昔懐かしいカスタードプリン。プリンとアイスの下に敷いてあるクッキーが歯触りも良くて意外に美味。

懐かしさのあるプリンアラモード

 

 

夕食は結局はいつもの通り

 取りあえず喫茶でマッタリしたところで、ついでに夕食も済ませるかという気になる(ここまで暑さにやられて食欲が今一つ湧かなかった)。寿司でも食うかとじゃんじゃん横町を訪れたが人であふれかえっている。その上に「大興寿司」の前には東南アジアからの観光客らしい連中が待っている。アホらしくなったので引き返して、結局は何の工夫もなしに「らいらいけん」を訪れることに。

いつもの「らいらいけん」

 日替わりはいまいちピンと来なかったので、「とんかつ定食(800円)」を注文する。

一品はポテトサラダを頂く

そしてとんかつ定食

 普通に可もなく不可もなくのCPの良い定食である。とりあえずこれで夕食は終了、ホテルに戻ることにする。

 ホテルに戻るとまずは大浴場で汗を流してゆったりする。後は原稿執筆。ただ体に疲労があるのでイマイチ捗らず、正直このまま寝てしまいたい気分だが、流石にそれはまだ時間が早すぎて夜中に目が覚めてドツボるのがオチ。とりあえず眠気でボケてきている頭を叱咤激励して原稿作成。うーん、やっぱり私の休日ってどこか根本的に間違っている気がする。

 この後は明日の朝食購入に一旦外出したり、体をもう一度温めるのシャワーを浴びたり、気が向いたら原稿書いたりでマッタリと過ごす。こうしてこの夜は更けていく。

 

 

この遠征の翌日の記事

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最終日は芦屋で「伊藤継郎展」を見学してから、下野指揮PACのイギリス音楽

最終日はコンサート以外の予定がない・・・

 翌朝は7時半に起床。やはり体がズッシリと重い。無理しないようにしていても、それでも疲労の蓄積はある。これが一晩寝てもスッキリ回復しないのが老化というものである。

 とりあえず昨日購入しておいた簡易朝食を腹に入れると、入浴して体を温めるところから。後はグダグダしながらチェックアウトの支度を調える。

 今日の予定だが、メインは15時からの西宮でのPACのコンサート。つまりは10時にホテルをチェックアウトしてからしばらく予定がない。実は昨晩、今日の行動予定についてあれこれ調査したのだが、結局のところ大阪方面の美術館スケジュールはなし。兵庫方面も同様で結局は見つかったのは芦屋市立美術博物館の展覧会のみ。仕方ないのでまずはこれに直行することにする。ここは最近はリニューアル工事で閉館中だったので、久しぶりの訪問になる。

 

 

「芦屋の美術 もうひとつの起点 伊藤継郎」芦屋市立美術博物館で7/2まで

芦屋市立美術博物館

 芦屋の画家・伊藤継郎について、彼と交流のあった画家たちの作品を含めて展観すると言う趣旨のようである。

 伊藤は最初は松原三五郎の主催する天彩画塾で洋画を学ぶが、翌春に閉鎖されたことから、赤松麟作の赤松洋画塾に移る。最初は松原と赤松の作品が展示されているが、松原は古典的な洋画作品、赤松は典型的な印象派の影響を受けた黒田的な絵画である。

松原三五郎「老媼夜業の図」

赤松麟作「裸婦」

 

 

 療養を兼ねて芦屋に転居の後は小出楢重、黒田重太郎、国枝金三、鍋井克之の4人が開設した信濃橋洋画研究所に通う。

小出楢重「横たわる裸女A」

黒田重太郎「蟠桃のある静物」

 ここで伊藤は二科展に入選したり、生涯の友となる小磯良平と出会ったりするという。そして画家として頭角を現していくことになる。

伊藤継郎「瓦のある風景」

伊藤継郎「鳩を配した裸婦」

 

 

 1941年になると国家による美術界に対する統制に反発して、二科展を退会して猪熊弦一郎、内田巌、小磯良平らが結成した新制作派協会で活躍するようになる。この辺りでは伊藤もいかにも尖った絵を描き出すようであるが、具象の域から離れてはいない。

猪熊弦一郎「不詳(裸婦と猫たち)」

伊藤継郎「二人の司教」

西村元三郎「堰」

 しかし戦争の影が深まり、小磯は戦争画を手がけることに、伊藤は1944年に満州に招集されることになり、終戦後にはシベリア抑留までされたという。翌年に帰国は出来たものの、妻は前年に死去しており、伊藤も療養生活を送ることを余儀なくされたという。

村上三郎「河小屋」

白髪一雄「文」

 

 

 1947年になると幸いにして戦災を免れていたアトリエで制作を再開、戦争でアトリエを失った小磯良平など多彩な人物が集まるようになり、伊藤もその才を発揮していくことになったという。

伊藤継郎「アラブの女」

伊藤継郎「ギリシャの老人」

伊藤継郎「裸婦3人」

伊藤継郎「月」

伊藤継郎「二人」

 紆余曲折はあったが、最後の最後まで具象からは離れなかった画家である。また同じ具象でもいつも小綺麗な絵のイメージがある小磯良平とはまた異なった表現をとっているのが特徴である。正直なところ私の好みの絵とは言いにくいのだが、それはそれで周辺画家の作品と対比しながら見ていくと、なかなかに興味深かったのである。

 

 

昼食は洋食にする

 美術館の見学を終えた頃には11時半頃だった。これは夕食を摂ることにしたい。立ち寄ったのは久しぶりの「ダイニングキノシタ」。今まで何度か覗いたのだが、悉く駐車場(この店は前の道路に路駐する)が一杯だったので見送っていた次第。今回はたまたま空きがある。テイクアウト注文が多数来ているので料理出しに少々時間がかかりますの張り紙が出ているが、そもそも時間が余っているのだからちょうど良い。この原稿を執筆しながら待つことにする。

久しぶりに「ダイニングキノシタ」を訪問

 20分ぐらい待ってからスープが到着。かぼちゃのポタージュとか。ほの甘さがなかなか良い。

カボチャのポタージュ

 野菜サラダはやや酸味のあるドレッシングが爽やかである。

ドレッシングが爽やかな野菜サラダ

 メインはアスパラの牛肉巻きカツ。思いの外ボリュームがあるが、アスパラが歯ごたえだけで味が薄い印象を受ける。出来ればもっとアスパラの甘味が欲しい。また全体的にややしつこい感じがある。濃厚なソースで食べさせるよりも、もっと素材の味で食べさせる方が良いように感じる。

メインの牛巻アスパラカツ

 

 

 何だかんだで昼食に1時間以上かけたが、それでもまだ時間にかなり余裕がある。ホールに移動して駐車場に車を入れるが、開場までは喫茶でつぶすことにする。

アイスコーヒーを頂きつつ、原稿入力作業

 時間が来たらホールに入場、結構な入りである。

兵庫芸文は結構な入り

 

 

第141回定期演奏会 下野竜也 ザ・ブリティッシュ!

指揮:下野 竜也
ヴァイオリン:三浦 文彰
管弦楽:兵庫芸術文化センター管弦楽団

ウォルトン:「スピットファイア」前奏曲とフーガ
エルガー:ヴァイオリン協奏曲
エルガー:エニグマ変奏曲

 一曲目はウォルトンによる映画音楽である。かなり派手派手な曲であるのだが、下野の指揮も派手だし、若いPACの音色も派手。特に管楽器がブイブイ来る印象。いささかバランス的には管楽陣が前に出すぎの感もある。

 二曲目はエルガー。私がエルガーが苦手であるのは、まさにターナーの絵画の如く音楽の輪郭線がハッキリせずに曖昧模糊としたところがあるからである。その点でヴァイオリン協奏曲という形式は、ソロ楽器のメロディラインがハッキリすることで私にとっては意外なほどに聞きやすいものであった。また普段はややソリッド感が気になる三浦の硬質な演奏も、ことこの曲の場合はエッジが立つことで曲自体にメリハリがついてさらに聞きやすくなったという印象。結果としては予想以上に面白い演奏となった。

 後半はエルガーの変奏曲。変奏は14まであり、9番目が有名なニムロッドである。私としてはデュメイがたまにアンコールで演奏することがあることで馴染みの曲である。

 今までと同じ調子で、やはり若いPACは元気が良い演奏という印象。下野もかなりノリで演奏している雰囲気がある。ただその分、細かい意味でのアンサンブルやバランスなどはやや悪い部分もなかったではない。概ね「元気が一番」という演奏であり、まあPACらしいとは言える。

 

 これで週末遠征は終了、阪神高速の工事渋滞に辟易としつつ帰路につくのである。

 

 

この遠征の前日の記事

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山王美術館で藤田嗣治の絵画を鑑賞してから、関西フィルのいずみホール公演でモーツァルト

週末コンサートに繰り出す

 先週末がコンサート三連荘だったが、この週末もほぼ同様の形式を取ることになった。金曜日の仕事を午前中に終えると車で大阪に向かうことになる。

 阪神高速は未だに京橋ー摩耶間が工事中。前回は京橋まで行ってしまったら出口手前の大渋滞でひどい目に遭ったので、今回は手前の柳原出口で出る。とは言うものの、下道も渋滞なので果たしてこれが正解だったかどうかは難しいところ。摩耶入口から阪神高速に再び乗ろうと思っていたが、入口手前から道路が大混雑なので、ここは通過して一つ先の魚崎から阪神高速に乗る。

 まずは今日の宿泊ホテルに向かう。例によってのホテル中央オアシスに到着したのは、チェックイン時刻の3時ちょうど。車を置くとチェックイン手続きをしてから一旦部屋に入る。先週と階は違うが同じ間取りの部屋である。とりあえず仕事環境を構築してウェブをチェックすると直ちにホテルを出る。そもそも今日午後をまるまる空けたのは予定があってのこと。

ホテル中央オアシス

先週と間取りは同じ

毎度の仕事環境を構築する

 

 

山王美術館に立ち寄る

 JR環状線に乗ると京橋まで、今日のコンサートはいずみホールで開催だが、その前にこの近くにある山王美術館の見学をしたい。山王美術館はホテルモントレグループが経営する美術館で創立者のコレクションを展示している。かつてはホテル内で展示されていたためか、公開が平日のデイタイムという堅気のサラリーマンではとても訪問不可な設定になっていたため、その存在を知りながらもずっとスルーしていた。それが昨年の秋に京橋に移転してリニューアルオープンと相成ったとのこと。ちょうど今日のコンサートが京橋だし、ついでに立ち寄ろうと相成った次第である。

山王美術館は寝屋川の対岸

美術館に到着

 山王美術館までは京橋の南口から近くの歩道橋で寝屋川を渡ったらすぐ。アクセスは決して悪くはない。内部は吹き抜けのらせん階段で5階まで、エレベータで5階まで上がってから階段で降りてくる形式。展示室は5階、4階、3階で(2階は事務所か倉庫か?)ある。5階では常設展として棟方志功の版画作品を展示。棟方志功が原石鼎の俳句に絵をつけた青天抄板画柵を展示。素朴で力強くて鮮やかなところがいかにも志功らしい。4階からは企画展になる。

 

 

「渡仏から110年 藤田嗣治展」山王美術館で7/31まで

 乳白色の肌で知られるエコール・ド・パリの画家・藤田嗣治の作品を、その最初期のパリ留学前から最晩年のパリ永住までを通じて展示。

 最初期の作品は戦争で自宅が全焼したために非常に珍しいものだという。友人に贈呈したものが所蔵品らしい。この作品自体は典型的な「多かれ少なかれ印象派の洗礼を受けた当時の画家」の作品であり、まだ後の藤田に結びつくような特徴はあまりない。

 その後、パリ留学で藤田は才能を開花させ、その際に例の藤田の乳白色にたどり着くのだが、乳白色の肌に墨で細かい描線を描くという典型的な藤田の作品が数点登場する。

 ただそのような藤田作品は生活の逼迫からブラジルに移住をする頃には変化する。この頃には結構厚塗りの油彩画なども描いたようである。

 その後、日本に帰国して戦争画なども描いたりするが、戦後は嫌気がさした(戦争協力の罪まで問われそうになったらしい)のかアメリカを経由してパリに渡り、ついにはそこに移住することになる。その時期の作品が子供や宗教的題材をモチーフにみっちりと描き込んだ一連の作品群だが、本館はその収蔵品数が多いのか、1フロアがまるまるその時期の作品であり、なかなかの見応え。

 私は実は乳白色の藤田はあまり好みでなく、むしろ晩年の子供などを描いた作品の方が好ましく感じる者であるので、前者が少なくて後者が多い本展の展示は非常に興味深かった。モントレの創業者の趣味が私に近いのか、それとも藤田の乳白色は世界的評価が高いので入手しにくかったのかは定かではないが。とにかく展示数が非常に多く、それが悉くこの館の所蔵品であるということには驚かされた。

 と言うわけで決して藤田が好きとは言えない私が、思いの外楽しめたのが本展であった。これは想定外。

 

 

夕食はOBPで

 美術館の見学を終えるとそのままプラプラと夕食を摂る店を探してOBPまで。しかし人の気配のないツイン21にはピンとくる店がなく、そのままプラプラとIMPまで南下する。IMPでは夕食時には若干早いのか、リモートワークスペースは人が一杯だが店の方はどこもあまり客がいない。一応端まで見学したが、今ひとつビビッとくる店はなく、結局は「信州そば処そじ坊」に入店することに。頼んだのはカツ丼のセット。そばが具なしで寂しいのでトッピングに揚げ餅をつける。

IMPにある「そじ坊」

 カツ丼の味は悪くない。まず私好みの味と言える。ただ問題はメインのはずのそば。温そばを頼んだのだが、そばつゆに味がなく茹でたそばをそのまま食べているような印象。天かすやら揚げ餅やらを投入してみたが、根本的に味が薄いのはどうにもならない。

カツ丼は悪くなかったが…

 そう言えばここで思い出したのは、以前に松本に行った時に食べたそばがこんな感じだったこと。そば食の多い信州は塩分の過剰摂取による高血圧で、県民の平均寿命が短いことが問題となり、県をあげて減塩に取り組んだと聞いたことがある。そのせいか、私の訪問時の松本のそばは妙に薄味だったようである。この店もその影響を受けているのだろうか。ただ塩分を減らすなら減らすでその分出汁を利かせるなどの工夫は欲しい。

 

 

 夕食を摂るとしばしこの原稿入力などしながらゆったりと過ごす。ボチボチ開場時刻になった頃にホールの方へ。いずみホールに来るのは関西フィルのいずみホール公演ぐらいなので久しぶりではある。こじんまりとしているが、関西フィルの特性にはマッチしているホールである。残念なのは先週の定期と同様にデュメイの負傷で来日が不可になったこと。デュメイによるモーツァルトのアンサンブルを聴きたかったのだが・・・。代役はパスカル・ロフェとのこと。果たしてどのような演奏を聴かせてくれるか。

久しぶりのいずみホール

 

 

関西フィルいずみホール公演

ややこじんまりとしたホール

指揮:パスカル・ロフェ
ピアノ:フランク・ブラレイ

モーツァルト:ディヴェルティメント ニ長調 K.136
モーツァルト:ピアノ協奏曲第9番 変ホ長調 K.271 「ジュノーム」
モーツァルト:交響曲第39番 変ホ長調 K.543

 デュメイのキャンセルにより一曲目はモーツァルトのヴァイオリンソナタからディヴェルティメントに変更。ロフェはデュメイの友人とのことで、話し合った結果この曲になったとのこと。関西フィルは正規メンバーを中心にした8-6-5-4-3の小編成となっているが、そのアンサンブルがホールのスケール感とも一致してなかなかに聞かせる。ロフェも心得たもので、美しい澄んだアンサンブルを聴かせ、実に気持ちの良いモーツァルトとなったのである。

 二曲目はブラレイをソリストに迎えてのモーツァルトの初期の傑作ピアノ協奏曲。このブラレイのピアノが非常にアクが強いのだがロマンティックで美しい。溜めたり揺らしたりと結構好き勝手な演奏をしてくるのだが、それでもしっかりと合わせてくるロフェは見事。結果としてなかなかにロマン派よりのモーツァルトになった次第。

 満場の拍手を受けてのアンコールがブラームスの4つの小品より間奏曲とのことだが、これが完全に枷の外れたかなりロマンティックな演奏。

 後半はモーツァルトの39番。前半よりはかなり力強さが前面に出る演奏となるが、それでもアンサンブルはしっかりと決まっている。なかなかに中身の濃い美しい演奏となった。ロフェはなかなかに関西フィルのツボを押さえているようであり、これはデュメイからも伝言されていたのだろうか。非常に魅力的な演奏となった。


 コンサートを終えるとホテルに戻る。入浴をしてから夜食を摂ると疲れが出てくる。明日は予定は比較的少ないし寝ることにするか。

 

 

この遠征の翌日の記事

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ライブ三連荘最終日は、ロイヤルフィルのとんでもない力量に圧倒される

いよいよ最終日

 翌朝は7時半に目覚ましが。しかししばし体が動かない。なんせ昨日は美術館回りで何だかんだで1万3千歩以上歩いていて、コロナ以降ほとんど運動していなかった私の体はガタガタ。しばしウダウダしてからようやく体が動くようになると、まずは風呂に湯を張る。

 体を温めるとようやく活動可能となった。昨日購入しておいたおにぎりを朝食にすると、とりあえずは原稿を1本仕上げてから荷造りをする。ホテルをチェックアウトしたのは10時前。

 さて今日の予定であるが、メインは午後2時からフェスティバルホールで開催されるロイヤルフィルのコンサート。それまでが空き時間ということになるので、とりあえずホール近くにアキッパで確保した駐車場に車を入れると、そこから地下鉄で移動、向かうは大阪歴史博物館。

NHK大阪と歴史博物館のツインタワー

 歴史博物館に入るととなりのNHK大阪で何やらイベントが開催中。どうやら朝ドラ「らんまん」のPRイベントの模様。イベントには興味ないので、それを横目に見ながら博物館の方へ。

何やらイベントが開催されている

それを横目で見ながらこちらに入場

 

 

 歴史博物館はリニューアルされたと聞いていたが、確かに展示室の構成が変わっている。以前は特別展の展示室は10階だったのだが、10階に上がると常設展がそこから始まっており、順々に降りていったら6階が特別展自室という構成に変わっている。

十階からは現在の大阪の町を一望

そして難波宮が再現されている

 10階はお約束の古代から始まる。土器などの展示から始まり、難波宮の復元模型などか展示されている。

古代と言えばお約束の土器

前期難波宮の復元模型

 9階に降りると中世ということになり、江戸時代などの大阪の町並みを再現している。

9階は中世の大阪

中世の町並み

これが江戸時代の船場だそうな

北前船の模型

当時の芝居小屋

 

 

 8階を経て7階が大大阪時代とのことで、古き良き戦前の大阪が繁栄していた時代の再現である。

8階は御堂筋だけ

7階が大大阪

市場の風景

そう言えばこういう店もあったな

歌舞伎座

往時の梅田電停

 常設展示を抜けると6階が特別展示室である。

 

 

「異界彷徨-怪異・祈り・生と死-」大阪歴史博物館で6/26まで

特別展示室は6階

 昔から人は災いなどを異界の妖怪によるものとして、それらを祀って鎮めたり、場合によっては逆に守護神に昇華させたりなど様々な対応を取ってきていた。そのような「異界」が現代よりも身近にあった時代を偲ばせる展示を集めている。

 最初はド定番の天狗の面に御稲荷さんの神棚である。いずれも妖怪でありながら、神の使いに昇華された例とも言える。

まずは天狗の面

稲荷神棚

 で、この次に唐突に登場するのが橋本関雪による屏風というのだから、今ひとつ分かりにくい展示でもある。まあいわゆる「邯鄲の夢」を描いた作品なので、妖怪ではないものの超常体験と言えばそうなるが。

橋本関雪の屏風絵が

 

 

 さらに妖怪のスターである龍やカッパも登場する。

妖怪界のスターと言えば龍

そしてカッパ

 道成寺のエピソードを元にした梵鐘型の兜などは、禍々しさの一方でなかなか洒落たセンスでもある。

道成寺をモチーフにした梵鐘型兜

 また妖怪は思いの外、日常生活に入り込んでいたようで、妖怪をかたどった土製の面子とか、芸能に用いれた面や人形なども展示。

土製の妖怪面子

さらには芝居用の面や人形

 

 

 後半は災い封じのいわゆる縁起物など。伏見山の土を作った猿の人形は縁起物だという。また伊勢神宮・石清水八幡宮・春日大社の三社を描いた目出度い掛け軸なども。

縁起物の伏見山の猿人形

三社をモチーフにした掛け軸

 それに五月の節句はそもそも子供が健康に育つことを祈っての行事であった。さらに西国三十三所霊場巡りで使用したというセタなるものも展示されている。

5月の節句用のアイテム

これがセタだそうな

 太古からの人と妖怪の微妙な関係を示す展示の数々であった。こういう趣向もたまには面白い。

 

 

昼食はカレーにする

 そろそろ昼時なのでどこかで昼食を摂りたい。とは言うものの、食欲はやや落ち気味であまりガッツリと食うという気力も。カレーでも食うかと思いついたのは「ミンガス」。梅田まで移動して久しぶりに立ち寄る。流石に以前の具なし朝カレーは悲しかったので、今回はロースカツカレー(860円)を頂く。

梅田のミンガスに立ち寄る

 相も変わらず懐かしい味である。特別に美味いカレーでもないのに、なぜか私には懐かしい。毎度のことながら奇妙な気がするんだな。ここのカレーを食べると。

ロースカツカレー

 

 

 昼食を終えるとホールへの移動だが、まだ開場までに時間があることと、地下鉄代の190円(それにしても上がったもんだ)をケチって、食後の腹ごなしもかねてホールまで歩くことにする。相変わらず日曜にはシャッター街化しているドーチカを抜けて肥後橋へ。20分とかからずにホールに到着する。

ホールが見えてくる

毎度の赤絨毯

 ホールは明らかに観客が多い。やはり辻井人気がすごいんだろう。さて私の確保した席だが、3階奥の隅の最安席。辻井付きの公演に高い席はいらないという原則に従ったのだろうが、今となっては良く確保できたもんだと驚く。

いわゆる完全な天井桟敷

 3階席を見回すと、4列目以降はほぼ埋まっているというところ。ただ不自然なのは前から1~3列が中央ブロックを除いてボッカリと空席なこと。いわゆる「S席の一番悪い席」が売れ残ったと言うところだろうか。チケットが辻井価格で割と高めだったことと、ロイヤルフィルの日本での知名度が一般的にはそれほどでもないという辺りで、辻井の力を持ってしても完売とは及ばなかったようである。

 

 

ロイヤルフィル大阪公演

指揮/ヴァシリー・ペトレンコ
ピアノ/辻井伸行
管弦楽/ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

曲目/チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番[ピアノ/辻井伸行]
   ショスタコーヴィチ:交響曲 第8番

 一曲目はチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番。辻井の十八番なのか演奏機会が多いように感じられる協奏曲である。あの印象的な冒頭であるが、オケが先行してからピアノが劇的に入るので、アイコンタクトの取れない辻井でも、冒頭でズレが生じる危険がないというメリットもあるように思われる。

 さてロイヤルフィルであるが、なかなかに良い音を出す。弦楽陣はシットリと安定感があり、管楽陣も引き締まったそれでいて柔らかい音色を出す。ペトレンコの指揮の下、統率のとれた音楽を繰り広げる。

 辻井のピアノは相変わらずキラキラとした演奏であるのは変わらないが、前回聴いた時から感じたのだが、最近になってやや早弾きの傾向が現れてきているように思われる。完全暗譜の上に曲自体に慣れていることから起こる現象だろうか。それが顕著だったのが第3楽章で、あの楽章はそもそもからテンポが上がりやすい要素があるんだが、辻井の演奏が進むにつれて速度が上がってきて、段々と後ろのオケがせわしなくなってくる感がある。ただそれでも崩れることなくペトレンコの指揮に合わせてくるのは流石と言うところか。いささか無手勝流になりかかっていた辻井を裏から上手く支えていた。

 辻井の真価が発揮されるのはやはりアンコール曲の方。曲目は知らないのだが(もしかして自作か?)なかなかしみじみと聞かせる。やはり辻井はすべてを自分で組み立てられるソロの方がしっくりくる。

 後半はショスタコの8番。前半を聞いただけでロイヤルフィルはかなりレベルの高いオケだと感じていたが、もう初っ端から唸らされる。「何という音を出すんだ・・・」思わず心の中で呟きが出る。とにかく弦の音色がとんでもなく美しい。16型の4管編成という巨大編成なので、普通のオケならどうしても少々ガチャガチャするものだが、そういう乱れが一切ない。弦の音色が完全に重なって1つの楽器として聞こえる。極めて純度の高い音色であって、不純物を一切感じさせない。これだけでも圧巻なのだが、管楽器の方は奏者の名人芸が光る。ところどころ入るソロセクションで、各奏者がとんでもなく美しい音色を出してくる。名人レベルの奏者にかかると、これらの楽器がこんなに美しい音色を出せるのかと呆れる次第。

 ペトレンコはこのロイヤルフィルのポテンシャルを最大限引き出したメリハリの効いた演奏を展開する。やはりスゴいのは強弱の振幅。ショスタコは聞こえるか聞こえないかという最弱音から、まるでヒステリーのような乱痴気騒ぎの最強音までとにかく触れが激しいのだが、ペトレンコはまさにそれをそのまま表現する。最弱音は耳に聞こえるかどうかというレベルまで絞り、最強音はまさに騒音になる寸前。しかしそこまで弱音を絞れるのも、それだけの強音を出しても割れたり濁ったりという耳障りなことにならないのも、すべてロイヤルフィルの力量。ペトレンコはそれを把握した上でコントロールしているようである。

 結局はこの凄い演奏に飲まれて、正直なところ曲のことは全く知らない上に普通だったらそう面白いと感じない可能性の高いこの曲を、最後まで全力集中で聞き入らされてしまったのである。思わず溜息が漏れてしまった。なんて演奏をするんだ。


 これでこの週末ライブ三連荘は終了。やはり最後の最後にとてつもないものを聞かされたという印象である。ロンドン交響楽団などにも似たような圧倒的なものを感じさせれられたことがあるが、やはり英国の歴史は侮れないか。

 

 

この遠征の前日の記事

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「毒」展、高島屋資料館、藤田美術館の見学後に大阪フィルの定期演奏会へ

大阪美術館巡り開始

 翌朝は7時半に目覚ましで叩き起こされた。朝から体が重くてだるいのは毎度のこと。とりあえずは入浴でエンジンをかける。さて今日の予定だが、メインは15時からの大フィルの定期演奏会がフェスティバルホールで。ただそれまでに大阪地区の美術館を回ろうという計画がある。

 9時頃にホテルを出るとまずは地下鉄御堂筋線で長居に向かう。最初は久しぶりに市立自然史博物館を訪問する予定である。長居で降りるとかなり大勢がゾロゾロと私と同じ方向に向かっている。まさかこれが全員同じ目的地じゃないだろうなと驚いたが、どうやら途中のスタジアムで何かが行われる模様で、大半の歩行者はそちらの方向に。

歩行者が多数

 やがて目的の博物館に到着するが、ここで行列に出くわす。結構混雑している模様で、会場内も押し合いへし合い。これは想定外。

博物館へ到着したが

入口前はこの大混雑

 

 

特別展「毒」大阪市立自然史博物館で5/28まで

 自分の身を守るため、もしくは餌をとらえるためなど、自然界には様々な理由で毒を持つ生物が存在するが、そのような「毒」に注目した展覧会。

 まず最初は毒でありながら人間には毒と認識されていない代表として「玉ねぎ」「カカオ」などが登場する。これらのいずれも人は食用に使用するが、犬・猫などには毒であることは知られている。人は結構悪食であるようで、これらの毒を食用出来るように対応したのである。何しろかなり強い毒であるカプサイシンさえ摂取するのであるから。

カプサイシンは結構な毒

 巨大蛇とスズメバチの模型がいきなり登場する次のコーナーは、自然界の様々な毒を持つ生物を紹介していく。

毒と言えば蛇

それにスズメバチ

 

 

 まずは植物毒の定番のトリカブト辺りから始まって、やはり毒と言えば蛇である。中にはヤマカガシのように自身では毒を作り出せず、有毒のカエルを捕食することで毒を蓄える種もある。

まずは蛇

禍々しさがある

 ハチについては、刺された時の痛みを数値化したシュミット指数なるものが登場。ただ最強のレベル4になると、痛いというよりも遺体になりそうなのだが・・・。

シュミット指数1はこの程度だが

レベル4になるとこうなる

 

 

 毒性爬虫類からはコモドオオトカゲ。この図体で毒まで持つとはまさに凶悪なトカゲである。

コモドオオトカゲ

 海洋生物からは、やはり毒と言えばフグ。そしてイモガイことアンボイナ、そして海水浴で要注意のアカエイが登場。

フグ

アンボイナ

エイ

 

 

 さらに有毒の哺乳類としてカモノハシ。そして鳥類からは伝説の鴆毒(ちんどく)のモデルになったのではと言われているズグロモリモズが登場する。

カモノハシ

ズグロモリモズ

 つづいて、やはり毒キノコに毒を作り出すカビ、最後は無生物で鉱物毒まで紹介されている。

毒キノコの代表ベニテングダケ

毒を作るカビ

水銀やヒ素などの鉱物も毒

 

 

 最後は愚かにも人が生み出した毒物である。マイクロプラスチックやDDTが挙げられている。

人が生み出した毒

 しかし自然界もさるものである。あえて毒があるものを食べることで、競合生物をなくして生存競争を生き残る戦略を取った生物もいる。有毒のユーカリを食べるコアラに、猛毒のコブラを捕食するラーテルなど。

毒のあるユーカリを食べるコアラ

コブラを捕食するラーテル

 

 

 最後は人が利用した毒。薬としても利用されたストリキニーネなどが登場。さらにアイヌの毒矢も展示されている。そして蚊取り線香なども。

ストリキニーネの分子構造と原料のマチン

アイヌの毒矢

御馴染み蚊取り線香

 そして悪食の人類は毒のある生物でさえ、無毒化して食用にしている。血液と粘液に毒性のあるウナギ(これは知らなかった)は加熱することで無毒化し、フグは毒性部位を除去することで食用にし(確かにテッサは美味い)、青酸を含むキャッサバは水にさらしてタピオカでん粉となる。

ウナギも有毒らしい

危険なフグまで食う

タピオカ原料のキャッサバも有毒

 意外なほどに有毒生物は存在するのだなと感心したが、結局のところ一番毒々しいのは実は人間だったのではという結論にたどり着かざるをえなかったのである。

 

 

高島屋東別館へ

 博物館を後にすると、途中でホテルに忘れ物を取りに立ち寄ってから、そのまま日本橋へ移動。次は高島屋東別館に立ち寄ることにする。ここの3階にある高島屋資料館で「FROM OSAKA~百貨店美術部モノガタリ~」という企画展が開催中とのことである。

 途中で黒門市場の前を通るが、外国人観光客がゾロゾロである。なお「松本清」という幟が見えたので選挙か何かかと思ったら、「マツモトキヨシ」だった。中国人向けの看板か。

「松本清」は最初は意味が分からなかった

 そう言えば周辺にはやけに中華料理屋やラーメン屋が多い。日本に来て和食を食べたいという中国人観光客向けなんだろう(ラーメンとカレーライスは今や和食の代表らしい)。これらを抜けて重々しい建物が見えてきたら、そこが高島屋東別館。

高島屋東別館

 

 

 高島屋東別館は建物自体が文化財である。なお往年の風景の残るエレベータホールなどもある。

入口からこの趣

エレベータホール

 企画展では高島屋絡みの美術品を展示。意外に現代に近いアートが多い。目玉は北野恒富による「婦人図」のポスター原画。なお併せてコスプレ芸術家こと森村泰昌によるコスプレ作品も併せて展示されている(残念ながら撮影不可)。

高島屋のキャラクターのローズちゃん

平櫛田中による有徳福来尊像

 

 

 資料の方にはかつての高島屋の模型などもあり、意外に面白い。展示数は決して多くはないが無料の展覧会としては十分だろう。

高島屋の模型

意外といろいろ展示がある

 

 

 資料室を一回りして降りてくると、一階にフードコートのようなコーナーがあるので少し覗く。「淡路島バーガー」の看板が目に飛び込んできたので何となく惹かれてブランチと洒落込む。注文したのは淡路島バーガー(850円)+サイドとドリンクのセット(400円)。

フードコートの淡路島バーガー

 パテはキチンと牛肉の味がするし、淡路島バーガー最大の売りであるタマネギはまろやかで良く馴染む。まあ概ね美味いバーガーと言えよう。もっともこれで850円はやはりCPが悪い。いくら美味いバーガーでも、これでモスバーガーの2倍の価値があるかと言われると・・・。

淡路島バーガーのセット

当然ながら玉ねぎ入り

 さすがに高級百貨店高島屋はフードコートも高かったようである(笑)。つくづく私は逆立ちしても百貨店の上客にはなれないタイプである。

 

 

 高島屋を後にすると次の目的地へ。次は最近リニューアルオープンしたという藤田美術館。以前はかなり地味な美術館だったが、いかにも現代風にリニューアルしたとか。地下鉄と東西線を乗り継ぐと、美術館自体は大阪城北詰駅の出口からすぐだが、そこに向かうのに微妙に遠回りする必要があるのと、東西線がバカみたいに深いところを走っているせいで、延々と階段を登らされることになる。情けないことに途中で息が切れる。こりゃ体が悪くなったらくるのは無理だな。

ガラス張りの藤田美術館

 新装なった藤田美術館はガラス張りの近代的な建物。しかし内部に入っても券売所がない。どうやら係員に声をかけてクレジットなどで決済をしてから、解説にアクセスするためWi-Fi設定やアクセス設定などをするようになっている模様。いかにも現代的だが、スマホ必需で正直なところ年配には優しくない設計である。

展示室はこの扉の奥だが

 

 

藤田美術館

 展示室を3つに分けて、装、旅、禅とテーマを付けた展示を行っている。

 まず最初の装は、肉筆浮世絵の「立美人図」から始まり、能装束などが展示されている。

立美人図

これは能装束

 また印籠や茶道具の棗などの展示もあり。

印籠

 

 

 次の旅のコーナーは山水図や漁船の香合

山水図

舟の香合

 さらに玄奘三蔵の旅を描いた国宝の絵巻や西行物語図など。

玄奘三蔵の絵巻

西行物語図

 

 

 最後の禅のコーナーは日本に3つしかない曜変天目茶碗が展示。

国宝の曜変天目

 さらに油滴天目、兎毫盞天目茶碗も併せて展示されている。

油滴天目

兎毫盞天目茶碗

 展示室はここまでで、これを抜けると藤田邸跡公園に出ることになっている。落ち着いた良い趣の美術館である。展示品見学後は茶でも頂いてマッタリしようかと思っていたのだが、喫茶には行列が出来ている状態なのでもう2時前で時間にそう余裕もないことから、諦めてホールに移動することにする。

藤田邸庭園

 

 

大阪フィルハーモニー交響楽団 第568回定期演奏会

コントラバスが左に配置

指揮/アンガス・ウェブスター
ピアノ/小林海都

曲目/ブラームス:悲劇的序曲 作品81
   ショパン:ピアノ協奏曲 第2番 ヘ短調 作品21
   チャイコフスキー:交響曲 第6番 ロ短調 作品74 「悲愴」

 最初はブラームスの悲劇的序曲から。ウェブスターの演奏は若さ溢れるというか、最初からガンガンと行く印象である。非常によくオケを鳴らしているという感を受ける。ただし元気は良いのだが、いささか緊迫感に欠けるところがある。この曲の場合、冒頭の動機でバシッと決めて欲しいのだが、そこが決まりきらない感がある。結局は悲劇的というよりは悲劇をぶっ飛ばす曲という印象。

 二曲目はショパンのマイナーな方のピアノコンツェルトである。これは小林のピアノの見事さに尽きるだろう。最初から軽快でありながら、それが軽くなりすぎず十二分な情感を秘めており、音色は甘美。実に魅力的な演奏である。当然のように演奏技術には全く危なげがないが、それをひけらかすタイプの演奏ではない。

 その小林のすごさはアンコールのショパンのノクターンでさらに遺憾なく発揮された。ニュアンスを含む深い音色は観客を聞き入らせるものがあり、将来の巨匠の風格さえ感じさせた。

 後半は悲愴だが、残念ながらこの曲についてはポリャンスキー/ロシア国立交響楽団やゲルギエフ/ウィーンフィルの超名演が頭に焼き付いてしまっている私にはいささかキツイというのが本音。ウェブスターは彼なりに曲に起伏をつけてメリハリを効かしているのだが、どうしてもそれが一段甘い印象。ポリャンスキーらの超名演が人生の苦悩を叩きつけてくるような演奏だとしたら、ウェブスターの演奏はせいぜい若者の癇癪レベルに聞こえてしまう。力でグイグイと押してくる第3楽章などは、持ち前の前進力溢れる演奏でまずまずだったのだが、どうしても第1,4楽章になるともう一段の緊張感が欲しいところ。さすがに若きウェブスターにそこまで完璧に大阪フィルを掌握しろというのは酷だとは思うが。

 

 

夕食は近くの定食やで

 コンサートを終えるとホテルに戻って入浴。しっかり汗を流してから夕食に繰り出すことにする。ブランチがハンバーガーだったから、洋食系を食べる気はしない。ガッツリと白ご飯を食べたいという気持ち。というわけで結局はちかくの「らいらいけん」に。日替わり定食(ニラ玉にエビフライと一口カツ)を注文。

らいらいけん

小鉢のスパサラダを頂く

日替わり定食

 ニラ玉が美味いのが予想外。ニラは嫌いな私が言うのだから間違いない(笑)。ニラ玉がこんなに美味いとは。小鉢1つがついて800円。例によっての無敵のCPである。

 夕食を終えるとホテルに戻ってくると原稿入力作業。こうしてこの夜は更けていく。

 

 

この遠征の翌日の記事

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この遠征の前日の記事

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ハルカスで「絵金」展を堪能してから大フィルのヴェルレク、そしてハーバーランド温泉で宿泊

今週も大阪に出向く

 この週末も大阪方面に出向くことにした。目的は大阪フィルの定期演奏会。今回は尾高の指揮によるヴェルディのレクイエムとのこと。例によって車を出すと、今回は午前中から出発する。大阪まで行く以上、立ち寄り先がある。阪神高速は例によって毎度の渋滞だが、今日はいつもよりはマシ。まあ想定内の時間にホール近くにアキッパで確保した駐車場に到着する。

 駐車場に車を入れるとここからは地下鉄で移動。天王寺のあべのハルカスまで。目的はハルカス美術館で開催中の「絵金展」。絵金については以前に高知でその力強い絵画に魅了されて以来、注目をしている。今回大阪で大規模な展覧会をするとのことなので、これは外すわけにはいかない。

看板からして強烈

 ちなみに私は全国美術館回りをしている過程で知って強烈にプッシュした画家は数人いるが、曽我蕭白などはある程度既に知られていたが、伊藤若冲などは世間がいわゆる若冲ブームになる以前から強烈プッシュしていた(自慢です、ハイ)。これ以外では私が注目したのは河鍋暁斎と絵金である。ちなみに絵金は昔に必殺シリーズのOPで使用されたので、知る人ぞ知るという存在だったようだが、今日でも高知以外ではあまり取り上げられないのは寂しいところである。なお河鍋暁斎の方は唐突に「地獄少女」のOPで使用されていたのにはぶっ飛んだ(笑)。

 

 

「恐ろしいほど美しい 幕末土佐の天才絵師 絵金」あべのハルカス美術館で6/18まで

ハルカス美術館は久しぶり

 絵金こと金蔵は、町民出身でありながら幼少期より天才的な画力を発揮し、江戸で狩野派の絵師に師事して帰郷後に土佐藩の御用絵師にまでなる。しかしこれがいわゆる既得権益層の反発を買い、狩野探幽の贋作を描いたとの嫌疑をかけられて追放処分となる。この時に彼の手掛けた作品の多くが焼却処分されたという(昔から無能な世襲は実力のあるたたき上げを恐れるものである)。その後、しばらく消息不明の後に赤岡に定住した彼は、町絵師として地元の人たちのために芝居絵や提灯絵、絵馬などに多くの作品を残した。力溢れるそれらの作品は人気が高く、またいわゆる「血みどろ絵」と言われるような作品が有名で、今日まで伝えられている。それらの作品を展示している。

このような絵が多いので「血みどろ絵」と言われる

 第1章は絵金による芝居屏風絵である。これらの二曲一双の屏風は赤岡町で祭りの際に、ローソクで浮かび上がらせるような形で展示されるものである。いわゆるおどろおどろしい血みどろ絵なども多く、それらがローソクの明かりでぼんやりと浮かび上がると臨場感抜群という仕掛けである。とにかく特徴は非常に力強い絵画であることで、力強すぎていささが雑な感を受ける作品もあるが、それでも作品が崩壊しないのは、絵金の天才的な技術と正規の教育を受けて正規の手法を習得しているゆえであろう。彼ほどの技術を有すると、作品が決して「型なし」になることはなく、真に「型破り」になるのである。

 

 

 第2章は夏祭りを再現しており、仮名手本忠臣蔵を描いた屏風や石川五右衛門の物語である釜淵双級巴を描いた提灯などが展示されている。とにかく絵に勢いがある。そして抜群の構成力。この構図の力強さは歌川国芳などと同様に今日の劇画に通じるものを感じさせるところである。

祭りの様子を再現(右は仮名手本忠臣蔵の塩治判官切腹シーン)

高師直が塩治判官の妻に横恋慕するシーン

こういう風に展示されるらしい

実に動きのある絵

 

 

釜淵双級巴を描いた絵馬提灯

石川五右衛門捕り物シーン

そして最後は釜ゆで

 第3章が絵金と周辺の絵師たちとのことで、彼と関わりのあった絵師や後継者と言えるような面々の作品である。

 久しぶりに絵金の力強い絵を腹いっぱい堪能したというところである。町絵師ということで高尚な作品ではなくて、非常に俗な絵であるわけだが、「粗にして野だが卑ならず」というところである。

ちなみに次回展はこれ

 

 

 絵金を堪能した後は昼食を摂ることにする。MIOのレストラン街をプラプラして立ち寄ったのは、久しぶりに「プチグリルマルヨシ」トンカツとエビフライのセットのランチを頂く。

久しぶりにMIOのプチグリルマルヨシ

 エビフライとトンカツはなかなか美味いし、トンカツもとんかつ屋のトンカツでなくて洋食屋のトンカツである。まずまずランチで満足。不満点を挙げるとすると、付属のコンソメスープが、まるでカップヌードルの出汁のようで私の好みに合わず。

トンカツとエビフライはまずまず

 昼食を終えたところで会場時刻が近づいてきている。地下鉄で肥後橋まで移動するとホールへ飛び込むことになる。今回は休憩なしの公演なので、遅刻したら席に着けなくなる。

 

 

大阪フィルハーモニー交響楽団 第567回定期演奏会

合唱団用のひな壇が後にある

指揮/尾高忠明
ソプラノ/田崎尚美 メゾ・ソプラノ/池田香織
テノール/宮里直樹 バス・バリトン/平野和
合唱/大阪フィルハーモニー合唱団(合唱指揮:福島章恭)

曲目/ヴェルディ:レクイエム

 「ヴェルレク」こと大曲、ヴェルディのレクイエムである。大編成の大曲だけに、そうそう演奏機会が多いという曲でもない。大フィルの2022年シーズンを締めくくる公演ということなんだろう。

 曲はかなり厳かに始まり、そういう点ではこの曲はレクイエムなんだということを感じる。しかし突然にあの「死者が棺桶を蹴飛ばして甦る」と言われている強烈な「怒りの日」が始まる。これはまさに音響大スペクタクルである。もっとも尾高/大フィルはドンガンやりながらでも余裕を持って演奏をしている様子がある。

 ソリスト4人が絡み合っての合唱はなかなかに美しい。曲調は変化に富み。ソリストたちの美しい歌唱が続いていると思ったら、突然に「怒りの日」が怒涛のように荒れ狂ったりという劇的な構成。確かにレクイエムというよりは劇音楽という指摘も良く分かる。

 そのような曲調を尾高は一貫してメリハリの効いた指揮でこなしていき、大フィルもそれに応えてのキビキビした演奏を行っていた。なかなかの好演である。

 演奏終了後は曲調もあってしばしの沈黙が続いたのちに爆発的な拍手が起こった。大フィルの好演に場内も盛り上がることかなり。先の4オケと言い、尾高と大フィルの組み合わせもなかなかに円熟してきた感がある。

 

 

ハーバーランド温泉でゆっくり一泊

 これで今日の予定は終了、明日は神戸でMETライブビューイングの予定なので、今日は神戸で宿泊することにしている。確保したのは万葉倶楽部神戸ハーバーランド。ここのところ何かと疲れ気味なので温泉でゆっくりしたいというのが一番。じゃらんポイントが結構溜まっていたのでそれを使用しての宿泊である。

 阪神高速は途中で混みかけていたが、今日は一曲プログラムで終了がやや早かったことも幸いして、とりあえず予定時刻にホテル(正確に言うと温泉施設だが)に到着、車を駐車場に入れるとチェックインする。ハーバーランドはどことなく寂れ感があり、万葉倶楽部が入るビルも今ひとつ活気がない。また駐車場連絡通路の屋根が骨格だけで雨ざらしになっているところなんかが強烈な寂れムードを掻き立てる。

骨組みだけで屋根がない駐車場連絡通路

 今回確保しているのは以前にも使用したことのあるグランドキャビン。客室は非常に効果である上に週末は一名様ではほぼ使用不可なのでの選択。個室形式になってはいるが、入口がアコーディオンカーテンになっている簡易寝室なのが最大の特徴である。問題は一応セキュリティーゲートはあるものの、個室には鍵がないこと。貴重品はロッカーに入れて施錠する必要がある。

グランドキャピンにはセキュリティゲートをくぐる必要が

グランドキャビン内部

テレビと簡便なデスクぐらいはある

 

 

 とりあえず荷物を置くとまずは入浴。大浴場でゆったりと汗を流す。浴場はアルカリ単純泉である大浴場と高濃度人工炭酸泉の浴場がある。炭酸泉は少し舐めてみると辛酸っぱい。大浴場で体を温めてから、やや低温の炭酸泉にじっくりと浸かる。風呂で温めてみると思いのほか左肩が凝っているのを感じる。

入口はアコーディオンカーテン

中からかける鍵はこれ

だから貴重品は鍵付きロッカーへ

 

 

 この後は夕食のために外に出るつもりだったが、風呂に浸かって作務衣に着替えたらもう一度着替えて外に出るのが面倒になってきたので、このままここのレストランで済ませることにする。頼んだのは親子丼(1080円)。こういう場所の常でCPは明らかに悪いが、まあまずくはないので良しというところ。さらに宇治金時ドーピングも行っておく。

結局夕食はここで摂った

そして宇治金時ドーピング

 後は部屋に戻って仕事環境を構築するとしばし原稿入力を行う。

仕事環境構築

仕事のお供は龍泉洞地サイダー

 

 

 そうこうしている内に10時ごろになってくるので、とりあえずPC類をまとめてロッカーに放り込んでから再び入浴に行く。今度は低温の炭酸泉を中心にゆったりとくつろぐ。

外はすっかり夜景

 体がくつろぐと小腹がすいてきた。深夜メニューに切り替わっているレストランに行くと、醤油ラーメンを頂く。なんで夜に食うラーメンってこんなに美味いんだろう。こうしてこの夜は更けていく。

風呂上がりの醤油ラーメン

 

 

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